地震の時、自動販売機が危険なわけ

転倒防止処置をされた災害対応型自動販売機。非常時にオレンジ色のボックスを開けると中の飲料水が取り出せる仕掛けを持っている。

 地震が起きたときに気をつけなくてはいけないものの一つに自動販売機があります。特に飲料系の自動販売機は上部に販売する飲料が詰まっているため、重心が高くなっていて不安定ですので、揺れる兆候を感じたら、とにかくその前からは逃げる必要があります。
 自動販売機の設置会社も危険なのはご存じなので転倒防止用の板や脚をつけたりすることもあるのですが、スペース的な問題や見栄え、予算の都合や必要性を感じないなど、さまざまな理由で転倒防止策を採ることができていないことも多いようです。

飲料用自動販売機の中身。品物が上部に入るため、構造上重心が高い。

 もしも地震などで激しい揺れに合うと、転倒防止対策をしていない自動販売機は揺れに負けて倒れてしまう可能性が高く、そのときに下敷きになったとしたら、よくて大けが、悪ければ死んでしまいます。
 自動販売機は便利なものですから全廃しろと言ってもなかなか難しいと思います。ですが、用事のあるとき以外は近づかないということは可能だと思いますので、自動販売機の前でたむろするのは止めた方がよさそうです。

地震が来たらどうすればいいか?

地震対応訓練の一コマ。安全な場所で身を守ることが大事。

 3月13日の夕方、島根県西部地方を震源とする地震がありました。最大震度が3、時間は数秒という短いものでしたのでびっくりした程度のものでしたが、揺れを感じたときにあなたはどんな行動を取りましたか?
 ガタドン! 程度でしたのでなんだろうと思っているうちに終了したわけですが、地震はこういった音や揺れが激しく続きます。長くても1分程度と言われてはいますが、関東大震災では数分にわたって揺れ続けたという記録もあるようですので、一概にはいえません。
 地震の時に安全が確保できるかどうかは、普段から安全場所を意識して見つけておくようにすることです。天井、壁、床など、揺れが来たときにどこなら安全にやり過ごすことができるか、どのようなポーズだったらより安全かを考えながら行動をすることで、いざというときに速やかに安全な場所へ待避が可能になります。
地震の揺れそのもので死ぬことは殆ど無いと思いますが、立ったままだと転倒する可能性がありますから、まずはしゃがむこと。重心をとにかく低くすることで転ばないようにします。
 そして頭部を守ること。周囲に崩れたり倒れたりするものがあれば、しゃがんだ状態でできる限り安全な場所へ避難します。動けなければ、運を天に任せてその場で揺れが収まるまではじっとしていましょう。
 揺れが収まったら情報収集です。ラジオやスマートフォン等で地震情報を確認し、津波などに備える必要があるのかや避難すべきかどうかの判断もします。
慌てず、騒がず、確実に。まずはあなたの安全確保。命を守るための基本となりますので、忘れないようにしておいてくださいね。

地域の情報を共有しておこう

 ハザードマップを使った勉強会や、避難所運営ゲーム(HUG)など、最近は自治会が主体的に災害対策に取り組むことが増えてきました。
 そこでぜひやっていただきたいのが、地域の情報の可視化です。例えば、どこに誰が住んでいてどのような生活をしているのかということをできる範囲でいいので共有化しておけば、いざというときにその人が在宅しているかどうかはわかります。
 阪神淡路大震災で被災した淡路島では、倒壊家屋の下敷きになった人の救出は非常に早く行われたのですが、普段から誰がどこにいてどこで寝てるということまで地域住民の間で共有化されていたそうです。その結果、倒壊した家屋のどのあたりに人がいそうだということが分かって早い救出につながったと言うことです。現在ではそこまでの個人情報を出すのはいやな方がほとんどではないかと思いますが、濃厚で面倒くさいと言われる近所づきあいにも、そのような利点があるということは知っておいてください。
 また、どこにどのような設備があるのかを共有しておくと、心肺蘇生で必要となるAEDの場所や担架、救急資材、消火器といったものが必要なときにすぐ取りに行くことができ、救命につながります。
 例えば、地域の防災マップを作る中で、危険な場所だけでなく安全な場所やいざというときに使える資機材のありかを確認しておくと、本当に災害が起きたときに非常に役に立ちます。
 せっかくその地域に住んでいるのですから、いいところも悪いところもお互いに認識し合って、いざというときに備えておきたいものですね。

