大雨などで溝に溺れる理由の一考察

 水害の時、田や川の様子を見に行くといって出かけた方が水死体となって発見されることがあります。
 素人では無く、長年田を作ったり、川の様子を見てきた人が溺れてしまっていることが、正直なところ筆者には理解ができませんでした。
 離れて見ていれば落ちることなどはいはずなのに、いったいどうしてなんだろうと不思議に思っていたのですが、先日ふと流れの速い溝を覗いていてその原因がわかったような気がしました。
 試しに、その時の画像を見てみてください。

 この流れの速さを見ていると、なんとなく吸い込まれてしまいそうな気がします。
 ある程度距離を置き、足場を確保して動かない状態の筆者でさえそう感じるのですから、近くを移動したり、側溝をのぞき込んだ人が中に吸われても不思議ではないなと感じたのです。
 筆者だけの感覚なのかなと思い、その場にいた当所の研究員に側溝を覗いてもらったのですが、やっぱり吸い込まれそうな気になったと言っていました。
 何かの錯覚が引き起こしている現象だと思うのですが、こういったものに巻き込まれないように、見慣れた場所であっても意識して注意して、充分安全な距離を取って様子を確認するようにしないといけないのだと思いました。

スズメバチに気をつけよう

 スズメバチの被害が増える時期になってきました。
 ちょうど巣別れや捕食が盛んになる時期になってきますので、この時期はスズメバチに気をつける必要があります。
 今年はコロナ禍であまり人が山野を歩いていないこと、そして酷暑による昆虫の動きの活性化などで、普段なら巣をかけないような場所に巣がある可能性があります。
 今回はスズメバチについて考えてみたいと思います。

1.スズメバチの種類

 一口にスズメバチと言いますが、種類はいろいろとあります。
 どこででも見かけるものにはオオスズメバチ、キイロスズメバチ、クロスズメバチなどがいますが、国内には3属16種類のスズメバチが生息しています。
 最近外来種であるツマアカスズメバチが確認されて勢力範囲が広がっているようですが、これを加えると3属17種類となります。

2.スズメバチの営巣場所

三瓶自然館サヒメルに展示されているキイロスズメバチの巣。
近づくと羽音や警告音が出るようになっている

 軒下に立派な球形の巣ができることがありますが、そういった感じの巣をかけるのはコガタスズメバチやキイロスズメバチです。
 ヒメスズメバチやモンスズメバチは床下や天井裏、樹洞や時によっては空っぽの植木鉢の中などに作っていることもあります。
 オオスズメバチやクロスズメバチは土中に巣を作るため、気づかずにスズメバチの警戒線を超えてしまって襲われることが多いです。

3.スズメバチの避け方

オオスズメバチの標本。三瓶自然館サヒメルの展示物。

 スズメバチは確かにどう猛ではありますが、巣が近くに無い限りすぐに刺すことはありません。
 大きな羽音でびっくりしますが、基本的には移動中か偵察かという状態なので、慌てずに距離をとればそのうち離れていきます。
 いつまでも飛んでいるような場合には、近くに巣がある可能性が大なので、ゆっくりとその場から離れるようにしてください。
 また、聞き慣れないカチカチ音がするときにはスズメバチが威嚇している可能性があります。その場で止まって周囲を確認してみてください。
 彼らは黒い色に反応する習性がありますので、できるだけ白や明るい色の服を着ること、そして頭部などに防止をかぶるようにしてください。

