災害支援は人が多いところから始まる

 災害後、さまざまな支援が行われますが、その支援体制は被災地全体に均等ではありません。
 支援の効率上、どうしても被災者が多く被害状況のひどい部分から着手されることになり、被災者の少ない地域は後回しになってしまいます。
 特に道路の開削や物資の供給などはどうしても遅れてしまうので、そういった地域の人は一度物資が確実に届く場所の避難所に避難し、開削や物資補給の体制が整ってから改めて住んでいる地域に戻ることになってしまいます。
 そのため、その地域で農畜水産をやっている場合には世話ができなくなって収入が絶たれてしまうという事態になりますので、被災したときにどのようにするのかについてはあらかじめ考えておく必要があります。
 また、救助の手も遅れることが多々あるので、生活備蓄のうち、買わないといけないものについては少し多めに準備しておいたほうが無難です。
 復旧・復興支援についても同様で、ボランティアなどの支援も遅れたり、または来てくれなかったりします。
 できる限り自分で復旧するか、緊急性を要する部分に限定してお手伝いをお願いしたり、地縁、血縁、SNSなどを使ったボランティアのお願いなど、ボランティアが来るのを座して待つのではなく、来てもらえるようにいろいろと働きかける方法を考えておいた方がいいでしょう。
 どちらにしても、災害支援は人が多くて目立つところから始まります。
 そのことを頭に置いた上で、自分の暮らしを復旧・復興するためのBCPを検討するようにしてください。

熱中症対策をしておこう

経口補水液やスポーツドリンクは熱中症対策に重要。でも、飲み過ぎ注意!

 暑くなったり寒くなったり忙しい天気ですが、どうやらだんだん暑くなってきているのは確かなようです。
 寒かったものが徐々に暑くなっていくのであれば、身体が馴化していくので大きな問題にはならないのですが、寒かったところがいきなり暑くなると、身体がついていけなくなります。
 それだけならいいのですが、温度変化に適応できないと熱中症になる危険性があるので注意することが必要です。
 炎天下に日差しの下に長い時間いないことや、水分補給、休憩をきちんととること、そして何よりも無理しないことが大切になってきます。
 ある程度馴化すると、身体が楽になるのですが、それまでは行動するときには時間に余裕を持たせることや睡眠不足を防ぐこと、飲料水を常に持ち歩くこと、そして万が一に備えて経口補水液や冷却剤を用意することを忘れないようにしたいものです。
 体温調整がきかなくなって身体がオーバーヒートしてしまうのが熱中症です。事前の予想である熱中症警戒アラートも以前にご紹介していますので、そちらも参考にして、できる限りの備えを持っておいてくださいね。

線上降水帯に気をつけよう

 ここ最近の水害の傾向として、短時間にピンポイントで大量の雨が降って起きるというのがあります。
 これは線上降水帯が作られることによって特定の地域に次々に大雨をもたらす雲がやってきて雨を降らしていくことで発生しているもので、なかなか予測しづらく被害が大きくなりやすい現象です。
 この線上降水帯は南からの暖かい湿った空気と北からの冷たい空気がぶつかることで空気中の水蒸気が一気に雨となって降り注ぐのですが、雨雲レーダーや天気図を見ると、ちょうどその部分に三角形の形ができているのがわかります。
 雨がひどく降る場合には、この三角形が真っ赤に表示されることから、まるでにんじんのようだということで、にんじん雲と呼ばれることもありますが、このにんじん雲が天気図上や雨雲レーダーで自分の住んでいる地域の上空に確認できたら、急傾斜地や土砂災害警戒区域にお住まいの方はできるだけ早めの避難をお勧めします。
 できるだけ早めに避難して、身の安全を確保すること。
 これから雨のシーズンに入り、場合によっては線上降水帯も発生することがあると思います。
 雨が気になったら、雨雲レーダーや気象衛星の写真などを確認して、なるべく安全を確保するようにしてくださいね。

