衛生管理は手洗いが基本

 マスクとアルコール消毒液がないということで狂騒曲状態になっている世の中ですが、災害対策という目を通してみると衛生管理をどのようにするのかということになります。
 災害後の衛生管理では、まずは手洗いが基本になります。しっかりと石けんなどで手洗いをした上で、アルコール消毒やマスクの着用をすることになります。
 水が出ない場合にやむをえずアルコール消毒液やマスクを使用することになりますが、水が得られない場合の衛生管理というのは、水がある場合に比較すると格段に状況が悪くなります。
 現在の状況は、「被災してはいるが水はある」状態なので、アルコール消毒液やマスクがないとしても、比較的衛生管理はしやすいと考えます。
 ただ、一口に手洗いと言っても適当にやっていたのでは意味がありません。石けんを使い、手全体を30秒以上しっかりと洗浄し、流水でしっかりと流す。これだけで最近やウイルスに起因する病気にかかる確率は格段に減ります。30秒といってもぴんと来ない方は「もしもしかめよ~♪」の歌を1番歌うとそれくらいの時間になると思ってください。
 実は細菌やウイルスに感染する感染経路で一番多いのは「手から」です。普段はどんな人であれ、5分程度で何かしら顔を触っているものです。そこから体内に侵入してくることになりますので、手をしっかりと洗浄することで感染症になる確率を下げることができるということなのです。
 マスクやアルコール消毒液がないという事態から、手洗いをしっかりとする人が増えています。細菌やウイルスによる感染症の発症はずいぶんと押さえられているのではないかと思います。
 上手な手洗いについては、下のリンク先を参考にしてくださいね。

しゃぼん玉石けん「シャボンちゃんの手あらいうた(前半は手の洗い方、後半は一緒にやってみようになっています)(リンク先:youtube)

花王ビオレu ビオレu泡ハンドソープ「あわあわ手あらいのうた」練習編CM(リンク先:youtube)

非常用持ち出し袋をどう作るか

市販品の非常用持ち出し袋セット
毎度おなじみ子ども用の非常用持ち出し袋。実際にはいるものいらないものを整理していくので、内容の参考程度に見ておくといい。

 研修会や勉強会などで「非常用持ち出し袋には何をいれたらいいのか?」とか「○○を入れろとあったが、何に使うのか?」というご質問をいただくことがあります。
 答えを先に言ってしまうと「生活に最低限必要だと思うものを入れてください」です。非常用持ち出し袋は何のためにあるのかというと、あなたが家から避難した後、避難先であなたの生活を維持するのに必要なものを入れておくためです。そのため、内閣府防災消防庁などで推奨されている非常用持ち出し品が揃っていれば大丈夫と言うことではありません。あなたが使わないものや使えないものが入っていても仕方ありませんし、あなたが必要なものが入っていないようでも困ります。
 最近はネット通販などで「防災士が考えた非常用持ち出し袋」や「被災地の経験から作られた非常用持ち出し袋」などというタイトルで売られているものもあるのですが、それらを買ってもあなたに必要なものが全て過不足無くはいっているわけではないのです。あなたが使い方がわかっていて、そして避難先で必要なものを揃えていくのが非常用持ち出し袋を作る基本ですし、実はその方が値段も安かったりします。
 では、あなたの生活に最低限必要なものはなんでしょうか。「衣・食・住」で考えれば、着替えが一セット、食事が1日分、寝るための毛布や寝袋といったところでしょうか。これに懐中電灯や雨合羽、救急箱、新聞紙、充電器、ラジオ、ゴミ袋などを組み合わせて自分の非常用持ち出し袋を作っていくのです。
 避難所では時間がたくさんありますから、文庫本や携帯できるボードゲームやカードゲーム、塗り絵、折り紙などが入っていてもいいと思います。スマートフォンが生活に欠かせない人であれば大容量の充電池も必要でしょう。テレビが趣味なら、携帯テレビが必要かもしれません。要は普段のあなたの生活が守れる最低限度のものがあればいいのです。
 人間、環境が極端に変化すると心身とも一気に弱っていきます。非常時だからこそ、いかに普段の生活の質を落とさずに凌げるかが鍵になります。
 非常用持ち出し袋や備蓄品はそのために準備しておくものなのです。
 政府は3日~1週間分の食料や水の備蓄を推奨しています。でも、これを全部非常用持ち出し袋に詰め込むと、とてもではありませんが動けません。持てないものは家に備蓄すると割り切って、非常用持ち出し袋は自分が背負える重さにしてください。
 最後に、非常用持ち出し袋となる袋は登山用等のしっかりとしたリュックサックをお勧めします。よく非常用持ち出し袋として昔のナップサックのようなものが売られていますが、あれに詰めると、紐が肩に食い込んで背負えません。

