おんぶと抱っことベビーカー

災害でいざ避難というとき、小さな子をどうやって移動させるかということは割と悩む部分です。
「おんぶ」「抱っこ」「ベビーカー」が3大避難方法のようですが、どれも一長一短です。
今回はおんぶとだっことベビーカーでの避難について考えてみます。

1)おんぶ

避難させるときにもっとも楽で危険が少ないのはおんぶです。
背中に背負っているので、背負っている人の重心があまり狂わず、両手も空いて素早く移動ができるからです。
ただ、最近の小さな子はおんぶされ慣れていないせいか、おんぶ紐で背負うと仰け反ってしまうようで、「避難時のおんぶは危険」としているところもあるようです。
そういえば、抱っこやベビーカーはよく見ますが、おんぶで移動している親子はあまり見なくなったような気がします。
でも、非常時におんぶができるとさまざまなメリットがあります。
食事の準備や家事をするとき、おんぶ慣れさせておくと、いざというときに役に立ちそうです。
また、背中が使えないので、非常持出用防災セットはウエストポーチやベストにセットすることになり、さほどたくさんの資材は持てないのが欠点です。

2)抱っこ

避難時には手だけで抱っこして移動すると衝撃や振動などにより子どもを落としてしまう危険性がありますので、必ず大人の身体に固定する道具を使います。
抱っこひもやスリングといったものを使って移動することになりますが、なにぶん重心が前にあるためおんぶほど軽快に動くことはできません。
また、片手は固定具を支えなければいけませんので原則両手を空けるということも無理です。
ただ、首の据わらない新生児になるべく負担を掛けずに輸送する方法はこれが一番だと思います。
また抱っこで避難する場合、非常持出用防災セットをリュックサックで背負えるのがメリットと言えます。
おんぶ慣れしている子どもが少ないことを考えると、抱っこで避難所まで移動できるような訓練をしていた方がいいかもしれません。

3)ベビーカー

一度に複数の子どもを移動させるときには、ほぼ唯一の手段がベビーカーです。
親も非常持出用防災セットを背負って移動することができ、ベビーカーによっては子どもの資材を載せることも可能です。
ただ、タイヤの半径以上の障害を越えることができないことやベビーカーを押すことで両手がふさがってしまうことが難点だといえます。
また、大量の避難民がいる都会地では、ベビーカーが邪魔者扱いされて破壊される場合も考えておかなければいけません。
避難した先ではベビーカーを子どもの居場所として使うことが出来るので、それもメリットと言えるでしょう。

小さな子どもが大勢いる保育園では輸送用のお散歩車・避難車や多人数用乳母車を使って一気に避難所まで輸送するという方法を取られることが多いですが、これらの運搬車はいずれも車輪の径が大きく少々の障害物は乗り越えられるようになっています。
どの方法も良いところ悪いところがありますので、あなたとあなたの住んでいる地域の実態にあわせて準備しておくことをお勧めします。

リュックサックについて考える

防災セットの準備の中でよく「リュックサック」に触れていますが、なぜだかわかりますか?
リュックサックを使う「理由」は、「両手が空くこと」と「動きを妨げないこと」それに「防災セットが入ること」「ある程度の重さでも持って移動できること」です。
例えば、手提げカバンや肩掛けカバンに非常持出用防災セットを入れてすぐに走れるかというと、かなり難しいと思います。
でも、身体にしっかりと固定できれば、走るのはそんなに難しくありません。
ようは荷物を入れて両手が空いて、自分の動きが妨げられなければよいのです。
そうすると、背負子やボディーバック、普段使いの肩掛けかばんでも、紐やテープなどで身体に固定できれば使えそうだという判断ができます。
子どもを抱えて移動するのであれば、必要なものを詰め込んだベストやヒップバックでも問題ないでしょう。
ここであえてリュックサックを勧めているのは「誰でも使い方を知っていて準備や装備に手間がかからず、たくさんの荷物を入れて運べる道具」だから。
また、リュックサックは大小さまざまなものが市販されていますので、自分にぴったりのものを選ぶことが可能です。
お勧めのメーカーを聞かれることもあるのですが、いろいろなメーカーのものを試してみて一番自分にしっくりくるものがお勧め品です。
その上で、縫い目がしっかりとしているかどうか確認してください。
そして、肩紐の幅が太くて、できればクッションの入っているものにすると長時間背負っていても痛くなりません。
また、背中が当たる部分にはパット、腰と胸に留め具がついているものだと、よりしっかりと身体に固定ができるので楽に移動ができます。
非常持出用防災セットを詰め込むときには、軽いものを下、重たいものを上にして詰めていきます。
着替えや毛布は底に、水や食料品などは上に詰め込みます。左右のバランスを気にして詰め込んでください。
恐らくは一番の重量物となる水は、大きなボトル1本ではなく500ミリリットルのボトル数本にわけると詰め込みやすくなります。
また背中側には新聞紙や敷物を詰めておくと、荷物のでこぼこが気になりません。
この状態で背負ってみると、驚くくらい軽いことに気づくと思います。
試しに、次は重たいものを下、軽いものを上で詰め直して背負ってみてください。
同じ重量のはずなのに、今度は恐ろしく重たく感じると思います。
背負うものに関しては、重心が高い方が自分の体の重心との誤差が少なくなるため軽く感じるのです。
この中には生活用品のストックが入っていて、モノがなくなるたびに入れ替えをするはずですから、いろいろと中を組み替えてみて背負ってみて、自分が一番軽いと思う詰め方を見つけてください。

