携帯用トイレを考える

 最近はさまざまなところで携帯用トイレを見かけるようになり、百円均一ショップなどでも「男女兼用」な携帯用トイレを見かけるようになりました。
 これだけ見かけるところを見ると、いざというときに備えて準備している人も多いのかなと思いますが、使ったことのある人はどれくらいいるでしょうか?

携帯用トイレ各種。一番左は百円均一ショップのもので小専用。真ん中と右は大にも対応しているが、真ん中のものはバケツなどが必要。右はセットに段ボール製のミニ便器が入っているが、座ると壊れる。

 基本的なことですが、百円均一ショップなどで売られているコンパクトな携帯用トイレは「小用」です。「大きい方」の時には使えないので気をつけておいた方がよいと思います。
 さて、この携帯用トイレは排泄時には投入口の口を開いて中に排泄を行うわけですが、男性はともかく、女性はかなり使いにくいようです。
 一応「兼用」とされていて受け口が広く折り返せば安定するのではありますが、うまく投入口に排泄部分が当たらずに周りに飛び散ってしまったりすることも多いとか。

ペットボトルの飲み口に取り付けて使う尿受け用のジョウゴ。携帯型トイレの受け口に差し込むと安定して小用を足すことが可能

 「小」を受けるためのジョウゴなどを使うなど、ちょっとした工夫が必要な場合もあるようです。
 また、子どもの場合になるともっと大変です。普通にトイレでできる子でも、小さな投入口に注ぐのは勝手が違います。
 子ども達に任せると、中には一滴も入らずに周囲が大洪水ということも起こりますので、場合によってはトイレで用が足せるようになっても「おまる」を準備しておくことも有効ではないかと考えます。

 座るタイプのおまるなら、おしりが収まればある程度大きな子どもでも使うことができる。そして大小どちらでも可能なため、あるなら準備しておいてもよさそう。

  準備したらまずは使ってみること。防災用品の基本ではありますが、簡易トイレもさまざまなものがありますので、使ってみて自分や家族にあったものを用意しておいてくださいね。

雨の日に散歩してみよう

 天気がめまぐるしく動く季節ですが、自分が住んだり仕事をしたりしている場所の周りの様子は知っていますか?
 晴れの日や曇りの日にはよくお散歩したりすると思いますが、濡れない、寒くない格好をした上で、雨の日にも散歩してみてください。
 晴れの日と雨の日では、見慣れた景色であっても随分と異なる感じがするものです。
 特に激しい雨が降ったときには、知っている場所なのかと思うような感じになることもあります。
 低地の水のたまり方や排水の流れ方を知っているだけでも、いざというときに役に立ちます。
 また、避難時に用意してある雨具を実際に使ってみることも大切です。
 防災士や他の人が勧めた製品だからといって、それがあなたにもあっているとは限らないからです。
 傘やカッパやポンチョ、長靴や運動靴やウォーターシューズなど、何度か使ってみることで自分の好みもわかるようになります。
また、散歩先を避難先にしておくと、雨の時にはどんな風に見えるのかイメージがしやすくなります。

 危険の無い範囲で天気の悪いときの周りの様子も確認しておいてくださいね。

災害時にこれでは困る

 緊急時に避難をするにあたっては、避難先がきちんと決められていて使えるようになっていることが大切です。
 でも、出されている情報が矛盾している場合にはどうすればいいのでしょう?
 今回はそんな困った状態を一つ指摘してみたいと思います。

 しっかりした画像データを出したかったので、今回はかなり重めです。申し訳ありませんが根拠をはっきりさせたかったので、こんなことになりました。

 この写真は益田地区振興センターの前に掲示されている避難所の位置図です。
 気づかれた方がいらっしゃるかもしれませんが、赤線で強調している避難場所はすでに存在しないところです。

 ここに記載されている益田高等技術校も泉光寺も別な場所に移転していて、この地図どおりには避難できない状態です。

平成30年度益田市防災計画の中に避難所一覧から該当部分抜粋。

上記は平成30年度益田市防災計画の中の「避難所」の一覧です。
ここには益田小学校が「避難所」として書かれています。赤線部を見て欲しいのですが、片方では水害でも避難可、もう片方は避難不可となっています。

