危険がわかるかどうか

動物園で見るとこんな感じだけど、実際に出会うとかなり怖く感じるのがクマという生き物。

 ラジオを聞いていたら、恐怖体験として「山でこぐまに出会ったので必死に逃げた」という話をしていました。
 パーソナリティーの方は「子供でもくまですからね。小さいけど」といった感じだったのですが、それを聞いていて、クマの生息域に住んでいる人やそういうところを登山する人ならこの話の本当の怖さがわかるのになと感じ、わからないというのはこういうことなのかと妙に納得しました。
 「子グマがいる」というのは、別に子グマが脅威なわけではありません。いえ、子グマでもよほど小さな個体でない限りは人間よりも力が強くて十分脅威なのですが、それ以上に怖いのが、その子グマのすぐ近くに母グマがいて、状況によっては問答無用で襲われるということなのです。
 たぶん、山に登る人も同じような印象を持つのではないかと思いますが、子グマは無警戒にいきなり現れます。そして、理不尽なのですが母グマは人を見ると子グマに対する脅威と見なしてかなり警戒していて、ちょっとでも母グマが子グマが危険だと感じたら、即座に攻撃をしかけてきます。
 話をしていた人はそのことを前提にしていたと思うのですが、子グマには気を荒くしている母グマがついているということを知らなければ、単に「かわいい小さなクマがどうして怖いんだろう?」という印象になってしまうのでしょう。特に動物園ののんびりしたクマしか知らない人もいるわけで、そうなると怖いということが理解できないのかもしれません。
 人が危険を感じるためにはそのことが危険であるということを知っておかないといけないのだなと、今回の話でちょっと考えさせられました。
 危険を知ること、できれば危険な目にあってみること。
 人が的確な判断をするためには、そういった経験が重要なのかもしれません。

避難所と新型コロナウイルス感染症

新型コロナウイルス感染症の流行が避難所の環境改善をしているのはかなりの皮肉。

 スフィア基準というのがあることをご存じでしょうか。
 スフィア基準とは、スフィアプロジェクトによって国際的な人道支援の計画や管理、実施に携わる支援活動従事者向けに作られたスフィアハンドブックに記載されている、避難所や難民キャンプなどでの人道的と考えられる最低の基準のことです。
 実際にはこのとおりになってはいませんが、できるだけこの基準に近づくように、世界中のNGOや難民キャンプを運営する人たちが日々努力しています。
 さて、このスフィア基準によると、大人一人当たりの占用スペースは最低3.5平方メートル必要だとされています。
 この面積からは例えば調理場所やお風呂、トイレや洗濯場所といったものは含みませんのが、これらの設備を含んで計算する場合には、4.5~5.5平方メートルは必要だとされています。
 内閣府の「避難者に係る対策の参考資料」によると、日本の避難所は、一人当たり1.57~2.93平方メートル、多くは畳一畳分の2平方メートル前後が確保できればいい設計です。
 スフィア基準で考えると、日本の避難所は残念ながら「非人道的」な避難所となってしまいます。過去では阪神淡路大震災が一番ひどくて、一人あたり1~1.7平方メートルしかないときもあったとのことで、これではまともに体を横にして眠ることすらできなかったことがわかります。
 ただ、最近は新型コロナウイルス感染症の流行で、人同士の距離を最低2mは確保しなくてはならなくなったため、一人当たりの占用面積が5~7.7平方メートルに拡大し、スフィア基準を満たすようになったのはかなりの皮肉な感じです。
 一つ問題なのは避難所において一人当たりの占用面積が増えるということは収容能力が下がるということで、実際に避難所に入れなかった事例もあるようです。
 このことからはっきりといえるのは、自分が避難すべき対象なのかという把握と、入れる避難所を探すことになるかもしれないことを考えると、複数の避難先の設定と、早めの避難開始をすることが必要になるということです。
 以前は避難対象地域は問答無用で避難と言われていましたが、現在は基本は自宅待機で自宅が危険な人が避難所へ避難するというものに変わっています。
 平時にしっかりと自分の環境を確認しておいて、いざというときに途方にくれなくても済むようにしておきたいですね。

