炊き出しで気をつけること

 大規模な災害が起きると、さまざまな場所で炊き出しが行われます。
 被災者同士が材料を持ち寄ったり、ボランティアの方が避難所まで来て調理したり、さまざまな形はありますが、行政からの配給弁当はパンか冷たいお弁当が多いですから、温かい食事ができるのは非常にありがたいことです。
 ただ、その時には衛生管理を徹底することがいつも以上に大事になりますので気をつけておいてください。
 例えば、水道が損傷して潤沢に水が使えない状態であるなら、素手で食材を触ることは厳禁です。手には普段からさまざまな雑菌がついていることはご存じだと思いますが、満足に手洗いのできない状態だと間違いなく汚れた状態になっています。アルコール消毒すればいいとお考えの方もいると思いますが、あれはあくまでも普段の手の状態がある程度衛生的であることが前提ですので、水と石けんによる手洗いの補助だと考えてください。
 素手で食材を触らないためには、使い捨ての手袋を着用すればいい話なので、自治会などで準備する災害セットの中には必ず使い捨て手袋を加えておくようにしてください。そして、使い捨て手袋はゴム製でない方が安全です。これはゴム製が食材に悪さをするわけではなく、ゴムアレルギーの方がいることを想定する必要があるからです。
ゴムアレルギーの方はゴムに接触すると赤くなって腫れたりかぶれたようになったりします。災害後には病院も稼働できていないことが殆どですから、抗アレルギー薬も手に入りません。
 非常時にはそういったことに意識が向きにくいですから、手袋はゴム製以外、例えばポリプロピレンなどの素材のものを用意しておく方がいいです。
 次に食材の温度管理。肉や魚は常温だと腐敗が進みます。クーラーボックスに入っているからと言っても安心はできません。しっかりとしたクーラーボックスにしっかりと冷やせるだけの保冷剤を入れ、必要時以外は開け閉めせず、炊き出しで材料を全部使い切るようにしてください。
 また、生肉や生魚を使った道具は雑菌に汚染されていると考えて、しっかりと洗浄もしくは処分を行ってください。充分な消毒ができれば良いのですが、そういった環境でない場合も多いと思いますので、使い捨ての割り箸などを使って利用後は処分するようにした方が安全です。

炊き出しの基本は素手では触らないことと食べ物全てに火を通すこと。


 最後に、出来上がったらすぐに食べること。暖かいものであれば2時間以内を目安に食べきるようにしてください。食べられなかったものは、もったいないですが全て破棄をしましょう。
 もし食中毒になったら助からないかもしれないと考えて、間違っても食中毒が起きないような衛生管理をするようにしましょう。
 なお、発生した生ゴミは液体と固体を分離した上で固体はビニール袋などでしっかりと密閉してゴミ袋へ、液体は猫の砂や吸水ポリマーなどに吸収させた上で、ビニール袋に密閉してやはりゴミ袋へいれるようにしてください。
 生ゴミは固体も液体もハエやゴキブリ等が発生する格好の温床となりますので、処分までしっかりと衛生管理をすることが大切です。
 被災地では食中毒を出すと死者が出てしまうかもしれません。そうならないためにも、衛生管理をしっかりと行って、安全に暖かくておいしいものが食べられるようにしておきましょう。

災害ストレスと向き合うには

 災害ストレスという言葉があります。被災した人達がさまざまな理由から受ける通常とは異なるストレスで、不安やイライラ、不眠、感情のコントロールができなくなる、PTSD(心的外傷後ストレス障害)など、さまざまな形で発露します。
 でも、これらの災害ストレスはそれを受けるとわかっていると、ある程度の予防ができますし、何らかの事情で症状が出てきても適切な治療を受ければ症状を抑えることができます。
 例えば不安やパニックを感じたときには大きな深呼吸をゆっくりと繰り返すことで落ち着きを取り戻すことができます。
 また、誰かと話をすることで心に抱えたさまざまなストレスは軽くなることが多いです。家族、友人・知人、地域の人などと会話することで気持ちが楽になることもよくあります。知り合いに話すのがちょっと憚られる気がするなら、巡回相談の保健婦や傾聴ボランティアの方に話を聞いてもらうこともできます。
 災害ストレスで一番よくないのは一人で頑張ろうとすること。そして頑張らないといけないと思い込んでしまうことです。
 被災後、気持ちを切り替えて復旧・復興にあたることになりますが、周囲の様子は気にしないことです。あくまでも自分のペースで復旧・復興を進めること。まわりと差がついても気にしない。「まぁ、いっか」が合い言葉です。
 そして頑張りすぎず、疲労を感じる前にしっかりと休憩したり、リラックスタイムを設けて気持ちを休ませてください。被災したことによるストレスを抱えているのですから、休み休みの復旧でちょうどいいのです。
 どうしてもなんとかしたかったら、ボランティアなど他人の手を借りてください。一人での復旧はまず無理ですから、助けてもらうことは決して恥ずかしいことでも情けないことでもないのです。
 そうやって意識していても、災害ストレスは多くの人に襲いかかります。もしもあなたがいつもと違うなと思ったら、そのときに「ああ、今災害ストレスなのか」と思ってください。そんな風に自分の状態が分かるとなんとなく落ち着くことが多いですが、おかしい状態が続きそうな気がしたら、お医者様に相談してください。
 ストレスは早めに治療すれば症状を抑えることができる病気です。
 そして、災害復旧は長期戦ですから、体調管理をしっかりと行いながら復旧をしていくくらいでちょうど良いのです。
 災害ストレスは感じ方が一人一人みんな違います。自分の違和感、周囲の違和感、そういったものを意識して上手にいなしていきたいものですね。

