仮設トイレで気を付けること

仮設トイレでもパーテーションで区切ることで入り口を別にすることができる。

 大きな避難所になると、トイレ問題を解決するのに仮設トイレが設営されることがありますが、その時に意識しないといけないことの一つに、男性と女性の入り口を分けるというものがあります。
 日本の公共施設のトイレでは、多くの場合出入口が男女同じ、またはすぐ近くにあることが多く、人目がない場合には平時でも危険な状況になることがあります。
 災害後に仮設トイレが必要な状況というのは、非常にストレスが発生しやすい環境にあると考えて間違いありませんので、性的なトラブルの発生を予防する意味でも、トイレは男女完全に引き離すことが必要です。
 そのほかにも、トイレの周囲は常に明るくしておくことや、人目のある場所に作るなどいろいろとあるのですが、事前にしっかりと検討しておかないといざというときにはそこまで意識が向かないものです。
 一般的に避難所において、寝床とトイレは、さまざまなトラブルが発生しやすいところですので、トラブル防止のためにも平時にしっかりとレイアウトを検討しておくことをお勧めします。

二種類のポリ袋

耐熱性がある場合には、パッケージのどこかに上限温度の表示がされている場合が殆ど。されていないものは、湯せんには使えないと思ったほうが無難。

非常時に一つの道具にさまざまな機能を持たせておくのは大切なことだと思います。
なかでも、ポリ袋は非常にいろいろなことに使えるので準備をしておくことをお勧めします。
調理や洗濯、保存、臭いの出るものの処分、空気で膨らませれば断熱材など、あっても困るものではありませんので、ある程度数を準備しておくことが重要です。
ただ、準備する際に気を付けてほしいことがいくつかあります。
一つは、耐熱温度を確認しておくこと。
現在市販されているポリ袋は低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンに分かれています。
低密度ポリエチレンの場合、耐熱温度は80度程度であり、湯せんに使うことができません。また、酸素を透過することから酸化しやすいものの長期保存にも向きません。
高密度ポリエチレンは耐熱温度が100度以上あるため湯せんに使えますし、酸素の透過も少ないことからある程度の保存にも使うことができます。
どちらも低温の耐性はありますので、袋の温度表示が低温のみの場合には、低密度ポリエチレンと考えたほうが無難です。
高密度ポリエチレンの場合には、耐熱温度の表示があることが多いですので、そういった商品を選ぶといいと思います。
高密度ポリエチレンはその特性上若干白みがかっていて完全な透明ではありません。また、触ったときにカサカサ音がしますので、ちょっと音が気になる人がいるかもしれません。
ちなみに、食品保存などでよく出てくるジップロックですが、袋のものは低密度ポリエチレンのため湯せんには向きません。
ポリ袋の特性を知ったうえで、非常用持ち出し袋などに常備するようにしたいですね。

防災の優先度

 災害対策について尋ねると、ほとんどの人が対策は必要といいます。
 では、自分が対策できているかを尋ねると、ほとんどの人ができていないと答えます。必要だけど対策はしていない、なんとも不思議な感じがしますが、「重要だが緊急性が低い」と考えられていると思えば、この結果はなるほどなと思います。
 重要で緊急性が高いものはすぐに対策をすると思います。例えば、直撃しそうな台風や確実に大雨になる場合には重要で緊急性が高くなるので災害対策を行う人はたくさん出ると思います。
 でも、例えば地震対策となると、重要ではあるが緊急性があるのかという疑問が出てくるようです。また、自分が生きている間には地震は起きないと思っている人もいるかもしれません。
 実際のところ、地震は一度対策するとそれ以上の手はかからないのですが、手間とお金がかかるのがわかっているために手をつけていないのかなと思います。
 いろいろなところでお話してみると、ゼロからプラスにすることには熱心でも、マイナスからゼロにするという作業は嫌な人が多いようで、それも対策が進まない原因なのかもしれません。
 やらないといけないことはわかっているが、日々の生活の方が忙しい。それが多くの人の本音だと思います。
 でも、大きな災害が起きると日常生活は吹っ飛んでしまいます。吹っ飛んだ日常生活をいち早く取り戻せるのは、きちんとした対策が必要となります。
 常に防災の緊急度を上げておく必要性はないと思いますが、時々防災の緊急度を上げ、その時にさまざまな対策をしておいてほしいと思います。

