梅雨に入ってからあちこちで集中豪雨の情報が出ています。
今この瞬間にも、避難勧告や避難指示といった避難レベル4の情報が出ている地域があります。
もしもそれがあなたのお住まいの地域だったとして、あなたのお住まいの場所は水害や土砂災害に強い地域ですか?
避難が必要だとしたら、どの段階で何を持って誰とどこへ避難するかを決めてありますか?
それが昼間でなく、夜だったとしたらどうでしょうか? 家にいるときだけで無く、仕事先や出かけた先でそうなったら?
その状況になってからでも間に合うと、もしもあなたが思っておられるとしたら、それは大きな過ちです。
災害が起きそうになったとき、通常時と非常時の切り替えというのはなかなかできないもので、あらかじめ決めておかないと、判断に迷っているうちに手遅れになってしまうことがよくあります。
周囲に水がやってくる前に避難を開始しなければ、安全な避難はできません。
もしも家の周囲に水があふれ出したなら、域外避難を諦めて、二階や屋根の上に逃げ出す垂直避難をするしかありませんが、垂直避難した後、水が引くまで待てるだけの備えがあるでしょうか?
避難をするとしたら、どの経路をたどってどこへ避難しますか? そしてその経路は水に対して安全ですか?
低地だったり、川になるような場所は通っていませんか?
避難をしなくてはいけないときというのは、いつもとは異なる状況になっていることが殆どです。
そして、いざ避難となって歩こうとしても、普段歩き慣れていない経路だと、どこに危険があるのかもわかりませんからどうしても動きが遅くなり、避難が間に合わなくなる可能性だってでてきます。
いざというときに備えた避難の練習や避難場所の選定、そして避難するときに持参するものを収めた非常用持ち出し袋。
これらを繰り返し確認し、練習しておくことでいざというときにも考えずに行動ができます。
人間、やっていないことはできません。
避難が必要の無い場所にお住まいならともかく、そうでない場合には、年に1~2回は避難の練習をしておきましょう。
馬鹿馬鹿しいと思うかもしれませんが、その積み重ねが結局自分の命を守ってくれるのです。
カテゴリー: 行動
避難所では生活音に気をつける
災害で自宅が壊れたので避難所に避難すると、見ず知らずの人と一緒に避難生活を送ることになります。
老若男女の生活習慣が異なる人たちが集まって集団生活をすることになるため、さまざまな問題が発生することがよくあります。
その中でも一番良くトラブルになるのが、ビニール袋などのカサカサ音。
ビニール袋はとても便利なものなので、ちょっとしたものを入れておくのによく使うわけですが、その中からものを取り出すときに耳障りなカサカサ音がします。
お年寄りなどはこの音があまり気にならないようですが、気になる人は気になって寝られない状態になり、けんかの元になってしまいます。
とはいえ、しまってあったものを取り出すために出る音ですので、必要悪の部分もあるでしょう。
これを防ぐには、あらかじめ音の出ない布袋によく使うものを入れておくことで、本来は非常用持ち出し袋を作るときに意識しておかなくてはいけない部分だと思います。
また、これに限らず夜中の足音や声、ラジオやテレビの音など、人が普段の暮らしで発生している音は、自分と生活リズムの違うだれかが不快に感じる音でもあるのです。
避難所で自治運営組織が立ち上がると、こういった生活音にも配慮して避難所で生活する人たち全員が守るべきルールというのが設定されます。
消灯時間、起床時間、食事や掃除の時間など、基本的にはある程度規則正しい生活を送ることになるわけですが、今度はそれが苦手という人も出てきます。
本来長期的に避難するのであれば個別に入居できる部屋を持つ施設が望ましいのでしょうが、現在の災害関係法ではそのような考え方は取り入れられていません。
そうすると、考えるべきは可能な限り自宅が避難場所として使えるように準備しておくことです。食事や各種支援は避難所で受けることにして、普段の生活場所は今までと同じ自宅にしておけば、さほど生活習慣を変えなくてもなんとかなります。
建物の耐震化と、飲料食、燃料とそれを使う道具の備蓄をしっかりと整えて、そのうちに来るかもしれない災害に備えておきましょう。
避難の時の逃げ道を検討する・水害編
当研究所を始めるに当たって、研究所の所在地である益田市高津町上市で水害が起きた場合、もしくは起きると想定した場合、どの時点でどこへ避難するかについて研究員達と検討したことがあります。
先日、益田市のハザードマップが更新されたことに伴って情報が追加されましたので、この情報を元にどのように避難を考えたらいいのかをもう一度考えてみたいと思います。
