高齢者等避難の意味

 昨年改正された避難レベルですが、その中のレベル3に「高齢者避難」というのがあります。
 改正前は「避難準備・高齢者等避難開始」という名称でしたが、「避難準備が目立っているのはいかがなものか」という偉い人達の議論の結果、高齢者避難からも「開始」が無くなってしまいました。
 ともあれ、高齢者等避難自体は改正前も改正後も変わりません。
 「このまま雨が進むと逃げる必要性が出てくるから、問題のある地域に住んでいる高齢者等準備に時間のかかる人は避難を開始して下さい」という意味合いですので、該当する人は準備して避難しましょう。
 もちろん健常者であっても早めに避難することは原則ですが、わざわざ「高齢者等」と謳っているには意味があります。前にもちょっと触れましたが、この「等」には高齢者の他に、障がい者や妊婦、乳幼児連れといった、準備にも移動にも時間がかかる人全てが含まれています。
 高齢者と若い人で考えてみたらよくわかるのですが、若い人と高齢者が同じスタートで準備したら、事前準備をしっかりとしていない限り、動きの速い若い人の準備の方が先に終わります。
 そして、移動するスピードも若い人の方が速いですから、避難所にたどり着くのも若い人が先になります。
 同時スタートになると、高齢者等が避難所にたどり着いた頃には、若い人で一杯で避難所に入れないという事態が起こります。
 でも、実際に避難所で手厚い支援が必要なのは若い人ではなく高齢者等に該当する人達なので、避難所に居る人と支援が必要な人がズレてしまうという問題が起こります。
 そこで、時間のかかる人達には早めに避難準備を始めてもらい、準備ができ次第避難をしてもらうというのが、この「高齢者等避難」に込められている意味なのです。
 もちろん、早く発表されるということは空振りの確立もそれなりにあります。でも空振りでも「何もないのに避難させやがって」ではなく「たまたま何もなくてよかったね」と考えて、馬鹿正直に発表されたら避難をしてください。
 人を安全に避難させ、そして必要な人を確実に避難所に収容するための警戒基準。
 それが高齢者等避難だと覚えておいてください。

内水氾濫に気をつけよう

内水氾濫で池になった田

 先日の大雨でも、いくつかの場所で内水氾濫が起きていました。
 大雨が降って排水ができなくなり、排水路から溢れた水によって冠水してしまう状態になるのを「内水氾濫」といいますが、最近これが増えてきている気がします。
 河川の水位が上がると排水のための樋門を閉鎖し、河川から水が逆流しないように対策をして、代わりに排水ポンプを使って河川に水を排水していきますが、ポンプの排水量よりも流入量の方が増えて水が溢れ、土地が冠水してしまうことが起きています。
 堤防が切れたりすることにより発生する河川氾濫は外水氾濫と呼ばれて区別されているのですが、住んでいる人から見れば水没している状態に変わりはありません。
 ハザードマップや国土地理院の地図を使うと水の集まりやすい低地はわかりますので、そういった場所に住んでいる人は早めの避難が必要です。
 また、水の通り道は多くの場合決まっていますから、その周囲の人達も早めの避難をしたほうが無難です。
 内水氾濫が起きる条件はあまり変わりませんから、雨量や予想降水量を考えて、道路や家が冠水する前に高いところへ避難しておきましょう。
 また、人間は緊急時でも無意識に普段の行動を取ろうとするものです。
 冠水時に避けるべき道路のアンダーパスや低地を車で走行しようとして動けなくなることも多発していますから、普段から低地を意識してなるべく避ける経路を作っておきたいですね。

避難の率先者になろう

 先日、ラジオの番組の中で「災害が起きそうなとき、あなたは避難をいつしますか?」という質問を町ゆく人たちにしていました。
 その中でちょっと気になったのが「周りが避難したら避難する」と答えた人がいたことです。
 日本人の特性なのか、周囲を伺って同じように行動するという考えの人は思った以上に多いみたいですが、こと災害に関していえば、周囲の人にあわせていると一緒に遭難してしまいかねません。
 「自分の命は自分で守る」ということを原則に、自分で自分の避難を決める必要があるのです。
 例えば、あなたがいつのタイミングで避難しようかと周囲を見ていると考えてください。実はあなただけではなく、あなたの周りの人もみんな同じように様子を見ています。その中で、もしあなたが早めに避難を始めたなら、それを見ていた周りの人も一斉に避難を開始することになりますから、あなたが避難することで周囲の人も助けることができるということになります。

避難するときに園児達は「おはしも(おさない、はしらない、しゃべらない、もどらない)」を教わるのだけれど、津波からの避難の時には大声で逃げることを知らせながらというのもありかもしれない。

 東日本大震災で「釜石の奇跡」と呼ばれる避難も、率先者となった中学生の「逃げろ!」の声に押されて多くの人が避難して助かりました。
 仮に、避難して何も無かったところで、誰も困りません。そう、「何も無くて良かったね」なのです。
 また、自分の足だと避難するのにどれくらいかかるのかを確認しておくことは非常に重要なことです。それがわかっていると、いつまでに避難を開始しないといけないのかがわかり、より安全な避難が可能になります。
 人の動きを見てから避難するのではなく、自分ならいつ避難すべきなのかを決めておいて、自分だけで無く、周りの人たちも助けることができるといいですね。