携帯トイレと使い方

携帯トイレ各種
携帯トイレの例。右側は大小兼用。左側は小のみ。中央は大小兼用だが便座が必要なもの。

 非常用持ち出し袋には携帯トイレを入れておくということは、このウェブサイトでも嫌になるほど書いているところですが、この携帯トイレについて説明が不足していたなと思ったので、今回はそれを追記しておくことにしました。
 携帯トイレは、文字通り持ち運びできる簡易的なトイレなのですが、書かれていない問題点があります。
 それは、ほとんどのものは小専用だということ。
 「男女兼用」と書いてあっても「大小兼用」とは書かれていないと思います。もしも「大小兼用」と書かれた物をお持ちの場合には、それはぜひ持っておいて欲しいと思いますが、そうでない場合、もし非常時に大きい方を催したときにはトイレがあるのに使えないというひどい状態に陥ります。
 ではどうするか。
 筆者のお勧めは、ペット用、できれば猫用のシートを準備しておくことです。

ペットシーツの一例。小専用よりも嵩は増えるが使いではかなりいい。

 猫を飼っている方はご存じだと思いますが、猫のおしっこは非常に臭います。そのため、猫用のペットシートは吸収能力の他に消臭能力もかなり優秀なものを持っています。
 それを敷いて用を足し、終了後は包んで消臭効果のあるビニール袋などに密封しておけば、持っていることを忘れるくらい快適に持ち運びができます。
 和式トイレが使える方なら、この方法で排泄処理はできると思いますので、携帯トイレを持ち歩かなければいけない環境の方は、是非一度試してみて下さい。

快適性と携行性

非常用持ち出し袋は作ったら一回背負って避難所まで歩いてみるといろんなことがわかる。

 ある程度大きな災害になってくると、避難先で過ごす時間が非常に長くなってきますから、なるべく快適な環境を作り上げて、少しでも心身にかかるストレスや負担を減らす必要があります。
 ただ、避難先まで持って移動することを考えると、できる限り軽量で小さくなっているほど持ち歩きがしやすくて助かります。でも、軽量で小さいものは使いにくいですし、それなりに使い勝手のいいものはお値段も高いです。
 非常用持ち出し袋はこの狭間を悩みながら作り上げていくことになります。
 普段から旅行や登山などをしている人であれば、それなりに荷物を小さくする技術を持っていると思いますが、そうでない人は、考えているものを一度使ってみるといいと思います。
 具体的には、非常用持ち出し袋の中の生活アイテムはキャンプ場などで借りることができますのから、そういったところで一度借りてみて試してみてください。
 また、何を重視するのかを考えて、一点豪華主義で準備する方法もあります。
 例えば、寝るための装備として考えてみます。
 必要なのは、とりあえず敷き布団と掛け布団と枕。
 敷き布団と枕についてはエアマットと旅行用空気枕を使い、掛け布団を封筒型寝袋にするとかなり快適な寝床ができあがります。
 これに耳栓やアイマスクを準備しておくと、ある程度快眠が確保できるのではないでしょうか。
 また、食事が重要だという人は、カセットコンロと鍋、それに缶詰などのアイテムを充実させておくと快適に過ごすことができます。
 カセットコンロはさまざまな種類があって、大きいものから小さいもの、カセットガスやOD缶とガスの種類もいろいろとあります。
 あなたが避難先でどれくらい普段と変わらない食事を作るかで、そのサイズや内容を変化させればいいと考えます。
 最近では百円均一でさまざまな道具が揃いますが、実際に使ってみると、使い心地が微妙なものもありますので、買ったらとりあえず使ってみて、あなたの生活にあっているかどうかを考えてみてください。
 もし合わないようであれば、合うものをいろいろと探してみることを勧めます。
 最後に、案外と見落とされがちなのがコップ。
 水は大きなペットボトルや給水袋で支給されますので、そのままで飲むことはかなり難しいですからマイカップは忘れないようにしたいですね。
 せっかく準備するのなら、壊れにくくて使いやすいものを探してみても楽しいのではないでしょうか。