災害対策は必要なものに気づくかどうか

 災害対策というとさまざまな防災用品を準備して備えておくというイメージが強いかもしれません。
 ですが、殆どのおうちでそれなりの備えができていることにお気づきでしょうか。
 例えば、買い物用のバックやお出かけ用のカバンや袋がないおうちはまずないと思います。
 それから、食料品がまったくないおうちも殆どないと思います。
 ましてや、地方で周囲に商店がないような場所だと、まず間違いなく数日間過ごせるだけの食料備蓄はあると考えて良いでしょう。一人暮らしでも、インスタントラーメンくらいなら一袋くらいはあるのではないでしょうか。
 飲み水も、日本の場合は水道水であれば飲める水が供給されています。
 つまり、水道から取水している水は、基本的に飲用ができると考えて良いと思います。
 例えば、水洗トイレの水タンク、太陽熱給湯器、電気給湯器などは水道が止まっても水を取り出すことで飲料水を確保することが可能です。
 排泄物はどうでしょうか。
 昔ながらのくみ取り式であれば、水害でタンクが砂に埋もれない限りは使用が可能です。浄化槽もタンクが無事で曝気槽を動かすポンプの電源さえ確保できれば使うことは可能です。アパートやマンションの上層階に住んでいたり、下水道の地域では、例えばペットの砂や尿取りパットなどがあればしばらくは何とかなります。
 就寝具では、毛布は大抵のおうちにあると思いますから、その保管場所を覚えておけばいつでも取り出して使えます。
 普段生活しているのですから、非常時のために無理に完璧に備えなくてもある程度の災害対策はしていると考えてください。非常時に使えるものはどんなものがあってどこにしまってあるのか。それを知っておけばいいということです。
 災害発生時に1分1秒を惜しんでの避難が必要な地域にお住まいの場合には非常用持ち出し袋は必須ですが、そうでない場合には、ある程度場所を決めておくことで災害時にすぐ準備することが可能だと思います。
 普段使いのものを災害時にも使うのが、一番効率が良いですし、一番安心できるものですから、非常用持ち出し袋を作らないのであれば、どこになにが納めてあるのかを知ることが大切です。
 災害対策はしていないのではなく気づいていないだけ。
 普段の生活の中で、避難するときにいれる袋やいれるものをイメージし、いつでも持ち出せるようにしておきたいですね。

大雨警報の基準を確認しておこう

 そろそろ大雨に備えて準備をしておいても良い頃かもしれませんが、あなたの大雨対策は大丈夫ですか。
 大雨で行動を判断する一つの基準として、大雨時の警報があります。
 今日はこの大雨警報の基準を確認しておきたいと思います。

 

毎回書くことではありますが、自治体はどうしても地域を面で見ているので、点であるあなたの居場所がどうなのかは、自分の目で見て判断するしかありません。
 大雨では、気象庁が発信している情報や都道府県などが発表する土砂災害警戒情報などを元に地元自治体が避難の判断について発表をしていますので、見方を変えると判断に必要な同じ情報を自分でも得ることができると言えます。
 自分のいる場所の災害特性をしっかりと知った上で、気象庁や都道府県の基礎情報を見ることで、もしかすると地元自治体よりも早く行動を起こすことができるかもしれませんから、情報を得られる環境であるならば、天気がおかしいと感じたときに積極的に情報を調べるようにしてください。
 そのちょっとした行動が、あなたや家族、周りの人の命を救うことになります。
 とりあえずは大雨の基準を確認しておいて、いざというときの行動について再確認しておいてくださいね。

災害で起きる問題と事業継続化計画(BCP)

 災害時に備えて事業継続化計画(BCP)を作る理由はいろいろとありますが、その大きな目的の一つに「発生する問題を可能な限り早く解決する」ことがあります。
 問題というのは、発生したのに無視し続けると、多くの場合は問題が問題を生んでしまって収拾がつかなくなります。
 特に災害などの緊急時においては、一つの問題放置が後々大問題になることもありますから、できる限り一つの問題のときに対応して処置しておかなければなりません。
 災害時に発生する問題は多岐に及ぶので、どんなにBCPを作っても100%問題は起きないと言い切ることは無理ですが、過去のさまざまな災害から、災害が発生したときに自分たちが対応すべき問題は何かと言うことはある程度予測が可能です。
 予測した問題には予め解決方法が考えられているわけですから、それに従って手順を踏めば、基本的には対応者が誰であれ解決できるはずです。
 BCPの手順書は、そういった目線で作成する必要がありますので、「わかりやすく」「明確に」を考えて作成してください。
 そして、BCPがあれば、その場の指揮官は突発的に起きる事態に対応を専念させることができます。その結果、さまざまな問題が小さいうちに終息できて、復旧や復興が予定通り、または予定以上に早く完了できることになり、そのために作成するものです。 BCPを作っておくことは、今ある戦力でどれだけのことができるのか、そして何を優先して対応するのかを明確化することと、問題対応の手順を予め定めておくことです。
 現状を維持する方法ではなく、何から優先して対応すべきなのかを常に頭に置きながら作成するようにしてください。

【活動報告】大神ヶ嶽で自然体験会を行いました

大神ヶ嶽から立石への縦走路で見かけた景色。ツツジが咲いていた。

5月4日、前日津和野町の青野山に引き続いて、益田市匹見町の大神ヶ嶽で会員向けに自然観察会を行いました。

 かつては修験者が修行したと言われる山系ですが、麓までは林道がついているため、登山口までの時間はかかりますが車で近くまで行くことができます。
 当日は大神ヶ嶽を登りながら、頂上付近にたくさんある岩や植物の植生、この地域を中心に住んでいる西中国個体群のクマ、寄ってきて隙あらば血を吸おうと狙っているブヨなどについてお話をさせていただきました。