左は昔からある非常用持ち出し袋。右側は子ども用非常用持ち出し袋。
最近は右側のように普通のリュックサックになっているものが多い。

 せっかく準備するのですから、しっかりとしたリュックサックを選んで、いざというときにしっかりと背負えるようにしておいてくださいね。

家族で防災訓練

  新型コロナウイルスの騒動で休校して家にいる子ども達と、それに付き添う形でやむを得ずお休みしている保護者の方。いろいろと大変ですが、せっかく家族でおうちにいるのですから、この際家族の防災計画を作ってみてはどうでしょうか。
 災害時の避難で必要なもののリストアップや避難判断をみんなで決めたり、お散歩ついでに避難場所まで実際に歩いてみたり、お昼ご飯に非常食を試してみたり。地震に備えて家具の配置変更や固定なども、じっくりと考えることができると思います。現時点で、インフラは全て正常でありながら災害のような状態になっているので、災害を見越した訓練でも安全にいろいろなことを試せると思います。

好みの味を見つける食べ比べも楽しい

 特に非常用持ち出し袋や備蓄品の準備をするチャンスです。非常用持ち出し袋や備蓄品は命を繋ぐものだけではなく、気力をつなぐアイテムも必要ですが、それは人によってみんな違いますので、どうやったら自分が元気で過ごすことができるのかを家族で考えて準備をしておくと、各自がが納得できる非常用アイテムがそろうと思います。
 また、もしも備蓄がされているなら、この際いろいろ試してみてください。足りなかったり多かったり、実際に使ってみるといろいろとわかることが多いです。食事、トイレ、就寝、風呂や洗面など、家に避難しているからこそいろいろと試せることがたくさんあります。
 災害対策は「急がないけれど決めておかないと困ること」です。新型コロナウイルス対策で人と接触できない状況であるのなら、他の災害の準備のためにいろいろとやってみるといいと思います。
 ところで、今回の事態ではマスクやトイレットペーパーが足りないと大騒ぎになりました。でも、非常用持ち出し袋や備蓄品として備えているのであればそこから持ち出すことが可能です。そのための非常用持ち出し袋であり、備蓄品なのです。

市販品の非常用持ち出し袋セット

 大量に買い占めることがいいとか悪いとかさまざまな話が出ていますが、どうなるかわからずに何がどれだけ必要なのかもわからないという漠然とした不安の中ではどれだけ準備しても不安なのでつい買い占めたくなってしまいます。
 自分の必要とする量が把握されていれば、無駄な買い占めもしなくて済みますし、異様に高いものをインターネットで仕入れる必要もなくなります。
 普段から意識して備えておくようにしたいですね。