お湯の確保について考える

 災害が発生すると、ライフラインの復旧までは自力でなんとかしないといけません。
 ですが、冷たい非常食が続くとそれだけで気力が無くなっていきます。
 寒い中や、緊張しているに温かい飲み物を飲むだけで、元気になったり安心したり。
 温かい食べ物や飲み物が気力に与える効果を考えると、どれくらい早く温かい食事にありつけるかというのは、結構重要な問題だと感じます。
 今回は温かい食事や飲み物を作るのに使うお湯について考えてみたいと思います。

1.お湯をどう確保するか

災害が発生し、状況が見えない中でも腹は減ります。
特に乳児はミルクを飲ませないわけにはいきませんが、乳児用ミルクを冷たいまま飲ませるとお腹を壊してしまう可能性があります。
また、ほ乳瓶の消毒にもお湯が必要です。
お湯を沸かすためには、次のものが必要です
(1)水
(2)水を入れる容器
(3)水を温めるための道具
もしも非常持出用防災セットの中に鍋と携帯コンロが入っているのであれば、簡単にお湯を作ることができます。
また、発熱・加熱剤を持っていれば、やはりお湯を作るのは難しくありません。
ただ、持って出られない場合もありますし、コンロがあっても「燃料がない」ということもありえます。
その場合にはどうしましょうか。
もし何らかの熱源があれば、それを借りてお湯を作ることにします。
例えばたき火、ストーブといった暖房器具なら簡単にお湯が作れます。
ローソクや油、純度の高いアルコールとマッチやライターがあるなら、空き缶を使ってコンロを作りお湯を沸かすことが可能です。
油やアルコールを使った手作りコンロについては、インターネットのさまざまなところに作例がありますので、見てみてください。
また、そのうちに当研究所でも研究してみようと思っています。

2.お湯をどう保温するか

沸かしたお湯はそのままにしておくとあっという間に冷めてしまいます。
保温用ポットがあればよいのですが、そうでない場合にはどうするか。
クーラーボックスがあれば、その中に容器毎納めることである程度の保温が可能です。
その時には、食べたいレトルト食品や缶詰なども一緒に入れておくと、次の食事の時にある程度温かいものにありつけます。
また、空のペットボトルに入れてタオルを巻くことで即席の湯たんぽを作ることが出来ます。
これで人を温めると、どちらも温度が維持できて一石二鳥です。
このとき使うペットボトルは「ホット専用」「ホットコールド両用」と書かれたものを使うようにしてください。
表示がない場合には、肉厚のものであれば利用可能です。簡単にくしゃくしゃにできるようなものは熱に耐えられず、変形したりして事故が起きますのでご注意ください。
せっかく作ったお湯なので、できるかぎり無駄遣いしないようにしましょう。

3.保管はなるべく水に近いもので

お湯を作ると、すぐにお茶にしたがる人がいます。
やかんなどでお湯を沸かした後そのまま茶葉を放り込むと一度に大量に作れるため便利なのですが、一度お茶にしてしまうと他のものへの転用が効きません。
お湯であれば、乳児用ミルクやインスタントラーメン、スープにも使えますし、冷めてもただの水に戻るだけなので、お茶を作るときには面倒でもその都度容器を変えて入れるようにしましょう。
余談ですが、粉末タイプのお茶であれば必要な量を必要なだけ使うことが可能な上ゴミも出ないのでお勧めです。

