避難所に入る順番

 災害では避難者が二種類にわかれます。
 一つは元気で避難後の生活の復旧も早い人。もう一つは年齢や障がいなど何らかの理由で生活再建に支援の居る人、いわゆる生活弱者といわれる方です。
 自主防災組織や自治会が機能している地域だと、水害や台風と言った予測される災害時には事前に生活弱者の方を避難所あるいは福祉避難所に搬送して事前に安全を確保する光景が見られます。
 地域のつながりがしっかりとしているところも、比較的早めに生活弱者の方の避難は早いような気がしています。
 おおざっぱになりますが、事前に予測できる災害の場合だと、生活弱者→健常者の流れで避難所に人が増えていく構図です。
 ですが、これが地震になると光景が逆転します。
 発災後、まず最初に避難してくるのは健常者の方。そしてこういった人達が避難所を埋めたころ、生活弱者の人達が避難してくるといった光景になります。
 それがいけないというわけではないのですが、避難所に避難できる、または入れる順番を決めて地域で共有しておかないと、元気で声のでかいおっさんが避難所の一番いい場所で多くの面積を確保し、支援のいる人は避難所に入れないという光景が発生してしまうことになります。
 こういった光景は、田舎よりも都会で見られることが多いような気がします。
 顔見知りであればそれなりに遠慮や譲り合いもありますが、見知らぬ人であれば何の関係もありませんので、お互い様という意識も沸いてこないかもしれません。
 災害時にその場に居た人は誰もが被災者です。その被災者の中でも、生活への支援がないと生きていけない人もいて、そういう人達が避難所に優先して入れるような環境が作れるといいのですが。

まずは身の安全の確保から

机の下でダンゴムシ
机の下でダンゴムシはお約束です

 地震が起きたとき、その後どんな行動をしていたのかを体験者に尋ねると、割と高確率で帰ってくる返事が「その場で何が起きたのかを確認した」というものです。
 慣れっこになっている地域だと、「ほうきとちりとりで片付けを始めた」や「家の点検をした」といった答えが返ってくることもありますが、本当はまず自分の安全確保をすることが最初の行動になっていないと困るのではないかと思います。
 もちろん、何が起きたのか分からないから状況を確認して行動を決定するというのは非常に大切なことです。また、復旧対応をすることも悪いことだとは思いません。
 ただ、情報収集もお片付けも点検も、身の安全を確保ができていないと非常に危険です。普段から意識していて、自分の居る場所が安全だと分かっている場合には情報収集はしても問題ありませんが、安全かどうか分からない場合には、一度確実に安全な場所まで待避して状況を調べる習慣を作っておきましょう。
 以前、緊急地震速報がその場にいた人の携帯電話から一斉に流れ出し、筆者も含めた全員が携帯電話を確認しているうちに揺れ始めたことがありました。
 緊急地震速報の音は覚えておいて、もしそれが鳴ったら取りあえず安全確保するように習慣づけておかないと、緊急地震速報があまり役に立たないなと自分で反省したことを覚えています。
 普段意識していない身の安全かもしれませんが、もし地震が起きたらどう行動するのかを、その場所に応じて考えて、いざというときに行動できるようにしたいものですね。

【お知らせ】防災研修会を開催します【終了しました】

 最近よく耳にするようになった「災害」という言葉ですが、あなたはこの言葉でどんな状況を想像しますか?
 今回は「災害」という言葉に注目し、災害と、その災害のとき、どのようにしたらあなたの命が守れるのかについて一緒に考えていきたいと思っています。
 災害について漠然としたイメージしか無い方や、災害対策と聞いて何をしたらいいのか分からない方、何かヒントがつかめるかもしれません。
 興味のある方のご参加をお待ちしております。

開催日時:2021年 9月18日(土)18:30~20:30
開催場所:益田市市民センター第103会議室(益田市元町)
募集人員:10名
募集方法:事前申し込み。定員になり次第締め切りとします。

参加費:会員 300円(資料代)
    一般 500円(会場使用料、資料代)

開催内容:1.災害とはなんだろう?
     2.その災害で身を守る方法
     3.助けられる人から助ける人へ
講師:石西防災研究所・伊藤(防災士)