考えてみたら、災害時の避難というのはさまざまな判断が求められ、その上住んでいる場所によっても判断が変わるものです。
以前に避難経路を考えてみる必要があることについては触れていましたが、今回は、地元の地区を例に挙げて、水害対策についてどのように検討したらいいのかについて考えてみます。
1.ハザードマップの限界
いきなりなのですが、行政の製作するハザードマップには限界があります。
今回は時期的に水害対策で検討をしたのですが、ここで予測されているのは「想定された氾濫時に最大でどこまで浸水するか」というものを示した図でしかありませんので、どのあたりから越水して堤防が切れ、どのように浸水するのかについては当然ですがわかりません。
でも、避難をするに当たってはどこからどのように水が流れてくるのでどこへどんな風に避難すればいいかということが大切な検討材料になります。
2.水の特性を考える
水は必ず高いところから低いところへと流れていきます。つまり、流れている川のカーブでは、カーブから見て上流側の堤防よりも下流側の堤防に力がかかります。
そのため、同じような堤防であればより力のかかる側の堤防が決壊する可能性が高いと考えられるわけです。
3.地域の特性を考える
上市地区の少し上流部には川の合流点があり、ここで本流と支流がぶつかります。大雨が降って水量が増しているときには、支流の水は本流にはじかれてしまうので、合流点で水が滞留しやすくなります。バックウォーターと呼ばれるこの現象が起きると、逃げ場を失った水は堤防を越水して低地に向けて流れ込んでいきます。
また、排水路が一カ所堤防の中腹に抜けていて、ここには逆流防止装置がついていないことから、排水路を越える水が流れてきた場合、ここから水が噴き出してきます。昭和47年7月の水害では、この付近から水が越水し、家屋流出の被害も出たことをお住まいの方からも伺っています。
4.水がどこを通って流れていくかを考える
バックウォーターで越水すると、水の流れは人麻呂神社の駐車場から翔陽高校の実習田がある方へ流れていくことになりそうです。また、神社前から下流に向けても角度がついていますので、水は二手に分かれて流れていくことが予測できます。
また、蟠竜湖停車場線は翔陽高校方面に向けてゆるやかに下降しているので、ここも水の道になることが予測されます。また、排水路からの逆流水もここを流れていくことになりますので、殆ど川状態になりそうです。
どちらにしても、この場合には側溝が溢れる内水面越水ではなく、川を流れる濁流ですので、一度氾濫すると流れてくる水の勢いは歩ける状態ではなさそうだということも予測できます。
5.避難する先はどこになるかを考える
上市地区の近傍の避難所である「高津小学校」は水没地域のど真ん中、「高津公民館」は家屋倒壊等氾濫想定地域のど真ん中にあり避難所としては不適切です。おまけに上市地区と各避難所を結ぶ避難路がもろに水の通り道になってしまうのでどちらにしても避難することは現実的ではありません。
水に浸かる可能性のない「万葉公園」「翔陽高校」「希望の里」そして画像では切れていますが「高津中学校」が避難の選択肢となりますが、避難するのであれば越水する前という条件がついてきます。
6.結論
上市地区はハザードマップ上の浸水域は2~3mとなっています。最悪の場合には、住家内で2階への垂直避難を行えば助かることはできそうです。
ただ、より安全を考えるのであれば、国土交通省が出す高津川氾濫情報の氾濫危険水位到達時に避難を開始することが必要で、避難先との調整をしておく必要があるということになります。また、高齢者が非常に多い地域なので、親戚や知り合いが高手に住んでいるようなら、気象庁の「Lv.3発表」時点や、高津川氾濫情報のはん濫警戒水位に達した時点で域外に移動してしまうことも検討すべきでしょう。
以上、簡単に地区の水害に対する分析を行ってみました。
この分析結果をどのように使うのか、使わないのかはそれぞれの判断となりますが、これからの季節、お住まいの地域やおつとめの地域のハザードマップと国土地理院の地図を使って、もし水害が起きそうな状態になったら自分のいる場所ではどのようにしたら安全が確保されるのかについて検討してみてはいかがでしょうか。
最初は自宅の耐震強化から
災害対策としていろいろと備えをしなくてはと言われることが多いですが、一番最初にしないといけないことは、建物の耐震補強で、以前にも少し触れたことがあります。
あなたのお住まいの耐震補強は大丈夫ですか? そして、お勤め先はどうでしょうか?
