消火器は備えていますか

 災害時に限らず、日常生活でも火事を誘発するようなちょっとしたミスをすることがあります。
 実際、どのタイミングでどんな場所から出火するかはわかりません。
 消火用水バケツを用意している人もいるとは思いますが、てんぷら油などの油火災や漏電、ショートによる電気火災では水での消火は厳禁です。
 消化能力やさまざまな火災に対応しているところを考えても、消火器は必須のアイテムだと思っています。
 書いている筆者自身も、ある時立て続けにボヤを出し、スプレー缶タイプの携帯消火器がなかったら、家が丸焼けになっていたかもしれないという事態になったことがあります。
 消火器は粉末式でなくても構いません。スプレー缶の炭酸ガス式のものでも初動であればしっかりと消せます。
 気を付けるのは、できる限り普段火を使う場所に近いところに置くことと、冷静になることです。
 そして、火が見えなくなってもスプレー缶からガスが出なくなるまでは徹底的に火元に吹き付けること。
 どうせ中途半端に残っても使い道に困るので、完全に無くなるまで吹き付けてやりましょう。
 本式の消火器は少々火が強くてもしっかりと消すことができます。
 スプレー式の簡易消火器と、しっかりと消せる消火器。
 それぞれに準備して、いざというときに備えておきたいですね。

基本は自宅避難です

 災害対策の考え方の普及が進んだのか、それとも新型コロナウイルス感染症などで敬遠されているのか、在宅避難の人はかなり増えているのかなという気がします。
 自治体が設定している指定避難所の収容人数を確認すればわかるのですが、もともとその地域の人間をすべて収容できるような避難所はほとんど存在しません。
 避難しないといけない状況にある人が他に選択肢のない場合に自治体の設置する指定避難所に避難するというのが考え方の根底にあるからです。
 また、物理的に避難地域の全ての人を収容できるような施設がないということもあると思います。
 ではどんな前提で避難所に避難する人が決まるのかというと、以下の図のようになります。


 まずは自宅にいることができるのかどうかがスタート。
 自宅にいられない場合に、他の家族や知り合いなど、避難しなくてもいい人たちの家などに避難できないか、また、安全な場所にある宿泊施設などに避難できないかが選択肢に上がります。
 そして、どうにもならない場合に初めて指定避難所への避難が選択されるということになります。
 過去にはなんでもかんでも避難所に避難しろという乱暴な時代もありましたが、これだけ大規模災害が続くとそんなことも言っていられないということがわかってきたようです。
 避難指示が出ても、それはあなた特定の話ではなく、その地域全体の話です。
 まずはそれが自分に当てはまるのかどうか、そして当てはまっている場合にはどこへどうやって避難するのかについて、可能な限り事前にしっかりと決めておくことをお勧めします。