消火器を備えていますか

 火災の時にとても大切だと言われているのが初期消火です。
 どんな火でも最初は小さいですから、他に燃え移る前に消せれば火事になることを防ぐことができます。
 消火方法はいろいろと言われていますが、誰にでもできて確実に消そうとすると消火器が一番確実です。
 後片付けの問題はありますが、火事でさまざまなものを失うことを考えれば許容範囲だと思いますが、あなたの家には消火器が備えてありますか。
 また、備えている消火器の使用期限は大丈夫ですか。
 使用期限を過ぎたり、外観が痛んでいるものは速やかに交換をしてください。
 最近では消火器を取り扱っているホームセンターなどでも回収してくれるみたいですから、更新するときに相談してみてもいいと思います。
 そして、使い方も覚えておきましょう。
 慣れると簡単なのですが、間違って消火剤を撒かないように、消火器はその手順を守らないと消火剤を発射できないようになっています。
 備えて使えるようにしておくことで、おうちの安全を高めることができますから、一家に一本、備えてみてはいかがでしょうか。

感震ブレーカーとスイッチオフ

 感震ブレーカーというものがあります。
 代表的なものは配電盤についていて地震の際に電気を止めて電気器具による火災を防ぐ装置ですが、このほかにも、ガスのマイコンメーターやストーブの耐震消火装置などもこれに該当します。
 要するに、揺れを感知したら電気やガス、灯油と言った燃料の供給を止めて火を消す装置なのですが、この装置が働いて消火された後、それぞれの器具のスイッチを確実にオフにしておくことが必要です。
 電気なら、機材のコンセントを抜いておく、ガスならコンロや給湯器のスイッチを切る、ストーブであれば確実に消火しておくなど、緊急時に対応してくれた安全装置を保管する作業をしておきましょう。
 電気もガスも異常がある状態で供給を再開しようとしても供給ができないようになっていますが、復旧作業をしてもうまく動かないのは、このスイッチを切るという作業がされておらず、診断装置が危険だと判断した結果復旧しないことがよくあるからです。
 耐震安全装置が正しく起動すれば消火は確実にできますので、地震の際にはまず身の安全の確保、そして落ち着いてからのスイッチオフという作業を忘れないようにしておきたいですね。

避難判断は自分で決めておく

 大雨や台風であちこちで浸水や土砂災害の被害が起きています。
 被害に遭われた方にお見舞い申し上げるとともに、一刻も早い復旧復興を願っております。
 普段であれば災害支援ボランティアとして出動するところですが、昨今のコロナ禍でそういうわけにもいかず、ただ願うだけとなってしまっているのが少しだけ歯がゆいところがあります。
 ところで、災害が起きると毎回問題にされるのが行政からの避難指示です。
 マスコミ報道やSNSで「避難指示が早い、遅い、出ない、出ても何も無かった」と、自治体が何をしても叩かれてしまっている現状を見て、なぜ自治体が避難を判断しないと個人が避難しなくていいと考えられるのか、正直なところ理解に苦しむところがあります。
 避難指示はその地域に住んでいる該当の災害で危険な場所に住む人に対してその場から避難するようにという指示ですが、避難指示が出るまで対象地域で災害が起きないという保障はありません。
 地域という「面」では異常が無くても、あなたの家という「点」では事態が異なっているかもしれないのです。
 言ってしまえば、行政の出す避難レベルがどうあれ、危険かどうかは自分で判断基準を持っておくしかないということです。
 判断基準を作るためには、ハザードマップや過去の伝承、地域の地形や普段の天気での変化など、さまざまなことを知っておかないといけません。また、自治体が避難情報を出すために参考としている気象情報や土砂災害警戒情報、河川情報といった基礎情報は、今はインターネット上で誰でも見ることができますから、情報がないから判断できないという話はできないと思っています。
 逆に、現在は読み込めないくらいさまざまな情報が提供されていますから、その中から自分がどのような状態であれば被災するのか、そして避難しなければいけないのかを考え、そして避難が必要であれば避難開始の鍵をきちんと決めておくことは事前に準備ができることです。
 あなたの命はあなたが守るのです。自治体や町内会が守ってくれるわけではありません。避難するかどうかの判断は、あくまでもあなたの中にあります。
 避難しないのなら避難しないという選択をしても構いません。ただ、災害に巻き込まれたときに「想定外だった」とか「思ってなかった」という台詞が出ないようにしておいて欲しいと思います。

