最近は携帯電話の普及で、電話番号を覚えていなくても簡単に電話をかけることができるようになっていますが、いざ災害が起きると、連絡先を覚えていないので連絡したくても連絡できないという状況に陥ってしまいます。
また、例えば110番や119番など、普段なら間違えるはずの無いはずの電話番号を間違えてかけてしまったりすることもあります。
そんなときに備えて、あらかじめ災害時に連絡したい人や連絡すべき先、緊急連絡先などを紙に書き出しておくことをお勧めします。
普段手帳をお使いであれば手帳のメモ欄や住所録に書き込んでおくのもいいでしょうし、無くすのが心配な人は外から見にくい場所に貼っておくのもよいと思います。
あるいは、非常用持ち出し袋や防災ポーチに小銭と一緒に入れておいてもいいのではないでしょうか。
大切なのは、大切な連絡先は複数の手段で保管しておくことです。
そうしておくことで、携帯電話を無くしたり壊したり、電池が切れてしまったときでも大切な人への連絡だけは可能になり、お互いにいらないストレスを貯めなくても済みます。
極限時だからこそ、間違い電話をかけずに済ませたいですし、大切な人に心配をかけたくないですから、連絡先の保管方法にも気をつけたいものですね。
カテゴリー: 行動
集まるべき場所を立ち上げる
自主防災組織や自治会がしっかりしている地域は問題ないでしょうが、そうでない場合には、被災したときに何をどこへ言えばいいのかさっぱりわからない状態になります。
そのため手近な消防団や行政に相談を持ちかけるわけですが、相談を受けた方も混乱中ですので、うまく対応してもらえずにみんながストレスがたまる状態になります。
そこで、被災したらまずは「地域の災害対策本部」を立ち上げるようにしましょう。
立ち上げる、といっても難しいことはありません。紙に対策本部と書いて壁か机に貼り、そこをとりあえずの窓口にしてしまうのです。
困っている人たちはとりあえず言っていくところができますし、そこで情報を集約して行政に知らせるだけで行政の対応が早くなります。また、自衛隊やNPOといった支援組織もその本部にやり方の相談にきますので、そこでマッチングすればよいことになります。
もちろん、災害ボランティアセンターが立ち上がったら、地域の災害対策本部で集めた困りごとをまとめて依頼して、人員を派遣してもらうことも可能です。
いわば、必要な情報の交通整理をする場所を作ると言ったらいいでしょうか。
災害時には、さまざまな情報が錯綜します。当然SNSなどでもさまざまな情報が飛び交うわけで、受援者も支援者もそれらに振り回されてしまうので、そこを拠点にして情報の交通整理をし、迅速な復旧に繋げていく手助けを行えばよいのです。
最初は少し動く必要がありますが、軌道に乗ると、勝手にそれぞれの情報が集まってきます。
ここで情報を一元化しておくことで、行政任せで手遅れになることなく、迅速に復旧・復興が可能になってくるのです。
自主防災組織や自治会の防災訓練というと避難所運営や避難手順の確認がほとんどですが、このような機能も求められる場合が多いので、できれば併せて訓練しておくとよいと思います。
二つの避難
災害時における「避難」という言葉には二つの定義があります。
一つ目は、発生した災害から身を守るための「避難」。これは「一時避難所」「避難場所」「避難所」が該当します。
ただ、万能なものは殆ど無いのが実情なので、対応している災害によって行き先を使い分ける必要があります。
二つ目は生活環境を維持するための「避難」。これは災害後、何らかの事情により自宅が使えなくなっている場合に行う避難で、対応しているのは「避難所」のみです。
「一時避難所」や「避難場所」は災害が収まるまでの仮の避難先ですので、生活環境を維持するための避難は「避難所」に移動する必要があるのですが、大規模災害だと避難所に収容しきれないために、しばらくの間は一時避難所や避難場所、避難所の区別無く避難者が鈴なりというになってしまいます。
それでも状況が整理されてくると避難所への移動を順次行っていき、一時避難所や避難場所は本来の業務を再開していくことになります。
この二つの避難がごっちゃになっているので、避難者が避難所へ移動する場合にいろいろな騒動が起きることになり、避難者も行政も施設管理者も振り回されてしまいます。
命を守るための避難と、命を繋ぐための避難。
何も起きていない通常期にこの避難の違いを理解して、スムーズに避難ができるようにしたいものです。
蘇生法を知ろう
