感震ブレーカーとスイッチオフ

 感震ブレーカーというものがあります。
 代表的なものは配電盤についていて地震の際に電気を止めて電気器具による火災を防ぐ装置ですが、このほかにも、ガスのマイコンメーターやストーブの耐震消火装置などもこれに該当します。
 要するに、揺れを感知したら電気やガス、灯油と言った燃料の供給を止めて火を消す装置なのですが、この装置が働いて消火された後、それぞれの器具のスイッチを確実にオフにしておくことが必要です。
 電気なら、機材のコンセントを抜いておく、ガスならコンロや給湯器のスイッチを切る、ストーブであれば確実に消火しておくなど、緊急時に対応してくれた安全装置を保管する作業をしておきましょう。
 電気もガスも異常がある状態で供給を再開しようとしても供給ができないようになっていますが、復旧作業をしてもうまく動かないのは、このスイッチを切るという作業がされておらず、診断装置が危険だと判断した結果復旧しないことがよくあるからです。
 耐震安全装置が正しく起動すれば消火は確実にできますので、地震の際にはまず身の安全の確保、そして落ち着いてからのスイッチオフという作業を忘れないようにしておきたいですね。

避難を判断する鍵の見つけ方

 災害時に避難が遅れてしまう理由の一つに、「どのタイミングで避難すれば良いのかわからなかった」というのがあります。
 まずいと思ったらさっさと避難すれば良いと思うことは簡単なのですが、実際にその立場になると、避難するか避難しないかの判断に迷ってしまうことは非常によくあることです。
 これは避難を判断するための鍵をきちんと決めていないから発生するので、避難開始を判断する鍵さえきちんと決めてあれば、悩まずに自動的に行動を開始することができます。
 そして行動を考えずに自動化しておくことで、判断に要する時間を省いて素早く行動できるようになり、結果的に確実に自分の命を助けることができることになります。
 では、どのようにして鍵を見つけたら良いのでしょうか。
 まずはあなたがいる場所がどのような災害で避難が必要なのかを知ることです。
 あなたがいる場所はどのような災害に陥る可能性があり、どの災害の場合に避難が必要なのかを整理しておくこと。
 それによって該当する災害以外はとりあえず避難が必要ないことがわかりますから、それだけでもだいぶ落ち着くと思います。
 次に、避難が必要な災害で、どういう理由で避難をすべきなのかを整理します。
 例えば、低地であれば浸水してしまうから避難が必要になるわけですし、土砂災害警戒区域などに住んでいる場合には、土砂災害が起きるから避難が必要になります。
 それらの理由をとりあえず洗い出し、そういった状態になる前とはどのタイミングかを考えてみます。
 例えば、浸水の場合であれば近くの排水路から水が噴き出すようになったら逃げられなくなる可能性が高くなりますし、土砂災害であれば、焦げるようなにおいや普段見ない場所からの水の流出といったちょっとした変化が前兆になることが多いです。
 そうなる一歩手前で避難を開始することが、身の安全を守る一番の方法です。
 例えば、排水路から水があふれ出しそうなくらいの雨が降っているなら避難の準備を始める。土砂災害では、小さな異変を確認したり、何も起きていなくてもなんとなく嫌な感じがしたら避難開始という風に決めておくことで、その状況になったら考えずに避難を行うことにしてしまうのです。
 本当に避難が必要だったのかどうかは、その災害が収まってみないとわかりませんから、何もなければ儲けものと考え、まずは避難行動を起こすタイミングを決めておけば良いのです。
 自分で考えるのが難しい場合には、近所の知り合いなどに声をかけておいて、いざ避難するときに一緒に行動できるようにしておけばいいでしょう。声をかけられた方はちょっと大変ですが、自分の避難行動を見直す良い機会になると思います。
 災害の避難はその場で避難するかどうかを考えるのはかなり無理があります。
 事前に避難開始の鍵を自分の中で決めておいて、本番では何も考えずに鍵の要件を満たしたらすぐ避難という風にしておきたいですね。
 ちなみに、避難所に避難しようと考えている場合には、その避難所が開設されている必要がありますから、事前に避難所の開設者に開設する条件を確認しておくとより安心ですよ。

