食事の問題を考える

1日くらいは興奮や不安で食事が喉を通らないかもしれませんが、時間が経つと、どんな状況であれお腹が空いてくるものです。
その時、自分がいかにきちんと食事ができているかで、それから先の気力や体力に大きな違いが出てきます。
ここでは生きるために重要な食事について考えてみたいと思います。

1.非常食は何を準備しておこう?

アルファ米各種。同じ品名ですが、味はそれぞれに違います。

災害に備えて持出用防災セットを作るとき、割と多くの人が悩むのがここの部分です。
インターネットで「非常食」と検索すると、アルファ米やビスケット、クラッカー、乾パンといった乾燥しているものか、カロリーメイトやシリアルバー等の栄養補助食品、飴・羊羹・チョコレートといったおかしで高カロリーのものが検索の上位にきます。
どれも非常食として頼もしいものですが、これらの非常食をうまく使うためには「水」が必要です。
一般的には1日3リットル必要といわれていますが、これは食事から摂取する量とあわせてのものですので、例えば水気の多いレトルトおかゆなどを持っている場合には、その分水を減らすことは可能です。
水を準備した上で、自分が持ち歩ける量の非常食を考えていけばよいと思います。
非常食にもっとも必要な事は「自分が食べて元気になれること」です。
あなたが普段よく食べているものの中から選ぶのがよいかもしれません。
例えば、ナッツ類や乾き物といったお酒のおつまみもカロリーが高くて食べやすいですからお勧めです。
自分が好きなものや食べやすいものを中心にして準備し、新しいものを買ってきたらストックから出して食べる。
数日持てばいいのですから、そんな風に管理していれば消費期限切れも起こさずにすみます。
そうそう、避難先で火が使える環境とは限りませんので火を使わなくても食べられるものの方がいいと思います。
また、非常食は一般的に高カロリーですので、持出用防災セットには歯磨きセットを必ず入れておくようにしてください。

2.配慮の必要な人の食事

もしあなたや家族がミルクや離乳食、介護食やアレルギーなど食事に配慮の必要な人であるなら、支援物資をアテにせず、あらかじめ自分で準備しておく必要があります。
食料は支援物資の中でも最優先に指定されているもので、必ず送られてきます。
ただ、大量の食料を短時間で発送する関係上、残念ながら健康な成人対象のものばかりで、配慮は期待できません。
そのため、身体の都合で食べられないものがある人は、自助で備えておく必要があるのです。
最近は液体ミルクやレトルト離乳食、レトルト介護食やアレルギー対応された非常食も販売されていますので、自分にあったものを選んでストックしておきましょう。
また、ストックした食料や水は必ず食べる人に試してもらっておいてください。
普段は母乳や手作りのものを食べていても、災害が発生すると母乳が出なくなったり、手作り食を作る場所や材料がないことが発生します。
そのとき、非常用に用意しておいた既製品に切り替えると、味や喉ごしなどの問題で食べられなかったりするものがあるからです。
あらかじめ試しておくことで、いざというときに必ず使えるものが準備できます。
また、成長や症状の変化によってもストックすべき食料は変化していきます。
新しいものを買ったらストックから使うようにし、いつも適したものがストックされているようにしてください。
ところで、粉状の授乳用ミルクの調製や離乳食・介護食についてはお湯や温めができないと困るという問題が発生するかもしれません。
そんな場合には、火を使わなくても温められる「ヒートパック」「湯沸かしボックス」といった発熱・加熱剤を使うことも考えてください。
これは発熱に水を必要としますが、避難先で授乳用ミルクなどお湯が必要な場合にはこの発熱・加熱剤を使うことでお湯を作ることが可能ですのでお勧めします。
また、不安なときに飲む一杯の暖かな飲み物はそれだけで緊張をほぐし、安心できるものです。
非常食を準備する際には、そのあたりも考えておくとよいでしょう。

3.ストックで気を付けておかないといけないこと

缶詰やレトルトの組み合わせで簡単においしいものができる、かも?

災害時に支援物資として提供される食事は、どうしてもおにぎりやパンといった炭水化物中心の食事になります。
避難所の開設が長くなると、災害支援用に特別に作られたお弁当が配布されるようになりますが、やはり野菜が不足しており、衛生管理上の問題からかなり冷えているものが提供されます。
火が使えるようになったら、それらの支援物資に加えて切干大根や干し椎茸、高野豆腐、お麩といった乾物を使った汁物をぜひ添えてください。
できれば野菜や魚介類や肉類の缶詰、レトルトパックなどを使ってもう一品、、不足する栄養素を補充するようなおかずが作れるとよいですね。
また、生鮮食料品が不足しがちになることから、ビタミン不足による口内炎や肌荒れなど身体の内外でさまざまな不調も発生してきます。
それらを防ぐために、粉末状の緑茶や青汁、野菜ジュース、ビタミン剤などもストックの中に加えておいてください。
実際のところ、非常食からいつものご飯にいかに早く復旧できるかが、体力と気力を維持するのに重要になります。
非常食のストックをすることはもちろんですが、保存食品でどういう風に作ればいつもの食事に近づけるかについても、いろいろとやってみてはいかがでしょうか。

