現金を持つ意味

 非常用持ち出し袋にはいくらかのお金をいれておくようにしようということが、殆どの防災関係の本には書いてあります。
 最近は電子マネーやクレジットカードなどを使うため、現金を持って歩かないという人もいらっしゃるようですが、災害時に備えて、せめていくらかの小銭は用意しておくようにしてください。
 というのも、災害時には小銭が非常に有効となるからです。例えば、最近では殆ど見ない公衆電話を使うときですが、10円や100円しか使えなくなっています。また、コンビニエンスストアで買い物をしようと思っても、停電していれば電子マネーは一切使えません。殆どの場合は手計算になるので、小銭以外は受け付けないという対応をされることも多いです。
 では、非常用持ち出し袋にいくら準備しておけば安心なのか。一概に言えませんが、あまりにたくさんのお金を準備してしまうと、今度は普段の盗難やいざ持って逃げるときに重量がかさんでしまいますので、数百円から数千円程度、硬貨で準備しておけばいいのかなと思います。
 また、出先など非常用持ち出し袋がない状況で被災する場合も当然ありますから、自分のお財布やポケットに、やはりいくらかの小銭は準備しておくといいと思います。
 電子マネーやクレジットカードは非常に便利なものですし、荷物にもなりませんから普段は快適です。でも、災害が起きて停電や通信環境が破壊されてしまうと使えなくなってしてしまいますので、自分を守るためにもある程度の備えをしておいた方がいいと思います。

暖かい食事のために発熱剤を準備してみる

 避難所で避難生活するにしても、自宅で生活するにしても、食事はしっかりと食べる必要があります。
 ただ、冷たいものや常温のものばかり食べていると、暖かいものが恋しくなってくるのは事実ですし、疲れて空腹な時に暖かいものを食べることができれば、それだけでかなりの気力を回復することができます。
 よくカセットコンロを準備しようという話をするのですが、ご家庭の事情によっては、それができない場合もあると思いますが、暖かいものを食べるための環境は整えておいた方が安心です。
 そこで、発熱剤を使ってみてはいかがでしょうか。「紐を引くだけであつあつのお弁当」などというキャッチフレーズでお弁当などにも使われていますが、普段の保管では危険は殆ど無く、劣化しにくく、いざというときには水を注ぐだけでしっかりと発熱してくれます。加熱するためには水が必要ですので、その分を余計に準備しておくという必要はありますが、水であれば基本的には発熱しますので、飲料用でなくても使うことが可能です。
 アウトドアや災害用に使う発熱剤は、殆どの場合ケースがついていますので、そのケースに缶詰やレトルト食品など暖めたいものを入れ、説明書に従って発熱させると暖かいものが食べられます。加熱温度は70~80度くらいですので、焦げたり発火したりすることはありませんし、よくある「○○のご飯」のような加熱しておいしくなるタイプのご飯もしっかりと温めることができます。また、授乳用の液体ミルクを温めるだけでなく、粉ミルクを調製するためのお湯を作ることも可能です。
 とても便利な発熱剤なのですが、欠点としては売っているところが限られているところです。いざというときにすぐ買えないと思いますので、一度買ってみて、自分のニーズにあっているかどうかを試してみてください。
 ちなみに、使い捨てカイロがあれば、その熱でもほのかに暖かくすることは可能ですので、あわせて使い捨てカイロも準備しておくとよいと思います。

[送料299円~]【セット】モーリアンヒートパック加熱セット 加熱袋L1枚+発熱剤L3個セット heatpac-L 3点迄メール便OK(ky0a008)

価格:668円
(2020/1/1 19:36時点)

新年のご挨拶

 あけましておめでとうございます。
 旧年はさまざまな試みをさせていただきましたが、快く受け入れさまざまなことをさせていただきました皆様にこころから感謝申し上げます。
 今年も当研究所のテーマである「命を守る、命をつなぐ」を実現するためにいろいろなことに挑戦していきたいと思っておりますので、引き続きのご愛顧をよろしくお願いいたします。

 さて、新年と言えば、ご家族で過ごされることも多いと思います。その際、災害が起きてみんながばらばらに被災したとき、どこでどのように待ち合わせて合流するのかについてお話してみてはいかがでしょうか。
 命を守るための行動は、起きた災害とその場にいたときの状況によって変わります。実はその後が結構大変で、家族がどうやって合流するのかを決めておかないと、お互いが避難所を探して歩き、結局なかなか出会えないという事態になってしまうことがあります。そのため、いつどこで合流するのかを取り決めておくと、そこを目指してくればいいのでお互いに不安にならなくてすむのです。また、合流するための時間まで決めておければ、その時間以外は他の作業ができるためより効率的に生きていくことが可能となります。
 また、帰省されたご家族とのお話では、伝言ダイヤルはどの番号を使うのかや、どの段階で救援に入るのか、あるいは被災後はどこに行けば会えるのかなど、お互いに話を決めておくと、慌てなくて済みます。
 いずれにしても、せっかく顔合わせをするのですから、ちょっとした時間でいいのでそれぞれの災害対策について話す機会をつくっていただければと思います。

