重いものは下に置く

 聞く人が聞けば「なにを当たり前のことを」と言われてしまいそうですが、地震発生時にあなたが怪我をしないためには、肩以上の高さには重たいものを置かないことが鉄則となります。
 では、ご家庭や職場にある棚に入っているものを一度確認してみて下さい。
 案外と普段使わない重たいものが高いところに置かれていませんか。
 最近ではあまり見なくなりましたが、百科事典や何かの全集といった書籍は、普段はあまり読まないということで本棚でも高いところに置かれていがちです。
 台所だと圧力鍋や大皿、普段使わない機械類が食器棚やシンクの上の棚に無造作に置かれていませんか。
 職場だと、説明書や印刷用の紙、チラシ、機械類といったものが高い位置に置かれていないでしょうか。
 空間を効率的に使おうとすると、どうしても高い位置にものを置くことになってしまうのですが、高いところに重たいものを置くと、地震の際にそれが落ちたら大けがをしてしまいます。
 収納の基本でもあるのですが、重量物は下へ、軽いものは上へを頭の中に入れてお片付けをするようにしてください。
 落下物で怪我をしない、させないように、重たいものの収納位置に少しだけ気をつけるようにしてくださいね。

ハザードマップを確認しておこう

 梅雨入りし、雨が続く毎日になりそうな感じですが、あなたがお住まいの場所はどんな災害の場合に避難しなくてはいけないのかを知っていますか。
 避難する対象としては、地震、水害、台風、そして土砂崩れや火事等があり、それぞれに安全に逃げる経路や安全な避難所を検討していることと思います。
 このうち、雨で気をつけないといけないのは、水害と土砂崩れ。
 水害では浸水を、土砂崩れでは巻き込まれることに注意しておかないといけませんので、これらの情報が一目でわかるハザードマップを確認しておきましょう。
 ハザードマップでの水害は、ある条件下での浸水状態を表しているもので常にそうなるとは限りませんが、急傾斜地や地すべりなどの土砂崩れが起きるかもしれない場所については影響範囲と危険な場所がしっかりと明記してありますので、お住まいの地域にある場合には、しっかりと把握しておいてください。
 これは避難時に限らず、通勤通学経路を決めるときにも確認しておき、できる限りそういった場所を避けて経路を設定しておくようにしてください。
 ちなみに、小学校の通学路に指定されている経路は安全という方もいらっしゃるのですが、小学校の通学路は車との事故を防ぐことを主眼にして設定されていることが多く、もう何十年も見直されていないといったものもざらにありますので、あまり信用しない方がいいと考えます。
 ハザードマップを元にしてできるだけ安全な場所を移動経路にしておくこと。そして自分が安全だと思われる避難場所を確認しておくこと。
 これからの時期、さまざまな災害が起きる可能性がありますから、それに備えて確認しておいてくださいね。

災害支援は人が多いところから始まる

 災害後、さまざまな支援が行われますが、その支援体制は被災地全体に均等ではありません。
 支援の効率上、どうしても被災者が多く被害状況のひどい部分から着手されることになり、被災者の少ない地域は後回しになってしまいます。
 特に道路の開削や物資の供給などはどうしても遅れてしまうので、そういった地域の人は一度物資が確実に届く場所の避難所に避難し、開削や物資補給の体制が整ってから改めて住んでいる地域に戻ることになってしまいます。
 そのため、その地域で農畜水産をやっている場合には世話ができなくなって収入が絶たれてしまうという事態になりますので、被災したときにどのようにするのかについてはあらかじめ考えておく必要があります。
 また、救助の手も遅れることが多々あるので、生活備蓄のうち、買わないといけないものについては少し多めに準備しておいたほうが無難です。
 復旧・復興支援についても同様で、ボランティアなどの支援も遅れたり、または来てくれなかったりします。
 できる限り自分で復旧するか、緊急性を要する部分に限定してお手伝いをお願いしたり、地縁、血縁、SNSなどを使ったボランティアのお願いなど、ボランティアが来るのを座して待つのではなく、来てもらえるようにいろいろと働きかける方法を考えておいた方がいいでしょう。
 どちらにしても、災害支援は人が多くて目立つところから始まります。
 そのことを頭に置いた上で、自分の暮らしを復旧・復興するためのBCPを検討するようにしてください。