 益田小学校の前には「災害避難場所」の表示がされています。看板奥左手の建物が、恐らく避難所として使われることになる体育館です。

 しかしその体育館入り口には「避難先は益田地区振興センター」と記載された貼り紙が貼ってあります。
 そして、問い合わせ先として益田市役所の危機管理課の電話番号が書かれています。
 ちなみに、益田市防災計画の中の避難所の収容人員は益田小学校400人、益田地区振興センターは50人です。収容予定50人の施設にどうやってあと400人も入れるのかは正直「謎」です。

益田市役所が作成したハザードマップから該当部分を抜粋。

 でもって、益田市が提供しているハザードマップでは避難所として「益田小学校」も「益田地区振興センター」も表示されています。

 いったい何を信じたらいいのやら。
 地元の人さえ分かっていればいいということなのかもしれませんが、避難してくる人は地元の人ばかりとは限りません。
 何らかの問題が起こったのだろうと推測はしますが、平成30年度益田市防災計画は平成31年3月25日付けで公開されているので、それ以前から益田小学校に貼られている張り紙(少なくとも10月には貼ってあったのを確認しています)と矛盾する内容になっています。提供する情報はきちんと最新のものにし、矛盾が無い状態にしておかなければいけないと考えます。
 もっとも、あまり災害は起きないということで、ひょっとしたら益田市は本気度が低いのかもしれませんが・・・。

2019.11.07追記 少し前に益田市役所の方に確認したところ、防災計画は年度末にその年度の防災計画として作成しているそうで、おかしな点は気がついた年度末の益田市防災計画で修正するそうです。その都度直す方がいいのではないかと思うのですが年度中途での修正はされないそうなので、これらの資料を参考にされる方は充分に気をつけてください。

国産液体ミルクが発売されます・その2

 以前に江崎グリコさんから液体ミルクが紙パックで発売されるというご案内をしたところですが、明治さんからも液体ミルクが発売されました。
 こちらは缶入りで賞味期限は1年。内容量は240mlで、価格は215円(税別)。
 江崎グリコさんは賞味期限半年で内容量は125ml。価格は200円(税別)ですから、 一度開封して使い切りということを考えると、小さい乳児は江崎グリコさん、大きくなると明治さんの方が向いていることになります。
 どちらも別にほ乳瓶がいるので、災害時への備えとしては使い捨てのほ乳瓶の用意がいるような気がしますが、災害で無くても、ちょっとしたときに調製しなくても飲めるミルクがあるというのは非常に助かるなと感じます。
 現在、一部店舗での先行販売が開始されたとのこと。
 一般発売は4月になるとのことですが、慣れ親しんだ国産ミルクの中で選択肢が増えるのはいいことだと思います。
 詳しくは、リンク先をご覧ください。

非常食に「お麩」はいかが?

お麩にはいろんな種類がある。うちでよく買っているのはこの二種類。たまに山口の安平麩が混じる。

 食材として目にすることはあってもあまり使われることがない気がする「お麩」。
 でも、災害時の非常食として考えた場合、このお麩は非常に優秀なのです。
 今回はこのお麩について考えてみたいと思います。
 「お麩」にはさまざまな種類がありますが、そのいずれもさほど手間がかからずに保存できる食材です。
 砕いて水にふやかせば緊急用の離乳食に使えますし、そのままかじることも料理に入れてもおいしく食べられ、少量でもしっかりとお腹もふくれます。

上で紹介したお麩の原材料表示。日光と湿度に気をつければ長期保存が利く。

 値段も他の非常食に比べると格安ですし、原材料は小麦粉とグルテンくらいなので、アレルギーにさえ気をつければ非常に使い勝手のいい優秀な非常食だと思います。
 あまりに身近すぎてなかなか気にとまることのない食材かもしれませんが、日常の生活に取り入れて、いざというときにも使えるようにしておくといいですね。

「「お麩」ってなんだ?」という方、お麩のレシピを知りたい方は以下のサイトを参考にしてください。

協同組合 全国製麩工業会

お麩研究部

古の災害を知る研究

 日本では昔からさまざまなものが記録として残されていますが、自然災害についても直接被災した人や話を聞いた人が文献として記録を残しています。
 特に地震に関してはその周期の長さから、過去の文献を読み取っていつ頃どのような規模のものが起きていたのかを確認していくことで、現在の地震学とあわせてより精度の高い地震の予測ができるのではないかと考えられています。
 京都大学や東京大学が中心となって「古地震学」を研究しているそうですが、webを使って様々な人が共同で文献を読み解いていくプロジェクト「みんなで翻刻」が京都大学古地震研究会主催で実施され、災害に関する古文書が日々読み解かれているとのこと。
先日、東京大学地震研究所の古文書の一部の解読が完了したという記事も見つけました。
過去が紐解かれていくことで、今まで分からなかった、または知られなかった地震や災害のことがこれからわかってくるかもしれません。
翻訳支援ソフトも使えるようですので、興味のある方は是非一度「みんなで翻刻」プロジェクトのサイトを覗いてみてください。