続・新型コロナウイルスとBCP

 遅ればせながら政府がいろいろと新型コロナウイルス対策を打ち出し始めました。「お願い」や「依頼」「配慮」など、どうみても責任は取りませんといった文字が目白押しですが、政府はともかく、一住民としては生き残るための自衛策を考えなければなりません。
 ここのところの騒動で過去に「新型コロナウイルスとBCP」や「BCPを作ろう」といった記事を書いてはいますが、個別のBCPについて質問されることが増えてきているので、何を考えたらいいのかをもう一度整理してみたいと思います。
 BCPの究極は「いかに自分のところを構成している人・もの・金にダメージを受けずにやり過ごすか」です。このため、自分あるいは自社にとって守るべきものは何なのかを決めておく必要があります。
 ポイントは二つ。事業をどのタイミングで中断するかという判断と、事業をどのように再開するかという判断を決めておくことです。自分や自社にとって事業の中断による社会的ダメージと事業の継続による社会的ダメージのどちらが大きいかを判断することになるでしょう。
 また、経済的・人的・資材的にどのタイミングで止めたら一番再開が安定して行えるのかということも検討しておきます。どの段階でどこから何をどれくらい持ってくればどんなものが再開できるのか、自分や自社の都合だけでなく「社会的に必要とされるものの優先度はどうか」を考えながら対応策を組んでいくことです。
 準備も必要です。新型コロナウイルスは潜伏期が14日程度と言われていますから、怪しいと思ったら14日は隔離される覚悟をしておかなければいけません。そのために必要な食料品や資材は準備できていますか。自分や家族、従業員に何かあったとき、きちんと休みが取れる体制になっていますか。また、休業状態になってどのくらいの間経済的に持ちこたえることが可能ですか。
 BCPは根性論ではどうにもなりません。必要とされるものを洗い出し、対策を考え、準備することで初めて稼働できるものなのです。
 現時点ではマスクも消毒用アルコールも市中には無い状態でいつになったら安定供給されるのかについても目処が立っていません。自分たちでできる自衛策は限定的ではありますが、それでも手がないわけではありませんから、根拠のある対策を調べて実行してください。ネット情報ではファクトチェックしているサイトもありますので、そういったところで内容の真偽を確認し、少しでも安全な対策をとるようにしてください。
 長々と書きましたが「どうなったら休業するのか」「どうなったら再開するのか」、取り急ぎその二点だけ決めておけば今後の対応は格段に楽になると思いますよ。

災害対策について考える

 大雨や洪水、台風といった災害では「タイムラインを作れ」ということがよく言われるようになってきました。
 地震以外の災害は必ず何らかの予兆があるので、それを見逃さずに災害が発生する前から対処を開始して手遅れになることがないようにしようということなのですが、どんな情報があってどういう風に活かしたらいいのかがなかなか理解されないという現状があります。
 ただ、各市町村が発表するさまざまな避難関係の情報は、被害が大きくなってくると間に合わなくなってきます。これは災害が発生し始めると加速度的にしなくてはいけないことが増えるためで、専任の職員がいても華麗に裁くのはかなり困難な仕事です。そのため、市町村が判断するための根拠となる情報を確認して避難関係の情報が出るかもしれないという予測を立て、行動に移す。そのための時間軸がタイムラインということです。
 これはお住まいの地域や家族構成によって必要となる行動や判断基準が変わります。例えば、避難勧告が出ていても避難しない方が安全なところもあれば、避難準備の段階ですでに危険な場所もあるからです。自分のいる地域の強み弱みを知った上で先手を打って行動することで、助かる確率を上げていくための手段だと考えてください。
 ただ、そうそういつも家にばかりいるわけでもありません。出掛けた先で災害が起きそうなときはどうすべきか。これは市町村が出す情報から判断して避難をしていくしかありません。そのため、状況がおかしくなりそうだと気づくことが一番大切なこととなります。周辺状況の変化を意識することが重要になります。
 ところで、地震の場合にはどうなるのでしょうか。地震は、なかなか発生するタイミングを予測することは難しいです。予想もしなかった場所で大きな地震が発生することもよくありますから、地震が起きたときに死なないように対策をしておく必要があります。
 地震で亡くなる人の殆どは、地震そのもので死ぬのではなく揺れによって倒壊した建物や倒れてきた家具などの下敷きになって圧死しています。つまり、耐震補強や転倒防止処置をすることが大切になってくるのです。家だけでなく、自分が出掛ける先がちゃんと地震対策をしているかどうかが、いざというときの生死をわけることになりますから、出掛けた先では意識的にどこなら自分の安全が確保できるかを考えながら行動するようにしてください。最初は面倒くさいかもしれませんが、これも慣れてくると意識していなくてもできるようになります。
 災害対策は自分だけではなく、家族やペット、友人や近所の人といった自分の周りのたくさんの人が誰も死なないようにするために行うものです。自分の対策ができたら、家族同士で内容を擦り合わせ、何かあってもきちんと合流できるようにしておいてください。また、復旧方法や対応策についても、ある程度検討しておいていざというときにすぐ対処ができるようにしておきましょう。