災害で起きる問題と事業継続化計画(BCP)

 災害時に備えて事業継続化計画(BCP)を作る理由はいろいろとありますが、その大きな目的の一つに「発生する問題を可能な限り早く解決する」ことがあります。
 問題というのは、発生したのに無視し続けると、多くの場合は問題が問題を生んでしまって収拾がつかなくなります。
 特に災害などの緊急時においては、一つの問題放置が後々大問題になることもありますから、できる限り一つの問題のときに対応して処置しておかなければなりません。
 災害時に発生する問題は多岐に及ぶので、どんなにBCPを作っても100%問題は起きないと言い切ることは無理ですが、過去のさまざまな災害から、災害が発生したときに自分たちが対応すべき問題は何かと言うことはある程度予測が可能です。
 予測した問題には予め解決方法が考えられているわけですから、それに従って手順を踏めば、基本的には対応者が誰であれ解決できるはずです。
 BCPの手順書は、そういった目線で作成する必要がありますので、「わかりやすく」「明確に」を考えて作成してください。
 そして、BCPがあれば、その場の指揮官は突発的に起きる事態に対応を専念させることができます。その結果、さまざまな問題が小さいうちに終息できて、復旧や復興が予定通り、または予定以上に早く完了できることになり、そのために作成するものです。 BCPを作っておくことは、今ある戦力でどれだけのことができるのか、そして何を優先して対応するのかを明確化することと、問題対応の手順を予め定めておくことです。
 現状を維持する方法ではなく、何から優先して対応すべきなのかを常に頭に置きながら作成するようにしてください。

【活動報告】青野山で自然体験会を開催しました。

青野山から日原方面にまっすぐ伸びる弥栄断層。その上に国道9号線がある。

 去る5月3日、島根県鹿足郡津和野町にある青野山で自然体験会を開催しました。


 前日までの雨がうそのように晴れ渡った天気の中、会員様、そして会員様のご友人などにご参加いただき、賑やかに青野山を登山しながら春の山野草の観察をし、また、途中の視界が開けた場所では弥栄断層についても説明させていただきました。


 各自弁当の昼食をいただき、下山後は津和野城趾に登り、そこから本日登った青野山を別角度から眺めるオプションも実施。
 少々厳しい行程でしたが、参加された皆さん笑顔で終了することができました。
 この場をお借りして、ご参加いただきました皆様に感謝いたします。

通勤・通学経路を確認しよう

 家の安全についての検討が終わったら、次は家と職場を結ぶ通勤・通学路を確認してみましょう。
 普段意識することのない高低差や建物からの落下物の可能性、陥没や倒壊など、災害というフィルターを通すと普段と違った風景になってくると思います。
 特に車での通勤・通学をしている場合にはアンダーパスに気をつけてください。
 アンダーパスは、大雨時には周囲から雨水が流れ込んで大きな池になってしまうことがあり、意識せずに普段どおりに運転していると水没したアンダーパスに突っ込んでしまうケースが非常によく起きています。
 短時間で大量の雨が降る場合には、管理者の通行止めの措置が間に合わない場合もよくありますから、通勤経路を見直すときにそういった場所は外すようにするか、または大雨時には必ず迂回するということを常に忘れずに考えるようにしておいてください。
 他にも、風が吹いたら飛んだり落下しそうな屋根や看板、増水時に落ちてしまうかもしれないマンホールや側溝、地震時に倒壊しそうな塀や建物など、どういった経路にすれば一番自分が安全に移動できるかを考えてみましょう。
 小学校などでは通学路が決められていることも多いのですが、筆者の知る限り交通事故対策は考えていても防犯や防災の視点は取り入れられていません。

子どもによる通学路の安全点検の一コマ。

 そのため、子どもがいる場合には一緒に通学路を点検しておく必要もあるでしょう。 おうちの防災計画では、家から避難所までの安全な避難路を検討することがあると思いますが、普段使っている道の危険を知って安全対策をしておくことはとても大切なことです。
 災害対策は普段の生活の中にあるものですから、何かを考えるときには災害対策の視点を加えてみてほしいと思います。