マスクの表と裏

 マスクが市中になくなっていて、普段買っているなじみのものが手に入らなくなっています。花粉症にはつらい状態ですが、そこはお互い様。マスクが手に入った人が周りにおすそわけしてくれたりすることがあります。
 今回マスクを一つわけてもらったところで、マスクの付け方が私とくれた人で異なっていることに気づいてしまいました。
 どうやらメーカーによって違うらしく、普段私が使っているものは、耳紐とマスクの接着面が内側になるようにつけるという説明書きがあり、何も気にせずにそんなもんだと思っていたのですが、今回もらったメディコムジャパンさんのマスクは、耳紐とマスクの接着面が外側になるように作られているそうです。

普段使っているマスクの説明書き部分の抜粋。接着面が内側になっている。

 教えてもらったので事なきを得ましたが、使い捨てマスクは表裏を間違えると殆ど意味がなくなってしまうので、メーカーさんによって違いがあると言うことを今回知って、正直びっくりしました。最近の使い捨てマスクの多くは鼻の部分を押さえるための針金のようなものが入っていることが多いので、上下を間違えることは少なくなったのですが、つけるときには気をつけないといけないようです。

鼻を押さえるための針金のようなもの。ノーズフィッターというらしい。

 気になったので他のマスクも調べてみたのですが、一つ共通点があったのはマスクのプリーツの向きはひだひだが下に向かって伸びるように取り付けること。でもこれもひだひだが中心から上下に伸びるようになっているものもあったりしてやっぱり悩むことになります。
 こんなご時世なので、どんなマスクが手に入るのかがわかりません。マスクの表裏については、外装の表示にあるマスクの取り付け方を確認するか、表示がない場合にはメーカーさんのウェブサイトで付け方を確認した方がよさそうです。

東日本大震災

 今日は東日本大震災が起きた日です。復旧・復興が進んでいるとはいえ、さまざまな問題が今もあちこちに残っていて、さまざまな人がなんとか解決しようと活動を続けています。
 新型コロナウイルス騒動で慰霊祭も自粛扱いになっているようですが、1.17の阪神淡路大震災と併せて、自分にとっていろいろと考えさせられる日です。
 一人でも災害で命を落とす人が減るように、災害後に災害関連死をする人が減るように、本当に微力ではありますが、当研究所は活動を続けていきたいと考えています。
 亡くなった大勢の方のご冥福をお祈りします。

「THE救難食料 ER」を食べてみた

 非常用持ち出し袋はなるべく軽くした方が動きやすくて避難も早いです。ただ、非常用持ち出し袋の中の重量の大半を食料品と飲料水が占めていることは確かで、ここをどれくらい軽くすることができるかというのが腕の見せ所という部分はあります。もっとも、飲料水を削るわけにはいきませんので、いかに食料品を軽くするかということになってきます。
 非常食にはいろいろとあるのですが、今回はその中でも割と有名どころの商品である「THE救難食料 ER」を試してみることにしました。

 当然地元では売っていませんので、インターネットでのお取り寄せとなります。ゼリーのついたものもあるのですが、今回はビスケットだけ購入しました。


 期限は2025年となっていますので、5年間保存です。重さは一箱500gちょっと。これ一箱で一日に必要なカロリーを摂取することができます。

 箱の中にはキューブ状の真空パックが9つ入っています。このキューブが非常食になります。

 空けてみると、キューブ状ですが手触りはざらざら。ビスケットのように焼き固められた感じではありません。粉末状のものを圧縮して固めたような感じです。

 指で簡単にほぐれます。割るのもたやすいです。
 口に入れると、塊はあっさりとほぐれて口の中に広がりますが、割と水気を持っていかれます。口の中の水気を吸うと、ねっとりとしたペースト状になったように感じます。

 味は、私自身はきなこのように感じたのですが、一緒に食べた人達は「クッキー!」「ビスケット?」「カロリーメイトの粉っぽいの」とさまざま。
 日常生活の延長線上として使うにはちょっと微妙な気もしますが、そんなに味は悪くありませんし、結構腹持ちもいいように感じます。
 避難所での食事にこだわらない人であれば、持ち歩くのには便利ですから一度試してみてもいいと思います。