普段持ち歩く防災アイテムの一考察

 1月3日に起きた熊本の地震では、幸いにして大規模な被害がでなかったようですが、被災された方にこころからお見舞い申し上げます。
 今回の地震では、九州新幹線が数時間にわたり運行できなくなった影響で、数百人の方が列車内に閉じ込められたとの話を聞きました。
 発災から20分は照明が消えていたこと、そしてそれから数時間は列車が動かなかったことは、乗っていた人から見るととても不安だったと思います。
 ところで、駅に着いた人のコメントの中に「車内に自動販売機が1台しかなくて、すぐに全部売り切れ。数時間の間飲み物がなくてつらかった」というのがありました。
 確かに電気の切れた電車はただの箱ですので、空調も効かず、さぞ蒸し暑かったろうなと思います。
 また、いつ動くのかという不安や緊張から喉が渇いたであろう事も推察できます。
 この場合、いったい自分で何を準備しておけばよかったのかについて考えてみたいと思います。

1.災害はいつ起きるか分からないことを意識する

 今回の地震もそうですが、災害というのはいつ起きるか予測できません。
 起きてから慌てても遅いので、それまでに準備することが必要だと思います。
 この準備というのは、普段から自分の安全を意識するということ。
 少々重くはなりますが、自分の荷物の中に自分の生命が維持できる程度の備えを用意しておかないといけないということです。
 もっとも、防災持ち出しセットみたいな大がかりなものを持って歩くのも非現実的なので、数時間から1日程度飢えと渇きをしのげるようなもので構わないと思います。

2.何を用意したらいい?

 水を入れた小さな水筒、キャラメルや飴、チョコレートといった簡単で高カロリーなおやつを少々、タオル、モバイルバッテリー、暇つぶしの本といったところでしょうか。
 出来るなら、これに乾燥防止用のマスクや保温用シート、携帯ラジオがあるとよりいいと思います。
 私の場合には、330ml入りの水のペットボトルと羊羹が1本、モバイルバッテリーとマスクが鞄の中に入っています。
 タオルや本は入っていたりいなかったり。
 住んでいる地域を走っているのがディーゼル気動車ですので、冷暖房が切れる心配はいらないかなという判断をしています。
 このセットは普段から持ち歩いているので、いざというとき、とりあえず一食は大丈夫という安心感もあります。

3.待つしかないという諦め

 列車の場合には、大原則として勝手に線路を歩いたりするわけにいきません。乗務員の指示に従って行動することになります。
 そのため、自分で出来ることは殆どありません。
 緊急事態で乗務員に助言することはできるかもしれませんが、基本的には救助を待つか、動くのを待つかの二択しかないわけです。
 焦っても仕方がないので、そんなときこそ深呼吸。
 そして携帯ラジオで現在の状況を把握しておけば、この後どうなるのかという予測もできますから、さほど焦りも慌てることもありません。
 また、普通であれば、列車内へ閉じ込められてもせいぜい半日から1日くらい。それまでには何らかの手が打たれます。
 乗務員を怒っても怒鳴っても状況は変わりませんので、のんびりと待つことにしましょう。

4.面倒くさかったら


 そうは言っても、できるだけ身軽に過ごしたいという方も大勢いると思います。
 そんなときは、閉じ込められるかもしれない場所にいるときだけ、水やお茶を買っておくという方法があります。
 電車やバス、エレベーターに乗るときに、ペットボトルを1本買っておけばいいのです。
 ジュースやコーヒーでは、緊急時には水分になりません。かえって喉が渇いてしまうので、買うのは水かお茶に限定します。
 使わなかったら、そのまま持ち歩いて飲んでしまいましょう。

 最初は面倒くさいし重たいなと思いますが、慣れると意識しなくなります。
 お出かけのときの携帯雨傘と同じくらいの感覚で持って歩けると、いざというときに頼りになりますよ。