 大神ヶ嶽から縦走すると大きさ50mくらいの立石という奇岩をみることができます。

立石と呼ばれる奇岩。上にある石は高さが50mくらいあるという話。

 この立石へのアプローチは少しきついので、登山道から眺めて折り返し、無事に下山することができました。

 参加者の中には3日の青野山に引き続きという方もおられて少々お疲れの様子ではありましたが、きれいな山の空気を始めさまざまなことをたくさん吸収していただけたと思っています。
 ご参加いただきました皆様に感謝します。

【活動報告】青野山で自然体験会を開催しました。

青野山から日原方面にまっすぐ伸びる弥栄断層。その上に国道9号線がある。

 去る5月3日、島根県鹿足郡津和野町にある青野山で自然体験会を開催しました。


 前日までの雨がうそのように晴れ渡った天気の中、会員様、そして会員様のご友人などにご参加いただき、賑やかに青野山を登山しながら春の山野草の観察をし、また、途中の視界が開けた場所では弥栄断層についても説明させていただきました。


 各自弁当の昼食をいただき、下山後は津和野城趾に登り、そこから本日登った青野山を別角度から眺めるオプションも実施。
 少々厳しい行程でしたが、参加された皆さん笑顔で終了することができました。
 この場をお借りして、ご参加いただきました皆様に感謝いたします。

「逃げなきゃコール」をご存じですか

 自分で避難の判断をすることはなかなか難しいものですが、顔見知りから避難しようと言われると、なんとなくそうしようかなという気になるものです。
 特に高齢者の方の場合にはその傾向が強いようですが、ご近所やただの知り合いだと、夜遅くや朝早くにはなかなか避難の声をかけにくいもので、その結果として逃げ遅れてしまったりすることがあります。
 そんなとき、遠方にいるご家族や親しい人から「避難して」という電話が入ると、逃げないといけないのかなという気になりやすいですし、早朝や夜間でもそこまで失礼とは感じないものです。
 そこで、「逃げなきゃコール」の出番です。
 電話をする相手が住んでいる自治体の防災メールに登録しておいたり、スマホアプリの「NHKニュース防災」「Yahoo!災害情報」、「au登録エリア災害・避難情報メール」で条件を登録することで、遠方で起きている各種災害の情報が入ってくるようになります。
 6月からはNTTドコモもユーザーが指定した地域で緊急速報を告げるエリアメールが出されるとショートメールでお知らせしてくれるサービスが始まるそうですから、そういった情報を上手に活用して早めの避難を促すようにしてほしいなと思います。
 避難すべき場所に住んでいる人の「避難」という行動を起こすために背中を押してあげる「逃げなきゃコール」。
 大切な方を守るためにも活用して欲しいなと思います。

【災害遺構を訪ねて】「日原の汗かき地蔵尊」

日原には地元で大切にされているお地蔵様があります。
町が設置したと思われる観光標識にも「汗かき地蔵」と記載されているこのお地蔵様は、立派な地蔵堂に納められています。

 表にある看板によると、元々はここにあった宝泉寺というお寺の入り口にあった、紀伊の国からきたお地蔵様なのだそうですが、宝泉寺の移転の際に何人がかりでも決して動くことがなかったため、現在の地に祭られているのだそうです。
 伝承では、このお地蔵様のいる村に何か変わったことがあるときには首から上の部分に玉のような汗をかいて教えてくれるそうです。
 最近では昭和9年1月20日の大寒の日に汗をかかれたとのことで、悪い風邪が流行るから気をつけるようにというお知らせだったそうです。
 その時におられた方が、お地蔵様が汗をかいたのを見るのは3度目だという話があったそうで、流行病やひょっとしたら天変地異でも汗をかかれていたのかもしれません。
 現在新型コロナウイルス感染症の変異型で都会地が大騒ぎしていますが、お参りしてお地蔵様を見る限りでは特に汗はかかれていなかったので、この地域では大丈夫なのかなと感じました。

 ただ、状況は変わっていくと思いますので、実際にお地蔵様が今どんな状態なのかは、一度出かけて自分の目でご確認いただければと思います。

 入り口にはお地蔵様の御真言が書かれていたりするので、お参りの際にはこの御真言を唱えるといいそうです。
 コロナ禍で遠くにお出かけできない状況が続いていますが、こういった地域の知る人ぞ知る場所を巡ってみるのも面白いかもしれませんね。