弱者ほど厳しい避難所生活

 災害の避難情報では「レベル3・高齢者等避難」と「レベル4・避難指示」に別れています。
 このうち、レベル3の高齢者等の「等」には障がい者や乳幼児、妊婦といった生活に対してさまざまな配慮のいる人達が含まれていて、そういった人達は元気な人よりも早く避難を促されています。
 その理由はいろいろとあるのですが、一番大きな理由は、元気な人と同時に避難を開始したら、生活に配慮のいる人達は元気な人に避難する速度が負けてしまうからです。
 生活に配慮のいる人いない人の区別は、避難所にはありません。考え方としては、避難者は平等に避難者としての取り扱いがされてしまいます。
 そのため、生活に配慮のいる人達は元気な人と同時に行動を開始すると、どうしても速度で負けてしまって、避難しても避難所等に収容してもらえないという事態が発生します。また、元気な人に交じって避難するのが難しい場合もありますのから、せっかく避難したにもかかわらず、結局自宅に戻ってしまう例も起きています。
 これはまずいということで、現在は配慮のいる人達は最初から福祉避難所に避難できるように法改正されているのですが、普段から施設を利用している人達はともかく、乳幼児や妊産婦を最初から受け入れてくれる場所は、保育園や病院、助産院などになり、福祉避難所としてはあまり聞きません。
 また、元気な人でもアレルギーを持っている人がいますが、避難所で避難者に支給されるさまざまな支援物資はアレルギーの配慮はありませんので、自分でものを見て判断していくしか手がありません。
 これも避難者として平等に扱われることから発生する問題です。
 一般的に生活になんらかの配慮がいる人達は避難所では隅に押しやられ、その上生活再建することも時間がかかってしまうために最後まで避難所にいる羽目になることが多いです。
 あなたがもし、生活になんらかの配慮が必要な人だとしたら、避難所に避難するとひどい目に遭うことは目に見えていますので、避難所以外で自分が安心して過ごすことのできる避難先を用意しておくことをお勧めします。
 生活弱者ほど厳しい生活になってしまうのが避難所です。
 避難しなくても済むような場所に住んでいることが一番の理想ですが、さまざまな事情でそれが難しい場合には、最低1カ所、できれば複数箇所、自分の安心できる避難先を見つけておいてください。

魔法瓶は必ず持っていこう

 小さい子ども、特に乳児のいるご家庭では、非常用持ち出し袋には必ず魔法瓶を入れておき、災害が起きて避難するときには、できればその魔法瓶にお湯を詰めて避難して下さい。
 ご存じとは思いますが、ミルクやお尻拭きの温め、湯たんぽに使うお湯など、お湯があるだけで乳児の快適さはかなり違ってきます。
 普段母乳が出る人でも、避難による緊張や不安で充分に母乳が出ない場合もありますので、乳児のいるご家庭では母乳の子でも飲めるミルクを調べておいた方がいいです。
 仮に発熱剤やガスコンロを持っていたとしても、お湯の準備は必要です。
 避難する状況はさまざまですが、常にお湯が手に入る環境にいるとは限りません。
 火気厳禁の避難所もありますし、発熱剤が使わせてもらえない場合もあります。
 お湯は手に入るときにしっかりと手に入れておくことが、乳児がいるときの避難の鉄則になります。
 また、お湯があるといろいろと使えて安心ですので、可能であるなら魔法瓶にお湯を入れることを忘れずに準備するようにしてください。

食べたいものは季節で変わる

夏場になるとのどごしのよいものが食べたくなったりします。茹でる仕掛けがあれば、乾麺でも大丈夫。

 梅雨に入りました。どれくらいの雨が降るのかわかりませんが、大きな災害が起きなければいいなと思っています。
 水に関する災害の場合には、災害発生の可能性から災害発生までの間はそれなりに時間があります。 早めに避難したほうがいいのは確かなのですが、それまでの経験則や状況分析から、どこかへ避難すべきなのか、自宅で待機しているのがいいのか、なかなか判断が難しいところもあるかもしれません。
 さて、自宅待機にしても避難先に移動するにしても、どこにいるにしても食べ物は必要です。
 非常用持ち出し袋や備蓄品ではいろいろな準備をしていることではないかと思いますが、できれば食料にも季節感があるといいかもしれません。
 防災の講演会では身体を冷やさない、温かいものを食べる、といったことをかなりやかましく言いますが、そうはいっても、夏場だと涼しいものも食べたくなるでしょうし、アイスクリームなどの冷たいものもほしくなるでしょう。
 食べたい食べ物は季節によって変わってきますので、非常用持ち出し袋の中身も、できればそれにあわせて変えていくといいと思います。
 非常食なので季節感を取り入れるのは難しいかもしれませんが、非常用持ち出し袋や備蓄品を準備するときには、自分がこの時期に食べたいものや食べるものをある程度準備しておくと、気分的にも落ち着くのではないかと思います。
 