まず身を守る習慣をつけよう

本日18時10分頃、熊本地方を中心とする震度6強程度の地震が起きたようです。
地震の起きた地域での被害が軽いことを祈っております。

ところで、その時間、我が家では明日からの仕事や保育園への登園に備えて、ちょっと早めの晩ご飯を用意している最中でした。
普段ついているラジオから緊急地震速報の不協和音の警報音が響くなか、子ども達がどうするのかを見ていましたが、
うちの子ども達は三人とも慌てず騒がず、テーブルの下に潜り込むと、そこでダンゴムシのポーズを取って揺れに 備えていました。
結局、我が家のある場所では揺れを感じることも無く無事だったのですが、ラジオから各地の震度の速報値が読み上げられるまで、ぴくりともせずにじーっとしていた子ども達の姿を見て、毎日ちょっとずつでも災害に対する備えについて話していてよかったなと心底思ったものです。

机の下でダンゴムシ
机の下でダンゴムシはお約束です


 とりあえず、揺れないことを子ども達に伝えると、もぞもぞと机の下から出てきて、ほっとしたような表情を浮かべていました。
 落ち着いた後、彼らにどうして机の下に潜ったんだと尋ねたら、一番上の子が「僕は揺れるのは嫌なんだ」。
 二番目と三番目は、それぞれに「上の子が机の下に潜ったから」と返事をしてくれました。
 一番上の子は、狭くて転がらない場所を無意識に選んでいたようです。
 そして、下の二人は、上の子の動きを見て自分たちも同じような行動をしてくれました。
 晩ご飯を食べながら、
「学校では窓ガラスや天井についたあれこれが落ちてくるから、必ず机の下に潜ること」
「建物の耐震補強はされているから、揺れてもとりあえずは崩れないから、慌てないこと」
について説明しました。
「ものが落ちてこないように押さえていればいいんじゃないの?」
と一番下の子の質問には、
「震度5以上では、人が押さえて支えるのは無理。潰されてしまうから、押さえないでものが落ちてこない場所に逃げること」
「外にいる場合はどうするの?」
という質問もあったので、
「転がらないようにその場でしゃがむこと。ただし、ものが上から降ってこない場所であることを必ず確認すること」
と、私に分かる範囲の怪我をしないための方法を話しました。
 その後で、もしも明日大きな地震が起きたら、どこに逃げるかという話になりました。
 家に一人で冬休みの一番上の子は「僕は公民館に逃げる」と考えながら言うので、公民館までの経路は古い家屋が多く、大きな地震では半分以上が倒壊するのでは無いかということと、避難先は問題ないので、安全を確保してから避難すること、そしてどこへ避難するのかというメモを残しておくことを確認し、 家族で約束をしました。
 一番上の子は、避難用品をどうするか考えていたようでしたが、普段山に遊びに行くときの装備をあらかじめ準備しておくこと、そして、なによりも一番に護るべきは自分の命であることを改めて話すことができました。
 毎日少しだけでも災害対策の話をすることで、いざというときに家族みんなが、お互いにどこでどんな動きをしているのかがわかること。
 そうすることで、どこにいるのかわからないという不安と、状況がわからない中、二次災害を覚悟しながら捜索をしなければいけないという危険を冒さなくてもすむ。
これが人的被害を小さくする一番の方法なのかなと、しみじみと考えました。

公衆電話を使ってみよう

 公衆電話を知ってますか?
 携帯電話が普及した結果、家でも街でも固定電話が姿を消しつつありますが、かつては普通に見られた町中の公衆電話、どこにあるかと聞かれてすぐに場所の返事ができるでしょうか?
 公共施設や住宅街、道路脇にたまに見ることがあるくらい存在感が無くなっている公衆電話ですが、実は災害になるとこれほど頼りになる存在はありません。
 災害が発生すると、被災地にいる関係者の安否を確認したり、状況を聞こうとしたりして、多くの人が一斉に電話をかけることになります。
 不要不急な電話はかけないようにと言われてはいますが、現実にはつい電話を使ってしまいます。
 また、被災地にいる人たちも、自分たちの安否を知らせたり、状況を連絡しようとして一斉に電話を使います。
 そうなると、被災地では爆発的に通信量が増えてしまい、輻輳(ふくそう)という状態になるので、NTTを初めとする通信事業者は、自社の通信システムそのものが動かなくなるのを防ぐため、限界を超える前に被災地に対する通信制限を行います。
 こうなると、災害時有線通信の指定を受けた電話以外は殆ど繋がらなくなり、何十回、何百回と電話をかけ続けてやっと1回繋がるというような事態になります。
 災害時有線通信というのは、公共の目的のために指定された各種機関があらかじめ通信事業者に登録しておくことでその電話からの発信を優先してもらえるというものなのですが、実は公衆電話もこの災害時有線通信の指定を受けているのです。そのため、被災した後でも比較的電話がつながりやすいとされています。
 自分の携帯電話でいつ繋がるかわからない電話をかけ続けるよりも、公衆電話を見つけてそこから電話する方が効率的ですし、携帯電話の電池も節約できます。
 ただ、この公衆電話を使うに当たっては、いくつか気をつけておかないといけないことがあります。