傾聴ボランティアの存在

 災害を経験した被災者は、相当長い期間何らかの精神的なストレスを抱えていることが多いです。
 発災から少しの間は呆然と、それから急に元気になって復旧復興に東奔西走し、気がついたら疲れてしまって何もしたくなくなるという流れがよく言われています。
 「発災直後」「ハネムーン期」「減退期」「再建期」と呼ばれる各段階で、症状を軽くするのが「人に話を聞いてもらう」という行為です。
 よく知っている人や避難所の人達には言えないことがたくさんあり、それを見知らぬ人に話すことで精神的な均衡を取り戻すことができる。
 「王様の耳はロバの耳」ではありませんが、胸に貯まったあれこれを黙って聞いてくれてうなずいてくれる。そういった存在。それが傾聴ボランティアです。
 大きな災害では「傾聴ボランティア」が静かに活躍をしています。
 話をしっかり聞いてもらって存在を認めてもらい、そして受け止めてもらったという安心感があれば、もうちょっとやってみるかと思えるもの。
 肉体的な支援や専門的な支援ももちろん必要なのですが、被災者の話を聞く傾聴ボランティアはこれから先非常に重要なボランティアの一つになってくるのではないかと思っています。
 ちらほらと傾聴ボランティアの研修会も増えてきています。
 体力的に労働ボランティアが難しくても、話を聞くだけならできる人はたくさんいると思います。
 被災地に必要でとても重要なボランティアの一つとして、傾聴ボランティアについて知っていただきたいなと思います。

避難所の幻想

 あなたは災害時の避難所というとどのようなイメージを持っていますか。
 身一つで避難すれば、食事、就寝、快適な居住空間が確保されて少々の不便はあるにしても、それまでとさほど変わらない生活を送れる場所だと思っていますか。
 それとも、身一つで避難したら食事も寝るところもなく、避難所からはあぶれてしまって空腹を抱えて建物の犬走りでうずくまっていることもありうる場所だと思っていますか。
 この二つは極端な例ですが、大規模な災害になると、多くの場合は後者の状態になって非常につらい思いをすることになることが殆どです。
 そのため、車中泊や損壊した自宅で無理矢理生活するような人達が大勢出てきます。
 避難所に避難しても、よほど事前準備のよい自治体で無い限りは、避難所に必要な資機材は置いていません。殆どの場合、その避難所を運営する地元の自治会や自主防災組織が防災倉庫に準備していたものが供出されることになります。
 自治体は住民に対して平等であることが望まれていますが、運営が自治体でない場合にはあらかじめの取り決めで資機材が運用されます。その時、あなたは助けてもらえる関係を作っているでしょうか。
 避難所は基本的には避難する場所のみを提供しています。避難して生活するためのさまざまなアイテムは自分で持ち込まなければならないのです。
 国も地方自治体も、全ての住民に対して支援できるだけの物資は持ち合わせていません。だから事前にしっかりと準備をしておくように言い続けているのです。
 安全が確保されたなら、基本は自宅避難。旅行者や家が全壊したり道路が通れなかったりといった理由で家に入れない人達が避難所で生活するのが一番合理的な避難方法です。
 繰り返しますが、避難所には自分の命を守るための資機材は置いていません。それを忘れずに、自分自身あるいは自治会や自主防災組織などで資機材の準備をするようにしてください。