災害発生後に起きること

 いろいろな災害がありますが、日常生活に影響の出るレベルの災害が発生するとまずライフラインと物流に問題が出てきます。
 電気、ガス、水道、下水道、そして食料や日用品などの物資の輸送。
 これらが無くなってしまうと命にかかわりますから、再開するまでは自前でなんとかしないといけないことになります。
 指定避難所であっても、消耗品、特に食料品や水がしっかりと備蓄しているところはまれですので、非常用持ち出し袋と備蓄品は命をつなぐためのマストアイテムということになります。
 地方だと3日~1週間、人口の多い都会地だと1週間から10日程度は凌げる装備があったほうがいいと思います。
 国や他の地方自治体から最初に送り込まれる支援物資はある程度量が決まっているので、人口の少ない場所であれば全員に行き渡っても、人の多い都会ではそういうわけにいきません。
 また、発災から支援開始までは最低2、3日はかかりますので、その間のあれこれは自前で何とかしなければいけないわけです。
 このために、非常用持ち出し袋や備蓄品をきちんと準備しておくようにいわれているのです。
 市町村で備蓄している食料品などはたいした量はありません。それを当てにするよりは、自分で自分の食い扶持をしっかりと用意しておく方が精神衛生上いいと思います。
災害後に考えないと行けないのは、まずは自分の命を繋ぐ方法です。
 元気に命を繋ぐために、まずは非常用持ち出し袋と備蓄品をわかるように揃えるところから始めて見て下さい。

【やってみた】海水から塩を作ってみた

 先日海辺で外あそびごはんの会を開催しましたが、そのときの大きなテーマの一つが「海水から塩を作る」というものでした。
 人の生活に欠かせない塩を作るのにはさまざまな方法がありますが、どれもかなり大規模で簡単に塩が作れるような感じがしません。
 でも、海水自体は「塩が溶けている水」なわけですから、火に掛けて水を蒸発させてやれば塩は作れるはず。
 というわけで、当日参加してくれた子ども達と一緒に塩を作ってみる事にしました。

ひしゃくで上澄みを掬うと砂が入りにくい

 まず最初に、生活排水の入りにくい海岸で海水を汲んできます。

鉄鍋一杯の海水で塩を作ってみます

 それを、鉄鍋に入れて、その鉄鍋を火に掛けます。

天気がよかったので、火のそばはとても暑かったです。人肌に塩ができるくらいでした。

 ひたすら火に掛けていると、1時間半を過ぎた頃、一気に沸騰しました。

飽和状態を超えると、一気に水分の蒸発が始まるようです。

 それが治まると、鍋の底には白っぽいものが残りました。

水分が全部飛んだ状態。きのこみたいにも見える。

 削ってみると、塩っぽいです。

箸でつつくとホロホロと崩れて粒子になりました。塩です。

 食べてみたら、塩辛いのですが、後味すっきりのおいしい塩ができました。
 当日はお昼ごはんに火を焚いていたかまどの中でズッキーニを焼いていたので、それにつけてみたり、農家さんからいただいた野菜と切り干し大根で作った野菜スープに加えて味の変化を楽しんだりしていました。
 しまいには、塩だけなめている子も出てきて、今回は大成功だったかなと思います。
 ただ、小さな袋1つの塩を作るのに1時間半以上煮詰めていくのは、根気と燃料がかなり必要です。
 塩田式や流下式など、ちょっと手間はかかりますが、燃料代がかからない作り方が普及した理由がよくわかりました。
 思ったよりも簡単にできますので、今年の海あそびで試してみるのも面白いかもしれませんよ。
 ちなみに、もしやってみるのであれば、鍋はアルミ製以外のものを使うようにしてください。アルミだと、塩を作る過程で鍋がかなり傷んでしまいますので。