1.どこに公衆電話があるのかを知っておくこと。

 公衆電話を使いたくても、そもそも設置場所を知らなければ使うことができません。
 まずは自分の身近なところにある携帯電話の位置を確認しておきましょう。
 ちなみに、NTT西日本が設置場所の公開をしていますので、参考にしてください。

2.必ず小銭を用意しておくこと

 災害時には、公衆電話も電気系統が動かなくなるため、テレフォンカードを使うことができません。
 また、10円玉専用の公衆電話もありますので、必ず10円玉を複数枚用意しておきましょう。

3.使い方をマスターしておくこと

10円玉+ダイヤル式の昔懐かしいピンクの公衆電話。使い方、知っていますか?

 ある一定以上の年齢の方は大丈夫だと思いますが、生まれたときから携帯電話やスマートフォンのあった世代だと公衆電話を使ったことがない人もいると聞きます。
 受話器を取り上げてお金を投入し、通話音を確認してからダイヤルを押したり、回したりします。
 場所によっては10円専用の回転式ダイヤルのもの(ピンク色の電話です)もありますので、使い方を知っていないとお手上げになってしまいます。
 日頃から意識して公衆電話を確認し、たまにはそれを使って電話をかける練習をしておきましょう。

 携帯電話は便利なのですが、基地局が動かなくなると復旧に時間がかかります。
 各通信事業者もさまざまな手で通信回線を確保しようとしていますが、もっとも大切なのは不要不急な電話は被災地からも被災地以外からもしないことです。
 輻輳状態にならなければ通信規制も入らず、電話は普通に使えます。
 また、SNSで自分の安否を知らせておくのも手です。
 これまでの災害では、電話に比べるとパケット通信は格段に繋がりやすく、その中でもSNSはさほどのタイムラグがなく通信ができていたという実績があります。
 ただ、だからといってSkypeやLINE電話など、パケットを使った音声通信が増えれば、そちらも程なく通信が飽和状態になってしまうかもしれません。
 「災害時伝言ダイヤル」等も上手に活用して、自分の安否だけは早めに知らせておきたいものです。

防災用電化製品の乾電池のサイズと規格を意識する

 防災グッズを用意するときに気をつけておきたいのは、電化製品の電池の大きさを統一しておくことです。
 普通に準備すると、懐中電灯は単二電池、携帯ラジオは単三電池、ヘッドライトは単四電池やボタン電池ということになってしまい、それぞれの電化製 品で互換が無く、全ての予備電池を持って歩かなければいけないことになってしまいかねません。
 電池は、できれば汎用性の高い単三、あるいは単四に統一し、予備電池は一 種類あればいいようにしておくのが安全です。
 もし大きな懐中電灯を使いたいというのであれば、単三を単二電池として使えるようにするスペーサーなどもありますので、そういったものを活用してください。
 また、最近よく使われている光量の強い小型懐中電灯は、専用の充電池を使
っている場合があります。この場合、通常の乾電池は使えません。

乾電池は規格と出力を確認して揃えよう。

 防災用品で使う消耗品は、基本は手に入りやすいことです。
 できれば普段から使い慣れておくことで、本体にセットした電池の液漏れや、予備電池の利用期限切れを起こすことを防ぐことも可能です。
 また、その電化製品が使える電池の規格にも気をつけましょう。
 乾電池には大きく分けるとマンガン電池、アルカリ電池、エネループなど再利用が可能な乾電池がありますが、電化製品にもそれぞれ適切な出力があり、それに適合する乾電池があります。
マンガン電池だと動かないものや、 再利用型乾電池が使えない電化製品がありますから、その電化製品が使える電池の規格を必ず確認して準備するようにしてください。
ちなみに、私自身は単四電池で規格を揃えています。
軽くて持ち運びしやすいためですが、電池の持ちは大きさ相応ですので、数を用意することになります。

お薬手帳は必須の持ち物です

自分が飲んでいる薬。
災害時にどのように調達するか考えたことがありますか?