4.もしも刺されたら

スズメバチに刺されたらすぐにその場から蜂が追ってこない場所まで避難してください。
刺された場所に送り込まれている蜂の毒は、同時に蜂を引き寄せる警戒フェロモンを出していますので、巣が近くにあった場合仲間が集まってきて二次三次被害が発生してしまいます。
安全が確保されたら、患部を確認します。もし針が残っているようであれば、直接手で触れずピンセットなどで取り除きます。
なにもないようなら、患部を流水で冷やします。蜂の毒は水溶性のため、流水で冷やすだけでも毒素を薄めることが期待できます。
できれば流水で患部を冷やしながら、指で患部をつまんで毒を絞りだします。ポイズンリムーバーなどを使うのもありですが、口で吸い出すことはしないでください。
その後、保冷剤などで患部を冷やしながら、できるだけ早く病院で診察を受けてください。
ハチ毒によるアナフィラキシーショックは1時間以内に発症しますので、発症する可能性のある人はできるかぎり早く病院へ行って処置をしてもらってください。

なお、ハチ毒は刺されてから10~15分程度で刺された部分が腫れてくるなどの症状が出始めます。
腫れ、痛み、かゆみ、水ぶくれなど、刺された人の体質によって出てくる症状も千差万別なので、応急処置が終わったら病院で処置をしてもらってくださいね。

溺れそうなときは浮いて待つ

両手両足を広げて背浮きすると、泳げない人でもなぜか浮く。でも練習していないと溺れてしまう。写真は去年当研究所で実施した着衣水泳体験での一コマ。

 まだまだ水の事故が多いようですが、少し前にはライフジャケットは必須であることを書きましたが、今回は溺れたときにどうやって助かるか、ということを考えてみたいと思います。

1.まずは慌てない

 溺れると、とにかく意識だけが助かろうと慌てますが身体がそれについてきません。
 まずは慌てないこと。これが実は一番難しいのですが、助かるのはそんなに難しいことではありません。
 溺れた人のうち、子どもは75%、大人で50%の人は助かっています。

2.なるべく早く背浮きの姿勢になる

 とにかく助かるためには浮いていることが絶対条件です。そして、鼻や口が水面上に出ていなければ呼吸ができなくて死んでしまいます。
 慌てずに背中を水底にしましょう。人間には肺という身体に備わった浮きがありますから、空気が入っていれば必ず浮きます。
 また、浮力を稼ぐために両手両足を広げます。頭を水の上に出すと鼻や口が沈んでしまいますので、頭は水に浸けておきます。

3.服は脱がない

 溺れたら速やかに服や靴を脱ぐ、ということを教わった人も多いと思いますが、状況が落ち着いて救助が望めない場合以外は服を脱ぐのは止めた方が無難です。
 身体にまとわりついてる服は浮力を持っていますので、身体が浮くのを助けてくれます。
 服や靴は濡れていて身体に貼り付いていますから、これを脱ぐとなったらかなりの体力と泳力が必要です。
 浮いているだけであれば大きな邪魔にはなりませんから、服や靴は身につけたままにしておきましょう。

4.足が流れに向くようにしておく

ちょっとした流れに巻かれたとき、足を怪我することが多いので、流れが速くなってきたら気持ちだけ足を上げておくようにしたい。揚げすぎると頭が水に沈むので注意!

 川や海の離岸流では水の流れがありますから、水の流れる方向に足をむけて流れるようにしてください。
 浮くときにはお尻を浮かせ、流れが急な場所では足を浮かせて流れることで、大きな怪我を防ぐことができます。

5.助けてもらえることを信じて待つ

 最後は、必ず助けてもらえることを信じて待ちましょう。見ている人がいれば必ず助けてもらえます。
 助けてもらえることを信じて、とにかく浮くことに注意を向け続けましょう。

 テトラポットや何かの下に潜ってしまわない限り、浮力を常に発生させてくれるライフジャケットは生命線です。
 ただ、ライフジャケットがもし無い状態で助かるためにはどうしたらいいのか。
 最近では着衣水泳を教えてくれる水泳教室や学校も増えてきました。
 残念ながら大人向けはまだまだ少ないのですが、水で溺れるのはこどもに限った話ではありません。
 今年はコロナ禍で、当研究所も含めてそういった水難事故対策の教室がされているところは少ないようですが、機会があれば積極的に受講していざというときに命を守る練習をしておいてくださいね。