被災地支援を考えたら

一般の人はボランティアセンターが設置されてから支援に入るのが無難です。

 大きな災害が起きて甚大な被害が出ると、被災地の状況がどのようになっているのか、そして何か手伝いはできないかと考える方も多いと思います。
 被災地では、発災後しばらくの間はかなり情報が錯綜します。
 また、行政機関は状況の把握と生存者救助に全力を挙げている状態なので、行政機関へのお問い合わせは絶対にやめてください。
 支援ではなく、ものすごく邪魔になります。
 ではどのように情報を集めるのかというと、行政機関や報道による現在の状況の発表、または信頼できるウェブサイトからのものを確認するようにします。
 SNSでは、かなり情報が錯綜するので、客観的な状況把握は相当難しくなります。
では、ある程度落ち着いてからはどうするかというと、衣食住そして情報の全てを自己完結できる人は被災地応援に入ってもいいと思います。
 例えば災害支援のNGOやNPOなどはこのジャンルに入ります。被災地入りし、自ら情報を収集して対処をしていくのは、普通の人ではかなり難しいと思います。
 言い換えると、衣食住及び情報が自己完結できない人はこの時点ではまだ支援に出るのは早いということです。
 状況がさらに落ち着くと、社会福祉協議会などが被災地復旧ボランティアセンターを立ち上げることになります。
 ボランティアセンターが立ち上がったら、そこから被災地の状況や必要なボランティアについてはネット上で情報発信されますので、それを確認して判断をすることになります。
 状況が不明だからと言って、行政機関やボランティアセンターに直接電話することは絶対にやめましょう。
 ここまでくるとお気づきだと思いますが、被災地支援を行う上で状況確認の電話は絶対に避けてほしいです。電話での対応は一件に一人しか対応できない上、たいていの場合話が長くなります。現地対応に追われている職員の手をかけてまでさせるものではありません。
 結局、被災地支援の情報は、基本的にはインターネットで集めることが正解となります。ボランティアの申し込みもインターネットで行われることが殆どになってきていますので、そちらで申し込むことになります。
 ちなみに、SNSはボランティアに出かけた人が発信している情報を見るのには有効です。どのような状況で何が必要で、どのようなことをしたのかがわかれば、ある程度の目安がつけられると思います。
 賛否あるマスメディアからの情報も、被災地以外の人が被災地の状況を確認するのには有効ですので、それらも上手に使ってほしいと思います。ただ、マスメディアは全体的に「ひどい状況である」ということを強調しがちなので、その辺を割り引いて考えないといけないのが悩ましいところです。
 ともあれ、被災地に支援を行うためには支援に入るための情報収集は絶対に必要です。それを行ったうえで、被災地に行って支援をするのか、それとも寄付など現地以外で支援を行うのかについて判断してもらえればいいと思います。

避難所支援で必要なもの

 避難所ではさまざまな物資が欠乏することが多いのですが、これは時期によってどんどん変わっていくもので、情報が出されたときにはすでに充足している場合もかなりあります。
 SNSで支援要請を行うときには「いつ時点」という表記を入れるようにするということがだいぶ浸透してきてはいますが、正直なところ「もの」を送るという行為に対しては素直に喜べないなと思うところがあります。
 もちろん支援物資を抱えて自力で被災地に持ち込み、そして被災者に直接配布するのであれば、必要なところを探して回れますので、物資の配布という点だけなら、極端に大きな問題にはならないと思います。
 ただ、「〇〇が不足」という情報を元にしてその「〇〇」を宅配便などで送りつけるのは止めた方が無難です。
 これを行うと、そもそもいつ届くかわからない上に被災地までの物流に極端な負荷をかけることになり、届いた後は被災地での配布で人的・場所的資源を取られてしまいます。正直なところ、届く時期が「未定」や「1週間程度」となっている場合には送らないほうが無難です。
 善意から出た行為が現地の負荷になってしまっては何の意味もありませんので、それを考えた支援が必要だと思います。
 足りない物資を届けたいなら、自分で買い付けて自分で送る必要はなく、例えばアマゾンの「ほしいものリスト」などを選択して送ることは一つの手です。
 また、被災している行政機関や支援団体に現金を寄付するのも手です。
 例えばある避難所で水が足りないからと言って、被災地全体に水が足りないとは限りません。別の避難所では水が余っているのかもしれません。
 そういった調整をせずに水が避難所に送り付けられる頃には、水の余っていた避難所から水が届けられて充足していて、あとは届いた大量の水が倉庫や保管場所を圧迫するという状態になってしまいます。
 こういった事態を防ぐために現地で支援物資の調整を行っているのが被災している自治体や支援団体ですので、そういった人たちに支援金が届くと、かなり効果的にお金を使ってもらえます。
 避難所支援というとどうしても物資に目が行きがちなのですが、それを届けるための物流や保管場所がどうなっているのかについてもきちんと確認してほしいと思います。