 なお、「みんなで翻刻」に参加するには、FacebookやTwitterのアカウントが必要なのと、現時点ではパソコンからしか見られないそうですので、あらかじめお知らせしてきます。

 また、東京大学地震研究所図書室のホームページ内「著名地震別「地震資料」」「浜田地震」に関する資料を見つけましたので、併せてリンクを貼っておきます。興味のある方はこちらもご覧ください。

簡易型感震ブレーカーを付けてみる

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 地震後、電力会社さんは被災したエリアの電源供給を止めることになっています。
 そして一軒ずつ確認して電気を復旧するのですが、通電火災を起こさないように、発災時には電気のメインブレーカーを切っておくことが必要とされています。
 可能であるならば、感震ブレーカーは電気工事屋さんに上記のような感震機能を持ったブレーカーに交換してもらうのが一番いいと思いますが、家が古かったり、借家だったり、面倒くさかったりするとなかなかそうもいかないのが現状です。
我が家も古い借家で、感震ブレーカーに交換することはできませんでした。
そこで、簡易型の感震ブレーカーを取り付けてみることにしました。

手に入る感震ブレーカーでは一番構造が単純なもの。

 今回取り付けたのはこちらの感震ブレーカー。
 構造は単純で、メインブレーカーに重りに繋がる紐をくっつけて、地震で揺れたら重りが台座から落ち、その勢いでブレーカーを落とすというもの。

材料もシンプルです。

この輪を取り付けることで重りが落ちにくくなる。

 引き金となる玉は結構重いです。台座は、震度によって大きさが変わります。一番大きいと震度6強、真ん中が震度6弱、一番小さいのが震度5強で玉が落ちるような構造になっているそうです。

 まずは台座をまっすぐに貼り付けます。台座には水平計がついているので、真ん中に空気の○が来るように調整します。
この台座と、紐を誘導する環のついた誘導装置は両面テープでの貼り付けなので、一度貼り付けたら強度が安定するように一日放置します。

 次の日、ブレーカースイッチに引っかけるカバーに重りを結びつけ、台座に重りを乗せたら出来上がり。至って簡単です。
 さすがにメインブレーカーを試験で切ると問題が発生するので、まだ試験はしていませんが、うまく作動するといいなぁと思います。

 この商品は以下のお店で調達しました。

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災害遺構を訪ねて1・「58災害防災祈念碑」

 先日、震災伝承碑の地図上の記号が新設されたという記事を書いたわけですが、そこでちょっと考えたのは、果たしてこの石西地方にどれくらいの震災伝承碑があるのだろうかということです。

 そこで、どれくらいの数、どれくらいの災害があるのかはわかりませんが「災害を示す遺構」を探してみようと考えました。
 今回は、益田市本町にある市立益田小学校敷地内にある防災祈念碑です。

 この祈念碑は昭和58年7月20日から23日にかけて起きた島根県西部水害のうち、益田川の氾濫により発生した水害のものです。
 碑が置かれている益田小学校も水没し、その時の最高水位が石碑の横の物差しのような石に刻まれています。

 この碑は益田青年会議所が義援金により建立したという記事が書かれています。
 碑の手前には、旧益田市の地図と市内の被害状況が刻まれた石が置かれています。

被災したせいなのか、台座がかなり痛んでいる二宮尊徳像。説明文の石はその台座に後から貼り付けられた様子。

 この碑の横、益田川に向かって二宮尊徳像があるのですが、これも被災したらしく、台座にはそれを刻んだ石が置かれています。
 ちなみに、碑の右側には徳川夢声さんの碑もあったりしますが、今回は割愛します。
 この水害をきっかけにして、普段湛水しない水害対策に特化した益田川ダムが建造されました。
 場所は益田公民館の向かい、益田小学校の体育館の横です。通りに沿って置かれているので、また近くに行かれたときには思い出してください。