参考資料
令和元年夏期における水難の概況(警察庁生活安全局生活安全企画課のPDFファイルが見られます)

水風呂で暑さをしのぐ

 どうしたことか、これだけ暑い夏なのに、夏には付き物の入道雲と夕立を今年はあまり見ていない気がします。夕立が一降り来ると一気に地表の温度が下がってくれるのですが、夕立が降らないので夜も暑いまま。かくして気温が上がっていくのではないかと疑ったりしています。

 こんな暑いときには水遊びをしたくなるものですが、今年はコロナ禍で海や川、プールと言った場所は結構閉鎖されているところが多いです。そして、子どもに水遊びさせてやろうと思っても、団地やマンション、アパートなどに住んでいると子ども用のビニールプールを出すことが結構難しかったりします。
 また、汗をかいたときはシャワーを浴びるというのが定番ですが、汗を引かせるということを考えると、シャワーだと一時のしのぎにしかなりません。すぐにもわっとした暑さに包み込まれてしまいます。
 そこで水風呂はいかがでしょうか。水風呂と言っても本当に冷たいお水からお風呂よりも少し冷たいくらいまで、水の温度はお好みにして、ゆっくりと入って身体に溜まった熱を水に抜くとかなり快適な状態になります。
 世の中忙しい方も多いですからそこまでじっくり水に入っていることは難しいかもしれませんが、やってみると身も心も妙にすっきりとします。
 水風呂から上がった後で残り水の温度を見て、思っていたよりも熱が溜まっていたことに驚くかもしれません。もし時間がとれるなら、お気に入りの本を持ってゆっくり入れば、ちょっとしたリゾート気分を味わえるかもしれません。
 暑いときには涼しく過ごす方法をいろいろと考える必要がありますが、水風呂が難しくても、足を冷水に浸すだけでも感じる暑さはずいぶんと変わります。

 子どもから見ると、いつものお風呂の冷たいバージョンですが、いつもお風呂では許してもらえないいろいろなことをやってみると、それだけでも目線が変わって喜んでくれるのでは無いかと思います。
 エアコンだけで無く、さまざまな方法で涼をとることができないか、いろいろと考えてみるのは大切なことだと思います。もう少し続きそうな暑い夏を、あなたはどんな風にして乗り越えていきますか。

水分の取り方

 先日、スポーツドリンクと経口補水液について違いを書かせていただいたところですが、ある方から「普通に水を飲んでも熱中症にはならないでしょう?」というご意見をいただきました。
 確かにそのとおりです。ただ、普通のお水でも飲み方によっては「水中毒」と言われる症状を引き起こすことがあり、暑い時期の水分摂取では少しだけ気をつけないといけないことがあるので、今回はそれを踏まえて、もう一度水分摂取の方法について考えてみたいと思います。

