車での避難を考える

 避難行動のとき、早めに動けば避難に車を使うことができるということをずいぶん前に書きましたが、車で避難した方がいいという考え方と、車で避難すべきではないという考え方のどちらかでなければならないのかといえば、必ずしもそうではないのではないかと考えます。
 今回は車で避難し、シェルターとして使うとしたらという視点で考えてみたいと思います。

1)車を使う利点

 車が使えると、重さや距離を気にすることなく多くの物資や人員を輸送することができます。
 つまり、当面の避難生活に必要ないろいろな機材を積み込んで家族で安全なところへ移動ができるということで、高齢者や要支援者のいる人にとってはかなりのメリットです。
 そして車を生活空間に使えるためプライベートが確保されます。ミニバンや軽バンなら、避難所と比べて快適な避難生活を送ることが可能でしょう。
 また、被災区域の外まで逃げてしまえば、少なくとも災害の直接的な影響を受けることは避けられます。

2)車を使う欠点

 みんなが一斉に車で避難を始めると渋滞が起きて災害に巻き込まれるというケースが多発していることから、原則として車での避難は禁止されています。
 また、道路が破損している場合にはそこから先に進めず車を置いて逃げることになりますが、そうすると車が道路の阻害物となってしまってさまざまな障害を起こすことになります。
 地震の時はどこで何が起きているかわからないこと、そして緊急車両を速やかに通過させるため、車は使わないという意識を徹底しておかなくてはいけません。
 特に津波が心配されるような場合には、みんなが自動車で避難しようとする結果、走って逃げた方が早かったという事態になりますので、最初から車を使わないことをお勧めします。
 ただ、これは地域によっては車で無ければ逃げ切れないというところもあり、それぞれの地域に応じた対策を考えておく必要があるでしょう。

3)どんなときなら車が使える?

 水害や大雨といった時の早期の避難であれば、自動車は問題なく使えます。
 避難場所は自動車でも避難できるところがかなりありますので、あらかじめ現地を確認しておき、水に浸からずに車を安全における避難場所を決めておいた方がいいでしょう。
 避難を行った後、状況が収まるまでは車の中で過ごすことになりますが、燃料が無いとただの箱になりますので、車をシェルターとして考えている場合には、燃料については意識しておく方がよいと思います。
 また、あらかじめ水や毛布などを積み込んでおくことで、倉庫としても活用することができます。

研究所近くの高津小学校の校庭。指定避難場所だが、大雨、洪水時には水没する場所なので他所へ避難する必要がある。

4)エコノミー症候群を防ぐには?

 車での避難で一番問題とされるのがこのエコノミー症候群ですが、これは体が長時間同じ姿勢を強いられることで発生するものですので、防ぐためには体をしっかりと動かすことです。
 座りっぱなしや寝っぱなしにならないように、一時間に一度程度はしっかりと体を動かすようにしましょう。また、寝るときにはなるべく体の姿勢が平らになるように敷物や詰め物をするとよいと思います。

 都会地では車を使わない方が安全に避難できるでしょうし、田舎では車で無いと避難ができない場所がたくさんあります。
 災害時に自動車で行う避難については賛否両論あるわけですが、発生している災害やお住まいの地域、そして自身の命を守ることを考えた上で、最適な方法を考えたらよいのではないでしょうか。