防災とヱヴァンゲリヲンのコラボレーション

 「新世紀ヱヴァンゲリヲン」というアニメ作品をご存じの方がいらっしゃるでしょうか。
 東日本大震災では、節電を呼びかけるためにこの作品になぞらえた「ヤシマ作戦」が盛り上がっていたのを思い出しましたが、あの世界をモチーフにした防災ネタが面白くなってきています。
 まずはゲヒルンというセキュリティー企業が配信しているアプリ「特務機関NERV防災アプリ」。
 自然災害の情報や気象情報などが配信されて便利です。最近では専用車両も用意して、災害時には被災地で情報配信サービスができるようになっているのだとか。
 そして、先日は日本気象協会がヱヴァンゲリヲンの字体や雰囲気を取り込んだ防災パンフレットを作成しました。題して「防災知識補完計画」。
 知っている人から見るとタイトルだけでにやりとするかもしれませんが、中身は非常に真面目に作られています。が、結構世界観が馴染んでるなぁという印象を受けました。
 普段、防災について考えるのがいろいろと面倒な方でも、こういった何かとのコラボレーションによるものであれば興味を持ってもらえるかもしれません。
 また、防災に興味のある人が作品を見に行くという効果も期待できると思います。
 あの作品に出てきたセカンドインパクトが起きてはたまりませんが、いざというときに我が身を守るため、防災アプリや防災知識補完計画などで情報や知識をしっかりと手に入れておいてほしいと思います。

特務機関NERV防災アプリ」(特務機関NERV防災のウェブサイトへ飛びます)

防災知識補完計画」(日本気象協会「トクする防災」のウェブサイトへ飛びます)

「新世紀エヴァンゲリオン」って何?という方のためのリンク
新世紀エヴァンゲリオン」(wikipedhiaの該当ページに飛びます)

災害時の危険ってどんなこと?

 防災関係でよく言われる言葉に「災害が発生しそうなときに危険だと思ったらすぐに避難してください」というのがあります。
 命を失いかねない状況になることだと考えると、「避難=命を守る」ということになりますので、命の守り方をしっかりと理解していないといけません。
 では、災害で起きる命を失いかねない状況を考えてみましょう。
 まずは大雨。大雨になると水路や地面が水を裁ききれなくなって越水や水没、土石流、地すべり、土砂崩れなどの土砂災害が発生し、それに巻き込まれることによって命の危険が生じます。
 対策はというと、海抜高度の低いところや川の周囲、又は川の跡、土砂災害の起きそうな場所には住まないことが一番です。とはいえ、実際のところはそこまで考えて住んでないと思いますから、危険なときにだけそれらの危険のない、海抜高度が高くて土砂災害の起きない場所に逃げておけば危険を避けて命を守ることができます。
 台風も同様で、これに風対策が追加になります。家の周りのものが飛ばないように、他からものが飛んできても被害が出ないように、例えば植木鉢やバケツなどは屋内にしまっておく、屋根の修理は早めにしておく、窓には飛散防止フィルムを貼っておくなどの準備をした上で、水の被害が起きそうなら、やはり水に対して安全な場所に逃げておくことで命を守ることができます。
 風が強いと停電になることが多いので、ランタンや懐中電灯といった照明具やカセットガスといった調理器具の準備も必要になるかもしれません。
 最後は地震。いきなり来るとは言え、大きな揺れだけでは心臓の悪い方以外で危険を感じる方はいないと思います。
 問題になるのは揺れによって発生するさまざまな被害です。例えば、家屋の倒壊、土砂災害、高いビルだと長周期振動も問題になりそうです。
 対策としたら、家屋の耐震調査をし、必要があれば耐震補強すること。家具が人のいる場所に倒れないようにしておくこと、なによりも危険な場所には住まないことです。

 「三十六計逃げるに如かず」という言葉もありますが、危なければ危なくないところへ逃げれば良いだけで、その情報の一つとして自治体のハザードマップが存在します。
 ハザードマップを過信してはいけませんが、一つの目安になるものであることは間違いありません。
 自治体が配っているハザードマップにしっかりと目を通して、避難所以外でも危険がなさそうな場所も探しておいてください。

 また、ものの特性を理解しておくこと。例えば、水は高いところから低いところへ必ず流れていきますので、水の通り道を避けて高いところへ移動すれば安全は確保できます。粘土質な土地なら、土石流や地すべりが起きやすいかもしれませんので、早めに逃げておく方がいいかなという予測ができます。

 災害なんかで死なないために、自分の身を守るための行動基準を作ることはとても大切なことです。いろいろなことを検討しながら安全に逃げられるやり方を見つけてくださいね。