チョコとようかん

 甘くて高カロリーで持ち歩きが容易ということで、非常食などに準備されていることの多いチョコレートとようかん。
 お好みにより準備すればいいと思いますが、チョコレートは糖分と脂分、ようかんは糖分の補給が可能です。
 体調が万全であれば高カロリーのチョコレートがエネルギー補給にはいいと思いますが、低体温になっていたり体調が弱っている場合には、チョコレートは体に負荷をかけてしまいますので注意が必要です。
 ようかんは糖質で構成されているので体への負荷はチョコレートに比べると軽いです。熱にも強く、ある程度の期間保存することも可能なことを考えれば、非常食として準備するのであればようかんの方が向いている気がします。
 ただ、ようかんは苦手という方もいらっしゃいますし、どうかするとお茶が欲しくなったりしますので、準備をするときにはようかん単品で自分がそれを食べられるかどうかを試しておく必要があるでしょう。
 練りようかんよりも水ようかんの方が単品での接種はしやすいと思いますが、保存期間は水ようかんの方がかなり短いので悩ましいところではあります。
 ともあれ、非常時に手軽にエネルギーを摂取することのできるチョコレートやようかん。非常食の一つとして準備しておくといいと思います。

地震対策で一つだけするとしたら

家具を固定しないと、家具が倒れるだけでなく、中のものが散らかって相当危険になる。

地震への備えは結構悩む人が多いようです。
実際、いつ来るのか来ないのかさえわからない、でも絶対に起きることはわかっている災害なので、備えておけばいいのですが、備えが無駄になるかもと考えると備える必要性を疑問視してしまうという難しい災害扱い。
台風や大雨だと、最近の予報精度なら最悪でも数時間前には被害が予測できますが、地震はそういうわけにはいきません。
いきなり起きて、起きた時には勝負がついているのがこの地震という災害ですので、準備はしておく必要があります。
どんな準備をすればいいのかというと、とにかく自宅が倒壊しないこと、そして建物の中の家具などが倒れないようにしておくことです。
これだけであれば、絶対に必要で一度やればいい作業になりますので、とりあえずこの対策だけをしておくようにしてください。
ただ、倒壊を防ぐ耐震化や家具の固定ではお金がかかります。
お金をかけたくないのであれば、寝る場所だけでも補強をしておきましょう。
最近では丈夫で潰れない天蓋付きのベッドなどもありますので、そういったものを用意しておくのも手だと思います。
また、普段いる部屋から背の高い家具をすべて撤去することも有効です。
どうしても家具の撤去が嫌なら、家具と天井の間に段ボール箱をしっかりと詰め込むと、家具が転倒しにくくはなります。
地震のあとには、避難所は収容人員をはるかに超える避難者でいっぱいになります。衛生環境や治安が悪い避難所で起きる騒動を考えれば、自宅を災害後もそのまま使えるようにしておくことがどれくらい大事なのかイメージがつくのではないでしょうか。
しっかりと備えるようにしたいですね。

72時間と備蓄のこと

 災害時の各家庭の備蓄について、最低3日間準備しろという話は聞いたことがあると思います。
 南海トラフ巨大地震などの話が注目されてからは7日間に延ばされていますが、この最低3日間というのにはきちんとした意味があります。
 3日間とは72時間。現在トルコ・シリア国境付近で起きた大きな地震でも取り上げられていますが、人命の救命率が極端に低下するのがこの72時間なのだそうで、発災から72時間は行政の全ての機能は人命救助に振り向けられます。
 国際緊急援助隊が被害甚大とわかってすぐに出発したのは、とにかく早く現地入りして一人でも多くの人を救助するためで、生き残った人に必要となるテントや各種資機材はそのあと準備が整い次第送られることになっています。
 つまり、どこの国であれ、怪我無く生き残れた人はとりあえず置いておいて、怪我をした人たちや生き埋めになった人たちを救助することに全力が注がれることになるのです。
 怪我無く生き残れた人たちへの対応は、けが人の処置が終わって、恐らく生存者はもう期待できないという状況になって初めて本格化します。
 ですので、人命救助に行政の機能が注がれている間は怪我無く生き残れた人は自力でなんとかするしかありません。
 そういった理由から、最低3日間自助でなんとかできるだけのものを準備しておく必要があるのです。
 とはいえ、実際に大災害が起きると3日ではどうにもならない場合も出てくるでしょう。そのため、現在内閣府防災では7日間程度の備蓄をするように国民に呼びかけているのです。
 たすかった人たちの命を守ることも重要ですが、そのまま放置すれば失われる命をなんとか助けなければなりません。
 あなたが準備している非常用持ち出し袋や備蓄品で、最低3日間の生活維持ができますか。また、もしものときにはどういった行動をとりますか。
 トルコ・シリア国境での地震の状況は毎日マスコミ報道がされていますので、もしこのような事態が自分の周りで起きたら自分がどうするのかをしっかりと考えておきたいですね。

