キャンプやピクニックをやってみよう

土鍋でご飯炊き。ちょっと難しいところもあるが、慣れるとかなり面白い。

 災害が起きるとさまざまなところで普段の生活と異なる日常がやってきます。ライフラインの途絶や避難所での集団生活、生活再建の悩みと、平時に考えてもげんなりとしてしまいそうな内容がたくさん並びます。
 ただ、ある程度不自由な生活を試しておくことで、いざというときにこんなもんかと思えることも事実で、制御された状況下で不自由、例えばキャンプなどを体験していれば、いざ災害で本当に不自由な生活を強いられることになってもなんとなく落ち着いていられるものですから、何事も体験しておくことが大切です。
 手近な不自由を体験するということでは、キャンプがお勧めです。最初は道具は全部レンタルでいいと思います。何をどのように使うのかを試行錯誤しながらやってみることで、自分たちの生活に最低限必要なものは何かが見えてきます。
 これを何度か繰り返していくうちに自分たちが必要な道具や資機材が見えてきますから、それを非常用持ち出し袋として整備すればいいということになります。
 いきなりキャンプというのには抵抗がある方は、ご近所へのピクニックでもいいと思います。非常食や携帯ガスコンロを使った昼食やおやつを出かけた先で作るだけでも立派な経験です。
 防災グッズということで、政府や自治体等の公的機関からは非常用持ち出し袋の中身の一覧がよく公開されていますので、それらを非常用持ち出し袋に詰めてピクニックに出かけるだけでもいろいろと目線が変わってくると思います。
 家族で一セットではなく、一人に一セット準備し、実際に持ってキャンプやピクニックにお出かけしてみる。そうすることによって非常用持ち出し袋の中身が本当にあなたが必要とするものに変化していきます。
 ちょっとした機会に使うようにしておけば押し入れの奥にしまい込むようなこともないでしょうし、非常用持ち出し袋の存在も意識することができます。
 まずは動いてみること。防災対策は知識だけで無く実践が重要ですから、気持ちのよい天気の時に、ぜひ一度やってみてください。理解できなかったことがいろいろと理解できるようになると思いますよ。

↓レンタル用品で一式借りたい人向けの参考リンクです。

怪我をしない方法を考える

応急手当はやった分だけ上手になる。訓練がとても大切。

 応急処置やけが人搬送などは、防災訓練ではかなりメジャーなメニューとなっていますが、いづれの訓練でも人がたくさん必要な内容になっています。
 応急処置では心臓マッサージやAEDの使い方がよく出てきますが、これらは基本的に複数人で対応する訓練になっていると思いますし、けが人搬送はそのそも一人で搬送する訓練はほとんどやっていないと思います。
 何が言いたいのかというと、訓練で複数人での救助を学んでいても、いざ本番のときには、場合によっては一人で状況に対応する必要が出てくることがあり、そんな状況におかれたときには何を優先すべきなのかがぐちゃぐちゃになってしまいがちになるということです。
 けが人に一人で対応するには限界があり、恐らくは対応が間に合わないことも多くあるでしょう。そうなればそんな状況になってしまった人もそんな状況に出会った人も不幸になること間違いなしです。
 これに対する対策はただ一つ。怪我をしないということに尽きます。
 怪我をしなければ自分で移動ができる人であれば手はかかりませんし、応急処置をしなくても済むのであれば、その分避難が早く開始できます。
 怪我をしない方法は、常に周囲の状況に関心を持つことです。歩いているところの両端や上空、地面。そういったものに関心を持って、「この場所で何か起きたらどうすればいいか?」を考えてみてください。
 いつもの散歩や通学コース、いつも過ごす部屋や場所にどのような危険があってどうしたら怪我をしなくて済むのか。それを考えて対策をするだけでも、怪我をする確率はぐんと下がります。
 かすり傷程度なら影響はないですが、大きな怪我をしないためにも周囲の状況は常に観察して危険な場所は通らないこと。そして怪我をしない方法を考えおくようにしたいですね。