寒さ対策をしっかりとしておこう

 年末年始は冷えるという予報が出ていますが、対策は大丈夫でしょうか。
 お出かけ時には、暖かい服装で風邪など引かれないようにお気をつけください。
 ところで、身体を温める服装と言うことでよく話に出てくるのが厚手の服を着るのがいいのか、それとも重ね着する方がいいのかということです。
 結論から行けば、「どちらでもいい」と思うのですが、どちらも以下の条件を満たしていることが必要です。

1)一番外側に来る服が風を遮断すること
2)服の間に空気がため込めるようになっていること
3)汗をかいても湿らない下着であること

 以上の三つの条件を満たせば、厚手の服でも重ね着でも充分に暖かいと思います。厚手の服としてよく使われているダウンのようなふわふわもこもこした空気の層の塊のようなものを着るときには、なるべく熱源である肌に近い部分に着た方が暖かいということくらいでしょうか。重ね着するのであれば、発熱素材と断熱素材を上手に組み合わせた薄手の服を使うことです。

 また、意外に見過ごされがちですが、足下を冷やさない条件も同じです。足下を冷やさないためには、一番最初に汗をかいても湿らない靴下にすること、そして靴の中に空気を貯め込めるようなボアがあるものを履くことです。

 いずれにしても、それらを上手に組み合わせて身体を冷やさないようにしたいものですね。

どうやって避難してもらったらいいのか

 災害時にレベル4以上、避難指示や避難勧告が出た場合でも、それに気づかない人がいるかもしれません。
 例えば、耳の聞こえない、または耳の聞こえが悪い人、目の見えない人やものが見にくい人、日本語がよく分からない人など、案外と気づかない可能性のある人は多いものです。
 以前、とあるところで大雨により夜中に水害が発生したとき、消防団の人が避難を呼びかけるためにいくら玄関たたいても出てこなかった高齢者の方がおられたそうですが、その方は補聴器を外して眠っていたために玄関での騒動にまったく気づかなかったそうです。幸いにして、その方の家は水に浸からなかったために笑い話で済んだそうですが、場合によっては亡くなっていた可能性があります。
 その地域では、その災害の後、夜中に状況が悪くなりそうな予報が出た段階で避難所を開設し、日のあるうちに聞こえの悪い方や身体の不自由な方はそこに避難してもらうようにしたそうです。状況に気づけない、または気づいても行動が難しい方は、できるだけ早めに避難してもらっておけば、仮に避難する必要が無かったとしても、「何もなくてよかったね」と言えるのではないかと思います。
 では、日本語が分からない人にはどうやって知らせたらいいのでしょうか。最近外国から来る人たちの多くはスマートフォンを持っています。そして、自治体の発信する情報も多言語化してきていますので、それで防災メールが受信できれば非難できるでしょう。
 ただ、自治体からの防災メールでは避難しなくてはいけないことはわかっても、いつどこへ何を持って避難すればいいのかまではわかりません。場合によっては、避難という概念がない人がいるかもしれません。そういう人たちに避難準備や災害時の対応を知らせるためのやり方は、まだまだ未整備の部分だと感じます。
 そして、避難の判断は自分でするにしても、本人だけではどうにもできない部分、例えば避難所の開設時期や使える資材や物資の状態など、共助や公助が必要な部分はたくさんあります。
 非常に基本的な話になるのですが、自分で情報をとれる複数の経路を準備しておくこと、そして、ご近所とあいさつでいいので声かけをしていくこと。近所づきあいは面倒くさいという声もよく聞きますが、せめてお互いの顔がわかるくらいにはしておきたいものですね。