お薬手帳の表紙
お薬手帳で命を守ろう

薬の必要な持病をお持ちの人や小学生までの子どものいる方は、避難用の持出セット、
あるいは普段持ち歩く自分の荷物の中に、お薬手帳を入れておきましょう。
災害が発生したとき、自分のかかりつけの医院や診療所、薬局が無事である保証はありません。
もし持病を持っている場合、薬が切れたら死活問題ということにもなりますし、
小さなお子さんの場合、薬の合う合わないが非常に重要な問題になってきます。
災害で被災し、避難生活を続けていると、その間にはDMATを初めとする災害支援の医療チームが 被災地に入ってきて、避難所を回って医療支援をしてくれます。
 でも、自分のことを全く知らない医者に対して、短時間で正確に自分の病気や症状、どんな薬を使っ ていたかを完璧に説明できる人なんて殆どいないのではないでしょうか?
 その時、自分に必要な薬を得るための最良の手段となるのがこのお薬手帳なのです。
 この手帳には、いつどんな診療科からどのような薬がどれだけ、何日分出たのかがきちんと記録されています。
 診察する医師は、このお薬手帳の記録を元にして病気を推察し、薬を処方することが可能になるのです。
 また、飲んだ薬の履歴を見ると、副作用のあったものや効かなかったものなども分かることがあるため、
 短い診療時間で適切に診断し、薬を処方することが可能になります。
 毎日飲まないといけない薬のある人は、お薬手帳を持ち歩き、いざというときに使えるようにしておきましょう。
 また、お薬手帳の中のどんな薬をもらったか書かれた部分を、スマホやタブレットで写真を撮ってクラウドサービスに預けておいたり、コピーを取って、そのコピーを避難用の持出セットに入れておくのも手です。
 自分や子どもの身を守る大切な一つの方法として、お薬手帳を忘れないようにしましょう。
 なお、ご存じだとは思いますが、お薬手帳は一人に一冊です。
 医療機関ごと、薬局ごとに一冊ずつ作るのではありませんので、もし万一、そのような使い方をしているのであれば、大至急一冊にまとめるのをおすすめします。

防災・減災・縮災とは?

当研究所のコンセプトにも入っている「防災・減災・縮災」ですが、似て異なるものを表しています。
言葉の語源とその意味するところについて、そしてその先にあるものについて、ちょっとだけ触れてみたいと思います。

1)防災

文字通り「災いを防ぐこと」を目的とするものです。
具体的には、津波対策のための防波堤や川の線形改良、護岸工事、山の斜面が崩れないような対策工事など、ハード的なものを指し、日本では長年この「防災」に取り組んできました。
ところが、近年の災害の大規模化や公共事業の予算の縮小などにより、発生する災害を防ぐことが物理的に難しい状況になってきています。

2)減災

そこで、発生する災害はもう防ぎようがないので、人が受ける被害を減らそうという動きが出てきました。
これが「減災」と言われるもので、文字通り「災いを減らすこと」が目的となっています。
早めの避難や防災用品の充実、支援体制の強化などがここに位置します。

3)縮災

でも、「減災」をしても被害を無くすことはできません。
そのため、被災している期間をいかに短くするか、いかに自分の日常生活を早く取り戻すことができるのかという考え方の元に産まれたのが「縮災」です。

防災は大規模な工事を伴うため行政や大企業で無ければ実施するのは困難ですが、減災や縮災は個人や地域、組織や中小企業でも、努力次第で行うことができます。
それが「タイムライン」や「事業継続化計画(BCP)」と言われるもので、これらを作って訓練を実施することで、災害時にも可能な限り被害を防ぎ、通常業務を早く再開することが可能になります。
この時に気を付けないといけないのは、作成業者に丸投げしないこと。
つい「わからないから」と業者に丸投げしてしまいがちですが、実際に行うのは誰でも無いあなたです。
あなたが行う行動を、あなたをよく知らない他人が勝手に決めたところで、そのとおり行動できるとは限りません。
業者に作ってもらうなら、丸投げにせず自分も協議に加わって、一緒に作り上げていくようにしましょう。
そして、作りっぱなしにせず、定期的に訓練を行って、可能な限り減災・縮災ができるように備えておきましょう。

BCPってなんだろう?

災害対策においてよく出てくるのがこのBCPというものです。
大企業から中小零細、個人商店に至るまでこれを作成して欲しいという話が、政府から一時期かなりの勢いで発信されていたので、あなたも名前だけはどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか?
BCPとは「BusinessContinuePlan」の略で、日本語では「事業継続化計画」という言い方が多いようですが、名前から見ると商売をしている人や組織が作っておけばいいような印象を受けるかもしれません。
でも、このBCPはお仕事をしている方のみならず、全ての人が作っておくとよいものです。
今回はこのBCPについて触れてみたいと思います。

1.そもそもBCPって何?

