避難訓練は定番化しない

 学校や施設の避難訓練では、だいたい毎年同じような内容が繰り返されていることが多いです。
 それだけ重要ということもいえるのですが、内容も完全に同じになってしまうと、それが当たり前になって本番では右往左往することも出てきます。
 特に想定シナリオが共有化されている場合には、そのシナリオに従って訓練を実施しないと怒られることもよくあり、変更する手間を考えると、結局毎年同じような訓練になってしまいます。
 それを防ぐためには、シナリオは参加者には共有しないことが大切です。
 いつ、どのような想定で何が起きるのかまでは共有してもいいと思いますが、具体的な行動については事前に決められているはずですから、シナリオがなくてもそのとおりに行動できると考えておきます。
 そうすることによって、落ち着く先がわかりませんので最後まで緊張した状態で訓練を行うことができると思います。
 まだ、どうしてもシナリオを共有する必要があるのであれば、その中にサプライズを組み込むことをお勧めします。
 例えば、けが人が発生しているや職員の数が不足しているなど、少し意地悪な想定を準備することで、シナリオがあってもかなり緊迫した訓練ができます。
 実際のところ、訓練をしっかりすればするほど行動も素早くなって安全も確保されやすくなるのですが、いつも同じ想定だと、異なる条件で本番になったときには相当慌てることになってしまいます。
 避難訓練では予定調和は必要ありません。トラブルがなく終わったとしたら、想定になにか大きな問題があったのではないかと考え、訓練を計画していくことをお勧めします。

訓練は嘘をつかない

 非常時に、普段できていないことができることは殆どありません。
 そのために防災訓練があり、施設等では毎月から年に2回まで幅はあるにしても何らかの災害対応訓練をしてできるように準備をしているわけです。
 ですが、日常が忙しいことや、いつ起きるかわからない災害に備えることが無駄といった理由から、大抵の場合は防災訓練の計画をいちいち作らずに以前に作った訓練計画をそのまま再利用することになります。たまに担当者が訓練する理由をきちんと理解していつもと違った内容で訓練をしようとすると参加者から「余計な仕事をするな」と苦情が来るので、結局決まった内容を決まったとおりにする決まった訓練、いわゆる「訓練のための訓練」になっていくのがお決まりのパターンです。
 まぁ、災害が訓練の通りに起きてくれるならそれでいいのですが、実際にはいつどんなことが起きるのかは誰にもわからないので、防災訓練もさまざまなバリエーションで取り組んでいく必要があります。
 その地域で起きる災害を主軸に、時間や場所、状況を変えて対応を考え、実際に行動してみる。それにより訓練のバリエーションが増えるので、いざ災害の時にも慌てず冷静に自分の安全確保ができるようになります。
 また、訓練と同時に備えも準備することで、大規模災害のときにも避難難民にも飢えや脱水にもならず、心身元気で災害を乗り越えることも可能になります。
 防災とは「災害をいかに防ぐか」ではなくて「災害の被害をいかに極所化して受ける被害を押さえ、日常生活への復帰を早めることができるか」ということを考えなくてはいけません。最近いわれている「減災」は対策と備えを行うということなのですが、誰でもできる被害を最低限まで押さえ込む対策は訓練しかないと思います。
 頭で考えるだけでは無く、実際に体を動かしてみないとわからないことがたくさんありますので、いろいろな機会を見つけて訓練するようにしてください。そして、訓練は失敗があって当たり前ですから、恐れずにいろいろな状況を設定して訓練をしてみてくださいね。