夜間の避難を考える

 梅雨も終わりに近づいているようですが、梅雨前線と台風との相乗効果による大雨が予測されています。
 大雨警報・洪水警報が発令された後は、気象情報や近くの川の水位に充分注意をし、 危険だなと判断したら、速やかに安全な場所へ避難されることをお勧めします。
 ただ、状況によっては避難所が開設されていない場合もあるかもしれませんので、避難される際には事前に避難所の開設状況をご確認ください。
 ところで、避難するに当たっては可能な限り日のあるうちに行うようにしましょう。
 日中であれば避難する道を目で確認しながら移動できますので、状況を見て避難ルートを変更したり避難先を変えたりすることが容易にできますが、夜間になると頼りになるのは懐中電灯と街灯くらい。雨が降っていて暗くなっている場合には目で十分な確認を行うことができません。そのため、日中なら気づけるかもしれない側溝やマンホールの異常に気づかず、はまってしまったり落ちたりする可能性があります。
 普段の夜間の状態を知っていればともかく、普段見ていない時間に大雨や大水の出ている状態での避難は、危険を招くことがあるということを知っておきましょう。
 足が悪かったり、寝起きが悪かったりして異常事態が起きてもすぐに避難できない方は、可能な限り高い場所で寝ることをお勧めします。
 普段一階で寝ている人であれば、階段の上り下りでかなり不自由するとは思いますが、二階で夜を過ごす。そうすることにより、少なくとも溢れてきた水でおぼれる危険性は低くなります。
 大原則は水に浸からない場所に避難をすることになるのですが、雨で視界が聞かない中を移動する危険と天秤にかけて、家の高いところに避難するという選択肢もあると思います。
 命を守ることを行動の原則として、自分にとってもっとも安全が確保できそうな方法で避難を行うようにしましょう。

地震の時のポーズあれこれ

 「地震が起きたらダンゴムシ」というのは結構有名になってきた地震のときの姿勢ではないでしょうか。

机の下でダンゴムシ
ダンゴムシのポーズは体の重要な部分の防護と転倒防止のためにするものです。

 うずくまって両手で頭と首を守るこの格好は、落下物から重要な部分を守り、その上で転倒をしないという意味で非常に理にかなっていると思います。
 また、学校の教室などでは、机の下に潜って両手で机を支える「アライグマのポーズ」というのもありますが、これは使っている机によっては逆に怪我をしてしまったりすることもありますので注意が必要です。
 これらの姿勢を取る練習としてよく「シェイクアウト訓練」というような言い方をしますが、そもそもなぜこのような姿勢を取る必要があるのかを考えたことがありますか?
 第一には頭を護ること。判断し行動するためには正常な判断が下せる状況であることが大切ですから、これは必須です。
 次に、怪我をしないこと。特に地震の際には転倒による怪我がよく起きます。ちょっと大きな地震が起きると、転倒による骨折で救急搬送というニュースが必ずといっていいくらい流れますが、これを防ぐには転倒しないようにすることしかありません。なるべく重心を低くして転がりにくくすることが大事です。
 例えばよく転倒事故の起きる階段では、揺れ始めたらその場でしゃがみ、あれば手すりをしっかりと持つ。これだけで転倒する可能性はずいぶんと低くなります。
 また、地震への対応策として「地震が起きたら外へ逃げろ」というのがありますが、揺れているときにはまず移動できませんし、無理矢理に移動することはかなりの危険を伴う行動です。耐震補強され、転倒防止、落下防止対策がきちんとされているところであれば、自分が転がらないような姿勢を保てさえすれば、怪我をすることはないと思います。
 ところで、先日ちょっと考えさせられることがありました。
 外での避難でもダンゴムシのポーズを取りなさいという内容の本だったのですが、地震が起きると、砂やほこりが宙を舞います。建物の中であれば問題ないと思いますが、校庭や公園などの土の地面が露出している場所だと、揺れてる最中に砂煙が起こります。そんな状態の時にダンゴムシのポーズを取っていたら、目や口に砂やほころが入り込んで体にダメージを受けてしまいます。
 ダンゴムシのポーズは「落下物対策」と「転倒防止」のためのものです。もしも外にいて上や周囲からものが落ちたり飛んできたりしないのであれば「落下物対策」は必要ありません。そうすると「転倒防止」だけに集中すればいいわけですから、仰向けの大の字で寝たり、両足を拡げて腕をつき状態を支えるような格好で転がることを防げれば充分だということになります。
 非常時、場所によってポーズを変えるのは大変だからということで、学校や保育所、幼稚園などの教育施設では一元的に「地震が起きたらダンゴムシ」と教えることは大切だと思いますが、それによって体を痛めてしまっては何にもなりません。なぜその格好をするのかを考える必要があると思います。

メタボパンダのポーズ。大の字に寝転がるのでも大丈夫だと考えていますが、背中を浮かせている方が揺れで受けるダメージは小さい気がします。

 当研究所では、外での転倒防止の格好は「足を大の字に拡げて上体は起こし、両腕は地面を支える」のが一番良いのでは無いかと考えています。これを「メタボパンダのポーズ」と呼んでいるのですが、あなたならどんな名前を付けますか?