避難時の思わぬトラブル

 避難訓練と実際の避難で違っていたなと考えるのに、家に残していく大切なものをどうするか、ということがありました。
 避難訓練では何を置いてもまず避難となりますが、実際の水害で災害発生までにまだ余裕があると思うと、避難の前に自分にとって大切なものをできるだけ上階に避難させておきたいという感情が働くようです。
 今回は時間にかなり早い段階で家族での避難判断をしたのですが、避難判断をしてから避難準備完了までに実は40分かかっています。
 その理由は、子ども達が自分にとって大事なものを上階に避難させていたから。
 「大事なもの」の定義がみんな違っているのはいいのですが、大事なものが何かと考え込んでしまって行動が遅くなったということもあったようです。
 非常用持ち出し袋は準備していたので着替えを入れたら終わりだったのですが、考えついた自分にとっての大事なものをあれこれと上階に避難させているうちにそれだけの時間がかかってしまいました。
 その様子を見ながら、自分にとって大事なものをきちんと決めておくこととそうでないものの整理を普段からしておかないといけないなと感じました。
 避難先から帰宅しての反省会では、自分にとって大事なものは何かを決めておくことと、それ以外はあきらめることを確認し、次回があればそれを実践してみることになりました。
 水害では、氾濫危険水位から実際の氾濫までそれなりに時間の余裕が作られています。本来それは避難用の時間なわけですが、中途半端に時間があると、逆にあれこれ考えてしまって手遅れになってしまうのかなと感じました。
 そういった意味では、避難判断から避難開始の間の最大所要時間を決めておき、それを過ぎたら問答無用で避難開始でもいいのかもしれません。
 今後家庭で行う避難訓練では、実際に大事なものを上階に避難させる訓練も取り入れた方がより実戦的になるのかなと思いました。

避難所での服装

 避難所での女性の服装。
 大規模災害が起きる度にさまざまな物議を醸している問題ですが、今回避難をしてみて思ったことを書くと、「他人の目は防げない」ということです。
 防災関係の本を紐解くと「目立たない格好をしよう」とか「一人にならないように」とか、すごいのになると「女性とわからない格好をしよう」と書かれているものまであります。
 でも、ある意味ではこれは正しいと思います。
 特に普段年頃の女性に接することのない人は、どうしても目で追いますし、どうかするといやらしい視線になることもあります。
 中には妄想全開な方もいますので、そういう人にはいくら理屈で説明しても無駄ですから、やはり自衛するしかないというのが正直なところ。
 目立たない服装にするかどうかはともかく、できるだけ肌の露出が少ない格好をしたほうがよさそうです。
 見るなといっても自然と目が向いて見てしまうものです。言い過ぎると言い過ぎると喧嘩になって殺伐としてしまいますし、ヘタすると恨みも買います。それよりも最初から見せない方に力を入れる方が建設的で角が立たないと考えます。
 避難所生活は非常事態ですから、おしゃれしたい人は、可能な限り早めに退去したほうが精神衛生上いいのかなという気がしています。

内水氾濫に気をつけよう

内水氾濫で池になった田

 先日の大雨でも、いくつかの場所で内水氾濫が起きていました。
 大雨が降って排水ができなくなり、排水路から溢れた水によって冠水してしまう状態になるのを「内水氾濫」といいますが、最近これが増えてきている気がします。
 河川の水位が上がると排水のための樋門を閉鎖し、河川から水が逆流しないように対策をして、代わりに排水ポンプを使って河川に水を排水していきますが、ポンプの排水量よりも流入量の方が増えて水が溢れ、土地が冠水してしまうことが起きています。
 堤防が切れたりすることにより発生する河川氾濫は外水氾濫と呼ばれて区別されているのですが、住んでいる人から見れば水没している状態に変わりはありません。
 ハザードマップや国土地理院の地図を使うと水の集まりやすい低地はわかりますので、そういった場所に住んでいる人は早めの避難が必要です。
 また、水の通り道は多くの場合決まっていますから、その周囲の人達も早めの避難をしたほうが無難です。
 内水氾濫が起きる条件はあまり変わりませんから、雨量や予想降水量を考えて、道路や家が冠水する前に高いところへ避難しておきましょう。
 また、人間は緊急時でも無意識に普段の行動を取ろうとするものです。
 冠水時に避けるべき道路のアンダーパスや低地を車で走行しようとして動けなくなることも多発していますから、普段から低地を意識してなるべく避ける経路を作っておきたいですね。