災害時に限らずですが、負傷者がいるときに考えるべきことは、可能な限り早く確実な手当ができるところ、例えば病院に輸送して手当を受けさせることです。
ただ、可能な限り早くといっても本格的な手当が開始されるまで何もしなければ生存率は格段に下がってしまいますので、それまでどのようにして命を繋ぐかということを考えておく必要があります。
大きな出血があれば止血し、心肺停止していれば心臓マッサージや人工呼吸を行うことで、大けがをしている人の生存率を格段に上げることができます。
今回は、その方法について書いてみたいと思います。
ただ、最初にお断りしておきますが、止血処置や心臓マッサージ、人工呼吸を行うには正しい知識と正しい訓練が必要です。これには消防署や日本赤十字社が行っている救命講習を受講することが早道です。
それぞれの救命処置も時代によってどんどん変化していきますので、できれば年に1回程度定期的にどこかで受講して、知識を更新されることをお勧めします。
1.処置にかかるまでの準備
(1)まずは安全確保
負傷者がいる場合に最初に気をつけないといけないのは、まずは自分の安全です。救助者が被災しては何にもならないので、まずは安全な環境かどうかを確認します。
負傷者がいる場所が危険であれば、まず安全な場所へ移動させてからの処置となります。
(2)負傷者の全身の状態を確認する
どのような怪我をしているのか、呼吸や反応はあるかを観察します。大規模な出血などがある場合には、止血処置を優先するかどうかなどもここで考えます。
(3)意識の確認をします
顔を近づけて肩をたたき、耳元で大きな声で「大丈夫ですか!」と声かけをします。3回もやると、意識があればなんらかの反応が返ってくるので、反応がない場合には意識がないと判断します。
(4)支援者を呼ぶ
周囲に人がいれば、依頼する人を特定して119番通報とAEDの搬送を要請します。このときに、「救急車を呼んで」ではなく「119番通報してください」というように具体的な行動指示を行うようにしてください。
「○○さんは119番通報してください」「そこの赤いシャツの人はAEDを○○ストアから持ってきてください」といった感じです。
(5)呼吸の確認
胸及び腹の動きを観察します。呼吸があれば上下運動しているはずですので、それがなければ呼吸を停止していると判断します。
一般的には呼吸停止していても、しばらくの間心臓は動いています。心臓が動いていても心臓マッサージは問題ないという所見が出ているそうなので、「呼吸停止=心停止」と判断してよさそうです。
意識がなくて呼吸がある場合には、舌や吐瀉物で気道がふさがるのを防ぐため、頭と体を横向きにします。可能であれば頭に枕をするとよりいいでしょう。
2.処置の優先順位
放っておくと死んでしまう危険性の高いものから処置していきます。
出血と心肺停止の場合だと、まずは心臓マッサージと人工呼吸を行います。ただし、大量に出血していたり、心臓マッサージするたびに血が噴き出すような状態の場合には、止血を優先します。
可能であれば、止血処置と心臓マッサージ及び人工呼吸は同時並行で実施できればより生存率が高まります。
3.処置の方法
(1)心臓マッサージ
胸骨の下部分を押します。30回一セットで、手の腹の部分を使ってしっかりと体重をかけて押さえるようにします。圧迫の深さはおよそ5cm。少々のことではこの深さまでは押さえられないので、しっかりと圧迫してください。
1分間に100~120回のペースで行うのですが、わかりにくい場合には、「もしもしかめよ~♪」の歌を歌いながら行うとちょうどよいリズムで、1番が終わるとちょうど30回の心臓マッサージができています。
(2)人工呼吸を行う
意識がない場合、全身の筋肉が弛緩しますので舌も喉の奥に垂れてしまって気道を塞いでしまうことが起きます。
そのため、気道確保が必要となります。あごをしっかりと持ち上げ、鼻の穴を押さえて、負傷者の口を塞ぐように口を合わせて胸が膨らむ程度に息を吹き込みます。
あまり一気に吹き込むと肺がパンクすることがありますので、吹き込む量には気をつけてください。
これを2セット行い、そのあとは再び心臓マッサージを行い、人工呼吸を繰り返すことを続けます。
(3)AED
心停止の際には心室細動が伴うことが多いですので、それを排除しない限り心臓が自律的に拍動を再開してくれる可能性は低いです。
その心室細動を排除するのがAEDという機械で、だれでも使えるように可能な限り自動化がされています。
最近のAEDはふたを開けると同時に自動で起動し、処置の方法を1から説明してくれますので、その指示に従って作業を行います。