訓練は嘘をつかない

 非常時に、普段できていないことができることは殆どありません。
 そのために防災訓練があり、施設等では毎月から年に2回まで幅はあるにしても何らかの災害対応訓練をしてできるように準備をしているわけです。
 ですが、日常が忙しいことや、いつ起きるかわからない災害に備えることが無駄といった理由から、大抵の場合は防災訓練の計画をいちいち作らずに以前に作った訓練計画をそのまま再利用することになります。たまに担当者が訓練する理由をきちんと理解していつもと違った内容で訓練をしようとすると参加者から「余計な仕事をするな」と苦情が来るので、結局決まった内容を決まったとおりにする決まった訓練、いわゆる「訓練のための訓練」になっていくのがお決まりのパターンです。
 まぁ、災害が訓練の通りに起きてくれるならそれでいいのですが、実際にはいつどんなことが起きるのかは誰にもわからないので、防災訓練もさまざまなバリエーションで取り組んでいく必要があります。
 その地域で起きる災害を主軸に、時間や場所、状況を変えて対応を考え、実際に行動してみる。それにより訓練のバリエーションが増えるので、いざ災害の時にも慌てず冷静に自分の安全確保ができるようになります。
 また、訓練と同時に備えも準備することで、大規模災害のときにも避難難民にも飢えや脱水にもならず、心身元気で災害を乗り越えることも可能になります。
 防災とは「災害をいかに防ぐか」ではなくて「災害の被害をいかに極所化して受ける被害を押さえ、日常生活への復帰を早めることができるか」ということを考えなくてはいけません。最近いわれている「減災」は対策と備えを行うということなのですが、誰でもできる被害を最低限まで押さえ込む対策は訓練しかないと思います。
 頭で考えるだけでは無く、実際に体を動かしてみないとわからないことがたくさんありますので、いろいろな機会を見つけて訓練するようにしてください。そして、訓練は失敗があって当たり前ですから、恐れずにいろいろな状況を設定して訓練をしてみてくださいね。

避難の行動開始のタイミングを考えてみる

 避難するための鍵を作ろうということは過去に「避難開始のタイミングを考える」という記事で書いているところですが、いざ行動開始の鍵を決めようとしても、なかなかそれでいいのかという疑問が出てきて踏ん切りがつかないものです。
 避難開始が早すぎるといろいろなところで支障を来しますし、遅すぎるとそもそも避難ができません。自分の避難開始の最良のタイミングが事前に決めたとおりでいいのかどうかは実際に起きてみないと分からないところではあります。
 ただ「行動開始ってなんだろう」という方や「やっぱり不安だ」という方、「他の人はどんな基準で避難を開始しているのだろう」という方には、内閣府が出した避難行動の鍵となる「避難行動判定フロー」が一つの参考になるかもしれません。
 ハザードマップで自分の住んでいる場所や働いている場所がどのような状況なのかを確認した上で、避難するタイミングはどうなのかをこのフローで確認すると、ある程度安全に避難ができると思います。
 興味のある方はぜひフローを見ていただき、避難行動開始の参考にしていただければと思います。

台風・豪雨時に備えてハザードマップと一緒に「避難行動判定フロー」を確認しましょう」(内閣府防災の該当PDFに飛びます)

災害に備える

 新型コロナウイルス騒動がなんとなく沈静化しつつあるようですが、代わりに地震や風水害が発生してきそうな雰囲気です。
 新型コロナウイルス騒動でいろいろと足りない物資がありますが、それでも他の災害に備えて準備はしておいたほうがよさそうです。
 今回は災害に備えた準備について考えてみることにします。

1.耐震補強はできていますか

 日本は地震大国であり、戦後から高度成長期にかけてが異常なほど地震が起きなかった期間であることはあまり知られてないのかなと思います。
 その時代に建てられた建物は、地震に耐えられる作りになっているかどうかわかりませんから、お住まいのおうちが最近建てられたものでないのならば、耐震診断と耐震補強をすることをお勧めします。
 寝てる時間だろうがトイレに入っている時間だろうが、地震はお構いなしにやってきます。耐震補強をすることが困難であるなら、せめて寝室は布団以外の家具は撤去してものに潰されないようにしておきましょう。

2.避難先を確認していますか

 建物が倒壊したときや余震が続くときなどは自宅での避難が困難な場合があります。そんなとき、どこへ避難するかについて複数箇所候補をあげておいてください。
 避難先は別に行政が指定する避難所や避難場所である必要はありません。自分の安全が確保されるのであれば、親戚や友人の家でもいいし、近くの公園や高台、裏山でもかまいません。また、自動車をシェルターとして使えるかどうかも検討をしてみてください。ただ、地震や津波では大規模火災が起きる可能性もありますので、周辺を住宅で囲まれた場所や燃えるものに囲まれた場所は避難先として選ばない方が無難だと思います。また、避難経路を複数準備しておいて、いざというときに慌てなくて済むようにしておきましょう。

3.非常用持ち出し袋はできていますか

 非常用持ち出し袋は発災から支援が届き始めるまでの数日間、地震の身体的・精神的な健康を維持するために必要なものを入れた大切な袋です。
 家族全員に一つずつ作っておくのはもちろんですが、できれば複数箇所に分けて保管しておくと全滅で悲しい思いをすることを避けることができます。もし全部無事であるなら気持ちに余裕ができますので、例えば倉庫や車の中、あるいは職場のロッカーなど、いくつかの場所にそれぞれ備えておくと安心です。
 非常用持ち出し袋をすでに準備している人は、電池や非常食、水の賞味期限を確認し、問題があれば交換したりして、いざというときにきちんと使えるようにしておきましょう。