非常用持ち出し袋の防水対策はしっかりと

 非常用持ち出し袋を作るときに気をつけたいこととして、中のものが濡れたり汚れたりしないようにしておくことがあります。
 着替え、懐中電灯やラジオなどの電気製品、衛生用品など、濡れたり粉塵を被ると使えなくなったり使いにくくなったりするものが結構ありますので、対策はしっかりとしておく必要があります。
 方法はいろいろあるのであなたの実情にあったやり方をしていただければいいと思うのですが、例えば、防水仕様の非常用持ち出し袋なら中が濡れることはありませんし、外から中に水が入らないのなら中から外へ水が漏れることもないので、水の配給時に給水袋として使うこともできます。

防水リュックサックの一例。縫い目がなく、開口部を丸めてマジックテープで止めることで中に水が入らないようになっている。

 防水仕様でなくても、中に大きめのビニール袋を重ねて入れて、その中にものを納めれば防水仕様の非常用持ち出し袋と同じ効果を得ることができます。
 また、個別にジップロックなどの密封できる袋に収めていく方法もあります。密閉できる袋があるとさまざまな場面で重宝しますので、準備しておくといいと思います。
 せっかく準備していても、駄目になってはなんにもなりません。
 いざというときに使えるように、きちんと対策をしておくことをお勧めします。

防災グッズと日用品

非常用持ち出し袋の一例。家にあるものだけでも、実は結構作れたりする。

 防災のお話をしていると「防災グッズは高い」「場所を取るから用意できない」といった御意見をいただくことがあります。
 確かに御意見はごもっともです。防災グッズは汎用品に比べるとかなり割高ですし、普段使わないものを保管するのに場所も必要です。
 ただ、防災対策だから防災グッズで全て揃える必要はまったくありません。
 例えば、防災訓練などでよく出てくるアルファ米は軽くて大量に保管が出来、賞味期限も長く設定されています。
 その分1食あたりの単価は高くなっているのですが、これをご家庭で備蓄しておく必要があるかどうか。
 もちろんあるに越したことはないのですが、食べ慣れないアルファ米よりも普段食べている米を準備しておく方が負担も少ないですし更新も忘れずにできます。
 行政機関がアルファ米を整備しているのは、災害時にいきなり大量の食事を提供しなければならない状況が存在しているから。家で普段食べたり飲んだりしているのなら、何も無いという状況は少ないと思いますから、家にある食品を備蓄として上手に使えばいいだけの話です。
 水も同じで、個人宅では長期保存水を備蓄するよりも水筒や空のペットボトルを準備しておいて、災害時にそれに充填するようにしておけば用は足ります。
 必要なのは、全てを災害用として準備するのではなく、どこまで日用品を転用できるのか、どれは防災グッズとして専用で準備しておかないといけないかという交通整理です。
 日常生活で使っているものは殆ど災害時にも使うことができます。悩むのはトイレくらいではないでしょうか。
 トイレに関しては、普段から携帯トイレや非常用トイレを使って生活している人はいないと思いますので、いざというときに備えて防災グッズとして準備しておく必要があると思います。
 逆に言えば、それ以外は普段の生活の中にあるものを転用すればなんとかなるということです。
 普段の生活で使っている消耗品を少しだけ多く準備しておくことで、専用の防災グッズを買わなくても済みます。
 普段使いのものをどうやったら災害時に利用することができるのかを考えてみることも、災害対策としては面白いと思いませんか。

非常用持ち出し袋のかたち

 「非常用持ち出し袋はリュックサック」だと言われていますが、なぜリュックサックでないといけないのかを考えたことがありますか。
 リュックサックは背中に背負った形で固定ができるため、両手が自由になることと重心が背中にあるため、移動するときに変な方向に引っ張られたり、ひっかかったりしなくても済むという利点があります。
 ただ、これは災害発生後に避難する場合に有利と言うことであり、災害が予測されるときにする予防避難の場合には無理にリュックサックにする必要はありません。
 普段お使いの肩掛けカバンや手押し車、旅行用のキャスター付きのカバンでも問題はないわけです。
 早めの避難を心がけるのであれば、袋の形はさほど意識しなくても構いません。
 どちらかというと、カバンの形状よりもカバンをどこへ置くかの方が大切です。玄関や裏口、倉庫など不意にやってくる地震のときに持ち出すことができる場所に分散して置いておくのがコツです。
 もう一つ付け加えるなら、最優先で守るべきは自分の命です。もし非常用持ち出し袋が見つからないようであれば、探すのに固執せず、逃げ出すことを優先してください。
 ちなみに、リュックサックでもその形状によっては非常に背負いにくい、あるいはものが入れにくいものがありますので、改めてリュックサックを準備する場合には、口の広くて大きいものを選んだ方が使いやすいです。
 登山用のリュックサックなら、口が広く、重量物にも耐えられる設計になっているのでお勧めですよ。