ただ、使用するに当たっては以下の点に気をつけてください。
①胸の周りが濡れていないこと。濡れていれば水気を拭き取ること
②湿布薬などが貼られていた場合には剥がす。
③ペースメーカーが入っていないか確認する。もしあれば右胸のところに凸があるので、パットはそれを避けて貼る。
④ネックレスなどの金属装身具はパッドに触れないように気をつける
⑤パッドは素肌に装着しなければ効果がないが、装着した後はなるべく上にタオルなどをかけて周囲の目にさらされないようにすること
AEDのパッドは外装袋に貼る場所がイラストで描かれています。心臓を挟むようにパッドを貼り付ける必要があるので、最悪の場合心臓の上と下にパッドを貼り付けても効果があります。
また、パッドは濡れてしまうと効果を発揮できなくなります。その場合、AEDには予備のパットが入っていますのでそれと取り替えてください。
注意点として、AEDにおける小児とは未就学児を指します。6歳以上は成人モードで使うことになりますので気をつけてください。
それからAEDについているパッドが小児用の場合、大人に貼り付けても電圧が足りない場合がありますので、パッドは大人用を使ってください。小児に大人用パッドを使うのは問題ありません。
AEDは一度装着したら外しません。そのまま救急隊に引き継ぎます。つけられたAEDは負傷者の心電図などのさまざまな情報を持っていますので、それを救急隊や病院が活用します。
使用後は戻ってきますので、パッドを交換して次の利用に備えてください。
(4)止血処置
止血処置を行うときは、二次感染を防ぐためにあらかじめビニール手袋やビニール袋などを手に被せ、直接出血部位に手を触れなくてすむようにします。
止血処置の方法は、次の3つがあります。
①直接圧迫止血法
傷口に清潔なハンカチやタオル、ガーゼなどを直接当てて手のひらで傷口を圧迫する方法です。傷口を心臓よりも高い位置にして行えば、より止血効果を期待できます。
止血処置の基本となる方法です。
②関節圧迫止血法
傷口より心臓に近い動脈(止血点)を圧迫し、血の流れを止めて止血します。
直接圧迫式の準備や処置をする間、流血を押さえるために行うものです。
③止血帯止血法
直接圧迫止血法では止められないような大量の動脈性出血の場合、手足に限ってですが最終手段として止血帯を使った止血方法があります。
これは傷口よりも心臓に近い部分の動脈上に布を当て、布の上から止血帯を巻きます。その止血帯の結び目に棒を差し込み、血が止まるまで棒を静かに回して棒を固定します。
そしていつ止血を開始したのかがわかるように「止血開始○時○分」と外れないようにつけておきます。
この止血帯止血法は非常な痛みを伴いますので、せいぜい20分程度しか持ちません。20分たったら一度緩めて細胞の壊死を防ぐようにしてください。
止血帯止血法を取った場合は、大至急処置のできる医療機関へ搬送します。
4.処置を止めてもよいとき
基本は救急隊が来るまで心臓マッサージ、人工呼吸、AEDを維持する必要がありますが、次のような場合には処置を止めます。
(1)生き返ったとき
当然のことですが、生き返ったときには心臓マッサージと人工呼吸は不要です。ただ、医療機関への受診は必要ですので、AEDはつけたまま、救急隊の到着まで安静にさせてください。
(2)救急隊に引き継ぐとき
救急隊が到着すると、救急隊員から作業の指示があります。そこで救急隊員に引き継いだ場合には、処置は終了となります。
(3)自分の安全が確保できない状態になったとき
災害現場で救助者の命が危険にさらされているような場合には、まず自分の安全の確保をしてください。一緒に遭難しては元も子もありません。
5.その他
心肺停止に対応する場合、AEDはかなり重要な要素となりますので、普段からAEDが備え付けてある場所を意識して確認するようにしましょう。
勝負は5分以内です。
また、知識はあっても練習してみないことには本当はどうなるのかがわかりません。
消防署や日本赤十字社の救急法講習を積極的に受講して、意識すればきちんと体が動くようにしておきたいものですね。
なお、ある程度の人数が集まれば講習会を個別開催してくれる場合もありますので、詳しくはお近くの消防署や日本赤十字社の各支社にお問い合わせください。
避難カルテを作ってみよう
益田市では先般新しいハザードマップが配られました。いろいろと新しい情報が追加されているので、これを利用してあなたの避難カルテを作成してみませんか?