【活動報告】研修会「調理師が教える簡単・おいしい非常食づくり」を開催しました。

研修会の一コマ。それぞれがそれぞれのご飯を作りました。

 去る2月23日に益田市駅前町のNICO HOUSEにて、調理師が教える簡単・おいしい非常食作りを開催しました。
 当日は調理師の秋田様をお迎えし、ポリ袋を使ったさまざまな調理を実際にやってみました。
 ごはん、パスタ、そして茹でパンを一つの鍋で作り、ちょっとした工夫で本当に美味しくいただくことができました。
 非常時にも、あらかじめできることを知っておくことで生活の質を下げずに済ませることができます。
 なかでも暖かい食事は気力を維持するために絶対必要なものですので、作り方をしっかりマスターしてもらえるとよいなと思います。
 ご参加いただきました皆様、そして講師の秋田様に厚くお礼申し上げます。

作っておきたいタイムライン

当研究所のマイタイムライン研修会の風景

 台風や大雨のようなある程度予測できるはずの災害で「逃げ遅れた」ということを割とよく聞きます。
 逃げるタイミングを失ってしまったということなのですが、地震のように突然起きるわけではない災害なのに、どうして逃げるタイミングを失ってしまうのか。
 答えは簡単で、逃げる判断をする時期をきちんと決めていなかったからです。
 逃げるかどうかの判断ができないのですから、逃げられるわけはないし、また逃げるタイミングを失ってしまうのも当然です。
 最近よく耳にする「マイタイムライン」ですが、これは災害時の自分の行動計画を作るもので、いざというときにはこれに従って行動すると、少なくとも逃げ遅れることは格段に減ってくると思います。
 悩むのは行動計画を作成するときで、本番では作成しておいた行動計画に従って何も考えずに行動するようにします。
 そうすることで、その時に判断に迷うという一番時間の無駄な使い方をしなくて済むことになるのです。
 実際にマイタイムラインを作ってみると、避難が必要な人、そうでない人でかなり判断することやそのタイミングが異なってきます。
 文字どおり「自分の」災害時行動計画を作るのだということが、研修会などで作成してみるとわかると思います。
 また、タイムラインに何を書こうかと悩んでしまうことも出てくると思いますので、誰がどんなことを書いているのかを調べてみるのも参考になると思います。
 マイタイムラインはあなたの逃げ遅れや準備不足をできる限り無くすために作成するものです。
 自分の命を守る、そして生き続けることができるような計画をしっかりと考えてみてくださいね。

古いおうちと家具の固定

 古いおうち、特に昭和56年以前に建てられた建物については耐震性が充分でないことから耐震診断と耐震補強は可能な限りやる必要があるものの一つです。
 ただ、こういったおうちにお住いの方は、多くはお年寄りだったりしますので、耐震診断や耐震補強はお金がかかったり面倒くさかったりで、あまり作業は進んでいないようです。
 では家具の固定を、と考えると、こういったおうちには古くからの家具がたくさんあって、そのうえそれ以外にもさまざまなものがあって、地震対策という視点からみると非常に危険な状態です。
 とはいえ、断捨離としてお片付けすると、作業後にはどこに何が入っているのかわからなくなって大騒ぎになりますし、うかつなこともできません。
 せめて寝室だけでも家具を撤去したいと思っても、長年慣れている場所と方向を変えることはかなり難しいみたいです。
 命を守ることは必須ですが、とはいえ生活環境を守ることも大切なことですので、そのまま家具の固定をするわけですが、やっぱり危険な状態には変わらず、非常に悩ましい状態になります。
 そうならないためには、引っ越した時の配置をしっかりと考えておく必要があるのかなと感じています。