災害対策で最初に家を考えるわけ

耐震化してないと、家具の下敷きになることも

 災害対策、特に地震では対策をするときに一番最初に言われるのは耐震補強、または耐震化という話です。
 家の倒壊を防いで命を守るということが一番の目的ですが、被災後にできるだけ避難所に避難しなくても済むことも大きな理由の一つです。
 もしお手元に避難所一覧があれば確認していただきたいのですが、避難所の大きさと収容人員を比べてみてください。その避難所の建物の中に、全ての避難者が生活スペースを確保して収まるでしょうか。
 多くの避難所は収容能力を超える避難者が割り当てられています。
 公的な施設に全ての住民を納めるとこうなりますということなのですが、実際に災害が起きると避難者が収容しきれずにあふれ出してしまうという事態が発生しています。
では、もしも家から避難しなくて済むとしたらどうでしょうか?
 家の安全が確保されているのであれば、避難時に危険な目に遭う可能性のある避難所への移動はしなくてもよくなります。
 また、住み慣れた家ですからどこに何があるかも知っているし、他人の目も気にしなくて済み、ストレスも少なくて済みます。
 できるだけ自宅から動かなくて済むように準備することが、災害対策のとても重要な位置をしめているのではないかと、筆者はそんな気がしているのです。
 もっとも、全ての家が安全な場所に建っているわけではありません。水害や台風などで被害を受ける場所にあるおうちだってあるでしょう。
 幸い、地震以外の災害では、大抵の場合何らかの前兆があります。自分の住んでいる場所がどうなったら危険なのかをあらかじめ調べておいて、どうなったら安全な避難所への避難行動を開始するのかを決めておけば、とりあえずの安全を確保することは可能になります。
 あなたのお住まいの家は地震に強い作りになっていますか。
 そして、他の災害で被災が予測されるような場所ではありませんか。
 災害対策は、それを確認するところから始まります。

自助・共助・公助の関係

「自助・共助・公助」ということが、防災業界ではよく言われる言葉です。
自助は自分の備え、共助は地域の備え、公助は行政の支援になるのですが、次のようなものが図としてよく描かれています。

 この図だけで見ると、自分が備えていなくても共助や公助がそれをカバーするように見えるので大丈夫という感じに見えてしまうのですが、この図を時間軸で書き直すと次のようになります。

 つまり、単純に言えば「災害が起きたときはまず自分の命は自分で守れ、守ったら近所同士で命を繋げ、そしたらそのうち救援がくる」ということなのですが、大前提として、まずは自分が安全に生き残るというものがあります。
 ここが忘れられがちな部分なのですが、まずは自分が生き残るための手立てをきちんと整えていないと、災害が起きたときにはそこで人生終了となるという事実です。
 例えば、阪神淡路大震災では災害発生後、すぐにご近所で救出活動が行われてたくさんの人が助かったとされています。
 では、もしいま地震が起きたとき、ご近所の救出活動がいまあなたのお住まいの場所ですぐに開始できるでしょうか。
 多くの地域では高齢化が進み、家屋やがれきの撤去がすぐにできるようなパワーはもはやありません。また、若い人がいるところは近所付き合いがほぼ皆無ですので、やっぱり救助活動はしてもらえないでしょう。
 そう考えるとこんな感じの時間軸になります。

 時間軸で整理するとよくわかることなのですが、肝心な初動時には、自分以外誰も助けてはくれません。
 災害の規模が大きくなればなるほど、公助は遅れていきますし、場合によっては公助が行われない場合も想定しておいた方がいいでしょう。
 つまり、自助とは「自分の命は自分で守れ」という意味で、共助や公助はそれを支援するものだと考える方が精神衛生的によさそうです。
 これを図にするとこうなります。

 災害時には、あなたの命はあなた自身が守らなければ誰も守ってはくれません。
 あなたの命を守るために、まずはその方法を考えて一つでもいいので実行に移して欲しいと思います。