他の災害と異なり、地震だけはいきなりやってきます。そしてその時に一番多い死因は「建物や家具の下敷きによる圧死」なのです。
建物の耐震補強と家具の転倒防止。これをしておくだけで、生き残れる確率はかなり高くなります。現に大雪に耐えられるように強固に作られた家の多かった東日本大震災では地震における建物の倒壊は殆ど無く、死因の第一位も津波であることがわかっています。また、先頃震度6強の地震に見舞われた新潟や山形でも、家屋の倒壊はほとんど無かった結果、死者も出ていません。
そのため、災害対策の一番最初に建物の耐震補強を行うことがあげられているのです。
一般的な話になりますが、住家の場合、1981年以前の建物であれば、まず耐震診断を受けておきましょう。
1981年以降の建物であればより厳しくなった耐震基準を元に建てられていますのでそこまで急ぐ必要はないのですが、1981年以前に建築された建物の場合は地震に対しての備えがさほど考えられていなかったですので、建物の補強は必須となります。
石西地域の各自治体には比較的古い建物が多いので、耐震診断や耐震補強に関する補助が用意されています。
災害対策を行うのであれば、まずは建物の耐震診断、そして耐震補強を行うことです。
益田市役所、津和野町役場、吉賀町役場の実施内容へのリンクをしておきますので、まずは内容を確認してみてください。
もしも高額になって困った場合には、例えば寝室や居間だけ耐震補強するやり方や、建物倒壊の時に逃げ込めるシェルターなどもあります。
まずは生き残ること。そこから災害対策を考えてみてください。
避難所は立入禁止エリアをあらかじめ決めておく
避難所を開設するに当たっては、どこを使おうかというところから話が始まると思いますが、大規模な災害の場合には収容能力を超える人が避難してくる可能性があります。
その時に避難所として使える場所を決めている状態だと、最終的にどこもかしこも避難者だらけになって通常業務どころか避難所運営すらおぼつかなくなってしまいます。
そのため、避難所を開設する際には最低限使っては行けない部屋と、その理由をはっきりとさせておく必要があります。
例えば、学校なら職員室や事務室は避難者が入ってくるといろいろな不都合が生じるでしょう。体調不良者や妊産婦、授乳などのことを考えると、保健室も避難者が使ってはいけない場所となります。また、水が止まっているようであればとりあえずトイレも使用禁止にしておかないと、水を持ってきた頃には汚物で溢れて大惨事になっているかもしれません。
次に、避難所運営のための本部の位置を確保します。
大規模になればなるほど、ここがちゃんと確保されていないと、あとで揉めることになってしまいます。
また、駐車場となる場所では、仮設トイレや給水支援などが受け入れられる場所を確保しておく必要があります。
忘れがちですが、ゴミ置き場についても臭いが避難所に入りにくく、収集のしやすい場所というのを考えておかなくてはなりません。
こうして考えていくと、避難所の設営準備というのは災害発生時では無く、平常時に決めておかなければいけないということが分かると思います。