トイレ問題を考える

簡易トイレとトイレ用テント。あるのとないのではずいぶんと違う

食べたり飲んだりしたら、必ず起きるのが排泄です。
お腹が減ったのはなんとか我慢できますが、排泄要求を我慢することはなかなか困難です。
そして、災害が発生したときくみ取り式以外のトイレは基本的に使えないと考えてください。
小便や大便をどこへ出してどうやって処理するのかは、実は食事以上にやっかいな問題なのです。
そして、実はこの部分は過去の災害から殆ど状況が変わっていない部分でもあります。
大きな視点でこのトイレ問題をどうするのか、ということはとりあえず置いておいて、あなたの排泄について「自助」でなんとかすることを考えてみましょう。
こういう場合、トイレが使えないので、携帯式トイレかおむつを使うことになります。
あなたの手間と準備の都合でどちらを選ばれても構わないと思いますが、自分が普段1日に何回くらいトイレに行っているかを考え、携帯用トイレや紙おむつをその数×日数+αで準備しておきます。
これらの道具はあなたと品物の相性がありますので、必ず一度使ってみて、あなたに合うかを試してみてください。
施設等人が多いところでは、簡易トイレセットもありますので、そちらを準備した方が経済的かもしれません。
使用した携帯トイレを入れるゴミ袋や臭いや害虫を防ぐために蓋付きバケツもあった方が安心です。
臭いを防ぐ加工のされた袋もありますし、それらを上手に使って避難した先の自分の環境が衛生的であるようにしましょう。
また、手元にありそうなもので作る簡易トイレがありますので、その作り方を載せてみたいと思います。

■簡易トイレの作り方

用意するもの
1.大きめのレジ袋(15号くらい)
2.新聞紙2ページ
3.猫のトイレ用砂(あれば)

■作り方

材料はレジ袋(15号・普通もらえる一番大きなやつ)と新聞紙2ページ

2.レジ袋を拡げて上半分を外側に折り曲げ、箱状にして、中にくしゃくしゃにしてちぎった新聞紙を入れる
3.便座にセットして用を足します。
4.用足しが終わったら、猫の砂を加えてレジ袋を取り出し、口を堅く縛って汚物用のゴミ袋へ。

もしも手元に高分子吸収体があれば、小便の時には新聞紙の代わりにそれを使ってもいいと思います。
吸水力は当然新聞紙以上ですから、使い勝手は非常にいいです。
ただし、大便の時は大便が見えなくなる新聞紙の方が相性が良さそうです。
他にもいろいろな方法があると思います。
その時にあるもので、いかに快適に排泄をするか。
平時からいろいろ考えておいた方がよさそうです。

食事の問題を考える

1日くらいは興奮や不安で食事が喉を通らないかもしれませんが、時間が経つと、どんな状況であれお腹が空いてくるものです。
その時、自分がいかにきちんと食事ができているかで、それから先の気力や体力に大きな違いが出てきます。
ここでは生きるために重要な食事について考えてみたいと思います。

1.非常食は何を準備しておこう?

アルファ米各種。同じ品名ですが、味はそれぞれに違います。

災害に備えて持出用防災セットを作るとき、割と多くの人が悩むのがここの部分です。
インターネットで「非常食」と検索すると、アルファ米やビスケット、クラッカー、乾パンといった乾燥しているものか、カロリーメイトやシリアルバー等の栄養補助食品、飴・羊羹・チョコレートといったおかしで高カロリーのものが検索の上位にきます。
どれも非常食として頼もしいものですが、これらの非常食をうまく使うためには「水」が必要です。
一般的には1日3リットル必要といわれていますが、これは食事から摂取する量とあわせてのものですので、例えば水気の多いレトルトおかゆなどを持っている場合には、その分水を減らすことは可能です。
水を準備した上で、自分が持ち歩ける量の非常食を考えていけばよいと思います。
非常食にもっとも必要な事は「自分が食べて元気になれること」です。
あなたが普段よく食べているものの中から選ぶのがよいかもしれません。
例えば、ナッツ類や乾き物といったお酒のおつまみもカロリーが高くて食べやすいですからお勧めです。
自分が好きなものや食べやすいものを中心にして準備し、新しいものを買ってきたらストックから出して食べる。
数日持てばいいのですから、そんな風に管理していれば消費期限切れも起こさずにすみます。
そうそう、避難先で火が使える環境とは限りませんので火を使わなくても食べられるものの方がいいと思います。
また、非常食は一般的に高カロリーですので、持出用防災セットには歯磨きセットを必ず入れておくようにしてください。