非常用持ち出し袋の中身を考える

 災害に備えて準備しておきましょうと言われるものの一つに「非常用持ち出し袋」があります。
 ただ、この非常用持ち出し袋、政府の推奨する量を全て収めるとかなりの重さになってしまい、高齢者や乳幼児の居る世帯では持って逃げることが困難なのではないだろうかと考えてしまいます。
 試しに、内閣府の防災情報のページにある非常用持ち出し袋の中身の一例を書き出してみましょう。

飲料水、食料品(カップめん、缶詰、ビスケット、チョコレートなど)、貴重品(預金通帳、印鑑、現金、健康保険証など)、
救急用品(ばんそうこう、包帯、消毒液、常備薬など)
マスク、軍手、缶切、ナイフ、懐中電灯、衣類、下着、毛布、タオル、ライター、携帯ラジオ、予備電池、
使い捨てカイロ、ウェットティッシュ、洗面用品、ヘルメット、防災ずきん

 これらのものを家族構成に合わせて準備し、玄関近くや寝室、車の中、物置などに置いておくようにしようと書かれています。
 よく3日分~1週間分の準備をしておこうという話もありますが、災害は発生から収束まで長くても2~3日ですから、さほど間違った内容だとも言えません。もっとも、そちらは家にストックしておく備蓄品でも構わない訳なので、自分の体力にあわせた非常用持ち出し袋を作る必要があるでしょう。
 自分が持ち歩く非常用持ち出し袋は、当然自分が持ち歩けなければ意味がありませんから、あなたの体力や状況によっては、必要だとされる全てのものを持って避難することは無理かもしれません。
 では、最悪の場合は何を持って行けばいいでしょうか?

 前提条件は、とにかくあなたが生き残ることができることです。危険な状況で非常用持ち出し袋を持ち出せる余裕が無い状況であれば、身一つで逃げましょう。
 もしも持ち出す余裕があるのであれば、最低限として次のものを準備しておくといいと思います。

 まずは飲料水。ライフラインが絶たれたときに一番困るのは衛生的な水を手に入れることです。一人一日3リットルという話もありますが、300mlだろうが50mlだろうが、無いよりは遙かにましですので、持てるサイズのお水は必ず用意してください。
 常備薬。慢性疾患や気になる病気がある方は必要です。
 新聞紙1日分と買い物用のビニール袋。これを組み合わせることで簡易トイレや敷物、簡易防寒着やたき火の焚き付けなどに使うこともできます。
 お財布や健康保険証といった貴重品は、恐らくある程度まとめて普段から持ち歩いている人も多いと思うので、その袋をそのまま持って行きます。
 携帯電話をお持ちの方は、充電池と充電ケーブルは絶対に必要ですし、できれば充電機能をもった携帯ラジオがあるとよりよいと思います。
 タオルはバスタオルとフェイスタオルを一枚ずつ準備します。女性であれば、普段お使いの生理用品も一回分は在庫があったほうが安心です。
 ウェットティッシュと歯ブラシ、下着、使い捨てカイロはあったほうがいいです。それから、風呂敷と手ぬぐい、帽子。雨合羽。
 最後に余力があれば食料品少々。
 これらのアイテムを、濡れないように密閉できるビニール袋に収めて、背負いやすいリュックサックに入れておきます。