0か1か100か

カップ麺やレトルト食品は保存食の定番メニュー。お気に入りを普段使いで消費していけば、常においしいものが食べられる。おまけに長期保存用よりもかなり安価。レトルト食品は、要冷蔵のものもあるので気をつけて。

 災害対策の話をさせていただくと、よく出てくる理由に「完璧に準備なんてできない」というのがあります。
 さまざまな防災対策の本や講演などで一覧表になっているようなものを全て準備しないといけないのかと考えてげんなりしてしまう場合も多いようです。確かに、それらのアイテムを準備すれば、一応は「完璧」となるのでしょうが、実際にはそれにプラスして個人の必要なアイテム類が発生し、それはその人の環境によってどんどん変化していくので、実際のところ100%完璧はまずありません。
 ただ、まったく準備していないと、いざ災害が起きたときには何をしたらいいのかどうすればいいのかわからずに途方に暮れるだけになってしまいます。
 必要なのは、最初の一歩。
 例えば、あなたのいるところから近くの避難所までの位置関係を確認して避難経路を考えるだけでも、災害対策の一つになります。
 普段水筒を持ち歩かない人であれば、小さな水のペットボトルや水筒を持って歩くだけでも立派な災害対策です。
 肝心なのは、「完璧にできないからやらない」、ではなく「なにかできることを一つやってみること」で、何か一つでも用意ができたなら、拍手して自分を褒めてあげてください。何かを一つ準備した結果、あなたが生き残れる確率が確実に上がったのですから、すごいことです。
 災害なんかで死んでしまうのは、あまりにももったいないです。そして、災害なんかで希望を失うのももったいない話。
 そのために、何か一つ災害対策を始めてほしいなと思います。

個別避難計画と福祉避難所

 今の国会で災害対策基本法が審議されていますが、その中に要支援者の個別避難計画の策定が市町村の努力義務であることが明記されました。
 過去の災害で高齢者の避難が遅れて犠牲になるケースが非常に増えているため、あらかじめ個別避難計画を作って、何かあればそれに従って避難ができるようにすることを目的とし、市町村や社会福祉協議会、介護事業者やケアマネージャー、自主防災組織が要支援者一人一人の状況に応じた避難計画を策定し、特別な配慮のされた避難所のスペースまたは福祉避難所へ直接避難できるようにするようです。
 これ自体は非常に有効性の高いことで、しっかりと進めていく必要性があると思っていますが、同時にいくつかの問題点も抱えていると考えています。
 まずは誰が要支援者なのかを開示するかどうかということ。
 これはもろに個人情報ですので、本人の同意なしに自主防災組織への情報開示はできません。
 自主防災組織はその地域に住んでいる人達で構成されている組織ですので、好き嫌いや恥ずかしさ、遠慮などがあって支援不要ということを言われる人もいらっしゃるようです。
 介護事業者や社会福祉協議会が対応することになると、今度は要支援者を誰が避難させるのかと言う問題が発生します。
 介護事業者や社会福祉協議会が24時間いつでも避難支援ができるような体制はどこも組んでいないと思いますので、どのように対応することになるのかが気になるところです。
 そして、福祉避難所として指定される福祉施設の立地条件。
 石西地方の福祉施設はなぜか水害や地すべりといった災害に遭いやすい場所に建てられていることが多いです。ある程度面積が確保できて土地単価の安いところということでこうなっているのだと思いますが、福祉施設に避難したらそこで被災したという笑えない状態になることが予測されます。
 また、安全な場所にある福祉施設は、多くの場合一般の避難所として指定されているのが現状です。福祉避難所として機能させる場合には指定者のみが避難できる場所になるはずなので、そのことを地域に周知徹底する必要もあります。
 人的な問題と設備の問題をどうやってクリアしていくのかという大きな課題はあると思いますが、こうでもしないと要支援者が被災地域から避難しないだろうと考えると、関係者にはがんばって欲しいなと思います。
 ついでに書くと、個別避難計画が必要なのは要支援者に限った話ではありません。
 地域に住んでいる全ての人がそれぞれ自分で作成しておくべきものですから、要支援者にとらわれることなく、しっかりと啓発していければいいなと考えています。