非常用持ち出し袋に求められること

 非常用持ち出し袋を作るときには、十人いれば十通りのこだわりが出てくると思うのですが、どんな非常用持ち出し袋を作るにしても一つだけ気をつけておいてほしいことがあります。
 それは、「その非常用持ち出し袋、持って走れますか?」ということ。
 非常用持ち出し袋についてはさまざまなところで書かれていますし、ここでも何度も紹介しているところですが、せっかく作っても持って移動ができなければ意味がありません。
 非常用持ち出し袋を作るときによく言われているのは男性15kg、女性10kgくらいまでとされていますが、これを実際に持ってみるとかなり重たいです。非常用持ち出し袋に詰めるときの詰め方を上手にしないと、普通に詰めたのでは背負っても歩けないかもしれません。
 そこで、非常用持ち出し袋を作るときにはその非常用持ち出し袋を持って避難しなくてはならなくなったとき、それを持って走ることができるかどうかを考えてみて下さい。重たくて走れないというのであれば、自分が背負って走れるくらいまで重量を軽くしておくことです。
 その結果、中に詰めることができなくなるものも出てくると思いますが、ある部分は割り切って考えることも重要です。
 また、小さいお子様がいる場合には非常用持ち出し袋を背負うことができないかもしれません。
 そんなときには、大きなベストを用意して、その中にさまざまなグッズを詰めておくことで、非常用持ち出し袋の代わりにすることもできると思います。
 中身をあれこれと悩む前に、まずは自分が背負って走れる重量を確認するところから始めて下さい。

非常用持ち出し袋の中身と普段の生活

 非常用持ち出し袋の中身についてはたびたび触れているところですが、中身に迷うときには、自分の普段の生活を思い返してみてください。
 いつ、どんなときに何をしているか、どのようなときに何を使ってどんなことをしているか、まずはそれを考えてみてください。
 その上で、その生活習慣は避難先でもしないといけないことなのか、やったほうがいいことなのか、やらなくてもいいことなのかを整理します。
 やらなければいけない、やったほうがいいと判断すれば、それに必要なものは準備しておかないといけないということになります。
 ここで注意したいのは、やらないといけない、やったほうがよい、やらなくてもいいはあくまでも主観です。他の人の意見を考えるとうまくいきませんので、そこだけは気をつけてください。
 さて、準備をするとき、それらのものが非常用持ち出し袋に詰めておくと困るようなものであれば、非常用持ち出し袋を普段自分が使う場所へ移動させ、その中から出し入れをするようにします。
 そうすることで、非常用持ち出し袋の位置も把握できますし、いざというときに探さなくてすみます。
 避難生活はどれくらい普段の生活の質を維持できるかで快適性が変わります。
 非常用持ち出し袋を自分が持って歩ける範囲で、という前提にはなりますが、普段から自分の生活を考えておいて、非常用持ち出し袋の中身を備えるようにしてくださいね。

量にあわせるか入れ物にあわせるか

市販されている子ども用非常用持ち出し袋の一例。必要なものはセットされているが、食料品や飲料水は入っていない。リュックはアイテムでいっぱいなので、何かを入れようとすると何かを出すことになる。

 非常用持ち出し袋のお話をしたときに良く出てくるものの一つに「食料品や水はどれくらい入れたらいいのか」というものがあります。
 非常用持ち出し袋のサイズによって量が決まるので、「安全に持てる範囲で入れてください」という回答になります。
 市販の非常用持ち出し袋を見ると、本当にいろいろなものがセットされています。ものによっては非常食や長期保存水までセットされていて、これ一つ備えればOKというようなものも売られています。
 これらの非常用持ち出し袋に共通して言えるのは、持ち出すものの量によって袋の大きさが決まっていると言うことです。
 妙な言い方になってしまいますが、袋に余裕がないので何か自分が必要なものを収めようとすると何かが入らないという事態が起こりえます。
 例えば、あなたがコンタクトレンズのケアセットを収めようとすると、非常用持ち出し袋の中のクッションを追い出さないと収まらないといった感じです。 
 非常用持ち出し袋の中身は、いろいろ入っていれば入っているだけ精神的に安心しますので、非常用持ち出し袋は大型化する傾向にあります。
 中には大型化した結果、背負うのではなくコロがついていて引っ張って歩くようなものも出ていますが、そこまでいくと非常時の持ち歩きに苦労するのではないかといらぬ心配をしたりもしています。
 ともあれ、基本は「保温」「乾燥」「保水」「情報」「安眠」の条件を満たせるようなアイテムをセットしていけばあなたに最適な非常用持ち出し袋を作ることができます。
 その結果として入れ物が大きくなるか小さくなるかは人それぞれですが、いずれにしても「飲料水」と「使い捨てカイロ」は必ず入れておいてください。
 怖いのは体を冷やすこととのどが渇くことです。どちらも人の判断を鈍らせてしまうものなので、判断力を維持するためにも準備を忘れないようにしてください。

