一番長くいる場所の安全を確保する

家具を固定していないとこうなる。

 どんな人もそれぞれに自分が一番長く過ごす場所というのがあると思います。
 長くいるということは、そこで過ごす時間が当然長いわけで、そこで被災する可能性が高いと考えていいと思います。
 そのため、まず最初に長くいる場所の安全を確保するようにしてください。
 例えば、自分がその場所で普段いる姿勢より背の高い家具を置かないとかその姿勢よりも高い場所に重量物を置かない、背の高い家具や重量物を置くならしっかりと固定することが要求されます。
 多くの人は寝室で寝ている間が一番長くその場所で過ごすことになると思いますので、寝る場所にはものをなるべくおかないのが基本と考えてください。
 そして、できればドアはスライド式または外開きにして扉の外側にはものを置かないこと。
 窓は飛散防止フィルムを貼り、厚手で長めのカーテンまたはブラインドをかけておく。照明は天井に直付けするか、あるいは壁の間接照明とする。
 これだけでかなりの安全度が確保できます。
 難しいようにも見えますが、やってみると割と簡単にできます。
 もう少しすると大掃除を始めるご家庭も多いと思いますので、そのときお掃除と一緒にお部屋の安全確保もしてみてください。

自分で判断する基準を作る

 災害後の避難行動というのは基本的には自己責任です。
 状況を判断し、そこから避難する必要があれば誰が何と言おうと避難する。
 自分の命は他人に預けないことが非常に大切です。
 ただ、学校に関して言えば、なぜか「先生の言うことに従いなさい」という風に教えています。前提としては、日常で教員の判断が常に正しいという認識が多くの人にあるからではないかと思うのですが、これは非常に危険なことで、指導者が誤った判断をした場合には全滅してしまう愚かな事態を招きます。
 はっきりと書きますが、現在学校がやっているような定型の訓練のための訓練では、本番で迅速な避難が必要な場合何の役にも立ちません。
 正直なところ、大人よりもよほど子供の判断のほうが正しいということは、「釜石の奇跡」と呼ばれる子供たちの行動と教員の判断の遅れで発生した「大川小学校の悲劇」ではっきりと証明されています。
 災害について、先生が一番怖さを知らないのかもしれないと思うこともありますが、せっかく避難訓練するのであれば、迅速に安全と判断する場所まで自分の判断で避難するものにしてほしいです。
 もしもそうしていれば大川小学校の悲劇は防げたのではないかと思います。
 地震と津波の組み合わせによる災害は正確な判断よりも迅速な行動が要求されます。
 迅速な行動をするためには、子供たちが各自で判断して避難行動をとることが大切ですので、整列や点呼を徹底するよりも、避難行動を開始するための判断基準を作ることを徹底したほうがいいと思います。
 現在の訓練のための訓練を是とする限りは、予定調和を乱すような自己判断の訓練は永遠に認められないとは思うのですが。

新聞紙とレジ袋

新聞紙とゴミ袋で作る防寒着の一コマ。新聞紙がないとちょっとだけ防寒着にしづらい。

 防災工作の中に、かなりの頻度で登場するのが新聞紙とレジ袋です。
 以前はどちらも普通に家にあるものでしたので、こういった工作を知っていると非常に便利だったのですが、現在あなたのうちにはこの二つが十分にあるでしょうか。
 新聞はとらないおうちが当たり前になりましたし、レジ袋有料化以来、マイバックが主力になってレジ袋も姿を見なくなりました。
 ただ、防災工作では相変わらず新聞紙とレジ袋を使った応急品の作り方をやっていて、自分でもやりながら「準備してなきゃできないよな」と思っています。
 時代とともにさまざまなものが移り変わっていきますので、防災工作としてはおうちに常にありそうなものでの工作を考えていかなくてはいけないのですが、いざというときに使えそうなどのおうちにでもありそうなアイテムというのがだんだんなくなってきています。
 現在だと、アルミホイルやラップなら、ほとんどのおうちにはまだあると思っているのでそういったものでの防災工作をしているのですが、そもそも応急品を作るための資材が家にない状態なわけですから、おうちには正規品をきちんと準備しておいたほうが安心です。
 非常用持ち出し袋にしても、防災備蓄品にしても、必要とされるものはおうちによって違ってくるので、こうすればいいというのはなかなか難しいのですが、トイレと飲料水と食料、それに防寒対策と煮炊きする燃料は共通のテーマですので、おうちの実態にあわせてしっかりと準備しておきましょう。
 防災工作は、あくまでも家にあるもので代替品を作ることが目的なので、備蓄するのにわざわざ代替品を準備する必要はありません。
 もちろん、新聞紙もポリ袋もあればいろいろなことに使えるので、あるに越したことはないのですけれど。