「BCP」=「事業継続化計画」とは一体何か?
これは「災害が発生したとき、何が問題になるのか、どう対応したらいいのか、何から処理していくのか、何に誰が対応するのか」ということをあらかじめ決めておく作業のことです。
要するに、「被災してから復旧完了までの手順を決めておく」ということです。
この手順を決めて関係する全ての人が知っておくと、もし社長に何かあっても知っている人が手順通りに段取りをして事業が止まらないように復旧することができるというもので、途中の過程では自分の財産の洗い出しも行うことになります。
災害が発生すると、一度にいろいろなことへ対応しないといけなくなります。
あらかじめ対応を決めておくことで、やらないといけない手順を自動で動かすことが出来、想定していなかった事態への対応に専念できるようになります。
また、これが出来ると誰に何を頼んでおかないといけないのかも分かるため、さまざまな支援を受けやすくなります。
たまたま経営関係なので「Business」となっていますが、地域だと「Community」=CCP、医療現場なら「Medical」=MCP、学校なら「エデュケーション」や「スクール」となり「ECP」や「SCP」と略されます。
個人なら、さしずめ「人生=Life」となり、「人生継続化計画」=LCPと呼ぶのかなと思いますが、ここでは代表的な「BCP」と書くことにします。
ここの表示は、あなたが必要なものに読み替えてください。

2.BCPはどうやって作る?

BCPは次の順番に決めていきます。

1)自分は「いつ」「何を」「いつまでに」提供するのが仕事なのか、を確認します。
2)(1)で確認した仕事をやり続けるためには「何が無くなると困るのか?」を確認します。
3)(2)で確認した「無くなると困るもの」を「いつまでに、どうやって、どの順番で、誰が、どこで確保して使えるようにするか」を決めます。
4)(3)で決めたことを、やる人や確保する先にお知らせして協力をお願いします。その際、相手には「そこで確保が困難な場合に他に確保できそうな先」も確認しておきます。
5)(4)で決まったことを踏まえて、計画書を文章化します。
6)文章化したものがその通りにできるかどうか実際にやってみます。
7)問題が発生しそうなら、(3)に戻ってもう一度考えてみます。

(1)では「仕事」になっていますが、あなたが個人や家族で作成するのであれば、(1)は「自分の命を守ること」になります。
また(2)では「どうなると死んでしまうのか」を考えてください。
(3)の「無くなると困るもの」は「(2)で考えた死んでしまう条件を防ぐためには?」と読み替えます。

3.出来たらどうしよう?

できたら、とにかく一度その継続化計画を試してみましょう。
実際に動いてみると、思った以上にいろいろな問題が出てくるはずです。
問題が出たら、「それはどうやったら解決できるのか?」を考えて、計画書に組み込んでいきます。
発生する災害は一つでは無いので、さまざまな災害や複合的におきる災害も想定して考えてみます。
場合によっては「もうどうしようもない」ということが出てくるかもしれませんが、語尾に「?」をつけておくと、そのうちによい解決策が浮かぶかもしれません。
また、あなた一人で考えるのでは無く、複数の人に作った計画を見てもらって、さまざまな角度から考えてみることが大切です。
ここまでくるとおわかりだと思いますが、BCPは作って終わりではありませんし、あなただけで完結するものでもありません。
出来上がったものを定期的に見直し続けること、関係先にどうしたら動いてもらえるかを確認し続けることが大切なのです。

4.全ての継続化計画が繋がる世の中に

個人や組織、企業、地域、行政がそれぞれに継続化計画を作ってそれを繋げていくと、驚くほど地域復興が早く進みます。
いちいち場当たり的な判断をしていては、いつまでも何も決まらずに時間だけが過ぎていきます。
素早く復旧、復興し、受ける影響を最小限に留めるためにも、事業継続化計画を作っておきましょう。

防災グッズ、何を用意しよう?

防災というと、さまざまな道具が必要だと言われますが、本当のところ、何を用意したらいいのでしょうか?
私は、普段の生活に必要なものを基本に、プラスアルファで準備すればいいのではないかと思っています。
今回はそんな考え方を基本に、防災用品の準備を考えていきます。

