危険なときほど「STOP」で考える

 どんなに準備していても予想していなかったこと、いわゆる「想定外」というのは必ず起きるものです。そして想定外なことに出くわしてしまうと、「どうしよう、なんとかしないと」と慌ててしまいますが、そのまま場当たり的に対処を始めると、時間が経つごとに悪化していくことが普通です。
 慌てている時こそ、一度「STOP」。大きく深呼吸して、手順に従って新しい行動計画を作り上げなくてはいけません。
 ここで使っている「STOP」というのは、危機管理の基本的な行動基準の頭文字を取ったもので、予想していなかった事態に遭遇したときの対処手順の順番でもあります。

S・・・「Stop」。とりあえず現在の行動を一度中止します。
T・・・「Think」。現在の状況について一度整理します。
O・・・「Observe」。何が起きていて、今どんな状況なのかを確認します
P・・・「Plan」。その事態で起きた問題への対処行動を実行します

 災害時には状況はめまぐるしく動くものです。あらかじめ想定した事態を超えてしまったときには、それまでの行動計画を止めて現状を確認し、助かるための行動計画をその場で作り上げる必要があります。
 自分の命が助かるためにはどのように行動すればいいのか。定めた行動計画にひたすら従うのではなく、自分が助かるために必要な行動について常に状況を確認しながら修正を加えていくことで、生き残る確率は上がります。
 危険なときこそ、一度「STOP」で考えること。
 悠長に見えるかもしれませんが、これが助かるための最短コースなのではないでしょうか。

事前準備と買い占め

市販品の非常用持ち出し袋
市販品の子供用防災セット。一通りのものがセットされているが、その中に自分が必ず必要とするものが入っているとは限らないことに注意。

 災害で避難や補給が途絶したときに備えて3日~7日程度の備蓄品を準備してくださいということが、政府広報などでさかんに言われていますが、あなたは自分が一日に何をどれ位消費しているかを知っていますか。
 あなたの生活に必要なものや用意すべきものは、あなたがいる環境や場所、体調によって異なりますので、自分が一日にどれくらいのものをどうやって消費しているのかを確認しておくことは、備蓄品の準備にあたって必ず確認をしておく必要があります。
 例えば、飲料水は料理で摂る分も含めて一日一人3リットル準備しなさいといわれていますが、汗をかく人や子どもではそれ以上必要になることがありますし、また、そこまで必要の無い人もいます。普段の生活を知ることで、自分に必要なものの数量がきちんと把握でき、無駄な備えをしなくて済むことになるわけです。
 これは災害後に起きる買い占めでよく起きることなのですが、災害が発生して備蓄がない場合、不安と焦りから自分の生活に必要以上のものを買い占めようとする心理が働きます。その結果、ある人は何も手に入れられず、ある人は手に入れすぎて駄目にしてしまったというようなおかしなことが生じます。自分が普段必要になるものと数量を把握することで、必要以上に買う必要がなくなれば、多くの人が助かることになります。事前準備がしてあれば、なおさら心に余裕ができます。
 自分が生活するのに何がどれくらいいるのかをきちんと確認し、その数量×日数分を準備しておくことで、いざというときに慌てなくて済みます。
 災害に備えて紹介されている準備すべき備蓄品はあくまでも平均的なもの。それらを全て準備したからといって、あなたにとって必要なものが全てそろっているわけではありません。
 自分の生活を確認し、それが支えられる分量を準備すること。そして準備した備蓄品は上手に入れ替えていき、いざというときに買い占めしなくてもすむこと。
 これが災害からの復旧の第一歩です。