災害時の警報レベル

 災害時に発令される警戒レベルについては以前書いたことがありますが、運用が始まってからの取り扱いで混乱が生じている部分があるようです。
 今回は警戒レベルのおさらいと、その発令条件を確認しておきたいと思います。

1.警戒レベルについて

警戒レベルはレベル1からレベル5までの5段階となっています。
警戒レベルの内容は、以下の表を確認してください。

2.何が問題なのか

 表の中の「行政が発信する情報」の発令元が異なるため同じ表でありながら異なるレベルが発令されることが起きうると言うことです。
 警戒レベルの発令元は「気象庁」「国や都道府県」「市区町村」にわかれており、発令元で分けると次のとおりになります。

 ここで気をつけないといけないのは、気象庁や国・県は雨量や水位などの情報を元に基準を超えると自動的に発令される情報であること、そして市町村は客観的な情報を総合的にとりまとめて判断して発令するという違いがあるため、発令される警戒レベルに食い違いが発生することが起こりえます。
 山陽新聞のWEB版によると、先日、岡山県真庭市でこの事例が発生したそうです。このケースでは、気象庁と県は雨量に基づき土砂災害警戒情報として緊急避難が必要なレベル4と判断し、真庭市は「地区の状況から被害エリアが限定され全域の避難は必要ない」と判断し、警戒レベル3を発令したそうです。

3.では、どうすればいいのか

 各行政機関が発令する警戒レベルは、地区や地域という「面」であって、自分のいるところという「点」ではありません。
 自分のいる場所がどんな場所でどういう状況なのかというのは、あくまでも自分で考えて判断するしかありません。
 雨が続いて裏山が不安であれば、警戒レベル2でも避難してもかまいません。
 また、高台で水に浸かる心配がないところであれば、レベル5でも自宅待機の方が安全という場合もあるでしょう。
 行政機関が出す情報はあくまでも参考情報で、あくまでも最終的な決断は自分が行うしかないのです。
 もしも判断に迷うようであれば、より安全な方を選んで行動するようにすれば少なくとも命は守れるのではないかと思います。

【終了しました】夏休み企画のご案内

 趣味の範囲でやっている当研究所ですが、夏休みに合わせていくつかのイベントを計画しています。
 興味のあります方は、ぜひお申し込みください。

1.大人と親子の着衣水泳体験

日時:2019年7月28日(日) 10:00~11:00
場所:益田スイミング 屋内プール
内容:着衣での水泳体験、浮き方の練習、履き物による歩き方比較他
対象:大人及び親子(子どもさんは自力で泳げる方に限ります)
講師:益田スイミング様講師
参加費:1,200円(会場使用料、保険料)
準備するもの:水着、水泳帽子、ゴーグル、タオル、長ズボン、長袖シャツ
申し込み締切:応募定員に達し次第
申込方法:参加される方の住所、氏名、年齢を申込時にお知らせください。当研究所へお申し込みの場合は、お問い合わせフォームの件名を「着衣水泳申し込み」としていただき、参加される方の住所、氏名、年齢をお知らせください。
申込先:益田スイミング様受付
    石西防災研究所(お問い合わせフォームに飛びます)

