災害支援は人が多いところから始まる

 災害後、さまざまな支援が行われますが、その支援体制は被災地全体に均等ではありません。
 支援の効率上、どうしても被災者が多く被害状況のひどい部分から着手されることになり、被災者の少ない地域は後回しになってしまいます。
 特に道路の開削や物資の供給などはどうしても遅れてしまうので、そういった地域の人は一度物資が確実に届く場所の避難所に避難し、開削や物資補給の体制が整ってから改めて住んでいる地域に戻ることになってしまいます。
 そのため、その地域で農畜水産をやっている場合には世話ができなくなって収入が絶たれてしまうという事態になりますので、被災したときにどのようにするのかについてはあらかじめ考えておく必要があります。
 また、救助の手も遅れることが多々あるので、生活備蓄のうち、買わないといけないものについては少し多めに準備しておいたほうが無難です。
 復旧・復興支援についても同様で、ボランティアなどの支援も遅れたり、または来てくれなかったりします。
 できる限り自分で復旧するか、緊急性を要する部分に限定してお手伝いをお願いしたり、地縁、血縁、SNSなどを使ったボランティアのお願いなど、ボランティアが来るのを座して待つのではなく、来てもらえるようにいろいろと働きかける方法を考えておいた方がいいでしょう。
 どちらにしても、災害支援は人が多くて目立つところから始まります。
 そのことを頭に置いた上で、自分の暮らしを復旧・復興するためのBCPを検討するようにしてください。

あなたの命は誰のもの?

 災害が発生して避難が必要になったとき、あなたは避難しますか? それとも諦めて避難しませんか?
 避難訓練の時や避難計画のお話をさせていただくと、たまに「何かあっても避難しない」という方がおられます。実際に東日本大震災でも「避難しない、家にいる」と避難を拒んで亡くなった方がかなりの数いらっしゃったとも聞きました。
 そこで、ちょっと考えていただきたいことがあります。
 日本に限らず、この世界では「災害で死ぬ自由」は保証されていません。
 つまり、水害や津波が起きるときに「避難しない」という選択をすると、警察や消防団、自主防災組織や近所の人がやってきては避難させようとします。
 そこで「避難しろ、避難しない」と揉めていると、時間切れになって避難しないことを選択した人だけでなく、避難させようと説得していた人たちをも巻き添えにしてしまうことになるのです。
 そして、災害で行方不明になると、行方不明者がでたエリアは人海戦術でがれきをどけ、行方不明者が見つかるまで探す作業が必要となります。この場合、がれきを重機でどけるような方法はとれませんから地域の復旧がかなり遅れます。さらに言えば、不幸にして亡くなっていれば、発見後にご遺体を安置所まで運び、納棺し、葬儀し、納骨するためにもさまざまな人手が必要となります。
 その作業は精神的にかなりきついものとなり、従事した方達の中には後にPTSDを発症してしまうケースも起きています。
 自分が逃げないと選択をした結果、災害時、災害後のより多くの人が危険にさらされることになってしまいます。つまり、災害時には、あなたの命はたくさんの人の命を握っているのです。
 災害時には死んではいけませんし、行方不明になってもいけません。
 所在をはっきりさせ、何が何でも生き残ることが、結果として復旧も早く進み、それまでの日常生活を取り戻すまでの期間も短くて済むのです。
 逃げるためには努力がいります。逃げない方が楽です。
 でも、あらゆる手段を考えて生き残る準備しておくことが、あなただけでなく、多くの人の命とこころを救うことになるのです。
 「自分の命は自分のもの」という意見は間違いではありませんが、災害時には多くの人の命も関係してくることになりますから、他の人の命を守るために、あなたの命も守ってくださいね。