避難カルテというのは、避難に関するいろいろなことを一枚の紙にまとめておくもので、いざというときにこれを見るだけで避難すべきかどうかやどの経路を使って避難すればいいかなどがわかって慌てなくてすみます。
今回は、高知県黒潮町で作られている避難カルテを参考に、順番を追って避難カルテができるように説明をしていきたいと思います。
1.まずは書式を印刷します。「避難カルテ」の書式を用意してみました。これをプリントアウトしてください。
2.最初に家族構成を記入します。世帯の全員の名前、性別、年齢、自力避難ができるか否か、家族の力で避難できるか否かを記入します。また、避難場所までの避難方法を決めておきます。原則は徒歩ですが、場所によっては自動車やバイク、自転車でないとたどり着けないことがあるかもしれませんし、移動するのに自力では難しい場合、例えばシニアカーや車いすといった避難手段を記載しておきます。
3.自宅の情報を確認します。いつ建てられたのか、耐震診断はされているか、耐震補強はされているか、家具は固定されているかを記入します。また、ハザードマップを確認して危険と思われる災害を確認して書き出しておきます。
4.避難するときの情報を記入します。避難場所欄に名前を記入し、その避難場所がどのような災害に対応しているのかを確認して書き写します。
予想される災害に備えるため、複数の避難場所を決めておきましょう。また、家からそこまでの避難訓練をしている場合には、いつ頃、どれくらいの時間がかかったかも記入します。
5.近所で助けてくれる人を洗い出しておきます。助けてくれる人の名前と連絡先を書き出しておきます。
6.次に住宅地図を用意します。googleやyahoo!などの地図を自宅と避難所及び避難所までの道がわかるように印刷をします。
7.6の地図に、ハザードマップを参考に浸水地域や土砂災害警戒区域などの危険箇所を記入していきます。
8.自宅から避難場所までの避難経路を8で作った地図に記入していきます。その際、7で記入した危険箇所は避けるような経路を作ってください。また、可能であれば避難経路は複数作っておいた方が安心です。
9.作成した地図を元に実際に歩いてみます。避難経路を自分がきちんと歩けるか、目で見て危険な場所や危険なものはないかを確認し、あれば地図に記入してきます。
10.もう一度地図を見直して、安全と思われる避難経路を確認します。その上で、一度自宅から避難所までの移動時間を計ってみます。
11.移動時間を4で記入した避難所の「避難所までの所要時間」に記入してください。
以上で避難カルテは完成です。年に1回は内容を確認し、記載する情報を更新してください。
また、これに非常用持ち出し袋や非常用備蓄品などのリストもつけておくと、一度に確認ができて便利ですよ。
是非一度作ってみてくださいね。
【活動報告】保育園の避難訓練に参加しました
2019年5月30日に益田市のすみれ保育園様が実施されました地震及び津波による避難所までの避難訓練に参加させていただきました。
今回の訓練では、地震により津波警報が発令されたという想定で保育園から近隣の避難所である益田東中学校まで実際に避難するということで、当研究所はその避難訓練の内容を見させていただき、後日具体的なアドバイスをさせていただく立場での参加です。
訓練は午前10時に始まり、避難完了が10時25分。地震で動けない時間が3分程度ありましたから、幼児の足で1km弱の道のりを20分強で移動完了したのはかなり素早い避難だったのではないかと思います。
今回の訓練に当たっては、ガラスでできた階段下の防煙板が落ちて散乱している想定を当日サプライズで作成させてもらい、床に卵パックやペットボトルの蓋を撒いてブルーシートで覆ってみました。
ですが、廊下を覆うブルーシートにこそ躊躇したものの、子ども達は床のでこぼこやガラスを踏むようながしゃがしゃといった音はまったく気にならずに素早く移動をしていました。ちなみに避難訓練完了後に大きい子達に素足で踏んでみてもらいましたが、痛がる子よりも気持ちいいという子の方が多く、子ども達は足裏マッサージが必要な状況なのかと思わず笑ってしまいました。
今回、快晴で気温が高かったこともありどうなるかとも思いましたが、子ども達は避難所である益田東中学校までは一生懸命歩き、到着後にほっとした顔でそれぞれに持参した飲み物を飲んでいました。避難の際に水分を持って出られるというのは非常に重要な部分ですので、今後も継続してほしいなと思います。