2.地域防災マップを作ろう・高津上市地区編

日時:2019年8月7日 13:30~16:30
   2019年8月8日  9:00~16:00
場所:高津公民館(旧高津地区振興センター)
内容:高津上市地区を回っていろいろなものを点検して防災マップを作成します。
   また、二日目の昼食では防災食を体験していただきます。
対象:小学生
講師:石西防災研究所・伊藤
参加費:無料
準備するもの:筆記具、飲み物(持ち歩きできる状態で)、帽子、カメラ(あれば)
申し込み締切:7月31日(水)17時
申し込み方法:お問い合わせフォームの件名を「防災マップ申し込み」とご記入いただき、参加される方の住所、お名前、学年、所属する小学校をお知らせください。
申込先:石西防災研究所(お問い合わせフォームに飛びます)

避難所の環境について考える

 避難所、避難場所、一時避難所(以後「避難所」とします)については過去にも触れているところですが、ここのところ続いている大規模な災害の報道を見ながら考えることがあります。
 それは、避難所の収容人数の問題です。
 例えば、内閣府の発表によると7月3日から4日にかけて降り続いた九州南部の大雨では避難指示(緊急)は約110万人に出されたそうです。そのうち、実際に避難した方が6,301人。率にすると0.005%となり、殆ど避難していないとみることができます。
 では、避難所の収容人員はどうなのでしょうか?
 市町村が定める防災計画に記載された避難計画を見る限りでは、避難所の周辺人口をそのまま収容するような計画になっていることが多いのかなと感じています。
 例として、当研究所のある益田市高津町の避難所で考えてみたいと思います。
 研究所から一番近い避難所は「高津小学校」です。平成30年度益田市防災計画の想定では、収容能力は1,000名。圏域人口は1,554名とされていますので、この時点ですでに収容能力を超えています。
 ただ、実際に避難してきそうな地区の数字を拾ってみると1,038名となるので、これなら大きな誤差ではなさそうです。
 一時避難所として校庭が指定されています。国土地理院の地図からざっくりと面積を拾ってみたら5,857㎡。圏域人口一人あたりの専有可能面積は3.76㎡となります。
 仮に車で避難するとして、車のサイズを5m×2m=10㎡と想定すると、3人で1台分のスペースは確保されることになります。また、単にテントを設営するのであれば圏域人口をなんとか吸収することはできそうです。
 次に、避難所開設時には普通最初に解放されるであろう体育館で考えてみます。
 校庭と同じく、国土地理院の地図でざっくりと体育館の大きさを拾ってみると、その大きさは926㎡。実際の避難者になりそうな1,038名で割ると、一人あたりの専有面積は0.89㎡となり、スフィア基準で定められている難民キャンプでの難民一人あたりに必要とされる面積3.5㎡を下回る数値になってしまいます。
 一人寝るのに必要な面積が2㎡と言われていますので、1㎡を切ると寝ることもできません。その上、実際には避難者はそれぞれ荷物を持ってきますので、間違いなく収容できないという状態になるでしょう。
 逆に考えてみると、926㎡の体育館で3.5㎡の個人スペースを確保しようとすると、避難が可能なのは264人ということになります。
 想定人口の1/5にも満たない数字ですが、大抵の避難所の設定はこんな感じですので、避難所周辺に住む全ての避難者が避難してきた場合には施設がパンクしてしまうわけです。
 これは過去の大規模災害で毎回繰り返されている光景ですが、これに対して打てる効果的な手段というのはさほど多くはありません。
 自分が悲惨な目に遭いたくなければ、なるべく自宅で過ごせるように、もし避難するのなら安心して過ごせる避難先をあらかじめ選んでおく必要があるということです。
 家の立地条件から見て避難すべきなのか避難すべきでないのか、避難するとしたらどこへどんな手段で行くのか、そして避難所でどのように生活をし、どういう状況になったら自分の避難を解除するのかということをきちんと決めておくこと。
 地震は突然やってきますが、それ以外の殆どの災害はあらかじめ起きるのはわかっている場合が多いので、被災想定区域外に出てしまうのも避難の一つです。
 もう一つ、大規模な災害が起きると医療・介護体制が維持できません。そのため病気や障害をお持ちの方は、あらかじめ何か起きた場合の対応方法をお医者様や介護担当者としっかり詰めておく必要があります。
 避難所では適切なケアはされないということを前提に、自分の避難計画を作っておくことをお勧めします。