 汗をかいたときに何も水分を摂取しないと脱水症状を起こします。それにより体温調節機能が損なわれた結果熱中症になりますので、運動をしていようがじっとしていようが、汗をかくようであれば水分はしっかりと摂取する必要があります。
 脱水症状というのは、体の体液が不足して体の中の調整がうまくいかなくなる状態を指し、放っておくと命の危険があります。
 ただ、激しい運動や屋外の作業をしているので無い限り、普通の水をこまめに飲めば脱水症状を防ぐことが可能です。熱中症及びその前段となる脱水症状を防ぐために、しっかりと水を飲むようにしましょう。
 さて、最初のところで「水中毒」と言ってはいますが、別に水を飲んだら中毒症状が起きるというわけではありません。
 汗をかくと、汗に混じってナトリウムなどのミネラル分も体外へ出ていきます。この状態で水だけを補給し続けると血中に残っているナトリウム分がどんどん薄くなって、けいれんや意識障害といった症状が起きます。
 これを「水中毒」と言い、それを防ぐためにナトリウムなどのミネラル分が入っているスポーツドリンクや経口補水液が夏場は推奨されているのです。
 では、スポーツドリンクや経口補水液に頼らず、水だけでうまくやる方法はというと、これは「こまめに水分を適量取りましょう」と言い方になります。
 喉が渇く前にコップ1杯程度の常温の水をゆっくりと飲むこと。そして食事はきちんと摂取すること。
 「水中毒」は「失われた水分の急激な摂取+ナトリウム分の不足」で起きるわけですから、失われた水分を水で摂取する場合、もう一つの失われたナトリウム分をどこで補うのかということになりますが、これは食事を普通に摂取すれば充分カバーできます。
 減塩食などの場合には別ですが、基本的には日本人の食事は塩分が多めだと言われていますので、普通に食事ができていればナトリウム分の補充は充分に可能です。
 ちなみに激しい運動や炎天下での屋外作業では、汗による水分とナトリウム分の喪失が急激に起きるため、それを同時に短時間で体内に吸収摂取できる工夫がされているスポーツドリンクや経口補水液が推奨されているのです。
 普通に考えるとあまり起きそうにない水中毒ですが、例えば気づかない間に脱水症状を起こしてしまって意識がはっきりしない状態の時に「水を飲め」と言われて水を飲み続けた場合、若しくは炎天下にいた人がおいしいからといって冷たい水を一気に大量に飲んだりすると発生しますので、飲み方に気をつける必要があります。
 そういえば、夏の風物詩の一つ「スイカに少しの塩」や運動部でよく見た「麦茶に塩」は水分やナトリウムなどのミネラル分をしっかりと摂取することができ、よく考えられているのだなぁと調べているうちに感心したことを思い出しました。妙に見えても、きちんと理にかなったことをしているのですね。
 最後に、糖尿病などの糖質制限や減塩指導されている方は、水、スポーツドリンク、経口補水液の摂取方法に注意が必要な場合がありますので、いろいろと自分で考える前にかかりつけのお医者様に確認して脱水症状を起こさないような水分補給をしていただければと思います。

川で溺れたときの救助法

 暑いせいか、水の事故があちらこちらで起きています。
 川の事故の場合、最初に一人が溺れ、それを助けようとした人がさらに溺れるという悪循環が起きた結果、亡くなる人が増えてしまっている状況のようで、ちょっと困ったものだなと感じています。
 前にもちょっと触れましたが、水辺、特に川で遊ぶときにはライフジャケットは必須です。意識があってもなくても最低限の浮力があれば、最悪でも溺れて溺死という事態だけは避けることができます。
 では、溺れたらどうなるのかというと、よくドラマであるようなじたばたは滅多にできません。実体験上は身体が動かなくなって静かに溺れていきます。
 そこから意識が取り戻せれば、ばちゃばちゃと溺れているおなじみのシーンになるのではないかと思いますが、もしも溺れている人を救助しようとするのであれば、間違っても溺れてバシャバシャしている人には近づいてはいけません。
 バシャバシャと溺れている人は溺れまいと必死ですから、救助者に抱きつくこともかなりの確率で発生します。そうすると、いくら泳ぎの得意な人でも身体の自由を奪われて一緒に溺れることになってしまいます。
 溺れている人を助けるためには、ある程度重さのある浮き輪や大きめのペットボトルに重し代わりの水をいれたものなどに紐をつけて、溺れている人めがけて投げてそれに捕まらせるようにします。
 溺れている人に救命具を掴ませるのはかなり困難な作業ですが、それでも近づいていって巻き込まれるよりもよほどマシです。
 もしも下流で受け止めるのであれば、ロープなどでしっかりと固定した状態で浮力を確保した救助者が溺れている人を救助します。このときの浮力は、二人以上つかまっていても絶対に沈まないだけのものが必要となります。
 いずれにしても、まずは溺れていることに気づくことが大切ですから、水遊びをするときには必ず監視役を用意し、下流側から全体を見渡せる位置を確保して監視するようにしてください。
 浅くても、下手すると簡単に溺れてしまいますので、安全を確認し、安全装備を確保した上で遊ぶようにしてくださいね。