悩ましいカロリー問題

 甘いものが摂りたいけどカロリーは嫌、という方が多いのか、巷ではカロリーオフやカロリー0の食べ物や飲み物がずいぶんと増えました。
 昔ながらの甘くてカロリーたっぷりといった不健康な食べ物や飲み物はずいぶんとその数を減らしているような気がします。
 そうでなくてもカロリー過多のこの時代、カロリーをいかに摂らずに済ませるかというのは贅沢といえば贅沢な悩みなのですが、それくらい当たり前に甘いものが摂取されているということなのでしょう。
 そういった日常生活の中では問題ないのですが、災害が起きたときに避難したり、長時間の徒歩帰宅などする場合には、このカロリー0が恨めしく感じることになります。
 徒歩での避難中や長時間掛けての徒歩での帰宅などの場合、身体にため込んだエネルギーだけでは活動をするのが難しくなるので、簡単にカロリーの補給できるお菓子やドリンク類は非常にありがたいものです。
 特にスポーツドリンクなどは電解質とカロリーの両方を一気に補給できる非常に優れた飲み物なのですが、ここにもカロリーオフやカロリー0の波が来ているようで、先日買ったスポーツドリンクにもでっかく「カロリー0」と書かれていました。

 このカロリー0やカロリーオフのお菓子やドリンク類を摂取すると、甘いものを食べているのに身体のエネルギー不足の状態が続くという嫌な状態になってしまいます。
 昔ながらのスポーツドリンクであれば電解質もカロリーもしっかりとある非常に頼もしいので、もしも可能であるなら、非常用持ち出し袋などにカロリーのしっかりとあるスポーツドリンクを一本入れておくといいと思います。
 ちなみに、ひたすら甘いだけのジュースだと、飲んだ後でその甘みの元を分解するための水が必要になって余計にのどが渇いてしまうので気をつけて下さい。
 常時と非常時にはカロリーの考え方も180度変わってきます。
 その場にあったアイテムを準備しておくことをお勧めします。

自分の行動を記録してみる

 非常用持ち出し袋を準備するときによく聞かれるのが、「何をどれくらい用意すればいいのか?」ということです。
 それに対してで筆者はいつも「あなたは一日に水をどれくらい飲んでますか? トイレ、何回行ってますか?」と聞き返すようにしています。
 非常用持ち出し袋の水や食料、簡易トイレといったアイテムは、どれくらい準備すれば良いのかが人によってかなり変わってきます。
 よくトイレに行く人は簡易トイレの数も増えますし、逆は減ります。また、どれくらいの水分を摂っているかは意識していないとわからない話です。
 そのため、自分にあった非常用持ち出し袋を作るときには、まず自分の一日の行動を記録してみることをお勧めしています。
 記録してみると、案外水分を摂っていたり、思ったよりもトイレに行っている回数が多かったり、意外な発見が出てくると思います。
 そういったご自身の情報を基準にして、非常用持ち出し袋の中身を準備するようにすると、いざというときに必要なものが最低限は揃っている安心した状態が維持できます。
 さまざまなアイテム類を行政などの指示通りに準備すれはとりあえずは安心なのですが、重たいし嵩も大きいです。できるだけコンパクトにするためにも、ご自身の行動記録をまとめてみてはどうでしょうか。

【終了しました】【お知らせ】外あそびごはんの会を開催します。

 今年の2月、3月に開催して好評をいただいた外遊びごはんの会を、益田市喜阿弥町のデルマーレキアーミ様のご厚意で会場をお借りすることができ、開催することができることになりました。
 今回は海編ということで、うまくいくかはわかりませんが海水からの塩づくりや海辺で落ちている貝やいろいろなものを拾ってみるビーチコーミングなどをやってみたいと思っています。
 もし雨天の場合には、デルマーレキアーミ様の施設をお借りして、参加者みんなで生活できる避難所を作ってみたいと思っています。
 参加費は500円で募集は先着順ですが、以前の外あそびご飯の会開催時に新型コロナウイルス感染症の関係で急きょ参加できなくなった方を優先させていただきますので、それについてはご了承下さい。
 なお、当日は保護者カフェを同時開催します。こちらの飲み物はデルマーレキアーミ様のご厚意で無料で提供いたします。
 見知らぬ相手だからこそ本音で話せることもあります。お子様を送迎してきて一息ついていきませんか。
 応募や詳細の確認につきましては、添付のチラシをご覧下さい。ご参加をお待ちしております。

避難するときには何がいる?