家具の転倒防止は最初の一歩

 少し前に建物の耐震診断と耐震補強について触れましたが、建物に問題が無くても家の中で人が下敷きになってしまうものが家具です。

転倒防止用の支柱と壁と家具を貼り付ける不動王の組み合わせ。これ以外にもいろいろな装置や方法があるので、家の構造と家具の状態を考えて固定しよう。

  「防災の備えは、まず家具の固定から」と言われることも多いのですが、市内のホームセンターに出かけて転倒防止器具のコーナーを覗くと、あまり商品が動いているような気配がありません。
 お店の人に聞いても「大きな地震があったときはちょっと売れますが、それ以外は・・・」と苦笑される状況です。
 地域の歴史をさかのぼってみると、津和野町や吉賀町では震度6強の地震が何度も起きているのですが、そこまでしっかりとした家具の転倒防止対策をしているおうちがどれくらいあるのかなと考えてしまいました。
 大きな地震では、一番怖いのは家具の転倒によりその下敷きになることです。特に山間部の一軒家で一人暮らし状態のおうちも多いこの地域では、家具の転倒で下敷きになったら助けは来ないかもしれません。
 そのため、まずは家具類の転倒防止をしっかりとしておきましょう。とっさの時に動きが取れない寝室には、家具は置かないこと。
 そして台所の冷蔵庫や食器棚はしっかりと固定をしておくことです。
 地震だけは来る予兆がわからないので、いつきてもいいように準備だけはしておくことです。
 そして、転倒防止器具の取付はそう難しいものでもありません。
 できれば異なる方式のものを二つ以上備え付けておくことで、家具がひっくり返るのを止めたり、止められなくても逃げる時間を稼ぐことくらいは可能になります。
 さほど値段も高くなく、確実に命を守ることが可能になる転倒防止器具の取付をきちんとしておきましょう。

避難開始の合図を決めておく

 情報量が少なくても多くてもマスメディアからは文句が出るので難しいところなのですが、さまざまな場所で同時進行で起きている災害をその場で整理して判断を下すことは相当難しいことだということは理解していただけるでしょうか?
 行政の職員は行政のプロではあるかもしれませんが、災害対策のプロではありません。ましてや、行政改革で極限まで減らされている職員が、普段やっていないのに的確な災害対応ができるとは思わないことです。
 さまざまな警戒情報は、気象庁や国土交通省、都道府県、市町村からそれぞれに発信されており、そのままでは判断が難しいということで、先日導入された避難レベルにより一元的に管理しようとされています。
 ですが、本来レベルを発令すべき市町村は現場の対応に追いまくられることになりますので、避難勧告や避難指示(緊急)を出すべき市町村からの指示を待っていたのでは、遅れになる危険性があります。
 そのため、発表される情報の中から自分が避難を判断するための情報を決めておく必要があります。
 市町村が出す避難勧告や避難指示(緊急)は、その元となる情報もインターネット上で一般公開されていますので、自分が住んでいる場所で避難が必要な災害をあらかじめ確認しておき、例えば自分の住んでいるところが川のそばであれば、その川の水位を確認して、ある一点を超えたら問答無用で避難すると決めておけば、市町村の判断を待たずに避難を開始することができます。
 また、崖が気になるような場所に住んでいれば、都道府県が出している土石流警戒情報のタイルメッシュを確認すれば、自分のところが今どんな状態なのかを確認することができます。島根県の場合には土石流の警戒レベル3が発令されると住民への避難勧告を実施するとなっているので、これを目安に避難を判断すればいいと思います。
 今、行政は「災害レベル4は全員避難」ということを言っていますが、レベル4には避難勧告と避難指示(緊急)の両方が含まれています。お住まいの場所によっては、レベル4が出されたときにはすでに避難ができない状況になっている可能性もあるわけです。
 自分が行動を開始するための鍵を決めておいて、それを超えるような状況になったら速やかに安全な場所へ逃げること。
 それを徹底しておけば、命を守ることができます。
 そんな判断はできないといわれる方がいらっしゃるかもしれませんが、これは慣れでできるようになりますので、とりあえず一度やってみてください。
 難しい場合には、それができる人にチェックをお願いしておき、「逃げようコール」をしてもらうようにしたら、行政の出す避難情報よりも早く安全に避難ができると思います。
 いずれにしても、自分が逃げ出すための条件を整備して迷わずに逃げること。それが生き残るためには必要です。