命を守ることを常に意識する

 命を守ることが、災害時には何よりも優先されます。
 ただ、「いざというとき」は滅多に来ないものです。そのため、どうしても日常生活が優先されてしまい「いざというとき」の備えというのは「やろう」と決めてかからない限りいつまでできないというのが実際のところです。
 では、いざというときにはあきらめるしかないのかと言えば、そんなことはありません。いざというときにどうやったら生き残れるのかを考え、考え続ければいいのです。これは最初はかなり負担です。どこにいても何をしていても、意識的に「いま何か起きたらどこへ逃げればいいか、どう行動すれば助かるか」と考え続けるのですから、非常に疲れると思います。ただ、これをやり続けていると、そのうち無意識に「いま何か起きたらどこへ逃げる、どう行動すれば助かる」ということを頭のどこかで常に考えているようになります。
 こうなるとしめたもの。あなたが生き残る確率は格段に高くなります。生存確率というのは、年齢や性別にはあまり関係ありません。生き残ることを意識しているかそうでないかだけの違いです。
 そんな馬鹿なと思われるかもしれませんが、例えば自動車の運転で、最初は手順をいちいち確認しながらぎこちなく運転していても、気がついたら何も意識せずに運転ができるようになっているのと同じこと。
 災害時に命を守るには、その場所で、その状況で何かが起きたとき、どうやったら生き残ることができるのかを常に意識することです。

地震の時は自分の重心を下げよう

 例えば歩いているときに不意に地震が来たとしたら、あなたはどうしますか。
 人は生き物としては異常なくらい頭が重たい、つまり重心が高いので、いきなり揺れるとそれだけで転んでしまう可能性が大です。
 それを防ぐためには、とにかく姿勢を低くすること。揺れ始めてから逃げることなどできませんので、とにかく重心を下げ、揺れに身体を持っていかれないようにすることです。何か捕まる場所があるならば、そこに捕まるのも手ですが、それでもやはり重心は下げること。しゃがむ、座るなど、もし転がっても怪我をしないようにすることが重要です。揺れると、上からさまざまなものが落ちてくる可能性があるので頭を守る必要がありますが、それ以上に高いのは転んで頭を打ってしまうこと。これを避けなければなりません。
 理想的なのはダンゴムシのポーズですが、それができない状況もあると思いますので、どんなときでもまずはしゃがむこと。
 それだけで大けがをしなくてすむ確率はあがります。とにかく揺れたときにはまず自分の重心を下げることを忘れないようにしてください。

石西地方のAEDマップのご紹介

 応急手当の講習会に行くと、100%と言ってもいいくらい出てくるのがAEDです。簡単な操作で誰でも取り扱うことができ、心臓マッサージとこのAEDの併用で助かる命が出てくるとなれば、しっかりと講習を受けて使えるようにしておいて損はありません。
 ただ、いざというときにそのAEDがどこにあるのかを知っていないと、使うことができません。
 このAEDの設置場所というのは案外とわかりにくくて、いろいろな団体がAEDマップを提供しています。石西地方では益田広域消防本部が管内のAED設置情報をホームページで提供しています。定期的に更新もされているようですので、お住まいの場所の近くではどこにあるのかを確認しておくのも大切なことだと思います。
 ただ、一つ注意しておかないといけないのは、AEDが置いてあるところが24時間開放されているわけではないということ。殆どの場合施設の中に置かれているため、その施設が開いている時間でないと使うことができません。
 場所の確認と同時に、そこから持ってくることができる時間も合わせて確認しておくといいと思います。

新年のご挨拶

 あけましておめでとうございます。
 旧年はさまざまな試みをさせていただきましたが、快く受け入れさまざまなことをさせていただきました皆様にこころから感謝申し上げます。
 今年も当研究所のテーマである「命を守る、命をつなぐ」を実現するためにいろいろなことに挑戦していきたいと思っておりますので、引き続きのご愛顧をよろしくお願いいたします。