2.配慮の必要な人の食事

もしあなたや家族がミルクや離乳食、介護食やアレルギーなど食事に配慮の必要な人であるなら、支援物資をアテにせず、あらかじめ自分で準備しておく必要があります。
食料は支援物資の中でも最優先に指定されているもので、必ず送られてきます。
ただ、大量の食料を短時間で発送する関係上、残念ながら健康な成人対象のものばかりで、配慮は期待できません。
そのため、身体の都合で食べられないものがある人は、自助で備えておく必要があるのです。
最近は液体ミルクやレトルト離乳食、レトルト介護食やアレルギー対応された非常食も販売されていますので、自分にあったものを選んでストックしておきましょう。
また、ストックした食料や水は必ず食べる人に試してもらっておいてください。
普段は母乳や手作りのものを食べていても、災害が発生すると母乳が出なくなったり、手作り食を作る場所や材料がないことが発生します。
そのとき、非常用に用意しておいた既製品に切り替えると、味や喉ごしなどの問題で食べられなかったりするものがあるからです。
あらかじめ試しておくことで、いざというときに必ず使えるものが準備できます。
また、成長や症状の変化によってもストックすべき食料は変化していきます。
新しいものを買ったらストックから使うようにし、いつも適したものがストックされているようにしてください。
ところで、粉状の授乳用ミルクの調製や離乳食・介護食についてはお湯や温めができないと困るという問題が発生するかもしれません。
そんな場合には、火を使わなくても温められる「ヒートパック」「湯沸かしボックス」といった発熱・加熱剤を使うことも考えてください。
これは発熱に水を必要としますが、避難先で授乳用ミルクなどお湯が必要な場合にはこの発熱・加熱剤を使うことでお湯を作ることが可能ですのでお勧めします。
また、不安なときに飲む一杯の暖かな飲み物はそれだけで緊張をほぐし、安心できるものです。
非常食を準備する際には、そのあたりも考えておくとよいでしょう。

3.ストックで気を付けておかないといけないこと

缶詰やレトルトの組み合わせで簡単においしいものができる、かも?

災害時に支援物資として提供される食事は、どうしてもおにぎりやパンといった炭水化物中心の食事になります。
避難所の開設が長くなると、災害支援用に特別に作られたお弁当が配布されるようになりますが、やはり野菜が不足しており、衛生管理上の問題からかなり冷えているものが提供されます。
火が使えるようになったら、それらの支援物資に加えて切干大根や干し椎茸、高野豆腐、お麩といった乾物を使った汁物をぜひ添えてください。
できれば野菜や魚介類や肉類の缶詰、レトルトパックなどを使ってもう一品、、不足する栄養素を補充するようなおかずが作れるとよいですね。
また、生鮮食料品が不足しがちになることから、ビタミン不足による口内炎や肌荒れなど身体の内外でさまざまな不調も発生してきます。
それらを防ぐために、粉末状の緑茶や青汁、野菜ジュース、ビタミン剤などもストックの中に加えておいてください。
実際のところ、非常食からいつものご飯にいかに早く復旧できるかが、体力と気力を維持するのに重要になります。
非常食のストックをすることはもちろんですが、保存食品でどういう風に作ればいつもの食事に近づけるかについても、いろいろとやってみてはいかがでしょうか。

普段持ち歩く防災アイテムの一考察

 1月3日に起きた熊本の地震では、幸いにして大規模な被害がでなかったようですが、被災された方にこころからお見舞い申し上げます。
 今回の地震では、九州新幹線が数時間にわたり運行できなくなった影響で、数百人の方が列車内に閉じ込められたとの話を聞きました。
 発災から20分は照明が消えていたこと、そしてそれから数時間は列車が動かなかったことは、乗っていた人から見るととても不安だったと思います。
 ところで、駅に着いた人のコメントの中に「車内に自動販売機が1台しかなくて、すぐに全部売り切れ。数時間の間飲み物がなくてつらかった」というのがありました。
 確かに電気の切れた電車はただの箱ですので、空調も効かず、さぞ蒸し暑かったろうなと思います。
 また、いつ動くのかという不安や緊張から喉が渇いたであろう事も推察できます。
 この場合、いったい自分で何を準備しておけばよかったのかについて考えてみたいと思います。

1.災害はいつ起きるか分からないことを意識する

 今回の地震もそうですが、災害というのはいつ起きるか予測できません。
 起きてから慌てても遅いので、それまでに準備することが必要だと思います。
 この準備というのは、普段から自分の安全を意識するということ。
 少々重くはなりますが、自分の荷物の中に自分の生命が維持できる程度の備えを用意しておかないといけないということです。
 もっとも、防災持ち出しセットみたいな大がかりなものを持って歩くのも非現実的なので、数時間から1日程度飢えと渇きをしのげるようなもので構わないと思います。

2.何を用意したらいい?

