新型コロナウイルス感染症と災害避難

新型コロナウイルス感染症が地方でもじわじわと広がっているようですが、そんな状況でも災害は発生します。
梅雨入りして、ここで起きやすいのは大雨と水害ですが、お住まいの場所はそういった災害でも安全を確保できる環境でしょうか。
さまざまな事情で、災害が起きそうなときに避難所へ避難する場合、新型コロナウイルス感染症対策はしっかりとして避難をするようにしてください。
具体的には、非常用持ち出し袋に避難所で使用するマスクと、使用後に捨てるための密閉できるゴミ袋のセット、消毒用アルコール、体温計を入れておくようにしましょう。
また、衛生環境を考えると直接手で触れずに食べられる非常食も準備しておいた方が安心できると思います。
毎回書くことではありますが、避難所は場所貸しですので避難者用の設備は何もありません。必要なものは自分で持って行くことを忘れないで下さい。
そして、避難所ではできるだけ間隔を開けて待機場所を確保します。段ボール製やプラスチックなどでできた間仕切りがあれば一番良いのですが、ない避難所も相当数ありますので、その場合にはソーシャルディスタンスをしっかりと取ることです。
勘の良い方はお気づきだと思いますが、新型コロナウイルス感染症対策をしっかりと行っている避難所では収容人員が想定よりもかなり少なくなります。
ひどいところになると、収容者が1/10になるようなケースも想定されますので、天気予報や気象庁発表の注意・警戒情報で逃げた方がいいと判断したら、早めに避難することをお勧めします。
レベル4避難指示が発令されるときには、小さな避難所はほぼ定員オーバー状態になっていると考えて間違いありません。
早めに避難すれば、思った避難所への避難ができる可能性が高いですし、仮に定員オーバーでも他の避難所を探す時間的余裕ができます。
あなたの命を守るために、不安を感じたら避難をすることをお勧めします。

避難所の環境について考える

 避難所、避難場所、一時避難所(以後「避難所」とします)については過去にも触れているところですが、ここのところ続いている大規模な災害の報道を見ながら考えることがあります。
 それは、避難所の収容人数の問題です。
 例えば、内閣府の発表によると7月3日から4日にかけて降り続いた九州南部の大雨では避難指示(緊急)は約110万人に出されたそうです。そのうち、実際に避難した方が6,301人。率にすると0.005%となり、殆ど避難していないとみることができます。
 では、避難所の収容人員はどうなのでしょうか?
 市町村が定める防災計画に記載された避難計画を見る限りでは、避難所の周辺人口をそのまま収容するような計画になっていることが多いのかなと感じています。
 例として、当研究所のある益田市高津町の避難所で考えてみたいと思います。
 研究所から一番近い避難所は「高津小学校」です。平成30年度益田市防災計画の想定では、収容能力は1,000名。圏域人口は1,554名とされていますので、この時点ですでに収容能力を超えています。
 ただ、実際に避難してきそうな地区の数字を拾ってみると1,038名となるので、これなら大きな誤差ではなさそうです。
 一時避難所として校庭が指定されています。国土地理院の地図からざっくりと面積を拾ってみたら5,857㎡。圏域人口一人あたりの専有可能面積は3.76㎡となります。
 仮に車で避難するとして、車のサイズを5m×2m=10㎡と想定すると、3人で1台分のスペースは確保されることになります。また、単にテントを設営するのであれば圏域人口をなんとか吸収することはできそうです。
 次に、避難所開設時には普通最初に解放されるであろう体育館で考えてみます。
 校庭と同じく、国土地理院の地図でざっくりと体育館の大きさを拾ってみると、その大きさは926㎡。実際の避難者になりそうな1,038名で割ると、一人あたりの専有面積は0.89㎡となり、スフィア基準で定められている難民キャンプでの難民一人あたりに必要とされる面積3.5㎡を下回る数値になってしまいます。
 一人寝るのに必要な面積が2㎡と言われていますので、1㎡を切ると寝ることもできません。その上、実際には避難者はそれぞれ荷物を持ってきますので、間違いなく収容できないという状態になるでしょう。
 逆に考えてみると、926㎡の体育館で3.5㎡の個人スペースを確保しようとすると、避難が可能なのは264人ということになります。
 想定人口の1/5にも満たない数字ですが、大抵の避難所の設定はこんな感じですので、避難所周辺に住む全ての避難者が避難してきた場合には施設がパンクしてしまうわけです。
 これは過去の大規模災害で毎回繰り返されている光景ですが、これに対して打てる効果的な手段というのはさほど多くはありません。
 自分が悲惨な目に遭いたくなければ、なるべく自宅で過ごせるように、もし避難するのなら安心して過ごせる避難先をあらかじめ選んでおく必要があるということです。
 家の立地条件から見て避難すべきなのか避難すべきでないのか、避難するとしたらどこへどんな手段で行くのか、そして避難所でどのように生活をし、どういう状況になったら自分の避難を解除するのかということをきちんと決めておくこと。
 地震は突然やってきますが、それ以外の殆どの災害はあらかじめ起きるのはわかっている場合が多いので、被災想定区域外に出てしまうのも避難の一つです。
 もう一つ、大規模な災害が起きると医療・介護体制が維持できません。そのため病気や障害をお持ちの方は、あらかじめ何か起きた場合の対応方法をお医者様や介護担当者としっかり詰めておく必要があります。
 避難所では適切なケアはされないということを前提に、自分の避難計画を作っておくことをお勧めします。