昭和58年島根県西部水害が分からない方のためにリンクを用意してきます。
興味がある方はこちらもご覧ください。

wikipedia「昭和58年7月豪雨」

昭和58年災害 – 島根県砂防課

「1983年7月梅雨前線による島根豪雨 災害現地調査報告 」、防災科学技術研究所)

防災アプリを入れてみる

 スマートフォン用の防災アプリというと有名なところでは「NHKニュース・防災」や「yahoo!防災速報」などがあります。
 地方ローカルでは「東京都防災アプリ」や「大阪市防災アプリ」などがありますが、津和野町と吉賀町についてもこのアプリがあることはご存じですか?
 2016年から運用されているそうですが、津和野町と吉賀町をエリアにしている「サンネットにちはら」さんのアプリの中にこの機能が組み込まれています。
 ここではAndroidで説明しますが、iPhoneにも対応アプリが用意されています。

 これが起動画面。初回時のみ津和野町か吉賀町かの確認があり、アプリが起動。その後は画面下の「地域選択」で切り替えることができます。

雨量と水位は島根県防災システムからデータをもらっている。

 防災情報をタップすると、さまざまな情報が見られるようになっています。
 「最新防災情報」では気象情報を中心とする災害関係の情報が、「定点カメラ」では道路や河川にある監視カメラからの映像を簡単に見ることができるようになっています。

カメラは道路と河川にわかれている

 「雨量一覧」や「水位一覧」は選択した町の河川や降雨のデータが、「避難所」では同じく選択した町が決めている各種避難場所のメニューが出てきて、行きたい避難所名をタップするとナビで誘導までしてくれるようになっています。

各町で指定されている避難所の種類が違うため、それにあわせた表示になっている。
避難所の一覧。ナビボタンをタップすると、GPSのスイッチが入っていれば現在位置からタップした避難所までの誘導を始めてくれる

また「消防・防災」では役場からの消防・防災関係に特化した情報が掲載されています。
 いざというときに使える情報が使いやすくわかりやすく作られていますので、該当する地域にお住まいの方でスマートフォンをお持ちであれば、ぜひ一度インストールして使ってみてください。

 Androidの人はGooglePlayから、iPhoneの人はAppStoreで「サンネットにちはら」と入力すると見つかります。
 ちなみに、益田市は調べた範囲ではこういったアプリの存在がわかりませんでしたので、国土地理院の避難所マップに頼るしかなさそうです。

医療トリアージの悩み

 先日、医療トリアージについてちょっと触れてみましたが、益田日赤に用事で出かけると「高津川だより」という益田日赤の広報誌が置いてありました。

 特集は「平成30年度院内災害対応訓練」ということで、手に取ってみてみました。

 平成30年12月16日に津和野町を中心とする震度6の活断層連動型地震を想定しているということなので弥栄断層が動いた場合のことだと思われますが、院内災害対策本部の立ち上げ、情報伝達訓練、トリアージの実施、負傷者搬送などを訓練されたようです。

 詳しくはリンク先の広報誌をご覧いただければと思いますが、写真から判断すると1階ロビーが応急救護所で玄関前にトリアージエリアが作られた感じですので、大規模災害発災時には通常の診療は全て中止し、完全な災害対応体制に入ることがわかります。
 発災時に診療を受けに来ている人たちをどうするのかなということが少し気になりました。
 この訓練の感想として、トリアージを行う人手が足りないというのが書かれています。今後、人手が足りない場合の訓練も行っていきたいと書かれていますが、トリアージを行う人手をどう確保するのかが問題となりそうです。

 ところで、大規模災害で行われる医療トリアージには、実は法的な根拠がないのだそうです。
 つまり、大規模災害時でも通常の医療行為と同じ扱いとなるため、医療行為を巡ってはさまざまな問題が起きそうです。
 例えば、トリアージは患者の状態を判断する作業ですが、これが医療行為と認定される可能性があり、医師法に抵触する可能性がありそうです。
 そういえば、東日本大震災で行われた石巻赤十字病院のトリアージを巡って現在裁判になっています
 この裁判の結果がどうなるのかが気になるところですが、少なくとも、大規模災害時における医療行為と責任の所在については法制化しておかないと、いざというときに医療関係者が手を出さなくなることも起き得ます。
 この問題に限らないのですが、非常時には通常時の理論が通用しないことをきちんと法的に整理しておく必要があると感じます。