 人の命が危険になる順番としては、①体温低下、②脱水症状 ③飢えになりますので、ここではそれに対応した準備をご紹介しています。食料は、無いとお腹が減ってひもじい思いはしますが、食べ無ければすぐに死ぬという人で無い限り、優先順位はそんなに高くありません。でも、低体温や脱水は生命にかかわってきますので、そちらへの対応を重視していることが読み取れるでしょうか。
 もっとも、これらのものを準備したところで自分が使わなかったり、使い方を知らなければ単なる重しでしかありませんので、使えてかつ必要だと思う物を準備しましょう。また、上記にプラスして、おうち個別の事情で追加しておくべきものもいろいろあると思います。例えば乳児のいるおうちではおむつやミルクが必要になるでしょうし、高齢者の方だと老眼鏡や入れ歯が追加になってくるという風に。
 ただ、個別の事情を考え出すと、あれもこれもということになって、結局いろいろなものを準備しすぎて持って行けなくなるということが非常によくあります。せっかく準備していても、それを持って避難ができなければ何の意味もありません。
 高齢者が多く、自治会管理の避難所があるところでは、身一つでの避難を徹底する代わりに、避難所にコンテナボックスに入れた各個人の非常用備蓄品が備えることで非常用持ち出し袋の代わりができるようになっていたりすることもあります。

 何を重視するのかは人それぞれですし、地域によって備えるべき災害と準備は異なります。あなたや家族、地域の状況を考えた上で、自分が持てる重さの非常用持ち出し袋を準備するようにしてくださいね。

自分ができる地震時の安全な姿勢を決めておく

 地震が起きたとき、まず最初に周囲の安全を確認してからダンゴムシのポーズを取る、というのが最近の耐震姿勢のはやりのようです。
 ただ、何らかの事情でダンゴムシのポーズがとれなかったり、周囲の安全確認に時間がかかったりする人がいることも事実ですので、自分がすぐにとれるできるだけ安全な姿勢というのを確認しておきましょう。例えば高齢者の方などは素早い行動を取るのが困難な人も多いですから、安全確認しているうちに揺れで転んで怪我をしてしまうかもしれません。それを防ぐためには、普段歩くコースに危険なものがないかを意識しておくことです。
 それから、転倒しないためには重心を下げる必要があります。人間の身体は構造上異常に頭が重たくなっていますので、なるべく低い姿勢を取ることが大切です。しゃがんだり、座ったりすると揺れに対して転んでしまうリスクはかなり下がります。階段では、必ずてすりをつかんで移動し、揺れを感じたら手すりをつかんだまましゃがむこと。そうすれば何もせずに立ったままよりもかなり安全になります。
身体が揺れを感じたらすぐに低い姿勢をとること。もし地震でなかったとしても、転倒する危険は防げます。
 地震そのもので死ぬことは殆どありません。揺れによる転倒や倒壊、崩落などに巻き込まれて死ぬのですから、その原因をなくせばいいのです。
 普段からの生活スペースの片付けや移動経路にものを置かないことなどしなければいけないことはたくさんありますが、ちょっとした意識の変化で生存確率を変えることはできます。あなたにあった地震時の安全な姿勢を見つけ、その姿勢が無意識にでも取ることができるように、見つけて練習しておいてください。

災害時の情報にはどんなものがあるだろう

 災害で危ない目に遭わないようにするためには、災害が起きる前に自分の安全を確保することが大切です。その判断基準の一つとして、行政機関が発表する各種情報がありますので、今回はこの情報について確認してみることにします。

1.情報の種類

情報の種類には、大きく分けると3つあります。

(1)気象庁が出す気象情報

 気象庁や各気象台が出す情報で、早期天候情報、各種注意報、各種警報、各種特別警報など、おそらく一番よく見聞きする情報です。テレビやラジオ、インターネットなどで確認できます。