逃げ道マップを作ろう

当研究所が行っている防災マップづくりの一コマ。実際に地域を歩いて確認するところから始まる。

 災害対策として、地域の危険な場所を洗い出してそこから早めに避難するというのは割と言われるようになってきていますが、避難する道をどうするかということと、その道が安全かどうかの点検までちゃんとできていますか。
 実は同じ避難所に避難するとしても、大雨と地震では避難に使える経路が異なることが殆どです。
 例えば、大雨では低地では無く高い場所を繋いで避難を考える必要がありますし、地震では地面の高さよりも周囲の構造物が壊れたり倒れたりしないことが重要です。
 そういった避難経路の情報というのは、意識しながら実際に歩いてみないとわからないことがたくさんありますので、実際に歩いてみて、逃げるための道、逃げ道マップを作っておく必要があるのです。
 地域の安全点検とあわせて、実際に歩いてみて確認してみること。
 地図上では歩けるはずなのに、道がでこぼこだったり、溝があったり、草に埋もれていたり、急な坂道の連続だったりと、逃げ道を決めるのは案外と大変なことがわかると思います。
 その上で災害の種類に合わせて逃げ道を変更するのは、正直言って大変な作業になります。
 ただ、大きな災害時には避難中に遭難してしまうことがよく起きていますので、それを防ぐためにはこういった作業が必要です。
 危険なくらい暑い時期ですので、日中出歩くわけにはいかないかもしれませんが、早朝や夕方、ご家族や友人と一緒に散歩しながら逃げ道を確認してみるのもよいのではないでしょうか。

防災と減災

 当研究所の名前は「石西防災研究所」ですが、実は防災が完璧にできるとは思っていません。
 どういうことかというと、日本は災害列島と呼ばれるくらい災害の多いところであり、どこに住んでいても何かの災害は必ず起きます。
 安全な場所がない以上、災いが起きるのを限りなく0%に近づけることはできても、100%防ぐことはできません。
 例えば何十億円というインフラ投資を行っても、それ以上の自然の力が加わればかならず被害は出るわけで、もし完璧な防災ができるのなら、災害時の「想定外な事態」は発生しないのではないでしょうか。
 では、「災いを減らす」減災はどうか。
 発生した災害から受ける被害をできる範囲でなくしていくこと。
 全てを守るのではなく、できる範囲でできることを行い、結果として被害を小さくすること。
 例えば、事前にどんな災害が起きたらどこへ避難するのかや、逃げ出すタイミング、
それが減災で、これならさほどお金や労力をかけなくてもできるような気はします。

 発災しても一切の生活を変えないように備えるのが「防災」、発災したときに自分の命を守り、自分が生活し続けることができるようにすることが「減災」です。
 100%を目指さないのであれば、別にどちらでも構わないと思いますが、もしあなたが自分の財産を使って行動するとしたら、どちらを目指しますか。

【終了しました】防災研修会を開催します。

 最近あちこちで災害が起きていますが、あなたがお住まいの地域の避難所はどのように準備し、どのように立ち上げたらいいか決まっていますか?
 避難所運営のイロハについてはさまざまなところで研修がされていますが、では、避難所設営の方法やどのような事前準備をしたらいいのかについて考えてみたことがあるでしょうか?

 今回はわかりきっているようで、改めて確認してみると割と漏れのある避難所の設営について「避難所設営、基本の「き」」というタイトルで、座学で一緒に勉強してみたいと思います。
 よく「段取り7割」といいますが、避難所の設置者が事前準備をきちんとしておくだけでいざというときに慌てなくて済みます。
 また、自分が避難所に避難したときに、設営方法を知っておくと段取りよく混乱なく開設をすることもできます。
 内容の詳細や申し込みにつきましては、当研究所のお問い合わせメールによりお願いいたします。

開催日時:2021年 8月28日(土)10:00~11:45
開催場所:益田市市民センター第103会議室(益田市元町)
募集人員:10名
募集方法:事前申し込み。定員になり次第締め切りとします。

参加費:500円(会場使用料、資料代)
携行品:施設運用をされる予定の方は避難所・避難場所予定施設の各部屋の寸法のわかる見取り図をご持参ください。
    
開催内容:1.避難所・避難場所の違い
     2.避難所を作るための下準備(個人編・施設編)
     3.実際に運用してみよう(HUG体験)

講 師:石西防災研究所・伊藤(防災士)