非常用持ち出し袋と嗜好品

 災害が起きると、甘味や酒、たばこといった嗜好品が手に入りづらくなります。
 特に酒やたばこは支援物資としてはまず来ませんので、流通が再開されるまではいずれもお預けとなってしまいます。
 ただ、酒はともかくたばこが手に入らないといらいらする人も多いのではないでしょうか。
 この際「禁煙」といけばいいのですが、なかなかそれは難しい。
 そうであるならば、あらかじめ非常用持ち出し袋にセットしておく必要があります。
 甘味やたばこは愛好者にとっては精神安定にかなり有効ですので準備していても損はないと思います。ただし、嗜むときには周囲の人が困らないように配慮することは重要です。
 酒については、判断が鈍ったり他者に迷惑をかけたりといった事態が起こりえますので非常用持ち出し袋には入れない方が無難ですが、許す範囲で自分の精神安定に役立つものをいれておくといいですね。
 ちなみに、嗜好品と同じようなものにゲーム機があります。スマホゲームなどもそうなのですが、避難先で自分が楽しめるものを持って行くのは大切なことです。
 ただし、こちらでよく問題になるのは音。ゲームで流れている音はゲームをしている本人以外にとっては非常に耳障りで、場合によってはケンカや殺傷事件に発展しかねない危険性をはらんでいます。
 ゲーム機を持って行く場合には、かならずイヤホンなどの音が周りに漏れない装備も必ず一緒に準備しておき、遊ぶ場合には必ずそれをつけ、周りを困らせないようにしておいてください。

アウトドアグッズと防災用品の違い

 「アウトドアグッズと防災グッズは兼ねることができます」という記事を雑誌などではよく見かけます。
 確かにその通りなのですが、それは「そのグッズを使い慣れていること」が前提となることに注意してください。
 アウトドアグッズ、特にソロキャンプや単独行で使うような装備は、軽量、コンパクトさが優先して設計されていて、丈夫さや使いやすさは二の次というアイテムが多いです。
 では防災グッズではどうかというと、あくまでも普段使いの延長になるため、丈夫さや使いやすさの優先度が軽量、コンパクトよりも高くなります。
 なぜなら、アウトドアを満喫することは非日常で楽しいことですが、災害は同じ非日常であっても不安やしんどさが先に立ちます。些細なことで不安や怒りが増幅されてしまう環境を考えると、例えば使い方に気を遣うシングルバーナーよりも大きくても安定しているカセットコンロのほうが日常に近い生活を送ることができますし、十徳ナイフよりも小さな包丁のほうが使いやすいことは言うまでもありません。
 もちろん、アウトドアグッズがダメと言っているわけではありません。
 使い慣れている道具であれば、それを使うことで安心感がもたらされるものですし、軽量コンパクトなアウトドアグッズは非常用持ち出し袋に治まりやすくて運びやすいので入れ方や重量を気にせずに持って移動でき、とりあえずの生活の質を落とさないという点で非常に有効です。
 ただ、普段は使わずにいざというときに初めて使うという状態だと、組み立てている途中で壊れたり、思ったような使い勝手でなかったりしてそのアイテムがない時よりもストレスをため込むことになりかねません。
 アウトドアグッズは買ったらすぐに誰でも使えるというものではなく、マニュアルを読んだり実際に使ったりしてそのグッズに馴染んでおくことが絶対的に必要です。
 普段使いのアイテムを組み込みながら、できるだけ日常に近い防災グッズをそろえていくことで、いざというときにも生活の質を維持していきたいですね。