どこに何があるかを知る

 被災時に痛切に感じるのは、どこにいったら何があるのかを実は知らないということです。
 例えば、家の中に飲める水がどれくらいあるのかを意識したことがあるでしょうか。
 保存している水はもちろんですが、例えばトイレの水洗タンクの中、あるいは太陽熱温水器があれば水だけで無くお湯が手に入ります。
 でも、意識していないと水があるのに水が無いと思い込んでしまうことになりかねません。
 食料でも同じです。冷蔵ものや冷凍ものは冷蔵庫が駄目になるとすぐに食べられなくなると思ってしまいますが、クーラーボックスに詰め替えれば、半日から一日程度は食べることが充分に可能です。
 冷蔵ものの上に冷凍物を乗せておけば冷気で冷蔵物の保温もできますし、冷凍物はそのうち自然解凍されて調理しやすくなります。
 家の中に何があるのかは案外と知らないものなので、災害対策の備蓄を確認する際には、どこに何があるのかをチェックしておくと慌てなくて済みます。
 同じように、自分がいる街のどこに何があるのかを知っておくと、いざというときに自分の命を守ることにも繋がります。
 避難するのに使える場所だったり、公衆電話や公衆トイレ、自動販売機、下水用マンホールなど、普段目にするものでも意識しなければ無いのと同じ。
 家や地域の防災マップ作りは危険な場所を確認するだけで無く、いろいろな資源を知る作業でもあります。
 しっかりと意識して、できれば所在図や地図を作っておいて、災害発生後、自分の生活を守るための武器として使いたいですね。

一長一短の履き物達

 災害時にどんな履き物を履いて避難するのかということについて考えたことがありますか。
 持っているイメージとしては、水害の時には長靴、それ以外は履き慣れた運動靴という感じになるのだと思いますが、実際のところは発生する災害によって最適な履き物が異なります。
 例えば、水害の時には水が溢れていない時期に避難するのであれば長靴で正解なのですが、水が溢れているまたは水の中を歩くときには長靴は向きません。
というのも、長靴は水が中に染みこまない作られているため、中に水が入ったときにも水が抜けないという問題があります。
 溢れている水や水の中の避難をする場合には、かなりの確率で長靴の中に水が入ってきますので、そのまま歩き続けると長靴の中に溜まった水がおもりになって歩きにくくなることが起こります。
 もちろんサンダルは何があるかわからない水の中を歩くのには不向き。一番いいのはマリンシューズということになります。
 ただ、マリンシューズは素材が柔らかく、水中に何かとがったものが沈んでいたりしてそれを踏んづけると大けがをしてしまうことがあります。
 消去法で運動靴がバランスが一番いいのかなと思います。
 ただ、この運動靴も避難所での生活と言うことになると脱着が非常に面倒くさく感じ、サンダルがほしくなります。
 また、後片付けを始めると長靴の必要性を痛感すると思います。
 さまざまな靴があるので、それぞれの目的に応じて使い分けるようにしていただければと思いますが、一つだけ注意してほしいのが、マリンシューズのところでも触れましたが尖ったものの踏み抜きです。
 汚染されたもので怪我をすると、それがさまざまな病気の元になりますので踏み抜き防止の中敷きをしっかりと入れておいてください。

非常用行動食を選ぶ

よく見かける行動食。小腹が空いたときに食べるものというイメージで問題ない。

 普段持ち歩くカバンに災害発生時に備えて非常用の行動食を準備しておくといいと思います。
 非常用行動食というと、一般的にはスニッカーズのようなヌガーバー、カロリーメイトやSOYJOYのようなクッキータイプ、シリアルバーなどがよく挙げられるのですが、筆者としては羊羹を押したいところです。
 理由は、密封された羊羹の個包装は賞味期限が長いこと。そして折れず、溶けず、開封して水無しでも食べることができるからです。
 構成分は寒天、餡、そして砂糖で、疲れたり弱ったりしている内臓にも負担が少なく、それでいてしっかりとした熱量が確保できるだけのカロリーもあります。
 何よりも、カバンに放り込んでも少々のことではパッケージが破れず、破損が少ないと言うことが最大のメリットだと思います。
 もちろん人によっては羊羹が駄目な人もいると思います。
 そう言った方は取り扱いに注意してクッキータイプの行動食を持ち歩けばいいと思います。