1.防災用品の考え方

子供用防災セットの一例。これだけではかなりものが不足している。

防災用品といっても、そもそも何を準備したらよいのかさっぱりわからないという方も多いと思いますが、あなたはどうですか?
インターネットでちょっと検索してみると、実にさまざまなところから防災グッズがセットになったものが販売されています。
災害に備えて準備するものがセットになっていて、「防災士が監修」とか「災害経験者が推奨」などと書かれていると、「これなら」と思って買ってしまうものですが、そうやって買ったものって、買った後は安心してしまって一度も開かずにタンスの肥やしになってしまっていませんか?
これは「非常用」として普段の生活から切り離してしまっていることが原因で、こうなるといざ災害が起きたとき、せっかく準備した防災用品は期限切れや破損、またはどこにしまったかわからないという事態になってしまいます。
防災用品というのは日常生活の延長線にあるものなので、普段使うものを用意しておけばいいのです。
まずは自分や家族の生活を考えて、何をどれくらい、いつ使っているのかを洗い出すところから始めましょう。
例えば、赤ちゃんのいるおうちでは、ほ乳瓶や消毒セット、粉末ミルクとそれを溶かすための水に湯沸かしセット、紙おむつ等は必要になるでしょう。
逆に高齢の方のいるおうちでは、老眼鏡や入れ歯、補聴器、大人用おむつなどが必要になるかもしれません。
目が悪ければコンタクトレンズや眼鏡が必須な人もいるでしょうし、ひょっとしたらプロテインがないと困るという人もいるかもしれません。
自分の生活を軸にして用品を考えていくと、無いと困るものが見えてきます。
それらを防災セットの中に入れ、手持ちのものを使い切ったら防災セットから新しいのを取り出し、防災セットには買ってきたものを入れておく。
このサイクルを確立することで、数日間は確実に生活できる防災セットを簡単に作ることができます。
現在の政府の計画では、3日から1週間くらいで各種資材が届くようになることになっていますので、最悪のことを考えて1週間程度を前提に備えをしておくとよいでしょう。
ただ、1週間分を持って避難というのは現実的ではありませんので、1日から3日分はリュックサックに詰めて「非常持出用防災セット」にしておき、残りは分散して収納しておくと生き残る可能性が高くなります。
また、お薬手帳は必ず持って避難しましょう。

2.必ず準備しておくもの

どんな防災セットにも必ず準備しておかないといけないものがあります。
防災セットの基本的な考え方として「飢えないこと」「身体を冷やさないこと」「不安におちないこと」「衛生的な環境を維持すること」があげられます。
これを解決するためには、最低限「水」と「食料」「携帯トイレ」「防寒用品」「灯り」「携帯ラジオ」「歯磨きセット」が必要となります。
その上で、歩きやすい靴、頭部を保護する帽子、新聞紙、ゴミ袋やビニール袋、ウエットティッシュ、ヘッドライト、カイロ、カセットコンロと鍋などお湯を沸かせる道具、敷物やブルーシート、それら1日~3日分の道具を入れて歩くためのリュックサックを用意しましょう。

3.防災でしか使わなさそうなものはどうしよう?

ヘルメット。あると安心。でも場所をとる。

防災用品のうち、人によっては防災の時しか使わないだろうというものがあります。
例えば、防災用品を入れるリュックサック。
登山やキャンプ、ピクニックが趣味でも無い限りは、防災用品が全部収まるようなサイズのものはたぶん必要ないでしょう。
避難するときには両手は空けるというのが鉄則ではありますが、防災用品を厳選することで普段使いしているカバンに収めることができるかもしれません。
いろいろと試してみて、自分で納得のいくリュックサックに非常持出用防災セットを入れるようにしましょう。
防災ずきんやヘルメットはどうでしょうか。
頭部を守るものとして防災用品の中でもかなり有名なものですが、ヘルメットはともかく、普通の生活で防災ずきんを使うことはまずないでしょう。
あればそれに越したことはありませんが、綿やアラミド繊維などで作られた丈夫な帽子の中にショックを和らげるタオルを入れてかぶるだけでも、それなりに安全は確保できます。
この場合は、首元を守るためにその部分にもタオルを垂らすようにします。また、化繊でできた帽子は火がつくと燃えてしまうのでお勧めしません。
かぶるものがなければ、タオルでもないよりはまし。頭部を何かで保護するという考え方を持ってください。
ホイッスルも防災セットを買うと大抵の場合はついてきます。
このホイッスル、建物や山が崩れて巻き込まれ生き埋めになったとき、救助隊に自分の位置を知らせるために使うとされているものです。
ということは、これはリュックサックに入れておくのではなく、普段から身につけていつでも使えるようにしておかないと駄目だということがわかります。
いつも首からかけ、いつでも使えるようにしてあれば、防災だけで無く怪しい人が近づいてきたら吹いて撃退するという防犯対策にも使うことが可能です。
最後はローソク。お仏壇があって普段から使い慣れていれば別ですが、そうでなければどのように使うのかのイメージが沸かないのではないでしょうか?
よくあるのは、ローソクはあっても火を点ける道具がないということ。ローソクと一緒に必ずマッチを保管しておくことです。
ライターは知らない間に壊れている可能性もあるので、壊れる心配のないマッチ、できれば防水タイプのものをローソクや乾燥剤と一緒にジップロックなどの密封できる袋に入れて置きます。たまに意識して点けて使うようにすると、被災時にも使おうという気になります。ただし、ガス爆発には十分に気を付けてください。