非常用持ち出し袋に関する記事を見ると、これでもかというくらいさまざまなものが書かれていて、それを全部一つの袋に収めると結構な大きさと重量になります。
とはいえ、必要なものを集めていくとそうなるわけで、持って行くなということも言えません。
ただ、絶対に必要になるものはある程度わかりますので、今日はそれを紹介していきたいと思います。
まず、絶対にいるものの筆頭はあなたの個人装備です。
例えば、入れ歯、眼鏡、補聴器、杖といった道具類、常備薬や生理用品といった衛生用品といった、自分には必要だが他の人にとってはそうでもないものや手に入りにくくなるものだが、自分にとっては必要なものがこれに該当します。
これは自分で用意しておかないと誰も用意してくれませんので、必ず用意するようにしてください。
次は携帯トイレです。大小兼用のものが望ましいですが、なければ小専用でも構いません。一日にトイレに行く回数を確認し、その回数分は持参するようにしてください。
飲むことや食べることは我慢できても、排泄は我慢できません。災害時に断水するとトイレが使用不能になる場合がほとんどですので、トイレを汚物で汚染しないためにも準備しておいてください。
三つ目は飲料水です。一人1日3リットル準備しようといった記事も見かけますが、そんな量を持って移動するのは困難な人もいますので、500mlペットボトル2本程度を用意してください。
傷の洗浄やものを濡らしたりすることもあるので、お茶やジュースでは無く、水を準備しておくことをお勧めします。
四つ目が身体を冷やさないための道具です。例えば非常用持ち出し袋ではお馴染みになっているエマージェンシーブランケットや使い捨てカイロなどです。着替えや下着も一組は用意しておいてください。
脱ぐことは簡単にできますが、着込もうとすると着るための服が必要です。ただ、避難所にはそんなものはありませんので、自分で自分のものを持ち込む必要があるのです。
何も無ければ、せめて雨合羽くらいは準備しましょう。体温が保たれているのであれば、必要なのは周囲から体温を奪う風を防ぐ道具になるからです。
五つ目は時間を潰せるアイテムです。いきなり災害後から始まる地震はともかく、台風や水害といった事前に避難の可能な災害の場合、避難完了から家に帰ることができるようになるまでには半日から数日はかかります。
ただ寝ているだけだと、人間はだんだん不安になってくるものですから、余計なことを考えなくても済む、暇つぶしのアイテムを複数準備しておくといいと思います。
そして、最後が自分の好きな食べ物です。そんなに長い期間避難するわけではないので、自分が楽しめる食べ物を持参していきましょう。
臭いの強いものや煙の出るものは無理ですが、自分の楽しめる食べ物があれば、それだけで不安な避難所の時間が解消されると思います。
これらを準備した上で、あとはあなたの好みや必要性にあわせてさまざまな道具を準備するようにしてください。

非常食は何がいい?

非常食の一つの缶パン。吉賀町で作っている。ちょっと甘めが疲れたときにはうれしい逸品。

 結論から書くと、非常食は「自分のモチベーションが維持できる食べ物」を準備しろということになります。
 よく非常食として「アルファ米」や「乾パン」などが挙げられますが、これらの食事は本当の非常用です。
 例えば、地震が起きて家が倒壊してしまったといった非常事態に、調理器具が無くても食べられるこういった非常食を準備しておこうということで、災害で避難したら、何が何でもこれを食べなければならないというものではありません。
 台風や水害などでは、災害発生までの時間が割とあることが多いですので、一食分のお弁当を作ることもできると思います。
 この作ったお弁当も非常食になりますし、食べ慣れた味は自分のモチベーション維持にも貢献してくれますから、余裕があるならそういったものを準備することも大切です。
 また、普段食べないような高級食材の缶詰なども非常食にしておくといいかもしれません。非常事態だからといって、食事まで貧相にしたり非常事態に落とさなくてもいいのです。できるだけ自分が好きなものを食べて、避難中のモチベーションを落とさないようにしてください。
 ただ、多くの人がいる場所になりますので、臭いには気を遣う必要があります。あなた自身が良いにおいだと思っていても、周りにはそれが大嫌いな人がいるかもしれません。そうなると喧嘩になったりしますので、臭いの強いものは避けた方がいいでしょう。
 そして、もう一つ。
 大好きだからといって、お酒だけは避難中は飲まないでください。
 気持ちに不安がある状態での飲酒は、精神的にも肉体的にもよくありません。
 お酒は状況が落ち着いてから飲むことにして、間違っても非常食には加えないようにしてください。
 災害の起きる可能性のある期間は長くても数日ですので、自分が楽しくなるようなものを非常食にしておくとモチベーションが維持できていいと思います。
 あれこれ探して、自分が楽しくなる非常食を用意してみてくださいね。
 最後になりますが、お弁当を作る際には衛生には充分に気を遣ってください。保冷剤などで弁当が傷まないようにして、食べ残したものは処分するくらいの衛生管理でお願いしたいと思います。
 同じ理由で、生ものは止めた方が無難です。