応急処置を巡る小さな戦い

災害時の応急処置の講習では「まず止血!」をたたき込まれます。

 先日、止血法を巡ってちょっとしたトラブルがあったそうです。
 伝聞調なのは、憤懣やるかたなしといった表情のAさんのお母さんからお話を聞いたから。
 Aさんは当研究所のジュニア研究員としてワークショップや他所の防災イベントなどに積極的に参加してくれている子どもさんなのですが、この子と他の子で止血方法を巡って言い争いになったのだそうです。
 もう一人の子、ここではBさんとしますが、このBさんが指を切ってしまいました。
結構血が出ていたようで、それを見ていたAさんはすぐにきれいなハンカチで傷口を押さえるように言ったそうです。
 いわゆる圧迫止血なのですが、Bさんは「まずは傷口を洗ってから」と水道の流水で傷口をあらい、その上で切り口から心臓に近い場所の血管を押さえながら傷口を圧迫止血したそうです。
 Aさんはちょうどこの出来事の少し前に応急処置の方法を習ったばかりで、そこでは「まず止血」と教わっていたのでそのように言ったのですが、Bさんも自分の通うスポーツ教室で応急処置の方法を教わっており、そこで習った方法で処置を行っていました。
 このことでAさんとBさんが喧嘩になってしまって、困ったAさんのお母さんが筆者に相談してこられたのです。
 聞く限り、どちらの手順も間違っていません。
 ただ、災害時の処置とスポーツ事故の処置が異なるのかなと考えて調べてみたのですが、応急処置法を書いた本にはどちらのやり方も出ています。
 強いて言えば、「水洗い→止血」の手順を記載している本の方が「まず止血」と書かれている本よりも古いかなといった感じですが、なんとなくすっきりしなかったので応急処置を教えている方に聞いてみました。
 その答えは「怪我の程度や周囲の状況によって異なる」というものでした。
 大きな怪我、特に出血が多いと、すぐに止血をしなければ命にかかわりますから、まず止血となります。
 また、そこまで出血量が多くなく水洗いしたら傷口が見えるようなレベルであれば、洗えってから止血すれば汚れが残らなくてよい。
 極論ですが、出血が止められるならそれでいいのです。
 納得いかないAさんには、どっちの処置も間違っていないことと、まず圧迫止血で血を止める、つまりAさんの処置で良いことを説明しました。
 そして方法は一つではなく「出血が止められる」という目標が達成できるならそれでいいというと、ちょっと不思議そうな顔をしていましたが、Bさんのやり方もあるんだということを理解してくれるといいなと思います。
 今回、止血法を巡って子ども達がバトルを繰り広げているのを知り、しっかり目的やその根拠を伝えていかなければいけないなと感じました。

自分のいる場所の周囲を歩いてみよう

 おうちや職場の周りにどんな道やものがあって、どこを通るとどこへ出て、どんなお店があるのか、あなたはご存じですか。
 家や職場などの生活空間になると、普段使ったり必要だったりする場所以外は行かないし知らないものです。
 でも、災害が発生するとそれらの情報を持っているか持っていないかでそのあとの動きがずいぶんと変わってきます。
 大通りしか知らない人は大通りしか歩けませんし、裏道や回り道を知っている人は歩く場所の選択肢が広がります。
 また、移動や避難をすることになったとき、自分の知った場所以外はイメージができませんからなかなか歩くことにはなりません。
普段から散歩をされる方は、いろいろとコースを変えてみてください。普段歩かない人は、まずは家や職場の周りを歩いてみてください。意外と知らない風景が目の前に広がってこんなところがあるんだと驚くことがあると思います。
 家や職場、そしてその間の通勤通学路だけでなく、いろいろな道を通って、周りにどんなものがあるのかをしっかりチェックしておいてくださいね。