快適性と携行性

非常用持ち出し袋は作ったら一回背負って避難所まで歩いてみるといろんなことがわかる。

 ある程度大きな災害になってくると、避難先で過ごす時間が非常に長くなってきますから、なるべく快適な環境を作り上げて、少しでも心身にかかるストレスや負担を減らす必要があります。
 ただ、避難先まで持って移動することを考えると、できる限り軽量で小さくなっているほど持ち歩きがしやすくて助かります。でも、軽量で小さいものは使いにくいですし、それなりに使い勝手のいいものはお値段も高いです。
 非常用持ち出し袋はこの狭間を悩みながら作り上げていくことになります。
 普段から旅行や登山などをしている人であれば、それなりに荷物を小さくする技術を持っていると思いますが、そうでない人は、考えているものを一度使ってみるといいと思います。
 具体的には、非常用持ち出し袋の中の生活アイテムはキャンプ場などで借りることができますのから、そういったところで一度借りてみて試してみてください。
 また、何を重視するのかを考えて、一点豪華主義で準備する方法もあります。
 例えば、寝るための装備として考えてみます。
 必要なのは、とりあえず敷き布団と掛け布団と枕。
 敷き布団と枕についてはエアマットと旅行用空気枕を使い、掛け布団を封筒型寝袋にするとかなり快適な寝床ができあがります。
 これに耳栓やアイマスクを準備しておくと、ある程度快眠が確保できるのではないでしょうか。
 また、食事が重要だという人は、カセットコンロと鍋、それに缶詰などのアイテムを充実させておくと快適に過ごすことができます。
 カセットコンロはさまざまな種類があって、大きいものから小さいもの、カセットガスやOD缶とガスの種類もいろいろとあります。
 あなたが避難先でどれくらい普段と変わらない食事を作るかで、そのサイズや内容を変化させればいいと考えます。
 最近では百円均一でさまざまな道具が揃いますが、実際に使ってみると、使い心地が微妙なものもありますので、買ったらとりあえず使ってみて、あなたの生活にあっているかどうかを考えてみてください。
 もし合わないようであれば、合うものをいろいろと探してみることを勧めます。
 最後に、案外と見落とされがちなのがコップ。
 水は大きなペットボトルや給水袋で支給されますので、そのままで飲むことはかなり難しいですからマイカップは忘れないようにしたいですね。
 せっかく準備するのなら、壊れにくくて使いやすいものを探してみても楽しいのではないでしょうか。

土木施設はなんのためにあるのか

 水害や土砂災害を防ぐため、ダムや堰堤、法面施工や落石防止柵など、災害が多い日本ではさまざまな土木施設が作られています。
 これらの土木施設、確かにその地域に住む人達の安全を確保するために作られているのですが、施設があるから安全というわけではないことを、あなたは知っていますか。
 確かに、これらの土木施設があるのとないのでは地域が被災する確率は格段に違います。
 ただ、どんな施設が作られていてもそれを超える災害は起きる可能性がありますし、適正な維持管理ができなければ役には立ちません。
 こういった土木施設の目的はただ一つ。地域に住んでいる人達が安全な場所に逃げる時間を稼ぐためにあるのです。
 土木施設があって何事も起きなかったのは、災害時にこれらの土木施設が目的を果たした結果として、家や道路などが被災していないのに過ぎないということを知っておいてください。
 危険な場所は、何をどのように手当てしても危険度が完全になくなることはありません。あくまでも逃げるための時間稼ぎ、そのために作られているものであることを意識して、できる限り早めに安全な場所に避難する習慣をつけてほしいと思います。

住んでいる家の地震対策を考える

 災害対策のお話をするとき、地震とそれ以外で分けて話をすることが多いのですが、それには理由があります。
 それは「地震はいきなり来る」ことです。
 他の災害では、被害が発生するまでに何らかのはっきりとした予兆があって対応しやすいのですが、地震だけは予兆なしでいきなり大きいのが来ることがあります。
 そのため、地震だけは事前に備えておかないと、「起きたときには決着はついている」状態になります。
 というのは、地震で起きる最も大きな被害は家屋の倒壊で、これは地震とほぼ同時に発生するものだからです。
 地震が起きたときにどのように行動するのかを普段から意識しているのなら、揺れと同時に屋外へ飛び出して難を逃れることもできますが、そういった意識がなかったり、寝ているときなどに地震が起きたら家屋倒壊に巻き込まれてしまうでしょう。
 また、大規模地震の場合に倒壊家屋が多いと避難所が麻痺してしまって路上生活を余儀なくされてしまう場合もありそうです。
 そうならないためには、まず住んでいる建物が倒壊しないことが必要です。家具や機材の地震対策は、建物が倒壊しないという前提で行うものですから、建物が崩れてしまっては建物内の耐震化はあまり意味がないことになってしまいます。
 ただ、建物が地震に耐えうるかどうかは建物自体を点検してみないとわからないものです。
 そこで、建物の耐震診断を受けることをお勧めします。
 まず、お住まいの建物が地震に耐えうるかどうかを判断し、もし耐えられないということであればどこをどこまで耐震化するのかを決める作業が出てきます。
 いざというときにさまざまな対策をしていても、発災時に死んでしまっては準備した意味がありません。
 地震対策、その最初に建物の耐震診断を受けて対策をするところから始めましょう。