毎回さまざまなことに気づかせていただけるこの避難訓練の見学、後日気づいた点やアドバイスを報告書で提出させていただいていますが、すみれ保育園様ではそのたびに避難訓練の内容をアップデートされ、正直なところ毎回驚かされています。
この保育園では保育士様向けの研修会もさせていただいているのですが、その際にこちらの説明が足りない部分がいろいろとあることも、こういう訓練に参加させていたくおかげで気づかせていただきました。
何事も無いのが一番ですが、万が一に備えて訓練をきちんとしておくことはとても大切です。そしてその訓練を第三者の目でチェックし、訓練参加者にフィードバックしていくことが大切なのかなと感じています。
避難訓練の参加について許可いただきましたすみれ保育園の園長先生、理事長先生始め先生方、そして園児の皆様にお礼申し上げます。
家族の集合方法を確認しておこう
災害というのはいつ何が起きるかわかりませんので、それに対する備えはしておかなくてはなりません。
今回は家族がバラバラなときに被災した場合どうするかについて考えてみたいと思います。
考えてみれば、いつも家族が一緒にいるわけではありません。避難訓練の時はみんな一緒でも、通常は仕事や学校、買い物やお出かけなどでそれぞれがバラバラな行動をとっていることが非常に多いのではないでしょうか。
そんなときに災害が起きたら、あなたはどんな風に家族と合流しますか?
まず、一番に自分が生存していることを家族に知っておいてもらわないといけません。
以前に少し触れましたが、携帯電話や公衆電話などの通信手段がある場合には災害時伝言ダイヤルの171番に自分の生存報告とどこへ避難するかを吹き込んでおくようにします。
また、音声回線がうまく繋がらない場合には、web171や携帯電話のキャリアが提供する災害時伝言板にメモを残すようにします。いずれにしても、鍵となる番号をあらかじめ決めておかないとメモやメッセージがうまく家族で共有できないことになりますのであらかじめ決めておいてください。また、LINE等のSNSも有効ではありますが、その場合には不急なメッセージのやりとりは事態が落ち着いてからにしてください。
次に連絡がつかなかったり、通信手段がない、もしくは失った場合に備えて、自宅のどこかに生存報告とどこに避難しているという貼り紙を貼るようにします。
空き巣などの不埒ものに備えて、玄関などの見える場所ではなく、家族でないとわからないような場所を決めておきましょう。
最後は、連絡がつかない、書き置きもできないような状況が起きた場合に備えて、集合場所と時間を決め、無事な場合にはそこにその時間こら一時間待つというルールを作ります。
こうすれば、通信手段を失い、家が跡形もなくなっていたとしても、その時間に集合場所にいけば家族がいるかもしれないという希望を作り出すことができます。
約束した時間以外は好きなように動けるので、例えば 避難所巡りをしたり、病院巡りをしたりといった行動を気兼ねなくすることもできます。
いくら手段があっても困るものではありませんから、どのようにするのかを家族しっかりと話し合って、災害にあったときでも素早く会えるようにしておけるとよいですね。
トイレと水と体温維持
災害が起きて困るのは、最初がトイレ、そして渇きであり、体温を維持するための何らかの仕掛けも必要です。
困る順番はいろいろ変わりますが、最初にトイレをあげてみます。トイレについては、くみ取り式以外は停電時には使えないですから、大量の人が避難してくる避難所だと、自分で使う携帯トイレは必須の道具です。
大小兼用のものを持ち歩ければ一番よいのですが、せめて小用だけでも数回分は準備しておきたいですよね。
そして、トイレが収まると次は喉の渇き対策です。正直なところ被災時に一番大変なのは「飲料に適した水の入手」だと考えています。
日本は安全な飲料水を意識することなく手に入れることのできる世界でも珍しい国ですが、災害が起きると安全な飲料水を手に入れるのが至難の業となります。
張り巡らされた水道設備は損壊して止まり、コンビニやスーパーなどで手に入れられる水はあっという間に売り切れ、酒やコーヒー、ジュース類では喉の渇きは収まらず、という困ったことが発生します。
そうなったとき、あなたならどのようにして安全な飲用水を手に入れますか?