THE 救難食料 ER 9食入り 【萬有栄養 非常食 災害対策 救難食糧 備蓄食糧 ER9 イーアール】《あす楽》

衛生管理は手洗いが基本

 マスクとアルコール消毒液がないということで狂騒曲状態になっている世の中ですが、災害対策という目を通してみると衛生管理をどのようにするのかということになります。
 災害後の衛生管理では、まずは手洗いが基本になります。しっかりと石けんなどで手洗いをした上で、アルコール消毒やマスクの着用をすることになります。
 水が出ない場合にやむをえずアルコール消毒液やマスクを使用することになりますが、水が得られない場合の衛生管理というのは、水がある場合に比較すると格段に状況が悪くなります。
 現在の状況は、「被災してはいるが水はある」状態なので、アルコール消毒液やマスクがないとしても、比較的衛生管理はしやすいと考えます。
 ただ、一口に手洗いと言っても適当にやっていたのでは意味がありません。石けんを使い、手全体を30秒以上しっかりと洗浄し、流水でしっかりと流す。これだけで最近やウイルスに起因する病気にかかる確率は格段に減ります。30秒といってもぴんと来ない方は「もしもしかめよ~♪」の歌を1番歌うとそれくらいの時間になると思ってください。
 実は細菌やウイルスに感染する感染経路で一番多いのは「手から」です。普段はどんな人であれ、5分程度で何かしら顔を触っているものです。そこから体内に侵入してくることになりますので、手をしっかりと洗浄することで感染症になる確率を下げることができるということなのです。
 マスクやアルコール消毒液がないという事態から、手洗いをしっかりとする人が増えています。細菌やウイルスによる感染症の発症はずいぶんと押さえられているのではないかと思います。
 上手な手洗いについては、下のリンク先を参考にしてくださいね。

しゃぼん玉石けん「シャボンちゃんの手あらいうた(前半は手の洗い方、後半は一緒にやってみようになっています)(リンク先:youtube)

花王ビオレu ビオレu泡ハンドソープ「あわあわ手あらいのうた」練習編CM(リンク先:youtube)

非常用持ち出し袋をどう作るか

市販品の非常用持ち出し袋セット
毎度おなじみ子ども用の非常用持ち出し袋。実際にはいるものいらないものを整理していくので、内容の参考程度に見ておくといい。

 研修会や勉強会などで「非常用持ち出し袋には何をいれたらいいのか?」とか「○○を入れろとあったが、何に使うのか?」というご質問をいただくことがあります。
 答えを先に言ってしまうと「生活に最低限必要だと思うものを入れてください」です。非常用持ち出し袋は何のためにあるのかというと、あなたが家から避難した後、避難先であなたの生活を維持するのに必要なものを入れておくためです。そのため、内閣府防災消防庁などで推奨されている非常用持ち出し品が揃っていれば大丈夫と言うことではありません。あなたが使わないものや使えないものが入っていても仕方ありませんし、あなたが必要なものが入っていないようでも困ります。
 最近はネット通販などで「防災士が考えた非常用持ち出し袋」や「被災地の経験から作られた非常用持ち出し袋」などというタイトルで売られているものもあるのですが、それらを買ってもあなたに必要なものが全て過不足無くはいっているわけではないのです。あなたが使い方がわかっていて、そして避難先で必要なものを揃えていくのが非常用持ち出し袋を作る基本ですし、実はその方が値段も安かったりします。
 では、あなたの生活に最低限必要なものはなんでしょうか。「衣・食・住」で考えれば、着替えが一セット、食事が1日分、寝るための毛布や寝袋といったところでしょうか。これに懐中電灯や雨合羽、救急箱、新聞紙、充電器、ラジオ、ゴミ袋などを組み合わせて自分の非常用持ち出し袋を作っていくのです。
 避難所では時間がたくさんありますから、文庫本や携帯できるボードゲームやカードゲーム、塗り絵、折り紙などが入っていてもいいと思います。スマートフォンが生活に欠かせない人であれば大容量の充電池も必要でしょう。テレビが趣味なら、携帯テレビが必要かもしれません。要は普段のあなたの生活が守れる最低限度のものがあればいいのです。
 人間、環境が極端に変化すると心身とも一気に弱っていきます。非常時だからこそ、いかに普段の生活の質を落とさずに凌げるかが鍵になります。
 非常用持ち出し袋や備蓄品はそのために準備しておくものなのです。
 政府は3日~1週間分の食料や水の備蓄を推奨しています。でも、これを全部非常用持ち出し袋に詰め込むと、とてもではありませんが動けません。持てないものは家に備蓄すると割り切って、非常用持ち出し袋は自分が背負える重さにしてください。
 最後に、非常用持ち出し袋となる袋は登山用等のしっかりとしたリュックサックをお勧めします。よく非常用持ち出し袋として昔のナップサックのようなものが売られていますが、あれに詰めると、紐が肩に食い込んで背負えません。

左は昔からある非常用持ち出し袋。右側は子ども用非常用持ち出し袋。
最近は右側のように普通のリュックサックになっているものが多い。

 せっかく準備するのですから、しっかりとしたリュックサックを選んで、いざというときにしっかりと背負えるようにしておいてくださいね。

家族で防災訓練

  新型コロナウイルスの騒動で休校して家にいる子ども達と、それに付き添う形でやむを得ずお休みしている保護者の方。いろいろと大変ですが、せっかく家族でおうちにいるのですから、この際家族の防災計画を作ってみてはどうでしょうか。
 災害時の避難で必要なもののリストアップや避難判断をみんなで決めたり、お散歩ついでに避難場所まで実際に歩いてみたり、お昼ご飯に非常食を試してみたり。地震に備えて家具の配置変更や固定なども、じっくりと考えることができると思います。現時点で、インフラは全て正常でありながら災害のような状態になっているので、災害を見越した訓練でも安全にいろいろなことを試せると思います。