救助される確率をどうやってあげたらいいか

 災害が起きて今いる場所が安全でないと判断されたとき、自分の安全を確保するために避難をすることになりますが、最悪の事態として、「そのときにいる場所が危険ではあるのだが、避難することができない」という事態も当然起きえます。
 そんなとき、周囲の救助者に自分がここにいることをどのように伝えればいいのか。
 携帯電話がつながって話せる状況であれば、知り合いに連絡をして救援要請を行います。GPSで位置情報を共有している人がいるのならそれを使うこともできるかもしれません。何か音の出るものがあれば、それを使えば救助者に気づいてもらえるかもしれませんから、笛があればそれを、そうでなければ何かをたたいて自分の存在を知らせます。もしその位置から外部が見えるのであれば、鏡の反射を使えば気づいてもらえるかもしれません。
 いずれにしても、あなたの声を出すのは最後の手段です。声を出すためには息を吸い込まなくてはいけませんが、その際埃や粉じんを吸い込んでしまうとのどや肺を痛めてしまいますし、そうすると肝心な時に声がでないということになります。 気がついてもらおうと思って、人の気配がするとついつい大声を上げてしまいがちですが、人の声というものは案外と届かないもので、それよりも笛やその他の音の方が気づいてもらえる可能性が高いことを知っておいて欲しいと思います。
 ところで、非常用持ち出し袋によく笛を入れている人がいます。これは素晴らしいことだと思うのですが、被災したときに常に非常用持ち出し袋が手元にあるとは限りません。いつどこで被災してもいいように、できればシンプルな形の笛を持ち歩くようにして、いざというときに備えたいですね。

■災害時のBCPを見直そう

本日のNHKニュースで災害時の金融機関の臨時休業についてやっていました。

災害時の「臨時休業」 地方銀行でも進む(NHKニュースサイトに飛びます)

 これによると平日は原則営業しなくてはならず、臨時休業する場合には金融庁に事前に届け出をしないといけないと定めた銀行法が10月に改正され、災害時には届け出不要で臨時休業できるようにしたそうです。
 いくら銀行であっても災害時に備えて職員を守る必要がありますから、BCPを備えた金融機関の中には、例えば鉄道が計画運休したときなどは臨時休業すると行った取り組みをしていたそうですが、今回の改正を受けてもう少し柔軟に臨時休業できるようにするそうです。
 公共交通機関、特に鉄道が計画運休することが増えてきている現状ですが、今回の改正で金融機関が臨時休業した場合にどうするかということを自社のBCPに取り込んで見直し、改定していく必要があります。
 最近はさまざまな災害が続いており、大手企業は従業員や顧客の安全を優先するような方向で対応しつつあります。出退社時に被災した場合には雇用主の責任問題にもなってくると思いますので、きちんとしたBCPを作成して自社が問題なく経営が続けられるような方策を準備しておくことが、経営者には求められています。
 ところで、あなたはいざというときにどうするのかをきちんと決めていますか。
 あなたの安全を守るのはあなた自身しかいませんので、あなたのBCPについても考えてみて欲しいなと思います。

カセットボンベの寿命を知っていますか

  先日ラジオでやっていたそうですが、東日本大震災の後、カセットガスを備蓄品として準備したお宅が多いそうです。
 その後備蓄品を使いながら補充する、いわゆる「ローリングストック」をしていれば問題なのですが、大量に買ったカセットボンベを備蓄品としてそのまま保管していた場合、ボンベの中で使われているゴムパッキンが劣化してしまってガス漏れが起きたり、カセットコンロにセットして使おうとしたときに爆発してしまうような事態が発生するそうです。
 劣化したというチェックポイントとしては、「外見にさびが浮いていない」「容器が変形していない」「缶を振ったときにジャプジャプといった感じの液の音がする」などの確認はしておく必要があります。カセットボンベは鉄製で防錆処理はされていませんので、経年劣化によりさびが浮いてくることがよくあります。使う前には必ずチェックしてください。

詳しくは「IWATANI・カセットボンベ:よくある質問」をご覧ください。

 せっかく常備しているのにいざというときに使えなかったというのでは悲しいですし、また、ボンベの劣化によって火災や爆発が起きても困りますので、もしも備蓄品で長期間未使用のカセットボンベがあるようでしたら、必ず点検をしておいてください。

少し見にくいがこのカセットボンベは2017年12月17日製造。2024年までは通常保管なら大丈夫と思われる。


 保存期間は7年が目安だそうです。なお、製造年月日は缶の下部に記載されています。少し見にくいのですが上の写真を一例としてあげておきます。前述のIWATANIのリンク先の記事の中にカセットボンベの裏面に記載された数字の見方も出ていますので、併せてご確認ください。

 ちなみに、以前ご紹介しましたが、カセットコンロにも寿命があります。こちらはガスとの接続口に使われているOパッキンが劣化してそこからガスが漏れてしまうそうで、使用頻度にかかわらず10年で買い換えるように勧めてられています。

詳しくは「株式会社ニチネン:よくあるご質問」をご覧ください。

備蓄品は永年保存できるものではありません。どんなものでも経年劣化により使えなくなっていきます。いざというときに備えて準備したのに本番では使えないと言うことがないように、充分気をつけてくださいね。