もちろん、実際の災害時には決めたように動かないかもしれませんが、少なくとも「使えない・使っては行けない場所」をあらかじめ決めておくだけで避難者の誘導がずいぶんとやりやすくなります。
逆に考えれば「使えない・使っては行けない場所」以外は使えるわけですから、最悪、あらかじめ決めておいた場所以外全ての場所に避難者を入れることが可能になります。
理想としては避難所として設定したエリアで収まるのが一番ですが、避難所が必要になってくる災害では、殆どの場合総定数を上回る避難者が来るものです。
避難所開設を訓練するときには、そういった考え方を取り入れて行うとよいのではないかと思います。
消耗品は短期で入れ替えていく
非常用持ち出し袋や非常用備蓄品を準備しようと考えたとき、市販の情報誌や研修などでは「災害用の食料や水、消耗品などを備えなさい。ローリングストック方式の他に長期保存もできる災害用のものもありますよ」という感じの紹介をされることが多いです。
そして、災害用備蓄品として3年から5年は保存がきくものがたくさん出ていて、備えようと考えたときにはやはり長期保存できるもので作ってみようと考えるものです。
さて、あなたがこれから災害後、流通網が復旧するまでの命を繋ぐための非常用備蓄品を準備すると考えてみてください。
長期保存ができるもので食料を選んだときに、普段から食べ慣れているものがどれくらい含まれているでしょうか。
災害時などの非常時には、いかに普段の生活に近づいた環境を維持できるかが気力と体力を維持していく重要なポイントになります。特に食事はその傾向が顕著にあらわれます。
例えば、アルファ米は非常に軽くて保存もきく便利な食料品ですが、普通に炊いたお米と比べるとやはり違いがあります。普段から食べ慣れていればさほど気にはならないでしょうが、そうでない人は地味に気力が削られていくことになってしまいます。
アルファ米では無くて、無洗米を用意して普通のご飯を炊けるようにしておけば、災害前と同じものを食べることができることになります。
また、特有の臭いはありますが、普通のお米でも研がなくても食べられます。
いつも使うものを少し多めに買って在庫しておき、その在庫を入れ替えていくことで意識せずに常に新しい備蓄がある状態を維持することが可能になります。
これは「ローリングストック方式」と呼ばれている方法で、あまりお金をかけずに生活を守ることができるということで積極的に取り入れてもよいと思います。
ここで注意しないといけないことは、普段作っているおかず類に、たまにでよいので缶詰や乾物など保存がきくものを取り入れて使うということです。
おかず類が生鮮食料品だけで構成されていると、いざ流通が絶たれてしまったときに提供される缶詰や乾物がひどくひもじく感じてしまうものになって、気力が削がれてしまいます。週に1回くらいでいいですので、保存食品を使った1品を作っておくと、舌も慣れるし在庫もちゃんと入れ替わり、自分にあったお気に入りを見つけることもできると思います。
ところで、なぜ「災害用」飲料食は長期保存がきかなければいけないと感じるのでしょうか?