4.家族の中で「まず自分の身を守ること」を共通化していますか

 災害が起きた後、一番怖いのは自分以外の誰かを迎えに行ったり、あるいは誰かが迎えに来るのを待っていて時間を浪費することです。
 家族の共通ルールとして「災害が起きたらまずは自分の身の安全を確保すること」を確認しておいてください。命があれば必ず再開はできます。災害からの安全が確認できたら家族はどこへ集まるのか。底まで決めておければ完璧です。

 災害は必ず起こります。いつ起きるかわからないだけで防ぐことも難しいですので、日頃からしっかりと準備をしていざというときに命を守れるようにしておきたいものですね。

正常性バイアスの功罪

 車の運転免許を持っている方は、免許を取得する過程や更新講習などで「『だろう』ではなく『かもしれない』運転をしてください」と言われていると思います。
 「大丈夫だろう」ではなく、「何かあるかもしれない」と考えて安全に運転するという意味なのですが、災害対策でも同じことが言えます。
 同じことが繰り返されると、人間の行動は「それまでと同じ」という前提で考えてしまいがちです。これは正常性バイアスの一つで、考えることを減らすために無意識にパターン化している自分の中の事実に当てはめて考えてしまうことなのですが、災害時にはこの正常性バイアスを打ち破ることができるかどうかが生き残ることのできる鍵となっていることに留意してください。

 何か起きたとき、人は自分のそれまでの生活や行動を変えようとせず、その状況の中から普段と同じものを見つけ出そうとします。また、行動を変えないで済む理由をいくつも作り出そうとします。
 それが正常性バイアスと言われるもので、この正常性バイアスのおかげであまり考えずに普段の生活を送ることができるのですが、これが度を過ぎると非常事態なのに常時のルールで判断しようとして危機的な状況を生み出してしまいます。
 常時と非常時を切り分けることは、実は非常に困難な作業です。どこまでが常時でどこからが非常時なのかは、その人ごとに違うからです。
 ですが、非常時にどうするかを決めておかないと、正常性バイアスによって非常時が常時の延長にされてしまう可能性は非常に高くなります。
 切り替えるためのスイッチと切り替え後の行動をどうするのかを決めておくことで、正常性バイアスから逃れて身を守ることが可能になりますので、自分の中の常時と非常時の線引きについてきちんとしておくことをお勧めします。

行動パターンを正しくはめる

 災害が起きそうなとき、自分の命を守るために避難をすることがありますが、一つ気を付けておきたいことがあります。
 それは、「行動パターンを正しくはめておく」ということです。
 例えば、水害で川から水が越水しそうな状況を考えてみてください。住んでいる家が低地であれば水没する可能性は高いですから、直ちに避難を開始する必要性があるでしょう。では、どこへ避難するのか。答えは「安全を確保できる高いところ」です。多くの人は近くの避難所への避難を選択すると思うのですが、「避難=避難所」ではないことに注意してください。
 漫然と「避難=避難所」と考えている人の場合、避難先の避難所が安全かどうかの検討はしていない場合がほとんどです。最近では避難所にその避難所がどのような災害なら安全かについて表示されているところも増えてきましたが、この表示はハザードマップの情報を前提にしてされていますから、それが常に正しいとは限りません。ハザードマップの想定を超えていれば、当然被災する可能性があるということは意識しておくべきです。

吉賀町の避難所所の一つ、吉賀高校体育館にある避難所表示。土石流と崖崩れ・地すべりの時には使えないことがわかる仕組み。この適応表はハザードマップがベースになっていることに留意。

 東日本大震災で多くの教員や生徒が犠牲になったとある小学校では、その小学校が避難所になっていてハザードマップでは津波でも水没しないとされていたことから、避難所を開設するしないで揉めているうちにみんな津波に飲まれてしまったという話(詳しくはwikipedia「石巻市立大川小学校」を参照)もあります。今いる場所に危険が迫っていて避難するときに必要な行動パターンは「避難所へ避難する」のではなく、「安全な場所へ避難する」です。
 緊急時にはどこへ避難するかを時間はありません。
 水害でも津波でも、より高い場所へ避難してあなたの安全を確保すること。結果的にその場所が無事だったとしても、高台に逃げてはいけない理由は何もないのです。
 同じように、避難しなくてはいけない災害が起きたときには、どのようにすれば自分の安全を確保できるのかについての行動パターンを作っておいてくださいね。