浄水器を使うのも手ですし、簡易濾過器を作ったり蒸留装置を作るのもありですが、いずれにしてもかなりの労力が必要ですし、できあがった水の安全性が完全に担保はされていないのが実際です。
いろいろ試行錯誤はしてみるのですが、結局のところ数日分の飲料水はペットボトルなどであらかじめ準備しておいた方が安全で早いなと考えています。
もちろん、清浄な井戸やわき水で災害後でも安定したきれいな水を手に入れられるようなところなら、そんな準備は不用かもしれません。
ただ、出かけている先や仕事中に被災したときにどうすればいいのかを考えると、普段持ち歩く鞄にちょっとした水筒やペットボトルを忍ばせておいた方が安心です。
水は重たいですから大量に持ち歩くことも難しいですので、200ml~250mlくらいで充分。渇きを凌げればよいのです。
防災セットによっては、15mlくらいのちょっとした水をレトルト加工した小さな袋に詰めてあるものもありますが飲んだ気がしないという難点もあります。
普通の水のペットボトルで構わないと思いますが、余裕があれば毎日詰め替えることで水道水でも問題なくできます。
また、地震を除く災害では大抵の場合準備するための時間が確保できます。その間にポリタンクや鍋、風呂桶などに清潔な水を貯めておくという方法も採れそうです。
子どもや高齢者のいるおうちでは、特にしっかりとした準備をしておく必要があります。
1人一日3リットル。ここまでは難しいかもしれませんが、せめて喉の渇きを癒やせるくらいの水は普段から身につけておきたいものですね。
最後に体温維持。これはとにかく濡れないことです。できれば薄手でいいので着替えがあると、濡れたままでいるよりは遙かにましですし、重ね着すれば寒さ対策にもなりますのでいいと思います。
また、フェイスタオルかバスタオルが一枚あると汗や体についた水気の拭き取り、肩にかけて気休めの防寒などにも使えますので準備しておくといいでしょう。
そして風に当たらないこと。暑いときには風で涼を取りたくなるものですが、汗をかいた状態で風に吹かれると必要以上に体温が下がってしまい、低体温症になる危険性があります。
以上、いろいろと書きましたが、普段から持って歩くものとして
1.携帯用トイレ数個
2.飲料水
3.着替え、タオル
を意識しておくと、いざというときにあなたの身を助けてくれますよ。
西日本豪雨での県内被災地の避難状況を島根県がとりまとめました
平成30年7月豪雨では、岡山県真備町や広島県坂町、呉市、安芸太田町などが浮かぶと思いますが、島根県内でも江川を中心にして水害が発生しました。
被災地に住んでいた人たちはどのように判断してどのように行動したのかについて、島根県が被災地の住民に対してアンケートを採り、その結果が先日公開されました。
詳しい内容はリンク先の調査結果をご覧いただきたいと思うのですが、普段からハザードマップや避難所、避難経路などを意識していた人ほど避難をし、そうで無い人は自宅で危険の無い場所に避難を行ったという結果が出ているようです。
もっとも、意識していた人でも避難するために必要な非常用持ち出し袋は用意していなかった人たちが大半で、今後の課題になる部分かなと感じました。
避難の引き金になったのは地域の人たちの声かけがもっとも多く、次いで家の中に引かれた防災無線受信機からの情報ということでしたが、被災した地域は比較的地域コミュニティがしっかりとしていたところだったのでこのような結果になったのかなと思っています。
ここから見えてくるのは「非常用持ち出し袋の準備」と「いつ避難を開始するか」「どこへ避難するのか」を決めておくことではないかと思います。
そういう意味では、最近はやっている「マイタイムライン」を作成する必要があるのかなと感じます。