これは、今までの災害の経験値から来るものだと考えています。
災害時に配られる非常食や飲料水は会社や行政機関が緊急的に配布するもので、これらの品物が必要になるときは、一度に大量に必要になるためにすぐに準備することはとてもできません。そのため、大量に、長期間備蓄できるものが要求されていたということです。
であれば、わざわざ賞味期限は長いけれど値段が高くて忘れやすい非常食を備えるよりも、非常用持ち出し袋や非常用備蓄品を普段から食料品の置き場としておくことで、普段から意識して管理できるようになるのではないかと思います。
どんなものであれ、いつかは使えなくなる期限が来ます。せっかく用意した非常用持ち出し袋や非常用備蓄品ですから、意識して使うようにすることで期限切れを防ぎ、そしていざというときにさっと取り出して避難が開始できるような状態にしておくこと。
この考え方で備えていきたいものですね。
寝るスペースは安全に
災害発生時に生き残るための準備はしておかなくてはなりません。
いくら被災後に使える非常用持ち出し袋を準備したところで、例えば地震でタンスや家具の下敷きになってしまっては生き残る確率はかなり下がってしまうことになります。
特に寝ているときに地震が起きると、体が完全に目覚める前に家具の下敷きになる可能性が高いでしょう。
少なくとも「背の高いタンスは寝室には置かない」「重たいものは床に近いところに置く」「頭の上にはものが落ちてこないようにしておく」くらいの対策はしておく必要があるでしょう。
建物が耐震強化・耐震対応していても、中の家具が倒れないようにしていなければ、家で潰れなくても家具で潰されることになります。
そして、残念ながら家具はいくら固定していても絶対に倒れてこないという確証は持てませんので、寝室には物を置かないということが鉄則です。
また、エアコン本体や照明の真下、窓ガラスのある場所には頭が来ないようにして、万が一の時に頭を怪我しないようにします。
何があっても最初に死なないこと。そのための準備をきちんとしておきたいものです。
水の怖さを体験しよう
なかなか梅雨に入りませんが、局所的に大雨が降っており、水が出るかもしれない危険性がある時期に突入しました。
数時間程度で一気に危険な状態になるので、浸水する地域の人の早めの避難は絶対に必要ですが、いざ避難するとなるとなかなか素直にはいかないものです。
大雨の降る中の避難ですから、雨合羽を着ていても濡れてしまうのは必須ですし、足下はびっちゃんこ。ヘタすると水の中を歩いて移動ということもあり得ますが、そのときあなたは安全に移動する自信がありますか。
万が一水にはまったとき、着衣のままだとどうなるのか、そして、どうすれば助かることができるのか。
今回、益田スイミング様のご協力で大人と親子限定の着衣水泳の体験会を行うことになりました。
ぜひ一度着衣水泳を体験していただき、あなたの防災対策に役立てていただきたいと思います。
詳しくは、当研究所のフェイスブックのイベントをご覧ください。
また、お申し込みをお待ちしております。
非常用持出袋の作り方・その2
非常用持ち出し袋を作るのに、以前まずは自分に何が必要なのかを洗い出してみるという作業をしていただきました。
ずいぶんと間が開いてしまいましたが、今回は全ての人に必要ではないだろうかと考えられるアイテムについて考えてみたいと思いますが、ここで書き出したアイテムを見られて無条件にそろえるのではなく、自分の生活と比較して、それが必要かどうかについて判断していただきたいなと思います。
1.飲料水500ml×2
まずは飲み水です。洗ったり調理に使ったりもできることから、ここでは普通の水を用意することをお勧めします。1リットル1本でもいいのではと思われるかもしれませんが、あえて500ml二本にすることで、袋に入れやすくし、重さを感じにくくすることを考えています。
2.食料(そのまま食べられるもの)
食料品はそのまま食べられるものを用意します。ピーナッツ等の豆類やようかん、チョコレートやあめ玉など、水気がなくてもとりあえず食べられるものがよいでしょう。
3.歯磨きセット
歯の衛生を保つことで、健康を維持することができます。歯ブラシが無理なら洗口剤や歯磨きシート、歯磨きガムなどを使ってもいいです。
何もないようなら、ティッシュペーパーやタオルでもいいですので、歯を衛生的に保つように意識します。
また、口の中をさっぱりさせられると精神的にも安心するものです。
4.着替え・下着類