救急セット、あなたは使えますか

救急セット
救急セットの一例。はさみや毛抜き、ピンセットなどの医療器具は思ったように使えるかどうか、あらかじめ確認して置いた方がいい。

 非常用持ち出し袋に入れておくことが推奨されているものの中に救急セットがあります。さまざまな防災の本や研修会でこの中身について調べてみるのですが、多くは「あなたが必要とする救急時に使えるもの」というすごくおおざっぱなくくりで語られることが多いようです。
 イラストを見ると、包帯や三角巾、カット綿、絆創膏などの外傷用と普段使っている常備薬があればいいのかなと感じますが、いざ準備する場合には個別に揃えるのでは無く、ドラッグストアやインターネットなどでセット化された救急セットを買うことが多いと思います。
 ここで大切なのは、救急セットには考え方によっていろいろなものが入っているのですが、それをどう使ったらいいかをあなたが理解できているかどうかです。
 救急セットは、災害時にもし怪我などをしたとき、命を繋ぐために緊急に処置ができるための資機材を入れておくものですから、どんなに便利な道具でもあなたが使い方を知らなかったり、使ったことがないものは役に立ちません。
 必要最低限の応急処置をできる能力を身につけて、その上でその応急処置を実施するために必要な資機材を入れておくことが、救急セットでは非常に重要になると思いますので、取り扱えるようにしっかりと練習をしておくことをお勧めします。
 また、医療用品にはそれぞれ使用期限が設定されていることが多いので定期的な入れ替えについて意識するようにしてください。
 ちなみに、消防庁では「一般市民向け応急手当WEB講習」を公開しています。ネット配信の映像を見て、出される問題を一定以上正答すると、受講証明書も発行されるようになっています。
 日本赤十字社や消防署の行う応急手当の講習会に出かける時間の無い人や何から手をつけたらいいか分からない人は、こういった講習で学習することもできますよ。

一般市民向け応急手当WEB講習(消防庁のウェブサイトへ移動します)

非常用持ち出し袋の点検時期

市販品の非常用持ち出し袋
市販の非常用持ち出し袋。中身の使い方、子どもが理解していますか?

 ある程度までの年齢のこどもの非常用持ち出し袋の中身は、大人用に比べると点検回数を増やす必要があります。
 というのも、月例や成長によって必要なものがめまぐるしく変わっていくので、一度セットして一年に一回の点検では服や下着が入らなくなっていたり、食べるものが変わっていたりして持っているのに役に立たないという事態になります。
 特に乳幼児は週単位で必要なものが変化することもありますから、普段使っているおむつやミルクなどを入れたお出かけセットがあると思いますので、それを帰宅したらすぐに出かけられるようにセットして、非常用持ち出し袋にすることをお勧めします。
 自分で非常用持ち出し袋を持って避難できるくらい子どもが大きくなってきたら、4半期に一度、非常用持ち出し袋の点検をして服や下着が小さくなっていないか、非常食が成長に合っているかを点検して入れ替えていきます。
 基本的に必要なものは大人も子どもも変わりませんから、親子で一緒に点検することで、おうちの防災を勧めていけるといいなと思います。
 また、高齢者の非常用持ち出し袋についても半年に一度でいいので点検してみてください。それまでは持てていた非常用持ち出し袋が持てなくなったり、服や下着などで追加しないといけないものが出ている可能性もあります。
 非常用持ち出し袋というのは普段の生活を維持してくれるための救命袋です。その時々にあった仕様に入れ替えて、いざというときに持って避難できる、中身を確実に使うことができるようにしておいてくださいね。

情報収集を制限する

 災害時における情報収集には2つの段階があります。
 一つは災害発生中のもので、これは刻一刻と変わっていく情報により生死が分かれる情報ですので、状況が落ち着くまでは情報を集め続ける必要があります
 もう一つは発生した災害が落ち着いて状況が大きく動かなくなったとき。
 長期戦になったときとも言えますが、こうなると情報をとり続けていても「情報疲れ」をするだけになってしまうので、意図的に情報を止める必要があります。
 現在はさまざまな情報環境があり、大きくも小さくも情報を集め続けることができます。例えばインターネットのSNSでは玉石混合で真偽不明の情報、特に不安のあおるようなものが大量に飛び交っています。またマスメディア、特にテレビでは、なぜか被害の大きかったところの情報しか写しません。視聴率が稼げるとか、テレビ映えするという理由ではないことを信じたいのですが、その地域に住んでいる人からするとそんな情報ばかり見せられると不安にしかなりません。
 そしてこれらの情報を集め続けると、気がつかないうちに不安や緊張、恐れがあなたの心を蝕んでいきます。
 それを防ぐには、収集できる情報をあえて収集しないこと。例えば、情報を集めるのはお昼の一時間という風に決めておくとそれ以外の時間は不安を感じずに済みます。
 災害からの復旧で地味に大切なのはこころの健康です。特に避難所等で状況が落ち着いてきたら、テレビやラジオなどのマスメディアは流しっぱなしにするのではなく、時間を決めてスイッチを入れるようにしてください。