ともあれ、先日からまたあちこちで大雨や大風が吹くようになってきています。
身近に、いつ起きるか分からない災害に備えて準備しておく必要はあるのだろうなと思います。
ちょっと遠くになりますが、国土交通省関東地方整備局下館河川事務所が公開している「マイ・タイムライン」をリンクしておきます。
このサイトはタイムラインの考え方や作り方が丁寧に説明されているので非常に参考になると思います。
マイ・タイムラインの手引きの中にはword形式の「マイ・タイムラインノート記入用紙」もありますので、自分の住んでいる地域にデータを置き換えて作ってみるのも面白いと思います。
大切なのは「命を守り、命を繋ぐこと」です。それを忘れずに準備したいですね。
災害警報の種類について考える
ここ最近、九州や沖縄地方では大雨が降った場所があり、さまざまな被害が出ているようです。
大きな被害がないことを願うところですが、平成の最後に政府が大雨や土砂災害についての防災情報や避難情報を5段階にレベル分けするという方針を出したことをご存じでしょうか。
遅くとも梅雨時期となる6月までには運用を開始したいという話だったのですが、現時点ではまだ情報が確認できず、内閣府防災のホームページからもデータが削除されている状態です。
ちなみに、予定されている防災気象情報(仮)の表示は次の通りです。
これに対して、今までのは次のとおり。
平成30年西日本豪雨では、各行政機関が今までにないくらいさまざまな情報を提供していました。
ところが、マスコミや住民といった情報を受け取る側が、提供される情報の整理ができなくなったため「情報を簡単にわかりやすくしろ」となり、「警戒レベルを作る」という流れになったようです。
ただ、どのように情報をシンプル化したとしても、最終的には自分で判断するしかないというのは変わりません。
行政が出す情報は、ピンポイントになってきているとはいえ「○○市○○町」や「○○町○○」といった「小さな面」の情報であり、あなたが考えないといけない「自分の居る場所という点」がどうなるかは自分で判断しなくてはなりません。
このことを忘れてしまうと「避難勧告が出て避難しようとしたらすでに周りは水没してた」とか「避難の途中で遭難したが家はなんともなかった」といった事態になりかねません。
自分の居る場所でどのような災害が想定できるのか、そして、どの情報に注意しなくてはいけないのかについて、今のうちに整理をして備えておいた方がよさそうです。
(2019年5月28日追記)
本文中で情報が消えていると書いていましたが、どうやら当研究所の調査不足だったようで、内閣府から2019年3月29日付で警報のガイドラインに関する改正が出されていました。
ただ、実施時期については「出水期」という規定しか無く、実際にいつから運用されるのかはよくわかりません。
ガイドラインを見る限りでは、「レベル」と「そう判断している状況」を併記して発表するような形になるようですが、発表の方法は各地方自治体によるようですので、混乱が起きなければいいなと思います。
調査不足だったことをお詫び申し上げます。
(2019年5月29日追記)
いつから始まるか分からないと昨日書いたところですが、本日5月29日から気象庁でこのレベル表示を開始するという報道が朝のNHKラジオニュースで報道されました。その後報道各紙でも同様の内容が報道されているため、事実だろうと思われます。
気象庁のホームページ内の報道発表資料には伝え方改善の一環として「5/29より土砂災害警戒情報や指定河川洪水予報に相当する警戒レベルを記載して発表する」との記載も確認できました。
各市町村は準備ができ次第順次導入されるとのことですので、お住まいの地方公共団体の報道発表に注意をしておいておいたほうがよさそうです。
重ね重ね、情報が不備であったことをお詫びいたします。