【終了しました】「やってみよう防災キャンプ・防災キャンプ春の巻」を開催します

 来る3月25日から26日にかけて、益田市の北仙道公民館で「やってみよう防災キャンプ」と題した小学生向けの防災キャンプを開催します。
 対象は小学校3年生以上。当日は体育館を避難所に見立てて生活空間や食事作り、心肺蘇生や搬送法、防災カードゲーム、炊き出し訓練など、さまざまな体験をしてみます。
 年度末で忙しい方も多いと思いますが、興味のある方のご参加をお待ちしています。
 また、当日はお手伝いいただけるボランティアスタッフも募集しています。
 併せて、よろしくお願いいたします。

【活動報告】高津小学校防災クラブを開催しました

 去る2023年2月8日、2022年度最後となる高津小学校の防災クラブを開催しました。
 最終回は参加してくれた子供たちに何をやりたいか聞き、出てきた「お洗濯」をやってみることにしました。
 普段使っている石鹸と、炭酸ソーダを準備して汚れの落ちや必要な水の量などを確認しようということで作業を開始。

洗濯板も用意してみたが、結局使わなかった。

 ただ、最初のこちらの指示が悪くて洗濯用の袋にお水を一杯入れ、その結果袋が破けてしまうというアクシデントが多発。
 何とか洗濯はできたものの、結局汚れの落ちの違いや必要な水の量などはよくわからないまま終了となりました。
 実施する側も参加してくれる側も、毎回試行錯誤のこの防災クラブ。
 一年間に渡って参加してくれた子供たち、クラブを支えてくださった担当の先生、そしてお手伝いしてくれた当研究所のスタッフの皆様に厚くお礼申し上げます。

体の熱を逃がさない

 寒くなってくるとさまざまな暖房器具を使って暖をとろうとします。
 ただ、電気を始めとする光熱費がかなりの勢いで上昇していて、思ったように暖房を使えていない方もいると思います。
 身体を暖めるという点だけで考えると、外部を暖めるよりも体の内部の熱を逃がさないようにする方が手っ取り早いかもしれません。
 やり方は簡単で、生地の薄い服を重ね着するだけ。
 薄着の重ね着が温かい理由は、服の間に空気の層ができ、その空気の層が体の熱を外部に逃がさないから。
 厚いダウンなどの上着を着こむよりも動きやすくて暖かいのではないかと思います。
 もしダウン素材のベストを着るのなら、服の上ではなく内側に着るほうが温かさの効果が高くなります。

下着と上着の間にダウンベストを着るとかなり温かい。

 ただ、身体が温まると汗をかいてしまうので、肌着は発汗素材でできていることが理想です。多くの人が使うようになってきた発熱素材の下着でも、発汗機能を持っているものと持っていないものがありますので、買うときには確認したほうがいいと思います。
 上着は、ウインドブレーカーなど風を通さないものを使うとさらに暖かくなります。
 また、半纏やドテラなどを着るのも、内部の厚い綿が外部の空気を遮断してくれるのでお勧めです。
 身体は一度冷やしてしまうと温めるのには非常に苦労します。
 身体を冷やさないこと、つまり体の熱を逃がさない方法を考えてみるといいと思います。

地震が起きたらまずどうする?

机の下でダンゴムシ
地震の際の定番「ダンゴムシのポーズ」。訓練しないととっさにはできないポーズでもある。

 地震が起きたらまず何をするのかについては、年とともに変わってきていることはご存じですか。
 ちょっと前でしたら「地震だ、火を消せ!」でしたが、炊飯での直火がほぼ無くなり、ガスや電気の制御装置に揺れを感じると供給を止める感震装置が配備されてきていることから、火を消すことは最優先ではなくなりました。
 では、今は何が最優先なのかというと「自分の命を守るための行動をとる」ことです。具体的に言うと、怪我しそうなものがあるところから安全なところに逃げること、安全なところなら、転倒などで怪我しないようになるべく低い姿勢になることです。
もっと書くと、頭を守ることが最重要になります。
 頭は案外と重たいもので、人間の場合は成人で4~6kg程度の重さがあります。
 重心が高いほど不安定になりますので、揺れに備えるのであればできるだけ低い姿勢をとることが重要になるのです。
 また、「頭を守ること=意識を保つこと」なので、仮にけがをしたとしても、意識がはっきりしていれば対処することは可能です。
 逆に五体満足でも頭を怪我して意識がなくなると、その後に起きるかもしれない二次災害への対応ができなくなります。
 ですから、「安全確保、重心下げて」といった標語になるのかなという気がしています。
 ちなみに、地震の発生を教えてくれる緊急地震速報ですが、スマートフォンなどから警報音がなると、ほとんどの人が何が起きたのか画面で確認するのではないでしょうか。でも、本当は自分の安全確保をし、転倒しない姿勢を確保してから画面を確認したほうが安全です。
 筆者自身もできるかどうかは自信がありませんが、そういった訓練をすることも大切なのではないかと思っています。