雨水をためる

 地震や台風、水害などで浄水場が被害を受けたり、停電が起きたりすると水道は止まってしまうため、片付けや掃除に必要な水が手に入らずに困ることになります。
 少し前から話題になっていますが、給水管の老朽化も相当ひどくなっているようで、災害が起きるたびに給水設備に大きな損害が出ていることから、生活用水の復旧というのは思ったよりも時間がかかるのかもしれません。
 給水車は基本的に飲料水が主で、生活用水に使うためには量が足りません。また、生活用水を給水車の水で確保しようとすると、給水所から家までの輸送方法がかなり難しいです。
 井戸があればそこからくみ上げて使うこともできますが、停電になったとき、手押しポンプがないとくみ上げができないことになってしまうので、井戸の場合には蓄電池を使うなど、くみ上げができる体制を確保しておく必要があります。
 川や水路の水がきれいであればそちらからくみ上げて使うこともできますが、くみ上げるためのバケツやポンプなどが必要になります。
 手っ取り早いのは、雨水を貯めるタンクを用意しておくことです。
 最近では集合住宅でもうまくやれば設置できるかなと思ってしまうくらいさまざまな大きさや形が出ています。
 建物の構造や雨を貯めるために流す雨どいの状況によりますが、取水できるのであれば、このタンクを据えるだけである程度の生活用水の確保ができますから、検討してみる価値はあると思います。
 できれば藻やボウフラが湧きにくい外観が黒や濃い色の雨水タンクが理想ですが、農業用の貯水タンクでも定期的に藻の掃除をするのであれば大丈夫です。
 このタンクがあると、掃除や洗濯に使う生活用水が確保できるので、生活環境が格段に良くなります。
 また、浄化槽タイプのトイレであれば、当座はこの生活用水でトイレが使えるようになります。
 災害後には、きれいな水はいくらあっても困るものではないので、備えの一つとして、雨水タンクも検討してみてほしいと思います。

災害時の応援派遣要請は誰がするのか

 結論から言うと、災害時に自衛隊や消防、他の行政機関への派遣要請を行うのは各都道府県知事または市区町村長で、派遣を決定するのはその部門を所管する大臣や長官、あるいは知事会や市長会といった首長の会ということになっています。
 日本はシビリアンコントロールが徹底していますので、いくら目の前で大きな災害が起きていても、その地域を代表する首長からの出動要請がない限り、勝手に出動することはできません。
 ただ、被災地の情報収集を行うことまでは妨げられていないので、派遣要請があって出動命令が出るまでは、出動命令が出てからいかに短時間で効率よく被災地の支援に入れるのかを調査しています。
 ただ、被災地の首長がどういう判断で自衛隊に派遣要請を行うのかは各首長の気持ち一つで決まるので、災害派遣部隊の出動が早かったり遅かったりしても、あくまでも首長や大臣といった政治家が責任を負う部分で、実働部隊ではないことに注意が必要です。
 ここまで災害が続くのであれば、災害復旧を本業とする、例えば危機管理庁のような部門が専門でやってもいいのではないかという気もします。
 現状の正確な情報が首長にきちんと伝わること、そして状況的に外部支援が必要であるかどうかを判断できなければ、いつまでも派遣要請は出ないことになります。
ちなみに、警察だけはどこからの要請がなくても警察庁の判断で自律的に被災地へ警察の災害派遣ができるようになっています。
現地の交通規制や治安維持を考えると必要な措置だと思いますが、場合によっては首長以下の幹部が全滅している場合も想定されますので、首長の派遣要請によらない方法も検討しておいたほうがいいのかもしれませんね。

災害派遣の仕組み(陸上自衛隊のウェブサイトへ移動します)

緊急消防援助隊の仕組み(総務省消防庁のウェブサイトへ移動します)

災害に係る危機管理体制の再構築に向けた規定の整備(警察庁のウェブサイトへ移動します)