濡れたり汗をかいたり、逆に冷えたりすることへの対策として、着替えを1セット準備しておきます。肌着があると、長期の避難でも体を衛生的に保つことが可能になります。
また、臭いが気になる場合に着替えることで精神的に安心できます。
5.懐中電灯・ヘッドライト
移動するときに使うための懐中電灯です。夜道を移動するときや停電時には大活躍します。
6.ランタン
避難先で明かりがないときに使います。真っ暗な中に明かりが一つあるだけで、精神的に落ち着くのが不思議なところです。
7.ポケットティッシュ
トイレの時だけでなく、さまざまな場面で活躍してくれるアイテムです。芯を抜いたトイレットペーパーがあると汎用性が広がります。
8.ウェットティッシュ
水がないときに手や道具類を衛生的に保つのに必要です。除菌仕様のアルコールと純水仕様のものがあります。体などを拭くことを考えるとアルコールでないもののほうが汎用性は高いですが、アルコールの方が衛生的ではあります。
9.非常用トイレ数個
トイレが使えないときに備えて、携帯トイレを自分が一日にトイレに行く回数分用意しておきます。
10.マスク
ほこりやチリなどで気管支を痛めないため、また、避難先で感染症を防ぐために必要です。小分けタイプのものが便利です。
11.タオル
手や体、さまざまな道具を拭いたりするのに必要です。できれば数枚あると便利です。手ぬぐいでも大丈夫です。
12.ラップ
傷の手当てや体温保持、食器の汚れ防止など、さまざまなことに使えます。
13.救急セット
基本は外傷用と考えて、絆創膏やガーゼ、包帯、テーピングテープ、それにとげ抜きやはさみ、綿棒といったアイテムを入れておきます。
14.ラジオ、イヤホン
被災地周辺の情報を集めるのに必要です。AMが受信できるものがあれば、被災地以外からの情報を得ることもできます。また、イヤホンがあれば周囲の静寂を守りながら情報収集が可能です。
15.ビニール袋
いろんなことに使えます。大きいものから小さいものまで、数種類準備しておきます。
16.乾電池
懐中電灯やランタン、ラジオなどを動かすのに必要です。電気機器の電池の規格を揃えておくことで、複数の電池を持って歩かなくて済みますので楽です。
17.雨合羽
雨天時の移動に使えるほか、防寒着としても使うことができます。大きめのポンチョタイプであれば、簡易テントやトイレの時の目隠しにも使えます。
18.スリッパ
避難所での人の生活空間は土足禁止にすることが必要です。そのため、スリッパは必要です。
19.使い捨てカイロ
夏場でも冷えることは多いですのであると便利です。また、時間をかければ人肌以上の飲み物を作ることができます。
20.筆記具
マジックや鉛筆、消しゴムといった筆記具とメモ帳は避難所での生活では必須アイテムです。
21.小銭
慌てていると現金を忘れて避難することもあります。また、公衆電話を使うときにも小銭は必要となります。100円と10円を取り混ぜて準備しておきましょう。
22.連絡先リスト
生存連絡や何かの連絡をするときに備えて連絡先の一覧を書き出しておきます。小銭と一緒にチェック付きビニール袋に入れておくと安心です。
23.モバイルバッテリー
携帯電話を使う人はこれが絶対に必要です。
24.新聞紙
防寒着やたき火の焚き付け、折り紙して皿にする、敷物など、一日分あると重宝します。
25.ナイフ・はさみ
いろいろなものを切り分けるのにあると便利です。
26.ひも
洗濯物を干したり、簡易テントを作ったり、避難所での仕切りやのれんなどを作るときにも使えます。
27.ガムテープ
ものを貼り付けたり修繕したり作ったりするときに、あるととても便利です。切るのに道具が入らないため、使いやすいです。
いろいろと書いてきましたが、これらのものと自分が必要な道具を合わせてみると、案外と量があるなと思われると思います。
書いてあるものには他に使えそうな代用品があるかもしれません。また、自分には必要ないものがあるかもしれません。
それらを上手に組み合わせて、いざというときに持って逃げられる「非常用持ち出し袋」を個人ごとに組み立てておくといいですね。
タイムラインを作ってみよう
BCPを語る上で切っても切り離せないのが「タイムライン」と呼ばれるシナリオです。
これは災害の発生前から発生後復旧するまで時系列にあわせて対応を決めておくもので、いざというときに見落としがないように、そして優先順位を間違えないために作成するものです。
作るときに必要なのは「何について」「何を」「誰が」「いつ」「どのように」判断するのか、そして「そのための判断材料は何か」を決めることです。