 さて、新年と言えば、ご家族で過ごされることも多いと思います。その際、災害が起きてみんながばらばらに被災したとき、どこでどのように待ち合わせて合流するのかについてお話してみてはいかがでしょうか。
 命を守るための行動は、起きた災害とその場にいたときの状況によって変わります。実はその後が結構大変で、家族がどうやって合流するのかを決めておかないと、お互いが避難所を探して歩き、結局なかなか出会えないという事態になってしまうことがあります。そのため、いつどこで合流するのかを取り決めておくと、そこを目指してくればいいのでお互いに不安にならなくてすむのです。また、合流するための時間まで決めておければ、その時間以外は他の作業ができるためより効率的に生きていくことが可能となります。
 また、帰省されたご家族とのお話では、伝言ダイヤルはどの番号を使うのかや、どの段階で救援に入るのか、あるいは被災後はどこに行けば会えるのかなど、お互いに話を決めておくと、慌てなくて済みます。
 いずれにしても、せっかく顔合わせをするのですから、ちょっとした時間でいいのでそれぞれの災害対策について話す機会をつくっていただければと思います。

どうやって避難してもらったらいいのか

 災害時にレベル4以上、避難指示や避難勧告が出た場合でも、それに気づかない人がいるかもしれません。
 例えば、耳の聞こえない、または耳の聞こえが悪い人、目の見えない人やものが見にくい人、日本語がよく分からない人など、案外と気づかない可能性のある人は多いものです。
 以前、とあるところで大雨により夜中に水害が発生したとき、消防団の人が避難を呼びかけるためにいくら玄関たたいても出てこなかった高齢者の方がおられたそうですが、その方は補聴器を外して眠っていたために玄関での騒動にまったく気づかなかったそうです。幸いにして、その方の家は水に浸からなかったために笑い話で済んだそうですが、場合によっては亡くなっていた可能性があります。
 その地域では、その災害の後、夜中に状況が悪くなりそうな予報が出た段階で避難所を開設し、日のあるうちに聞こえの悪い方や身体の不自由な方はそこに避難してもらうようにしたそうです。状況に気づけない、または気づいても行動が難しい方は、できるだけ早めに避難してもらっておけば、仮に避難する必要が無かったとしても、「何もなくてよかったね」と言えるのではないかと思います。
 では、日本語が分からない人にはどうやって知らせたらいいのでしょうか。最近外国から来る人たちの多くはスマートフォンを持っています。そして、自治体の発信する情報も多言語化してきていますので、それで防災メールが受信できれば非難できるでしょう。
 ただ、自治体からの防災メールでは避難しなくてはいけないことはわかっても、いつどこへ何を持って避難すればいいのかまではわかりません。場合によっては、避難という概念がない人がいるかもしれません。そういう人たちに避難準備や災害時の対応を知らせるためのやり方は、まだまだ未整備の部分だと感じます。
 そして、避難の判断は自分でするにしても、本人だけではどうにもできない部分、例えば避難所の開設時期や使える資材や物資の状態など、共助や公助が必要な部分はたくさんあります。
 非常に基本的な話になるのですが、自分で情報をとれる複数の経路を準備しておくこと、そして、ご近所とあいさつでいいので声かけをしていくこと。近所づきあいは面倒くさいという声もよく聞きますが、せめてお互いの顔がわかるくらいにはしておきたいものですね。

救助される確率をどうやってあげたらいいか

 災害が起きて今いる場所が安全でないと判断されたとき、自分の安全を確保するために避難をすることになりますが、最悪の事態として、「そのときにいる場所が危険ではあるのだが、避難することができない」という事態も当然起きえます。
 そんなとき、周囲の救助者に自分がここにいることをどのように伝えればいいのか。
 携帯電話がつながって話せる状況であれば、知り合いに連絡をして救援要請を行います。GPSで位置情報を共有している人がいるのならそれを使うこともできるかもしれません。何か音の出るものがあれば、それを使えば救助者に気づいてもらえるかもしれませんから、笛があればそれを、そうでなければ何かをたたいて自分の存在を知らせます。もしその位置から外部が見えるのであれば、鏡の反射を使えば気づいてもらえるかもしれません。
 いずれにしても、あなたの声を出すのは最後の手段です。声を出すためには息を吸い込まなくてはいけませんが、その際埃や粉じんを吸い込んでしまうとのどや肺を痛めてしまいますし、そうすると肝心な時に声がでないということになります。 気がついてもらおうと思って、人の気配がするとついつい大声を上げてしまいがちですが、人の声というものは案外と届かないもので、それよりも笛やその他の音の方が気づいてもらえる可能性が高いことを知っておいて欲しいと思います。
 ところで、非常用持ち出し袋によく笛を入れている人がいます。これは素晴らしいことだと思うのですが、被災したときに常に非常用持ち出し袋が手元にあるとは限りません。いつどこで被災してもいいように、できればシンプルな形の笛を持ち歩くようにして、いざというときに備えたいですね。