スポーツドリンクと経口補水液

 連日暑い日が続いていますが、あなたの体調は大丈夫ですか。
 気温が上がると、体は体温を維持するために汗をかくようにできています。
 この汗には、さまざまなミネラル分も一緒に流れて出てしまうので、水だけだとミネラル不足になってしまい、いくら水を飲んでものどの渇きが収まらないという状態になってしまいます。
 そのため、筆者が学生の頃には塩入麦茶が運動部の定番飲料となっていました。
 最近ではそういった手間がなくても、スポーツドリンクや経口補水液がありますから、のどが渇く前にそれらをちょっとずつ飲むことで水分とミネラルの補給が行えるようになりました。
 ただ、摂取方法を間違えると効果半減またはまったく効果がなくなってしまうことがあるので、ちょっとだけ注意が必要です。
 よくある話では、「スポーツドリンクは甘いので水で割る」というもの。
 スポーツドリンクは運動後に体が失った水分やミネラル分、カロリー分を効率的に補うように作られています。
 つまり、体に一番いい状態は「そのまま飲むこと」です。
 水で割ることで体への浸透圧が変わり、水分はともかく、ミネラル分やカロリー分などを効果的に補えなくなってしまうのです。
 逆に、動かない、汗をかかない人がスポーツドリンクを常飲すると太ってしまうことが多いのは、水分やカロリーが効率よく取られているせいですから、飲むのを控えたほうがいいでしょう。
 スポーツドリンクが甘く感じるのであれば、スポーツドリンクではなく経口補水液を飲むようにしてください。
 ただ、この話をするとよく言われるのが「経口補水液はまずい」というもの。
 経口補水液はちょっと前までは医薬品扱いになるくらい体への吸収がしやすく作られています。
 経口補水液がまずいということは、体がそれを必要としていないということで、少しずつ飲める範囲で飲めば大丈夫ということです。
 体の中のバランスが崩れているときには、この経口補水液が非常においしく感じるので、そうでないということは体が正常だというふうに考えてください。
 水だけだと体に負担がかかりますし、スポーツドリンクや経口補水液は少し飲みにくいという方は、古来から運動部に伝わるレモンのはちみつ漬けや塩入麦茶を試してみるといいと思います。
 どんなものを飲むのであれ、水分と同時にミネラル分を補給できるようにすることで、体のトラブルを減らすことができます。
状況に応じて、それぞれ使い分けるようにしたいですね。

代替品と正規品

 防災の講習会や研修会などでは、よく「〇〇を使うと××の代わりになります」といった内容の話をされることがあります。
 当研究所でも、実際に本当に代替品が機能するのかについて、実際に、例えば学校の防災クラブの時間に子供たちとゴミ袋レインコートを作ったりすることもあるのですが、結論から言うと、うまくいかないと考えたほうがいいです。
 該当するアイテムを準備できるのならば、ごみ袋レインコートを作るよりも普通のレインコートを準備したほうがいいということです。
 同様に、新聞紙のスリッパの作り方を知っておくことも大切ですが、それよりもちゃんとした靴やスリッパを準備しておいたほうが安全確実に足元を守ることができます。
防災講習会や研修会でそういったアイテムの作り方を知っておくことも大切ですが、それよりも代替品に頼らなくても済むような準備を怠らないほうがいいのかなと考えます。
 代替品はあくまでも代替品ですし、防災グッズに関して言えば、ほとんどのものは値段の差がそのまま性能の差です。
 できるだけ正規品を使い、しっかりとしたアイテムの準備をしておいたほうが安心確実なのではないかと思っています。

もしも被災してしまったら

 東北や北陸を中心として、全国的に大雨による被害が出ているのですが、被災された方にはお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復旧ができることを願っています。
 ところで、災害にあったらどのようにして復旧の段取りをつけていくのかを考えたことがありますか。
 いろいろと片付けていかないといけない問題があるのですが、内閣府広報でそれをある程度わかりやすくまとめたものが作られていますのでご紹介しておきます。

住まいが被害を受けたとき 最初にすること(内閣府広報のウェブサイトへ移動します)

また、勝手にやってきてボランティアのように見せかけて片づけを手伝おうとする人や、保険申請手続きを代行するなどと言って近づいてくる人は信用しないでください。
法外な手数料を請求された上に、後々までさまざまなトラブルに巻き込まれてしまいます。

ご用心 災害に便乗した悪質商法(国民生活センターのウェブサイトへ移動します)

もしも被災したらを考えて、普段から備えをしておくことをお勧めします。

死ぬところを想像してみる

 災害の研修をするときには危険から身を遠ざけることの大切さを説明するのですが、その時に「自分が死ぬかもしれないと思っているか」を聞くことがあります。
 災害の研修会で自分の身を守るための話を聞いているのに、自分が死ぬかもしれないと考える人はまずいません。
 ごくたまにいることがありますが、そういった人はものすごく真剣に研修を受講しています。
 人間の特性なのか、なぜか自分だけは死なないと思い込んでいる人が非常に多いのが気になるのですが、被災したとき、さまざまな理由から自分が死んでしまうことは当然考えられます。
 でも、楽観思想なのか周囲の人はだれか死ぬかもしれないが、自分は死ぬというイメージがつかないというのが実際なのでしょう。
 正直なところ、災害で死んでしまうときには、その死体はあまり人がみることができる状態にはなっていません。
 そういう状態がイメージできればもっと真剣に考えるのかもしれませんが、見ていないものや体験していないものをイメージするのはかなり難しいものです。
 でも、自分が死ぬところをイメージしたとき、どんな死に方をすればいいのかについて、一度考えてみてもいいのではないかと思います。
 誰もいつか死にますが、その原因が災害にならないように、災害で死んでしまうかもしれないという想像をしながら研修会や訓練に参加してくれるといいなと思っています。