(2)気象庁と関係自治体が出す河川情報及び土砂災害情報

 国、都道府県が管理している河川の水位とその水位に基づく河川情報、雨や水量の状況によって起きる土砂災害に関する土砂災害情報があります。
これらの情報は重複して提供されていたり、管理区間だけ提供されていたりとややこしいので注意が必要です。
 河川情報は国土交通省の各河川事務所、土砂災害情報は各都道府県の砂防事業を担当している部署のホームページ、または都道府県の防災ポータルでも確認できます。

(3)市町村が出す避難情報

 上記(1)や(2)の情報を元に、市町村が集めた情報を総合的に判断した上で避難情報を出しています。市町村からは防災無線や防災メール、一部ではSNSでも提供されています。

 ご覧のように、さまざまな行政機関がいろいろな情報を出しているため、去年情報の緊急性を示すレベル表示が導入されたのですがこのレベルだけではなんのことかわからないということで、現在はレベルと避難情報を併記した状態情報が提供されています。
 次に各レベルと対応する各種情報を並べてみます。

2.発表されるレベルと情報の関係

(1)レベル1

 気象庁が天気でなんらかの危険の兆候が見られるときに出す早期天候情報。これが発表されると「レベル1」になります。
 ラジオやテレビの気象コーナーでも触れられることがありますが、1週間程度前から危険が予測されそうな場合には情報が出されます。精度的は低めですが、これが発表されたら非常用持ち出し袋の中身や備蓄品の確認をして、不足しているものがあったら買い足しておくようにしてください。

(2)レベル2

 気象庁の「大雨注意報」や「洪水注意報」、国や都道府県の「河川洪水注意報」や「土砂災害注意情報」などが発表されたときに「レベル2」になります。
 これが発表されると、この先危険になる可能性があるということですので、あらかじめ決めてある避難経路を確認して、いつ、どこを通って、どのような手段で、どこへ避難するのかを見ておいてください。
 また、気象情報に意識を向けるようにしてください。

(3)レベル3

 気象庁の「大雨警報」「洪水警報」国や都道府県の「河川氾濫警戒情報」「土砂災害警戒情報」が発表され、住民通報や道路などの状態から危険が迫っていると判断されると「レベル3」が発表されます。
 「レベル3」は避難情報では「避難準備・高齢者避難開始」といい、災害が起きる可能性があるから避難準備を始めること。乳幼児がいたり、高齢者の方や障害者の方など、避難に時間のかかりそうな人や土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域に住んでいる人は、準備ができ次第すぐに避難を始めてくださいというお知らせです。
 ここからはだんだんと緊急性を帯びてきますが、「レベル3」は比較的早い段階で発表されるので、避難に車を使うことが可能です。家に不安のある人や、孤立しそうな場所の人も、できれば避難した方がいい情報です。

(4)レベル4

 市町村の発表する「避難勧告」や「避難指示(緊急)」がこれに当たります。
 国や都道府県では「河川氾濫危険情報」や「土砂災害警戒情報」の発表も判断基準の一つとなっていますが、これが発表されるときには小さな災害は発生しています。危険地域に住んでいる人は何を置いても避難してください。避難に時間のかかる人がいる場合には、二階に避難するなど屋内での垂直避難も考えるような状態です。これが発表されたら、原則として避難に自動車ではなく徒歩での避難になりますので注意が必要です。

(5)レベル5

 市町村では「災害発生情報」の発表となりますが、これが出るような状況だと多くの場所でいろんな災害が起きている状態です。
 気象庁が出す「大雨特別警報(浸水害)」「大雨特別警報(土砂災害)」、国や都道府県では「河川氾濫発生情報」がレベル5の判断基準となっていることからも分かるとおり、完全に災害となっています。
 もしこの発表があったら、その時点・その場所でもっとも安全と思われる場所へ直ちに避難をしてください。

 ここまで読んで気がついた方もいらっしゃると思いますが、「避難命令」は災害の避難情報には存在しません。最上位でも「避難指示(緊急)」ですので、避難に関する情報については気をつけていただければと思います。