 水を入れた小さな水筒、キャラメルや飴、チョコレートといった簡単で高カロリーなおやつを少々、タオル、モバイルバッテリー、暇つぶしの本といったところでしょうか。
 出来るなら、これに乾燥防止用のマスクや保温用シート、携帯ラジオがあるとよりいいと思います。
 私の場合には、330ml入りの水のペットボトルと羊羹が1本、モバイルバッテリーとマスクが鞄の中に入っています。
 タオルや本は入っていたりいなかったり。
 住んでいる地域を走っているのがディーゼル気動車ですので、冷暖房が切れる心配はいらないかなという判断をしています。
 このセットは普段から持ち歩いているので、いざというとき、とりあえず一食は大丈夫という安心感もあります。

3.待つしかないという諦め

 列車の場合には、大原則として勝手に線路を歩いたりするわけにいきません。乗務員の指示に従って行動することになります。
 そのため、自分で出来ることは殆どありません。
 緊急事態で乗務員に助言することはできるかもしれませんが、基本的には救助を待つか、動くのを待つかの二択しかないわけです。
 焦っても仕方がないので、そんなときこそ深呼吸。
 そして携帯ラジオで現在の状況を把握しておけば、この後どうなるのかという予測もできますから、さほど焦りも慌てることもありません。
 また、普通であれば、列車内へ閉じ込められてもせいぜい半日から1日くらい。それまでには何らかの手が打たれます。
 乗務員を怒っても怒鳴っても状況は変わりませんので、のんびりと待つことにしましょう。

4.面倒くさかったら


 そうは言っても、できるだけ身軽に過ごしたいという方も大勢いると思います。
 そんなときは、閉じ込められるかもしれない場所にいるときだけ、水やお茶を買っておくという方法があります。
 電車やバス、エレベーターに乗るときに、ペットボトルを1本買っておけばいいのです。
 ジュースやコーヒーでは、緊急時には水分になりません。かえって喉が渇いてしまうので、買うのは水かお茶に限定します。
 使わなかったら、そのまま持ち歩いて飲んでしまいましょう。

 最初は面倒くさいし重たいなと思いますが、慣れると意識しなくなります。
 お出かけのときの携帯雨傘と同じくらいの感覚で持って歩けると、いざというときに頼りになりますよ。

防災用電化製品の乾電池のサイズと規格を意識する

 防災グッズを用意するときに気をつけておきたいのは、電化製品の電池の大きさを統一しておくことです。
 普通に準備すると、懐中電灯は単二電池、携帯ラジオは単三電池、ヘッドライトは単四電池やボタン電池ということになってしまい、それぞれの電化製 品で互換が無く、全ての予備電池を持って歩かなければいけないことになってしまいかねません。
 電池は、できれば汎用性の高い単三、あるいは単四に統一し、予備電池は一 種類あればいいようにしておくのが安全です。
 もし大きな懐中電灯を使いたいというのであれば、単三を単二電池として使えるようにするスペーサーなどもありますので、そういったものを活用してください。
 また、最近よく使われている光量の強い小型懐中電灯は、専用の充電池を使
っている場合があります。この場合、通常の乾電池は使えません。

乾電池は規格と出力を確認して揃えよう。

 防災用品で使う消耗品は、基本は手に入りやすいことです。
 できれば普段から使い慣れておくことで、本体にセットした電池の液漏れや、予備電池の利用期限切れを起こすことを防ぐことも可能です。
 また、その電化製品が使える電池の規格にも気をつけましょう。
 乾電池には大きく分けるとマンガン電池、アルカリ電池、エネループなど再利用が可能な乾電池がありますが、電化製品にもそれぞれ適切な出力があり、それに適合する乾電池があります。
マンガン電池だと動かないものや、 再利用型乾電池が使えない電化製品がありますから、その電化製品が使える電池の規格を必ず確認して準備するようにしてください。
ちなみに、私自身は単四電池で規格を揃えています。
軽くて持ち運びしやすいためですが、電池の持ちは大きさ相応ですので、数を用意することになります。

お薬手帳は必須の持ち物です

自分が飲んでいる薬。
災害時にどのように調達するか考えたことがありますか?