体のケアとお化粧

 避難生活が続くと、だんだん気になってくるのが体の臭いとべとべと感です。
 若い人や女性では、特に気にされる人が多いのではないかと思いますが、お風呂にでも入らない限りは根本的な解決にはなりません。
 それでも、体を拭くことができればさっぱりしますし、水の入らないシャンプーを使えば、頭もそこそこすっきりとさせることができます。
 そこで非常用持ち出し袋に入れておいてほしいのが非アルコールタイプの「おしりふき」。
 これはそれなりに大きくて厚くて使い勝手がよいものです。夏場であればアルコールタイプもさっぱりして気持ちがいいのですが、体に合う合わないがありますので事前準備の時に一度試しておくことをお勧めします。
 また、水の入らないシャンプーは事前準備しておかないと、地方ではなかなか手に入りにくいアイテムですので、非常用持ち出し袋を作るときに一緒に準備しておくといいでしょう。
 それから、お化粧をする人は非常用持ち出し袋にもメイクセットとメイク落としは入れておいてください。普段メイクする人がメイクしない状況に陥ると、気力が萎えてくるものです。
 旅行の際に作られるようなお出かけセットを非常用持ち出し袋にセットしておくと安心です。
 そのとき、一つだけ気をつけておいてほしいことがあります。それは香り。臭いの強いものは御法度なので気をつけてください。
 避難所にはさまざまな人が避難し、生活をしています。その中には香りが苦手な人や気分が悪くなるような人もおり、あなたがいいと思う香りを悪臭に感じてしまう人もいるのです。
 さまざまな生活臭と混じるとせっかくの素敵な香りが周りの方に「悪臭」として記憶されてしまうことにもなりかねません。
 メイクの際に香水をつける方もいらっしゃるとは思いますが、避難所にいる間は香りのあるものだけは避けるようにしてくださいね。

避難の率先者になろう

 先日、ラジオの番組の中で「災害が起きそうなとき、あなたは避難をいつしますか?」という質問を町ゆく人たちにしていました。
 その中でちょっと気になったのが「周りが避難したら避難する」と答えた人がいたことです。
 日本人の特性なのか、周囲を伺って同じように行動するという考えの人は思った以上に多いみたいですが、こと災害に関していえば、周囲の人にあわせていると一緒に遭難してしまいかねません。
 「自分の命は自分で守る」ということを原則に、自分で自分の避難を決める必要があるのです。
 例えば、あなたがいつのタイミングで避難しようかと周囲を見ていると考えてください。実はあなただけではなく、あなたの周りの人もみんな同じように様子を見ています。その中で、もしあなたが早めに避難を始めたなら、それを見ていた周りの人も一斉に避難を開始することになりますから、あなたが避難することで周囲の人も助けることができるということになります。

避難するときに園児達は「おはしも(おさない、はしらない、しゃべらない、もどらない)」を教わるのだけれど、津波からの避難の時には大声で逃げることを知らせながらというのもありかもしれない。

 東日本大震災で「釜石の奇跡」と呼ばれる避難も、率先者となった中学生の「逃げろ!」の声に押されて多くの人が避難して助かりました。
 仮に、避難して何も無かったところで、誰も困りません。そう、「何も無くて良かったね」なのです。
 また、自分の足だと避難するのにどれくらいかかるのかを確認しておくことは非常に重要なことです。それがわかっていると、いつまでに避難を開始しないといけないのかがわかり、より安全な避難が可能になります。
 人の動きを見てから避難するのではなく、自分ならいつ避難すべきなのかを決めておいて、自分だけで無く、周りの人たちも助けることができるといいですね。