 今まで説明した内容を一覧にするとこの表になります。(出典:気象庁HP)
 自分は避難すべきかどうか、避難するとしたらどの情報が出たときに避難を開始すればいいかを、今までの説明とこの表、そしてあなたの状況を考えて決めておいてください。
 また、この表の色は、そのまま「土砂災害情報」や「河川情報」のメッシュ地図で使われているものです。紫が一番ひどい状態だと言うことを覚えておくといいと思います。ただ、一つ例外があるのは気象庁の雨雲レーダーです。これは一番強い雨雲を赤で示すことになっていますので、そこだけ注意してください。

3.避難の判断基準

 避難の判断基準はあなたの状態や避難先、そして気象条件により変わるため、一概にこうだということは言えません。
 おおざっぱに書くとレベル3からレベル4の間で避難の開始から完了まで済ませることができれば、概ね安全だと言えるでしょう。
ただ、現在起きている、または起きそうな災害に対応している避難先でなければいけませんので、そこだけは注意するようにしてください。
 もし避難所(一時避難所、避難場所含む)に避難されるときにはその避難所がどんな災害に対応しているのかを事前に確認し、避難先を決めておくことをお勧めします。避難所の性格についてはこちらでご確認ください。

意識と行動

 災害対策が必要だと思っている人は多いと思いますが、あなたはいかがですか。
 地震、台風、大雨、洪水、雷に猛暑と、特にここ最近あらゆる形で襲いかかってくる災害。自分が安心して過ごすためには、災害対策をきちんとしておかなければいけません。
 では、災害対策で何か準備をしているかと尋ねると、ちょっとしたことまで含めると、結構な確率でそれなりに準備しているという回答をいただけるようになってきており、災害対策の普及をしている身としては少しだけ喜ばしいことだと思っています。
 ただ、問題になるのは災害対策は一度備えればOKというものではなく、定期的にいろんなものを見直して準備し続けるという行動が必要となります。
 これはなかなか難しいようで、災害でひどい目に遭ったところでさえ、十年も経つと備えていたものがみんな駄目になってそれっきりというようなことになっていることが殆どなので、災害対策を意識してもらった後は、継続して意識してもらえるような仕掛けを作る必要があります。それが地域や行政が行う避難訓練であり、3.11や1.17といった災害を忘れない日として毎年取り上げられている日です。
 家庭でも、意識し続けることは非常に難しいと思います。でも、年間計画で一年に一度、キャンプと安全な場所までの避難訓練を行えば、災害対策を意識し続けることは無理なくできると思います。
 備えているから安心、ではなく、備え続けるから動けるという意識でいたいものですね。

まずは安全確保から

 地震にしても、水害にしても、津波や台風にしても、まずは自分の安全を確保するところから始まります。いくら生き残った後の避難訓練や復旧手順の確認をしても、災害時に死んでしまっては何の役にも立ちません。でも、どのように安全確保すると生き残る確率が上がるのかについては、案外とまじめには考えられていないものです。
 例えば、学校や施設では、生徒や入居者の安全確保についてはうるさいくらいに言いますが、肝心の教員や職員は安全確保が非常におざなりだと感じています。普段指導する側やお世話する側なので、そうなってしまうのは仕方が無いことなのかもしれませんが、正直なところうるさく指導する人ほど自分の安全対策はないがしろにしているなと思います。どのような人であれ、災害が起きたときにはその災害が特定の人だけ避けてくれるわけではありませんから、他人に指導しながら自身も安全確保をするための行動を取る必要があります。
 さまざまな訓練を見てきていますが、指導するときには格好の指導はしますが、なぜその行動を取らなければいけないのかという説明は殆どされていません。
 防災訓練での前提となる「安全確保」について、当たり前だとは思わずにきちんと対象者に説明すること。そして言っている本人も自分の安全確保はきちんと意識し、行動すること。
 まずは生き残る確率を上げるためにどのように安全確保したらいいのかについてしっかりと意識し、確認し、自分の中や周囲の人と、しっかりと共有して行動するようにしてくださいね。