先日、保育園様のタイムラインを一つ、防災担当の先生方と作成してみましたので、それを例に考えてみたいと思います。
1.「何について」決めるのか
今回は「運動会」について判断を決めることになりました。
運動会は、なるべく中止を防ぐために屋外と体育館での開催を毎回検討しておられます。
ただ、去年は迷走台風により開催の判断をするのに大変苦労した上、当日の朝に大雨が降ったので急遽開催を延期することとし、保護者の方から「もう少しなんとかならなかったのか」という意見が寄せられていました。
そこで、今回、試しにタイムラインを作成することにしました。
2.「何を」を決めるのか
ここでは中止の判断、及び屋外と体育館での開催決定のための判断基準を作ります。
3.誰が決めるのか
決定権保育責任者である園長先生が、主任先生や担任の先生と相談して決定することにしました。
4.「いつ」「どのように」決めるのか
1)中止の場合
まずは中止の判断です。
この保育園の運動会の開催時期は9月なので、季節柄「大雨・洪水」「台風」「光化学オキシダント」「高温」が想定されます。
気象については気象庁がさまざまな予報を出しています。「高温早期警戒情報」や「台風の進路情報」「早期注意情報(警報級の可能性)」は5日前から予報が出されています。
これらの情報が発表された場合には、速やかに保護者に「中止の可能性」について予め説明しておこうということになりました。
また、当日の天気がどうあれ「中止する場合には『前日の午前中』」に決定する」こと、保護者には「基本的にはお迎えの時に伝えるが、必要な人は前日昼以降のところで電話により保育園に確認をしてもらうこと」を周知することとしました。
2)開催の場合
開催の場合には中止の判断と同様、前日の午前中に「屋外」なのか「体育館」なのかを決定することにしました。
この判断には昨今突風でテントが飛ばされる事故が多発していることから、「大雨・洪水」「台風」「光化学オキシダント」「高温」に加えて「強風」を加えることにしました。
①体育館の場合
判断基準である前日の午前中の時点で「光化学オキシダント注意報」が発表されている場合、当日の状況を問わず体育館開催することにしました。
また、天気予報で雨天が予測されている場合、グラウンドコンディションが悪い場合には、同じく体育館開催とし、事前に異常高温注意報が発表されている場合には、時間を短縮した上で体育館開催としました。
②屋外の場合
気象条件やグラウンドコンディションに問題が無い場合には屋外開催とします。
ただ、突風が起きることがあるので、風が強くなってきたときには園児のテント以外は倒しておくことと、園児のテントは飛ばされないようにしっかりと支柱を固めておくこととしました。
それから当日の光化学オキシダント発生や異常高温時については、予め省略するプログラムを決めておき、時間を短縮して開催することにしました。
これらの判断には、気象情報に加えて空の霞ぐあいやちょっと離れた場所の工場の排煙の煙も利用することにしています。
5.情報の共有化
保育園の運動会では、保護者だけでなくそれ以外の園児の関係者も多数来られます。
そのため、判断基準についてはあらかじめ保護者にも伝えて心構えしておいてもらうことが大切です。
今回の話し合いでは、「運動会のご案内」をプリント配布する時点で判断基準について併せて保護者にお知らせすることにしました。
また、保護者が判断に困るような天気になりそうであれば、3日前に「開催の判断についてのお知らせ」を改めてプリント配布すること、運動会のプログラムに「演目の省略があるかもしれないこと」を記載することとしました。
保護者に限らずですが、明確な判断基準があることがわかると、ある程度の予測ができるようになり、それぞれが準備できるためにトラブルが防げます。
この判断基準でも「もっと早く判断して」というお話が出るかもしれませんが、そのときにはもう一度判断基準を見直していけばいいだろうということで、今回はこれでやってみようということになりました。
タイムラインは作るまでは結構大変ですが、一度作ってしまうとあとは修正ですみ、だれがやってもそんなに大きく判断がずれないというメリットがあります。
今回の話し合いでは「短い時間の大雨などで保育園の休園はどのように対応したらいいか考えてみたい」というご意見をいただきました。
ちょっとずつでもタイムラインを整備していくことで判断に迷うことなく行動を取ることができます。
まずはよく使うものを一つ文章化して作ってみてはいかがでしょうか。