好みの味を見つける食べ比べも楽しい

 特に非常用持ち出し袋や備蓄品の準備をするチャンスです。非常用持ち出し袋や備蓄品は命を繋ぐものだけではなく、気力をつなぐアイテムも必要ですが、それは人によってみんな違いますので、どうやったら自分が元気で過ごすことができるのかを家族で考えて準備をしておくと、各自がが納得できる非常用アイテムがそろうと思います。
 また、もしも備蓄がされているなら、この際いろいろ試してみてください。足りなかったり多かったり、実際に使ってみるといろいろとわかることが多いです。食事、トイレ、就寝、風呂や洗面など、家に避難しているからこそいろいろと試せることがたくさんあります。
 災害対策は「急がないけれど決めておかないと困ること」です。新型コロナウイルス対策で人と接触できない状況であるのなら、他の災害の準備のためにいろいろとやってみるといいと思います。
 ところで、今回の事態ではマスクやトイレットペーパーが足りないと大騒ぎになりました。でも、非常用持ち出し袋や備蓄品として備えているのであればそこから持ち出すことが可能です。そのための非常用持ち出し袋であり、備蓄品なのです。

市販品の非常用持ち出し袋セット

 大量に買い占めることがいいとか悪いとかさまざまな話が出ていますが、どうなるかわからずに何がどれだけ必要なのかもわからないという漠然とした不安の中ではどれだけ準備しても不安なのでつい買い占めたくなってしまいます。
 自分の必要とする量が把握されていれば、無駄な買い占めもしなくて済みますし、異様に高いものをインターネットで仕入れる必要もなくなります。
 普段から意識して備えておくようにしたいですね。

出す方の準備もしておこう

携帯トイレ各種

 非常用持ち出し袋や備蓄品の準備のときに、食事や寝具などは思いつくと思うのですが、トイレの準備は大丈夫ですか。
 災害時にはトイレが使えなくなることが多いです。特に下水管による集中管理のところやアパート、マンションと言った集合住宅などは災害後に点検が終わるまでは絶対に使ってはいけません。浄化槽タイプのところも、もし停電している状態であれば使わない方が無難です。くみ取り式のものは問題なく使えますが、最近はあまり見なくなりました。
 災害発生後には多くのおうちが被害を受けますので、点検には時間がかかると思った方がいいです。もし点検せずに使った場合、逆流したり階下や床にあふれ出したりと汚物による汚染が広まることを覚悟してください。
 そういう事態に備えて、非常用トイレの用意をしておいてください。非常用トイレにはいろいろなものがあり、便器がセットになっているものからご家庭の洋式便器を利用して使うものなどさまざまありますので、自分に合った準備をすることが大切です。

強力な脱臭効果のある猫のトイレ砂を使っても簡易トイレを作ることが可能。
写真はバケツにセットしたもの。
洋式便座の中にビニール袋をセットし、刻んだ新聞紙を入れても簡易トイレができる。
使うビニール袋は不透明なものがいい。

 また、準備しただけでは駄目で、一度使ってみてください。一度使ってみると、想像と使い勝手が違っていることが多々あることに気づくと思います。例えばよく百円均一などで売られている携帯トイレは、結構使うのが難しかったりします。男女兼用と謳っていても、中には女性が使うのは無理じゃないかというようなものも存在します。さらには、トイレとして使うには目隠しが必要だったとか、排泄口に上手に当てられずうまく使えなかったなど、やってみないとわからないことがたくさんあります。
 非常用トイレにはびっくりするくらいたくさんの種類がありますので、いろいろと試してみて自分が使いやすいものを選ぶようにしてください。
 最後に、排泄後には袋に入れて捨てるなどの処理が必要になります。こちらも付属している袋だとにおいが漏れたりすることがありますので、介護用に使われる防臭袋やおむつを捨てるときに使える圧着式ゴミ袋など、衛生環境が守れるような準備をしておくといいでしょう。
 大規模災害で避難所で最初に発生する問題の一つがこのトイレ問題です。特に地震ではまず下水管は損傷すると思って間違いないので、発災後、施設管理者はすぐにトイレを閉鎖し、避難者は自分の持ち込んだ非常用トイレを使うようにしたいものですね。