■災害時のBCPを見直そう

本日のNHKニュースで災害時の金融機関の臨時休業についてやっていました。

災害時の「臨時休業」 地方銀行でも進む(NHKニュースサイトに飛びます)

 これによると平日は原則営業しなくてはならず、臨時休業する場合には金融庁に事前に届け出をしないといけないと定めた銀行法が10月に改正され、災害時には届け出不要で臨時休業できるようにしたそうです。
 いくら銀行であっても災害時に備えて職員を守る必要がありますから、BCPを備えた金融機関の中には、例えば鉄道が計画運休したときなどは臨時休業すると行った取り組みをしていたそうですが、今回の改正を受けてもう少し柔軟に臨時休業できるようにするそうです。
 公共交通機関、特に鉄道が計画運休することが増えてきている現状ですが、今回の改正で金融機関が臨時休業した場合にどうするかということを自社のBCPに取り込んで見直し、改定していく必要があります。
 最近はさまざまな災害が続いており、大手企業は従業員や顧客の安全を優先するような方向で対応しつつあります。出退社時に被災した場合には雇用主の責任問題にもなってくると思いますので、きちんとしたBCPを作成して自社が問題なく経営が続けられるような方策を準備しておくことが、経営者には求められています。
 ところで、あなたはいざというときにどうするのかをきちんと決めていますか。
 あなたの安全を守るのはあなた自身しかいませんので、あなたのBCPについても考えてみて欲しいなと思います。

カセットボンベの寿命を知っていますか

  先日ラジオでやっていたそうですが、東日本大震災の後、カセットガスを備蓄品として準備したお宅が多いそうです。
 その後備蓄品を使いながら補充する、いわゆる「ローリングストック」をしていれば問題なのですが、大量に買ったカセットボンベを備蓄品としてそのまま保管していた場合、ボンベの中で使われているゴムパッキンが劣化してしまってガス漏れが起きたり、カセットコンロにセットして使おうとしたときに爆発してしまうような事態が発生するそうです。
 劣化したというチェックポイントとしては、「外見にさびが浮いていない」「容器が変形していない」「缶を振ったときにジャプジャプといった感じの液の音がする」などの確認はしておく必要があります。カセットボンベは鉄製で防錆処理はされていませんので、経年劣化によりさびが浮いてくることがよくあります。使う前には必ずチェックしてください。

詳しくは「IWATANI・カセットボンベ:よくある質問」をご覧ください。

 せっかく常備しているのにいざというときに使えなかったというのでは悲しいですし、また、ボンベの劣化によって火災や爆発が起きても困りますので、もしも備蓄品で長期間未使用のカセットボンベがあるようでしたら、必ず点検をしておいてください。

少し見にくいがこのカセットボンベは2017年12月17日製造。2024年までは通常保管なら大丈夫と思われる。


 保存期間は7年が目安だそうです。なお、製造年月日は缶の下部に記載されています。少し見にくいのですが上の写真を一例としてあげておきます。前述のIWATANIのリンク先の記事の中にカセットボンベの裏面に記載された数字の見方も出ていますので、併せてご確認ください。

 ちなみに、以前ご紹介しましたが、カセットコンロにも寿命があります。こちらはガスとの接続口に使われているOパッキンが劣化してそこからガスが漏れてしまうそうで、使用頻度にかかわらず10年で買い換えるように勧めてられています。

詳しくは「株式会社ニチネン:よくあるご質問」をご覧ください。

備蓄品は永年保存できるものではありません。どんなものでも経年劣化により使えなくなっていきます。いざというときに備えて準備したのに本番では使えないと言うことがないように、充分気をつけてくださいね。