お薬手帳の表紙
お薬手帳で命を守ろう

薬の必要な持病をお持ちの人や小学生までの子どものいる方は、避難用の持出セット、
あるいは普段持ち歩く自分の荷物の中に、お薬手帳を入れておきましょう。
災害が発生したとき、自分のかかりつけの医院や診療所、薬局が無事である保証はありません。
もし持病を持っている場合、薬が切れたら死活問題ということにもなりますし、
小さなお子さんの場合、薬の合う合わないが非常に重要な問題になってきます。
災害で被災し、避難生活を続けていると、その間にはDMATを初めとする災害支援の医療チームが 被災地に入ってきて、避難所を回って医療支援をしてくれます。
 でも、自分のことを全く知らない医者に対して、短時間で正確に自分の病気や症状、どんな薬を使っ ていたかを完璧に説明できる人なんて殆どいないのではないでしょうか?
 その時、自分に必要な薬を得るための最良の手段となるのがこのお薬手帳なのです。
 この手帳には、いつどんな診療科からどのような薬がどれだけ、何日分出たのかがきちんと記録されています。
 診察する医師は、このお薬手帳の記録を元にして病気を推察し、薬を処方することが可能になるのです。
 また、飲んだ薬の履歴を見ると、副作用のあったものや効かなかったものなども分かることがあるため、
 短い診療時間で適切に診断し、薬を処方することが可能になります。
 毎日飲まないといけない薬のある人は、お薬手帳を持ち歩き、いざというときに使えるようにしておきましょう。
 また、お薬手帳の中のどんな薬をもらったか書かれた部分を、スマホやタブレットで写真を撮ってクラウドサービスに預けておいたり、コピーを取って、そのコピーを避難用の持出セットに入れておくのも手です。
 自分や子どもの身を守る大切な一つの方法として、お薬手帳を忘れないようにしましょう。
 なお、ご存じだとは思いますが、お薬手帳は一人に一冊です。
 医療機関ごと、薬局ごとに一冊ずつ作るのではありませんので、もし万一、そのような使い方をしているのであれば、大至急一冊にまとめるのをおすすめします。

防災グッズ、何を用意しよう?

防災というと、さまざまな道具が必要だと言われますが、本当のところ、何を用意したらいいのでしょうか?
私は、普段の生活に必要なものを基本に、プラスアルファで準備すればいいのではないかと思っています。
今回はそんな考え方を基本に、防災用品の準備を考えていきます。

1.防災用品の考え方

子供用防災セットの一例。これだけではかなりものが不足している。

防災用品といっても、そもそも何を準備したらよいのかさっぱりわからないという方も多いと思いますが、あなたはどうですか?
インターネットでちょっと検索してみると、実にさまざまなところから防災グッズがセットになったものが販売されています。
災害に備えて準備するものがセットになっていて、「防災士が監修」とか「災害経験者が推奨」などと書かれていると、「これなら」と思って買ってしまうものですが、そうやって買ったものって、買った後は安心してしまって一度も開かずにタンスの肥やしになってしまっていませんか?
これは「非常用」として普段の生活から切り離してしまっていることが原因で、こうなるといざ災害が起きたとき、せっかく準備した防災用品は期限切れや破損、またはどこにしまったかわからないという事態になってしまいます。
防災用品というのは日常生活の延長線にあるものなので、普段使うものを用意しておけばいいのです。
まずは自分や家族の生活を考えて、何をどれくらい、いつ使っているのかを洗い出すところから始めましょう。
例えば、赤ちゃんのいるおうちでは、ほ乳瓶や消毒セット、粉末ミルクとそれを溶かすための水に湯沸かしセット、紙おむつ等は必要になるでしょう。
逆に高齢の方のいるおうちでは、老眼鏡や入れ歯、補聴器、大人用おむつなどが必要になるかもしれません。
目が悪ければコンタクトレンズや眼鏡が必須な人もいるでしょうし、ひょっとしたらプロテインがないと困るという人もいるかもしれません。
自分の生活を軸にして用品を考えていくと、無いと困るものが見えてきます。
それらを防災セットの中に入れ、手持ちのものを使い切ったら防災セットから新しいのを取り出し、防災セットには買ってきたものを入れておく。
このサイクルを確立することで、数日間は確実に生活できる防災セットを簡単に作ることができます。
現在の政府の計画では、3日から1週間くらいで各種資材が届くようになることになっていますので、最悪のことを考えて1週間程度を前提に備えをしておくとよいでしょう。
ただ、1週間分を持って避難というのは現実的ではありませんので、1日から3日分はリュックサックに詰めて「非常持出用防災セット」にしておき、残りは分散して収納しておくと生き残る可能性が高くなります。
また、お薬手帳は必ず持って避難しましょう。

2.必ず準備しておくもの

どんな防災セットにも必ず準備しておかないといけないものがあります。
防災セットの基本的な考え方として「飢えないこと」「身体を冷やさないこと」「不安におちないこと」「衛生的な環境を維持すること」があげられます。
これを解決するためには、最低限「水」と「食料」「携帯トイレ」「防寒用品」「灯り」「携帯ラジオ」「歯磨きセット」が必要となります。
その上で、歩きやすい靴、頭部を保護する帽子、新聞紙、ゴミ袋やビニール袋、ウエットティッシュ、ヘッドライト、カイロ、カセットコンロと鍋などお湯を沸かせる道具、敷物やブルーシート、それら1日~3日分の道具を入れて歩くためのリュックサックを用意しましょう。

3.防災でしか使わなさそうなものはどうしよう?