助けてほしい人と助ける人をつなぐもの

 台風14号、15号と立て続けに大きな被害が出ているようですが、被災された方の一日も早い復旧を願っております。
 ところで、災害復旧支援ボランティアについては、基本的に要請があって初めて対応が始まるということをご存じですか。
 というのも、被災地がどうなっているのかや災害復旧支援ボランティアが必要なのかどうかというのは、被災地で被災した被災者の方が声を上げない限り周辺ではわかりません。そのため、災害復旧支援ボランティアに助けてほしいという声が届かない限りは、必要がないと考えてしまうからです。
 ニーズをくみ取る装置は、現在災害ボランティアセンターがありますが、自治体や社会福祉協議会が素早く立ち上げるためのノウハウは持っているところがほとんどなく、被災規模が大きくなると対応しないといけないことも増えるため、被災者のニーズを把握することがどうしても遅くなってしまいます。
 プッシュ式で現地に入って調査すればいいという話もありますが、被災地でボランティアの名をかたる詐欺師グループなどと区別がつかないことや、昨今は新型コロナウイルス感染症の蔓延ということもあり、被災地以外からの災害復旧支援ボランティアは現地で受け入れる体制ができて初めて活動ができるのが現状です。
 そして、被災地でどのようなニーズがあるのかが把握できて、そしてそれをまとめたところで、災害復旧支援ボランティアの編成が始まります。
 ここ最近起きたたくさんの災害のおかげで、災害復旧支援ボランティアも団体化され、さまざまな出来事に対応できるように技能が細分化、専門化されてきています。
逆に言えば、現地のニーズがわからない限り、どの災害復旧支援ボランティア団体が出かけたらいいのかがわからないため、対応のしようがないのです。
 助けてほしい人と、助けてあげたい人は存在しています。この両者をつなぐことができるところ、例えば災害復旧支援ボランティアセンターを被災からどれくらいで立ち上げることができるかが、その後の復旧に大きな影響を与えるような気がします。
 両者をつなぐ平時からのシステム作りが、これからは必要なのではないかと思っています。

被災したときの写真の撮り方

悲哀判定
被災状況判定では、第一次は外回りだけ調査します

 建物が被災した後、お片付けにかかるまでに被災状況の写真をしっかりと撮っておこうという話は最近よく出ている話です。
 被災度判定する行政職員や保険会社の職員が現地に来るよりも写真を使った判定のほうが判断が早いため、被災した時に出る罹災証明や保険金も早く出ることになります。
 ただ、撮り方を間違えるとせっかく写真を撮っても使えないといった状況になることがありますので、写真を撮る時にはちょっとだけ意識しておくといいことを今回は書いてみたいと思います。

1.外構は正面と斜め、遠景と近景を複数枚撮っておく

 おうちの外回りの写真は各面を正面から撮影するのと、それから2面を入れて撮影すること、そして被災した部分を全体が入るようにと、被災している部分がはっきりわかるような写真を撮るようにします。
 判定する人は写真だけで判断できるように、全体がどんな感じで、どこがどのように被災したのかがわかるようにしておきます。
 もしも建物が傾いてしまっている場合には、これにプラスして紐の先に重りを付けたものを傾いた部分に垂らし、垂直からどれくらいずれているのかを分かるような写真も撮っておきましょう。

2.比較物を入れておく

 撮影する際に全体や被災部分の写真には被災している場所の大きさがわかるものを一緒に写しておきましょう。
 例えば人物、あるいは指差しや手のひら、足などを一緒に入れる、または近景でメジャーなどの目盛りが読み取れるようなものであれば、目盛りを一緒に写し込んでおくと判断がしやすいです。

3.被災している部分は全て写真で近景を撮る

 外構、建物内ともに被災している部分は遠景だけでなく近景を写しておきます。屋内の場合にも、可能な限り異なる場所から被災状況の写真を撮っておきましょう。

4.写真は日付を入れておく

 スマートフォンやデジタルカメラで撮影をすると、撮影した写真が持っているexifデータに日付が記録されますので、写真を印刷するときには必ず日付も表示させておきましょう。
 誤った日付にならないように、撮影前にはスマホやカメラの日付を確認しておいてください。
 もしも誤った日付で撮影したとしても、exifデータは改ざんしないこと。また、写真にも手を加えてはいけません。
 ちょっとしたことで写真を偽造したといわれてしまうこともありますので、ありのままで提出するようにしましょう。

5.片づけを開始する前に評価をする市町村役場や保険会社に了解をもらっておく

 写真が証拠として採用されない場合もあるので、しっかりと写真を撮ったら、片付ける前に罹災証明を発行する該当の市町村と保険会社には片づけを始めていいかの確認を必ず取りましょう。
 写真がしっかりと撮影してある場合には、基本的にはどちらも片づけ開始を認めてくれると思います。
 ただ、お片付けが始まったら証拠はあなたの撮影した写真だけです。あとで認定されないということがないように、しっかりと写真を撮っておいてください。

 大規模災害になると、人的資源の不足からどうしても被災度判定が遅れてしまいます。早めに判定を完了して罹災証明や保険金の手続きを行うためにも、写真の撮り方をしっかりと覚えておいてくださいね。

災害に係る住家の被害認定(内閣府防災のウェブサイトへ移動します)