大雨特別警報「解除」が「切り替え」に言い換えられた理由

 先頃、「大雨特別警報の解除」を「大雨警報への切り替え」と言い換えるという内容がNHKニュースで報道されていました。
 何を当たり前のことを言っているのだろうと思っていたのですが、これは気象情報の発表の仕方に起因するものだと言うことに気づいて「そういうことか」と考えてしまいました。
 気象に関する情報を見ていると、「注意報」→「警報」→「特別警報」という流れを伝えるときに「~が発表されました」といういい方をします。
 そして解除に進む場合には「~が解除されました」といういい方をします。
 この解除といういい方がくせ者で、実際には殆どの場合「特別警報の解除」=「警報の発表」となっています。普段こういった警報などあまり気にすることのない人がこの「特別警報の解除」を聞くと「命が危険な状況は終わったと感じてしまうのではないでしょうか。緊張し、不安な状態が「解除」という言葉で状況が終わったと捉えてしまい、その後に続く「警報の発表」は耳に入らない状況になることは当然あり得ると思います。
 同じ内容、例えば大雨注意報と大雨警報と大雨特別警報は同時に出ることはありませんから、どうせやるのであれば、注意報、警報、特別警報の各ステージの変更時に「~に切り替えられました」といういい方にした方がすっきりすると思うのですが、本当に危険を招きかねない言い回しの変更だけでもされたことは誤解を防ぐ意味ではとても大切なことだと思います。
 ところで、なんでこんな変更が入ったのだろうかと調べてみると、気象庁が設けている「防災気象情報の伝え方に関する検討会」の令和2年3月9日の議事の中で特別警報が解除になったときの伝え方について「解除」という言葉が適切かどうかという話が出ていました。
 最終的に出された「令和元年度報告書」の中では「特別警報の解除」を「警報への切替」と表現すべきされ、「可能なものから取り組む」と概要では書かれています。
 その後のプレスリリースには記事が出ていませんが、大雨による出水期を迎え、気象庁はこれに沿って特別警報については解除ではなく「警報への切り替え」という表現に改めたようです。その準備ができたので各報道機関に依頼を行った結果、今回のNHKの報道のようなことになったのではないかと思われます。
 対象が国の河川だけというところが気になるところですが、これにより一人でも勘違いをする人が減るといいなと思います。
 参考までに今回の資料の飲用先を記載しておきますので、気になる方はぜひご確認ください。

NHKウェブサイト内「NEWSWEB」

「大雨特別警報「解除」を「切り替え」に 氾濫の警戒呼びかけへ」(2020.6.16付)

気象庁ウェブサイト内

「防災気象情報の伝え方に関する検討会」

災害対策は自分で考えて自分で準備することが一番大事

災害が起きるときには、さまざまな情報がさまざまな行政機関から発表されます。
ですが、自分を守るための対策は自分以外の誰もやってはくれません。
災害が起きて避難した先で「毛布がない」「食料がない」などといって避難先の担当者に文句を言う方が一定数おられるそうですが、自分が自分を守るための備えをせずに誰かが自分を守ってくれるというのは甘すぎる考えです。
例えば、益田市の食料備蓄量を見てみることにします。令和元年度の益田市の防災計画に出ている非常食のうち、一番多いアルファ米の五目ご飯は6,650食となっています。
ぱっと見るとそれなりの量に見えますが、これを政府推奨の3日間3食分と考えるとどうでしょうか。わずか738人分の分量でしかありません。益田市の人口が45,836人ですから、大規模な地震でも起きたら備蓄食料が食べられるのはよほど運のいい人だけと言うことがわかると思います。
この備蓄量は、あくまでも事情があって自分のための食料品を避難先に持参できなかった人に対する支援用であり、住民を食べさせるために備蓄しているわけではないということがわかると思います。
毛布や生活資材についても同様で、毛布は1,333枚、調理用のコンロはリストに出ていない状況であり、避難した人のものを全て避難所や行政機関が準備してくれているなどと言うことは考えられないと言うことがご理解いただけるのではないでしょうか。
同様に、避難すべきかどうかの判断は行政機関がすべきものではありません。避難勧告や避難指示(緊急)という名前でもわかるように、避難するかどうかの判断はあくまでも各個人にゆだねられているのです。
幸いにして東日本大震災以降、ハザードマップなど予防的な情報が提供されるようになり、避難すべきかどうかや避難する経路、避難できそうな場所にいたるまで事前に検討できるようになってきました。
自分の食べるものや排泄物の処理の準備、どんな災害で避難しないと身の危険があるのか、避難するならどこへどんな経路で移動すればいいのかなど、自分が生き残るためには与えられている情報を元にして自分でしっかりと考えておかなければなりません。
あなたの命を守り、あなたの命を繋ぐのは行政機関でも自治会でもありません。あくまでもあなた自身が行動しなければならないのです。
最近の地震や大雨、大型台風の情報や被害を見ると他人事にしておくわけにもいかないということはご理解いただけると思います。
あなたを守るために、あなたはどんな準備をしておけばいいのかをしっかりと考えて準備し、いざというときに備えておいていただければと思います。

【参考資料】
食料備蓄の数字:出典元・益田市防災計画付属資料P231(https://www.city.masuda.lg.jp/uploaded/attachment/13217.pdf
益田市の人口数:益田市の人口統計【令和2年度】(5月末現在)(https://www.city.masuda.lg.jp/soshiki/3/detail-56083.html