ヘルメット。あると安心。でも場所をとる。

防災用品のうち、人によっては防災の時しか使わないだろうというものがあります。
例えば、防災用品を入れるリュックサック。
登山やキャンプ、ピクニックが趣味でも無い限りは、防災用品が全部収まるようなサイズのものはたぶん必要ないでしょう。
避難するときには両手は空けるというのが鉄則ではありますが、防災用品を厳選することで普段使いしているカバンに収めることができるかもしれません。
いろいろと試してみて、自分で納得のいくリュックサックに非常持出用防災セットを入れるようにしましょう。
防災ずきんやヘルメットはどうでしょうか。
頭部を守るものとして防災用品の中でもかなり有名なものですが、ヘルメットはともかく、普通の生活で防災ずきんを使うことはまずないでしょう。
あればそれに越したことはありませんが、綿やアラミド繊維などで作られた丈夫な帽子の中にショックを和らげるタオルを入れてかぶるだけでも、それなりに安全は確保できます。
この場合は、首元を守るためにその部分にもタオルを垂らすようにします。また、化繊でできた帽子は火がつくと燃えてしまうのでお勧めしません。
かぶるものがなければ、タオルでもないよりはまし。頭部を何かで保護するという考え方を持ってください。
ホイッスルも防災セットを買うと大抵の場合はついてきます。
このホイッスル、建物や山が崩れて巻き込まれ生き埋めになったとき、救助隊に自分の位置を知らせるために使うとされているものです。
ということは、これはリュックサックに入れておくのではなく、普段から身につけていつでも使えるようにしておかないと駄目だということがわかります。
いつも首からかけ、いつでも使えるようにしてあれば、防災だけで無く怪しい人が近づいてきたら吹いて撃退するという防犯対策にも使うことが可能です。
最後はローソク。お仏壇があって普段から使い慣れていれば別ですが、そうでなければどのように使うのかのイメージが沸かないのではないでしょうか?
よくあるのは、ローソクはあっても火を点ける道具がないということ。ローソクと一緒に必ずマッチを保管しておくことです。
ライターは知らない間に壊れている可能性もあるので、壊れる心配のないマッチ、できれば防水タイプのものをローソクや乾燥剤と一緒にジップロックなどの密封できる袋に入れて置きます。たまに意識して点けて使うようにすると、被災時にも使おうという気になります。ただし、ガス爆発には十分に気を付けてください。

なんとなくイメージができたでしょうか?
防災セットにはいろいろなものが入っていますが、ぱっとみて何に使うのかよく解らないものがあるとしたら、それは災害時にもあなたでは使えないものです。
あなたが使うものをあなたが選んでセットする。防災用品は手近なところで揃えていけばいいのです。
また、普段登山やキャンプをする人であれば、新たに備えないといけない道具は殆どないと思います。
まずは用意して使ってみる。そして、あなたにあった道具を揃えていけば使える防災セットができると思います。
また、それぞれの道具の細かいお話は、またこれからやっていければいいなと考えています。
どうぞご安全にお過ごしください。

災害時の情報収集について考える

大規模災害になると、各メディアは一斉にその災害に対する情報を流し始めます。
この情報を流す過程で、各メディアは行政機関に電話をかけて情報を聞き出すわけですが、災害対応時には行政機関の防災担当部署にそんな余裕はありません。
各社がばらばらに電話してくるため、本来しなければならない対住民への対応が遅れてしまうことがありますから、災害時のマスメディアの役割とモラルに対して、本当は意識を持って欲しいところです。
でも、マスメディアがあるからこそ住民に素早く正確な情報が伝わることもまた事実。
また、最近ではSNSからの発信も増えて、マスメディアが報道しない埋もれたさまざまな情報が支援者に届くようになってきています。
今回は災害時にどんな風に情報を集めたらいいのかを考えてみました。

1.マスメディアからの情報発信


災害が起きると、その影響を受けた人は現在の状況を確認したいと思います。
どこがどんな風になって、どんなことが起きているのか。
これを確認するには、まだまだマスメディアの力が必要です。
一般的には、テレビやラジオ、ネット配信の記事というところで一次情報を集めることが多いのではないでしょうか。

このうち、一番冷静に事態がわかるのは、恐らくラジオだと思います。
映像が無く音声だけのため、情報を発信する側も受け取る側も動揺すること無く対応ができます。
また、ラジオは発信局が最大でも各都道府県単位、小さいところでは市区町村単位で置かれているので、より細かく情報を集め、発信することができます。
そして、ラジオの基地局は災害に強く多重化されていることが多いため、受信ができなくなるということも比較的少ないと思われます。