食材管理はしっかりとしておこう

思いついて備蓄庫の片づけをしてみた。使っているようでも、期限切れを起こしてしまっていた。

 非常用持ち出し袋や防災ポーチの中に入っているものは割とよく点検するのですが、備蓄庫に入っている食料品はあまり点検していません。
 というのも、我が家では備蓄庫のものはローリングストックということで普段の生活の中で管理しているということになっていて、期限切れは起こさないと考えていたからです。
 もちろん、長期保存できるものばかりなので、あまり気にしていないということもありますが、先般、久しぶりに中の片づけをしてみたら、期限間近、期限切れのものがごろごろと出てきてびっくりしました。
 普段ローリングストックをしていると考えていても、日ごろの調理ではあまり使わないものは、そのまま備蓄され続けます。魚などは普段は生のものを普通に使っているので、なかなか缶詰の出番がないということもあります。
 また、大好きだけど高価でなかなか食べられなかったというのもありました。
 缶詰はともかく、他のものは劣化が進んでいくので、思い付きで消費のディキャンプをすることに。
 「これ、どうやって使う気だったっけ?」と買った当時のことを思い出しながら、調理しておいしくいただきました。

温めて食べるより常温のほうがおいしかったりするものもある。使ってみないとわからない。


 非常用持ち出し袋や防災ポーチの中身は意識することが多いと思いますが、普段使いしているはずの備蓄品も、時にはチェックすることが必要だなと思いました。

「保険が使える」にはご注意ください

 台風14号が日本列島を縦断しましたが、被災された方にはこころからお見舞い申し上げます。
 一刻も早い復旧・復興ができることをこころから願っております。
 さて、災害が起きると出てくるのが国の被災者生活再建支援法や都道府県、市町村など行政機関からの支援金と、掛けていれば損害保険の保険金など、復旧に必要となるお金の手続きのことです。
 災害からの復旧であれこれとかなりやらなければいけないことがたくさんあるときに、手続きのよくわからない支援金や保険金を申請するというのは精神的にかなりの負担です。
 そして途方に暮れているそういうときに、自分の住んでいるところまでやってきて、建物を修繕し、お金の申請手続きも代行してくれると聞くと、ついお願いしたくなるのもわかります。
 ただ、これらの業者はさまざまなトラブルを起こすことが多いですので注意が必要です。
 代行手数料として支払われる額の半分以上を持っていくことはざらですし、建物修繕が必ず保険適用になるかどうかもわかりません。
 手続きの方法は行政機関の窓口や保険代理店の方が丁寧に説明してくれますので、自分でやるのはさほど難しくはありません。
 また、弁護士、司法書士あるいは行政書士が無料相談窓口を開くこともあります。
 普段面識のない人や見知らぬ建築業者などが手続き代行の話を持ち込んでくるときにはほぼ100%トラブルが起きますので、申請手続きは必ず自分でするようにしてください。
 なお、日本損害保険協会でもチラシを作っていますので、よかったらご確認ください。

被災者生活再建支援法」(内閣府防災のウェブサイトへ移動します)

「保険が使える」にご用心」(日本損害保険協会のウェブサイトに移動します)

被災家屋のお片付けで気を付けること

昭和58年島根県西部水害の後の復旧の様子

 災害で被災した家屋をお片付けするのは生活再建の第1歩になります。
 ただ、お片付けをする前にしっかりとした準備をしていないとお片付けが原因の感染症などにかかってしまうことがありますので、気を付けてください。
 まずはできる限り肌を露出しないこと。
 長袖、長ズボン、長靴にゴム手袋、帽子かヘルメットを頭にかぶって、マスクとゴーグルをつけることが原則です。
 特にマスクとゴーグルはのどや鼻、目の粘膜を守るために必須です。
 また、手袋や長靴は防刃性能のあるものが適切です。破片や釘などで刺し傷や切り傷ができると、そこから菌が入って炎症を起こします。
 特に破傷風にかかると最悪の場合死んでしまいますので、できる限り怪我をしないような対策をしておきましょう。

災害復旧支援ボランティアが被災した場所のお片付けの格好の一例(政府広報オンラインから)

 また、洪水や水害などで被災した場合には、しっかりとした換気も必要です。
 放っておくとカビが発生し、そのカビで呼吸障害を起こすこともありますので、窓や扉は全て開け、できれば扇風機や送風機などで床下や壁といった場所をできるかぎり乾燥させましょう。
 最後に、全体にしっかりと消毒をしておくこと。
 床下や建物につかう消毒はいろいろと違いますので、確認したうえて適切な消毒薬を使うようにしてください。
 お片付けのときの換気と消毒をサボると、せっかく片付いた後でさまざまな問題が発生します。
 家とあなたの生活を守りたいのであれば、お片付けのときに徹底的にされることをお勧めします。

家屋が浸水したら感染症に注意 水害後の清掃で気を付ける3つのポイント(ウェザーニュースのウェブサイトに移動します)