詳細は各市役所・役場の担当課までご確認ください。

地震に備えて木造住宅の耐震化をしましょう!(住宅の耐震化補助事業)(益田市建築家のウェブサイトへ移動します)

市町村の耐震診断・耐震改修制度(一般財団法人島根県建築住宅センターのウェブサイトへ移動します)

2021.6.11追記 益田市役所さんではブロック塀の撤去についても補助金を出す場合があるようです。市内で地震対策としてブロック塀の撤去をお考えの方は、一度相談してみてもよいと思います。

【活動報告】高津小学校防災クラブを開催しました

 昨年度に引き続き、益田市立高津小学校様からご依頼をいただけたので、今年も防災クラブを開催できました。
 クラブ活動は年度ごとに参加してくれる子どもさんが入れ替わるのですが、去年に引き続いてこのクラブを選んでくれた子ども達もいて、講師としてとてもうれしい限りです。
 そういった子達の期待に応えられるように頑張りたいと思っています。
 4月26日の第1回は、「災害ってなんだろう?」をテーマにいくつかの事例を取り上げて考えてみてもらいました。
 普段耳慣れないけれど、知っておきたい警報音や、地震や大雨の映像を見たり、台車に乗って横揺れ体験をしてみたりしてもらいました。

台車に机を乗せ、先生の合図で机の下に潜り込んで横揺れを体験してみる。身体を支えるのが意外と難しいことがわかる。

 警報音を聞いて身を守る行動を取ってもらうという演習では、警報音を聞いても全員が椅子に座ったままで「同調性バイアス」を見せてくれましたので、周囲を気にせず行動して欲しいというお話をすることができました。
 最後にはハザードマップを見てもらい、家に帰ってから自分の家にあるハザードマップで家や通学路の危険な場所を確認しておくのを宿題にしてみました。
 見なかったからと言って別にペナルティはないことは説明してありますが、帰ってから確認してくれているといいなと思います。
 確認してみたところ、今年度は頭を使うことよりも身体を使う方がいいという肉体派の子どもさん達なので、できるだけ身体を動かす災害対策体験を組んでみたいと考えています。
 参加してくれた子ども達、そして担当の先生に感謝します。

お水を持って歩こう

 災害が発生して断水が起きると、自動販売機やコンビニなどの店頭から真っ先に消えるのがお水です。
 特に都会地ではその傾向が強く、公共交通機関が止まったときなどは徒歩で帰宅する人達がこぞって買い込んで遅れると水分が何も手に入らなくなります。
 断水していなければ水道で水を汲むことができるのですが、水を汲むための容器がないとどうにもなりません。
 そして、水のペットボトル以上に水を汲んで運べる容器が手に入る確率は低いです。
 そこで、普段持ち歩くカバンにペットボトルや水筒を入れてお水を持って歩くようにしてはどうでしょうか。

ダイソーで見つけた300円のステンレスボトル。140ml入るので、ちょっとした持ち歩きに便利。重量もそんなになく、カバンの中でも水漏れしにくいので便利ではある。


 最近は持ち歩くのにも便利な少量のペットボトルやステンレスボトルも出ていて、これならカバンに入っていてもさほど邪魔にならないと思います。
 ステンレスボトルで水を持ち歩くのならば、普段使いの水筒にすれば、中の水が痛んだりすることなくいざというときの備えもできます。
 殆ど中身がなくなったときに被災したのであれば、身の安全の確保をしたら、すぐに水栓で水を汲めば水は確保できます。電気やガスよりも、水道が止まるのはずっと後になりますから、容器さえあれば水の確保はそんなに難しくないと思います。
 水は飲むこと以外にも、傷口の洗浄やタオルなどを濡らして身体を冷やすなど、さまざまな目的に使うことができ、いざというときに確実にあなたの命を守ってくれますから、特に外回りの多い人や非常時に長距離を歩かなければいけないような人は、是非水を持ち歩く習慣を持つといいと思います。
 いざというときに備えて、小さな安心感を準備しておいてくださいね。