避難所の区画整理について考える

体育館が避難所になる場合は、最初は大きな空間しかない。ここを区画整理する。

 避難所で最初に決めないといけないことは、区画整理です。
 これを最初に行っておかないと、避難した人たちが好き勝手に場所を占拠してしまうため、移動をさせられずに後で四苦八苦する羽目になります。
 では、区画整理でどんな場所を決めなければいけないのか。
 最初は通路です。どんな場所であっても通路の確保は最優先に行います。さもないと、導線が混乱して非常に使い化っての悪い状態になります。
 次に、本部と資材置き場を確保します。これらはある程度しっかりとした面積と空間を確保する必要があります。避難者で施設が一杯になっても、そこを運営する場所がないと大混乱を招くことになりますので、最初に本部の設置場所を確保してください。避難所の出入口付近で、人の出入りが監視できる場所が望ましいです。また、掲示物の掲示場所も近くに作れるとよいです。

 資材置き場は運ばれてくる資材ごとに分類できるように、ある程度広いスペースが確保できると作業がしやすくなります。例えば避難所が学校の体育館なら、資材が勝手に持って行かれないように周囲から見通しのきくステージなどに置くとよりよいと思います。
 施設によっては仮設トイレの場所を確保する必要があります。人目につきやすく、明るさを確保でき、かつプライバシーが守られるような場所が選択できるとベストです。


 あとは談話スペース。足の不自由な方や独りで避難された高齢者の方などがそこで時間を過ごせるような空間を作っておきます。いすや机を置き、誰でも使えるようにしておくとよいと思います。

 また、授乳やおむつ替えできるスペースも確保したいです。診療エリアとしてそのうちに回ってくる医療者を受け入れられる場所を確保しておき、そこを使えるようにしておくと当座をしのぐことができます。
 洗濯物を干す場所や学習をする場所など、他にもさまざまな必要な施設がありはしますが、とりあえずはこれくらいの場所を確保した上で、初めて避難者にエリアを割り当てていきます。
 本番時にこんなことを決めていてはとても対応が間に合わないので、これらのレイアウトは事前にきちんと形にしておくと作業が早くなります。

区画の中をさらに家族単位で過ごせるように段ボールで仕切る。これだけで快適性が格段に変わる。

 さて、避難者への区画の割り方ですが、できれば地区ごとにしておくと後でいろいろと作業がしやすくなりますので、大ざっぱでいいので地区ごとの割り当てを考えていきます。もしも収容者が多数になってくるようなら、空いている区画を割り当てるなど、別にゾーンを設定するとよいでしょう。また、各区画ごとに代表者を決めて貰い、その人が本部と避難者との間でいろいろな連絡用務を請け負ってもらうことになります。
一口に避難所と言っても、運営開始までには決めることがたくさんありますし、ここで上げたことが絶対とも思いません。避難所の数だけ事前に準備した方がいいことはあると思います。災害の時に決めたとおり運用できるとは限りませんが、いきなり本番で避難所を開設をしてもごたごたしてうまくいきませんので、できる限り事前にさまざまな段取りを詰めておくようにしましょう。

野菜ジュースとビタミン剤

 大規模災害が起きて被災してしまい避難所での生活になると、食事の問題が必ずついて回ります。最初は非常食、おにぎりやパン、そして某コンビニの災害用幕の内弁当へという流れで、大体決まっているようです。
これは行政機関が備蓄している非常食が初めの頃は配布され、補給路が安定すると被災地区外から大量のおにぎりやパン、弁当が供給されるようになるためですが、被災者が多いので大量生産品、しかも衛生状態維持のために冷たい状態で供給されるので食べにくい上に単調な味で飽きてしまいます。
  「災害時なのだから贅沢を言うな」という方もいらっしゃるのですが、被災者に供給される弁当は1食300円から350円程度で供給される大量のお弁当は油ものやインスタントもののオンパレード。その上衛生管理上保冷されてくるのですから我慢強い人でもそのうちに耐えきれなくなると思います。これらのお弁当は栄養状態は二の次、とにかく飢えないことを優先したメニューとなっていますので、食べやすさではなく数を稼げるものが使われ、そういうメニューは圧倒的に繊維質やビタミンが不足する食事です。
 そのため、自衛の手段として野菜ジュースや粉末の青汁、総合ビタミン剤などを非常用持ち出し袋に準備しておくようにしましょう。
 たくさんの人が集団で生活する環境ではさまざまな病気が流行りますが、それらから身体を守ってくれる働きをするビタミンは不足しがちです。身体を元気に保つためにも、必ず不足するビタミンを補給できるものを準備しておきましょう。
 ただ、ビタミン剤にも身体に合う合わないがありますので、できれば平時に自分が飲んでも大丈夫なのものかどうかを実際にちぇっくしてみることをお勧めします。