溺れそうなときは浮いて待つ

両手両足を広げて背浮きすると、泳げない人でもなぜか浮く。でも練習していないと溺れてしまう。写真は去年当研究所で実施した着衣水泳体験での一コマ。

 まだまだ水の事故が多いようですが、少し前にはライフジャケットは必須であることを書きましたが、今回は溺れたときにどうやって助かるか、ということを考えてみたいと思います。

1.まずは慌てない

 溺れると、とにかく意識だけが助かろうと慌てますが身体がそれについてきません。
 まずは慌てないこと。これが実は一番難しいのですが、助かるのはそんなに難しいことではありません。
 溺れた人のうち、子どもは75%、大人で50%の人は助かっています。

2.なるべく早く背浮きの姿勢になる

 とにかく助かるためには浮いていることが絶対条件です。そして、鼻や口が水面上に出ていなければ呼吸ができなくて死んでしまいます。
 慌てずに背中を水底にしましょう。人間には肺という身体に備わった浮きがありますから、空気が入っていれば必ず浮きます。
 また、浮力を稼ぐために両手両足を広げます。頭を水の上に出すと鼻や口が沈んでしまいますので、頭は水に浸けておきます。

3.服は脱がない

 溺れたら速やかに服や靴を脱ぐ、ということを教わった人も多いと思いますが、状況が落ち着いて救助が望めない場合以外は服を脱ぐのは止めた方が無難です。
 身体にまとわりついてる服は浮力を持っていますので、身体が浮くのを助けてくれます。
 服や靴は濡れていて身体に貼り付いていますから、これを脱ぐとなったらかなりの体力と泳力が必要です。
 浮いているだけであれば大きな邪魔にはなりませんから、服や靴は身につけたままにしておきましょう。

4.足が流れに向くようにしておく

ちょっとした流れに巻かれたとき、足を怪我することが多いので、流れが速くなってきたら気持ちだけ足を上げておくようにしたい。揚げすぎると頭が水に沈むので注意!

 川や海の離岸流では水の流れがありますから、水の流れる方向に足をむけて流れるようにしてください。
 浮くときにはお尻を浮かせ、流れが急な場所では足を浮かせて流れることで、大きな怪我を防ぐことができます。

5.助けてもらえることを信じて待つ

 最後は、必ず助けてもらえることを信じて待ちましょう。見ている人がいれば必ず助けてもらえます。
 助けてもらえることを信じて、とにかく浮くことに注意を向け続けましょう。

 テトラポットや何かの下に潜ってしまわない限り、浮力を常に発生させてくれるライフジャケットは生命線です。
 ただ、ライフジャケットがもし無い状態で助かるためにはどうしたらいいのか。
 最近では着衣水泳を教えてくれる水泳教室や学校も増えてきました。
 残念ながら大人向けはまだまだ少ないのですが、水で溺れるのはこどもに限った話ではありません。
 今年はコロナ禍で、当研究所も含めてそういった水難事故対策の教室がされているところは少ないようですが、機会があれば積極的に受講していざというときに命を守る練習をしておいてくださいね。

参考資料
令和元年夏期における水難の概況(警察庁生活安全局生活安全企画課のPDFファイルが見られます)