二重遭難は絶対に避ける

 災害が起きたとき、逃げ遅れた人を救助するような場面に出会うこともあると思います。
 その場合には、冷たいようですがまずはあなた自身の安全を確保することが最優先。
 危険がなければできる限り人命救助に協力すべきだと思いますが、周囲が何らかの理由でその場にいる人たちが危険な状態になっていたり、安全か危険かの判断ができない場合には、ひどいようですが逃げ遅れた人の救助を諦めて自分の命を優先させてください。
 災害で逃げ遅れた人を救助していて一緒に死んでしまったのでは、せっかくの命が無駄になります。
 災害救助のプロである消防や自衛隊の人たちも、災害救助でまず優先すべきは自分の命であることを訓練で叩き込まれています。
 それはその場で死んでしまうことで、本来なら助けられてはずの大勢の人も道連れにしてしまうことになるからです。
 ひどい言い方になりますが、まずは自分の命を最優先すること。ほかの人の命は、自分の安全が確保されている範囲で救助に参加するようにしてください。

簡易トイレを使ってみる

実際に組み立ててみると、結構作り方が間違っていることがある。平時に練習しておくことが大切。

 災害時にもっとも困るのがトイレの問題です。
 水や食べ物はある程度我慢ができますが、おしっこもうんちも出すのを止めるのは非常に難しいものです。
 頭では「被災したらとりあえずトイレは使うな」ということはわかっていても、実際にその状況になってみると、ついいつもの習慣でそのままトイレを使ってしまったりします。
 汲み取り式や簡易水洗トイレであれば大きな問題にはならないのですが、浄化槽式や下水道式のトイレだと、汚物を流す下水管が断裂していたり、壊れてしまっていたりしてそこから溢れてしまうことや、断水時に使って汚物が流れなくなって、トイレが汚物で溢れたりする事態が発生します。
 そうなることを防ぐために、可能な限り早めにトイレを閉鎖し、簡易トイレを使えるようにしなければいけませんが、実際にやったことがないと、おそらくイメージができないのではないでしょうか。
 平時に実際に簡易トイレや仮設トイレを準備し、使ってみて、その使い心地や汚物の処理方法などを確認し、自分が使えるかどうかをきちんと確認しておいたほうが間違いないと思います。
 実際に使ってみると、おしっこの回数が結構多いことや、一日に使う簡易トイレの資材量が案外と必要だということ、そしてトイレの種類によって汚物処理の方法がさまざまだということに気づくと思います。
 備えるためには、まずは自分に関するさまざまな情報をしっかりと確認しておく必要があります。
 簡易トイレはその一つとして、しっかりと確認し、あなたが理解して使えるタイプの簡易トイレを準備しておくようにしてください。

炭酸水で髪を洗う

今回使ったのは右側のほう。さっぱりしたのは冷たいから?それとも炭酸のおかげ?

子供とラジオ体操をしていて、ジャンプの時に膝を痛めました。
もともと壊れ気味の膝なのでケアをしているのですが、今回は痛みが引かないので、整形外科に行って膝の処置をしてもらい、当日は入浴不可、シャワーもダメという指示をいただきました。
ただ、あいにくこの日は暑くて汗だくになってしまっていて、全身がべたべた。
とりあえず体はおしりふきで拭き、頭をどうしようと考え、以前に炭酸水で洗うとすっきりすると聞いたことがあったので、試しにやってみました。
結論から行くと、ものすごくさっぱりします。
500mlのペットボトルに半分残っていた炭酸水を使って頭を洗ったのですが、冷たかったこともあってか、驚くくらいさっぱりして、気持ちよく寝ることができました。
そういえば冷たい炭酸水を使ったヘッドスパなんかがあったなと思い出しながら、非常に快適な状態を手に入れることができたのは本当にありがたかったです。
筆者は髪の毛が微妙な状態なので半分くらい飲みかけのペットボトルで十分でしたが、500mlのペットボトルが1本あれば、髪の毛が多い人でも洗髪できるのではないかと思います。
十分な水が手に入らないときには、こういった手段もあるということを覚えておくといいかなと思います。

頭と足の裏を守る

頭と足の裏を守るポーズというと、こんな感じ?

 地震で守るべき場所として必ず挙げられるのが頭です。
 腕や足を怪我しても生き残るための判断や行動はできますが、頭を怪我してしまうと行動不能に陥ってしまうからで、頭に物がぶつからないように防御姿勢を取ることが基本になっています。
 そして地震の後ですが、筆者は足の裏を守ることを推奨します。
 というのも、大きな地震の後は家の中にはさまざまなものが散乱しています。
 また、外にいてもガラスや倒壊した建物などで道もかなり危険になっていると思います。
 頭を守ることは引き続きの基本ですが、安全な場所への避難は、足が動くことが前提になり、特に足の裏を怪我してしまうと、足の他の部分が無事でもまともに移動ができなくなってしまいます。
 屋内では、破片から足を守るために屋内シューズ、せめて靴下屋やスリッパは履きたいですし、屋外では足元がはっきりしている場所を選んで移動することと、できれば靴の中に安全中敷きを入れておきたいものです。
 体のどこを怪我しても困るのは困るのですが、頭と足の裏、これを守ることを意識しておくといいと思います。