夏場の気温で溶けたスニッカーズ。こうなると上手に食べられない。凍らせるとおいしく食べられるが、変形してしまうのが難点。

 ヌガーバーは取り扱いがしやすく一本ですごく満足感のあるありがたい行動食なのですが、夏場の暑さには非常に弱くチョコが溶け出してしまうので、持ち歩くなら夏以外の季節がいいと思います。
 また、ドリンクタイプの行動食もあるのですが、カロリーや栄養素には問題はないのですが、飲むだけなので「食べた」という心の満足感が得られないかもしれません。
 あと、行動食で気をつけないといけないことは、間違ってもカロリーオフやカロリー0のものを選ばないことです。
 非常時に栄養補給するために準備しているはずなのに、カロリーがとれないのでは意味がありません。
 例えばあめ玉をカバンに入れておくのも一つの方法なのですが、そういったときには糖分のしっかりはいっているものを選ぶことをお勧めします。
 ちなみに、これらの行動食を普段のおやつとして食べると、普通の生活をしている人だと確実に体重が増えますからご注意を。

安全と経費

 講習会などで安全の確保の話をすると、ほぼ必ずといって良いくらい「安全確保にかけるお金が無い」という話が出てきます。
 非常用持ち出し袋の話をすると、市販品は高いから買えないとか、どうせタンスの肥やしになるといったお返事が。
 耐震補強の話をすると、耐震診断や耐震補強にかけるお金がない。
 ではどうやって命を守るのだろうかと聞くと、「その時になって考える」とか「それまでには死んでいる」といった答えでがっかりします。
 安全はある程度まではお金で買うことができるものです。一度にお金をかけるのは大変でも、少しずつでも準備を進めていけばそれだけ生き残れる確率は上がります。
 例えば、非常用持ち出し袋の準備では、無理に市販品を買わなくても自分で少しずつ買い足していけば自分にぴったりのものができます。
 家の耐震補強は無理でも、寝室を一階から二階へ移すとか、寝室だけ耐震補強するとか、耐震ベッドを置くとか、少ない経費でできることはいろいろとあります。
 確かに、よいものを一度に揃えても、使わなければタンスの肥やしですし、使えなければ意味がありません。
 非常用持ち出し袋に必要とされるものは人によって異なります。
 防災用品はものによって値段もいろいろですから、まずはお試しの品物を準備し、実際にキャンプやピクニック、BBQなどで使ってみて、必要性を感じたら高性能なものを準備していけば失敗はないと思います。
 今は百円均一ショップでもさまざまな防災グッズが売られていますので、それらで試してみるのも楽しいと思います。
 高額なものよりも百円均一ショップのものが性能がよかったり、やっぱり百均かぁとがっかりしたり。そういったことを繰り返していく中で自分だけの装備が揃っていくのです。
 ちなみに、雨具だけはできるだけ透湿性の高いアウトドア用の機能を持ったものを準備すべきだと思っています。
 登山など長い時間着用しても快適に過ごせるように作り込まれていますので、暑さ寒さをしのぐウェアとしても快適に使うことができると思います。
 せっかくこの世に生まれた命です。災害なんかで死んでしまうのはもったいないと思います。いきなり全てを完璧にすることは無理でも、できる範囲で備え始めれば必ず役に立ちます。
 防災関係の予算を支出する優先度を少しだけ上げて、自分の命を守って欲しいなと思います。