ペットと人

キャリーケースに素直に入ってくれることが、屋外避難が必要な時の基本になります。

 避難や避難所において、ペットという存在は無視できないものになっています。
 ペットは家族の一員と考える飼い主と、動物と人は別と考える飼い主以外の人の思いが錯綜した結果、避難や避難所におけるペットの扱いというのが難しくなっているのではないかと思います。
 ペットがいるから避難しないという話になったり、ペットと人を同列で対応するように無茶振りしたり、ペットを飼っていない人からみると「ペット様」にしか見えない状態になり、相互理解ができない状態になっているような気がします。
 ただ、ペットも生きているわけであり、その命は守るべきものですから、できる限りにおいて対応を考える必要があります。
 現実的には、できる限りペットの飼い主は自宅から避難しなくてもすむようにしておいた方がペットも人も安心ですので、まずは自宅のあり方について考えておいた方がいいでしょう。
 そして、ペットが家族だという考え方は、ペットを飼っている人以外には納得してもらえないものだということを理解しておくべきです。
 そうすると、自宅が被災した時の避難先は、避難所よりもペットを飼っている知り合いやペットホテル、獣医などいった選択肢が出てきますから、そういった人たちに受け入れの確認をしたり、どのように世話をしてもらうのかについての確認をしておくといいでしょう。
 避難所に避難するのは最終手段と考えて、まずはそれ以外の選択肢を探してみることが重要になります。特にエキゾチックアニマルと呼ばれる犬、猫以外の生き物については犬猫以上に取り扱いが難しいですから、できる限り普段飼っている環境を維持できる方法、つまり自宅が被災しない方法を考えることが重要です。
 もちろん避難所に避難した時に備えて、犬や猫の場合にはキャリーケースなどに素直に入ることだったり、むやみに鳴かないといった日ごろのしつけはしっかりとしておく必要がありますが、そうならない手段も検討しておく必要があるということです。
 ペットも人も命という存在としては同じものです。
 避難というのは命を守ることと考えれば、ペットも人も命を守るためにはどうすればいいのかを考え、検討しておく必要があると思います。

避難する人の心構え

高いところへ避難するのを習慣づけておくと、少なくとも洪水や津波対策はできる。

防災訓練などでは、高齢者を始めとする要配慮者は自主防災組織などがお迎えに出かけて避難させることがよくあります。
ただ、毎回の訓練でそれを毎回やってしまうと、要配慮者の方は「迎えに来るまで待っていればいい」といった判断をしてしまい、津波などに対する避難が間に合わないことが発生します。
避難に支援がいる方々ですから、急いで避難させるためにはどうしてもそういった行動になってしまうのですが、緊急時に迎えが来ず、いつまでも自宅にいると危険な場合も想定しておく必要があります。
ご本人が判断に迷うような場合もありますので一概には言えないのですが、そういった場合には、ご近所の方が危険が迫っていることだけでも知らせるような仕掛けを作っておいた方がいいでしょう。
もっとも、危険が迫ってくることを知らせると、なし崩しにその人の避難支援を行うことになる場合が想定されますので、最終的には非常時に備えて自主防災組織だけでなく、普段地域に在住している人たちもそういった支援を行えるようにしておく必要があるかもしれませんね。
そして、避難訓練では災害発生のタイミングや避難行動開始をすべて主催者が説明してしまうこともよくあります。
時間内に終わらせようとするとどうしてもそうなってしまうのですが、本番では誰も避難開始など教えてくれませんから、何が起きたら避難を開始するのかについて「行動するための鍵」を自分の中で決めておくことが大切です。
言うまでもありませんが、自分の命を守るための行動は自分が主体的にとらなければ誰も助けてはくれません。
そういう意味では、要配慮者の方であってもできる範囲での行動はやってもらったほうが安心です。
訓練のための訓練ではなく、本番の状況に合わせた訓練も、慣れてくるとやってみたほうがよいですし、発生する災害の想定も変えてみる必要があります。
その避難所が、想定されるすべての災害に対して安全だとは言えないのです。
避難する人は、自分の命は自分で守るという心構えを持って、行動をしていきたいですね。

【活動報告】研修会「災害とお金の話」を開催しました。

 去る2月18日、益田市市民学習センターにおいてワンコイン研修会「災害とお金の話」を開催しました。
 当日は2名の参加者の方が、災害時に発生する生活再建のお金についての行政からの支援の条件や、災害時に適用できるような保険の見方などについて一緒に学習しました。
 災害が多発しているためか、災害後に行政や保険からだされる各種支援金や見舞金、保険金は条件がいろいろと変わってきています。
 この研修会は毎回情報がアップデートされてきているので、自分の備えについて考えておきたい方や、どのような条件でどのような支援金が手続きできるのかについて知りたい方は、次回ぜひご参加ください。
 今回参加していただきました方に、厚くお礼申し上げます。