次に、テレビはどうでしょうか?
テレビは、どちらかというと被災地の外にいる方々向けのような気がします。
ここのところ続く大規模災害の中継を見ていると、災害がエンターテイメント化した状態で伝えられているような気がします。
映像がインパクトを与えられる場所、つまり被害が大きいところばかりを強調して伝えるため、全体像がわかりにくいということもあります。
もちろん、地元に必要な情報も提供されてはいるのですが、全般にラジオよりも大味という気がします。
デジタル化され、その地域に特化した災害情報も発信できるようにはなっていますが、被災地向けかというと少し疑問符がつきます。
避難所にテレビが設置され、被災地のひどい部分ばかりを強調して流されることによって、被災者が精神的ダメージを受けることもありますので、報道する側にも配慮をお願いしたいところです。

ネット配信の記事は、新聞社や通信社の配信する記事が主になります。
記者がきちんと調べて文章にして、それが配信されますので、きちんと記者が活動していれば、一番正確な情報が配信されるはずです。
ただ、被災後には役に立ちますが、現在進行形の災害には対応できません。

2.インターネットの情報


インターネットによる情報は、行政機関のホームページや配信メール、SNSがあります。
行政のホームページは回線が細いのと更新が遅いのが難点ですが、どこで何が起きているのかがピンポイントで判断できます。
また、行政からのお知らせメールに登録して災害に関する情報を受け取るのもいい方法だと思います。
ただ、メールはサーバーを経由するため、場合によっては忘れた頃に届くということもありますので、大規模災害ではあまりアテにはならないかもしれません。
ツイッターやLINE、フェイスブックといったSNS(ソーシャルネットワークサービス)が災害の時に活用できるのは、ここ最近の災害で証明されています。個人の安否に始まって、物資の提供やライフラインの復旧状況、各種支援の受けられる場所の情報提供など、これがあったおかげで助かった人も多かったと聞きます。
そして、嘘の情報が飛び交っているのも、ご存じのとおり。
例えば、熊本地震では「動物園からライオンが逃げた」と、ご丁寧に合成写真付きで拡散させた人が逮捕されましたし、平成30年西日本水害では、岡山県で爆発したアルミ工場の動画と称する映像がマスメディアで公表され、後に中国の工場の爆発の映像であることが分かって、報道したマスメディアが謝罪することが起きたりしています。
個人がさまざまな情報を発信できるのは非常に便利ですし、小さな声でもそれをかなえることのできる誰かに届けられるようになったことは、非常にいいことだと思います。
ただ、その内容と発信時間をチェックすることができないと、後でとんでもないことが起きてしまうことも事実です。
先ほどの熊本地震では、嘘の記事と写真が拡散された結果、逃げ出した元にされた熊本市動植物園には問い合わせの電話が100件以上かかってきて、一時仕事ができなくなるくらいの状況になりました。
また、東日本大震災では足りない物資情報のツイートがとんでもなく拡がって、その避難所にいつまでも同じものばかり届くような事態もありました。
あるいは西日本豪雨では救援要請のツイートが続いた結果、どこで誰がまだ救助されていないのかがわからなくなってしまったこともありました。
SNSで呼びかけるときには、発信者がいつの時点の情報なのかを本文中にはっきりと明記しておく必要があります。また、支援する側はその情報がいつ発信されたのかをきちんと確認した上で対応を判断しないと、せっかくの支援が無駄になってしまいます。
SNSは間違いなく便利なツールです。ただ、使い方を間違えると、多くの人に被害を与えたり、困らせたりすることも確かです。
そこを意識して使えるといいなと感じます。

3.情報収集する手段の電源を確保しておこう


情報を発信している手段はたくさんあります。
でも、情報を受け取る側は、受け取り続ける準備ができているでしょうか?
即応性のある情報を受け取る機械には、どんなものでも電源が必要です。
例えば、携帯ラジオや携帯テレビ、スマートフォンなどの電源の予備は持っていますか?
特にスマートフォンの場合には、その辺で乾電池買っていれるというわけにはいきません。
高出力・大電力消費型となっている最近のスマートフォンに対して、手回し式や乾電池型の充電器もあるにはありますが、新品の電池を使っても、スマートフォンの電池を充電するには容量が足りません。
そのため、自分のスマートフォンに備えられている電池消耗を防ぐ機能を理解しておいて、いざという時にそのモードへ切り替えることと、モバイルバッテリーを持っておくことは必須です。
ここ最近の大規模災害で、コンビニの店頭から真っ先に無くなるものの一つにモバイルバッテリーがあるそうですが、スマホが高性能化し、それに伴ってバッテリーも大容量化しているため、モバイルバッテリーの容量によっては充電しきれないという事態も想定されます。
自分のスマホの電池容量以上、出来れば2~3回充電できるくらいの容量のあるモバイルバッテリーを用意しておくと、災害時にも慌てなくて済みます。
満充電したモバイルバッテリーを一基、普段のお出かけセットに加えておいてください。