なんとなくイメージができたでしょうか?
防災セットにはいろいろなものが入っていますが、ぱっとみて何に使うのかよく解らないものがあるとしたら、それは災害時にもあなたでは使えないものです。
あなたが使うものをあなたが選んでセットする。防災用品は手近なところで揃えていけばいいのです。
また、普段登山やキャンプをする人であれば、新たに備えないといけない道具は殆どないと思います。
まずは用意して使ってみる。そして、あなたにあった道具を揃えていけば使える防災セットができると思います。
また、それぞれの道具の細かいお話は、またこれからやっていければいいなと考えています。
どうぞご安全にお過ごしください。

被災物件の調査と証明あれこれ

被災した後、災害関係の証明(罹災(りさい)証明書や被災証明書といいます)を受けるのに、役所に行って手続きを行うことになります。
ただ、役所の対応する職員も普段は全く違う仕事をしているため、不慣れで手続きを間違えることも多々あり、被災者もさんざん待たされたあげくに再度手続きしないといけないはめになるようなことも起きているようです。
今回は、役所が出す各種証明について考えてみたいと思います。

1.住家の被災判定の種類

被災すると住家の被災判定を行うことになります。
ややこしいのは、これが三種類あって、それぞれに内容や手続きが異なることです。
行政への手続きに必要な罹災証明書は、申請しないと手続きができないことに注意してください。

1)応急危険度判定

この様式の他にもいくつか種類がありますが、色は統一されています。

被災した家屋を現状のまま利用したとき、とりあえずそれが倒壊しないかどうかを確認するものです。
緑、黄、赤の三種類の紙があり、緑は「とりあえず問題なし」、黄は「危険」、赤は「いつ崩れてもおかしくない」という意味があります。
応急危険度判定士の資格を持つ人(建築士や建築業者、行政の建築職員など)が、建物の状況をみて判定を行います。
これは被災自治体の判断で該当地域に応急危険度判定士が派遣されますので、申請は不要です。

2)被害認定調査

悲哀判定
被害認定調査では、第一次は外回りだけ調査します

罹災証明書の発行に必要な証明書を作るために必要な調査で、被災者からの申請が必要です。
基準は「どれだけ経済的にダメージを受けているか」というもので、「全壊」「大規模半壊」「半壊」「被害無し」の4種類にわかれます。
これには外観だけを見て決める一次調査と、屋内まで立ち入って行う二次調査の二つがあり、通常は一次調査のみで判定されます。
ただ、外観に影響が無くても屋内が壊れているという場合もありますので、判定後、再調査を申し出ることで二次調査を受けることになります。
ここで作られる罹災証明書が、行政機関の行う各種給付・融資・減免申請の根拠となります。
調査が完了すると「調査済証」が建物に貼り付けられますが、実施する自治体によっては行わない場合もあります。
また、災害の規模にもよりますが、申請から調査まで1週間~1月程度はかかるようです。

3)被災度区分判定

その建物を修理して引き続き利用することができるかどうかを調べる調査です。
これは被災者が個別に建築士に依頼して行うもので、費用負担が発生します。

2.住家以外の被災判定


住家以外で損害を受けた場合、例えば農地や林地、工場などで被害が出た場合には、申請手続きが異なります。
こちらは「被災証明書」といい、被害にあった場所の写真を角度を変えて複数枚撮影し、窓口で申請を行うと、原則その場で証明書が発行されます。
取り扱う市町村によっては、「被災証明書」では無く「罹災届出証明書」が発行される場合もありますが、いずれにしても罹災証明書よりも早いのが特徴です。
また、被災自治体によっては被害調査認定と同様に現地調査を行う場合もあります。この場合には、被害認定調査と同じくらいの期間がかかります。

3.注意点

どんな場合であっても、被災した場所の写真はかならず角度を変えて複数枚撮影しておきます。
特に住家以外の被災判定では写真が必須となりますので、申請するまでのところで撮影をしておきましょう。
また、民間の地震保険などの請求をする場合にも写真が必要となります。
全景数枚、被災箇所毎に数枚の写真を撮影しておくと、手続きがスムーズに進みます。
また、被害認定調査の時、外観を調べる一次調査の職員は屋内を調べる二次調査が出来ないので、判定後に再度申し出る必要があります。
調査を待てない状況であれば、写真を撮った上で行政機関に連絡し、修繕などの許可を受けてください。
住家以外の被災判定は、ルールが定まっていないため、被災自治体によって扱いが異なります。
申請窓口では、対象となるものが住家なのかそれ以外なのかをはっきりとさせて手続きしましょう。

大規模災害になると、被災自治体の職員は不眠不休の体制をとっても手が足りてないのが現実です。
そのため、処理が遅いと言って文句を言っても状況は変わりません。
幸い、行政関係の手続き以外はこの証明書の必要性はあまりないので、地震保険や生命保険などの保険関係や生活再建の具体的な手続きなど、できるところから手を付けるようにしましょう。