避難所での快適さを増す方法

 先日から台風や大雨であちこちで河川氾濫や内水面越水が起きているみたいです。
 当研究所のあるところでも、近くの高津川が氾濫危険水位にまで達したため、何度か避難指示が出されました。
 で、避難指示が発令される度にどこへ避難するかどうかを考えるのですが、今回は行政の指定する避難所へ避難してみることにしました。
 今回はそこで感じたことを書いてみたいと思います。

1.床に敷くものは必須

 避難先が体育館だったこともありますが、基本的に避難生活に必要ないろいろは自分で準備する必要があります。
 今回も少し厚めのレジャーシートを持参したのですが、避難所では四角い大きめの段ボールが敷物代わりに提供されていて、下に敷くと非常に快適でした。
 段ボールは断熱性、クッション性が高くて寝心地もいい、その上そこに誰か居るのがわかるという非常に便利なアイテムで、避難するときに持参するのもいいなと感じました。
 ちなみに、提供されていた段ボールはどうやら間仕切りだったようですが、避難者のソーシャルディスタンスは確保されるくらいの空間はありましたので、問題はなかったようです。

2.暇つぶしの道具は必須

 避難が終わると、災害の危険が収まるまではそこで待機することになります。
 多くの避難者がいるところでは大騒ぎするわけにもいきませんので、静かに時間が使える本や学習道具、ボードゲームやカードゲームなどを持参したほうがいいです。
 当研究所の研究員達(うちの子)にも普段から言ってはいたのですが、いざ避難になるとやはり考えがそこまで至らなかったようで、ちょっと困っていました。

3.歯ブラシは必須

 避難生活で発生するさまざまな病気は口の中が菌などで汚れていくことで発生するものが非常に多いです。
 それを防ぐには、歯磨きが一番です。食後に歯磨きをすることで生活リズムも保てますし、虫歯や病気を防ぐためにも歯ブラシは必ず持って行きましょう。
 入れ歯の人は、入れ歯を管理するための道具もあると快適に生活できると思います。

4.スリッパがあると安心

 体育館は原則として土足禁止なのでそこまで神経質になる必要はないのですが、衛生上素足や靴下などで中を歩くのはあまりよくないなと感じました。
 スリッパがあると、足の汚れを気にせずにすむので気分的にいいです。

5.アイマスクと耳栓は必要かも

 防犯上、避難所は夜間も消灯はしません。明るさが気になる人はアイマスクが、生活音や話し声が気になる人は耳栓を準備しておくといいと思います。
 習慣的に睡眠導入剤を飲んでいる方もいらっしゃると思いますが、避難所では何が起きるかわからないので服用はお勧めしません。
 できるだけ環境条件を整えて、薬を使わなくてもすむようにしておく方が安全だと思います。

6.自立型テントはあってもいいかも

 避難所の条件によりますが、プライバシー保護を考えると、自分たちの居住空間を目隠しできるテントはあってもいいと思います。
 避難所によっては新型コロナウイルス感染症対策等で支給されることもありますが、自分たちで準備しておくと就寝や着替えなど人に見られたくない部分を隠すことが可能です。
 ただし、夏場などで中が暑くなることもありますので、換気と熱中症対策は考えておいた方がよさそうです。

7.長袖と半袖の服を持って行く

 夏場でも冬場でも、避難所の温度管理は結構大変です。
 夏でも冷え込むことがありますし、冬でも暑くなることもあります。
 体感温度の調整が簡単にできるように、半袖の服と長袖の服を持って行くようにしましょう。
 薄手の服が複数枚あると、温度に応じて簡単に着たり脱いだりできるので、お勧めです。

8.寝袋や毛布は持って行く

 避難所での避難は、夜間は基本的に帰宅しないのがルールです。
 避難所で夜を過ごすためには、寝袋や毛布を準備しておきましょう。
 避難所で毛布が配られることもありますが、避難者の数にはとても足りません。
 また、自分のものだと安心して寝ることができると思います。
 可能な限り普段の生活と変えないためにも、普段の生活で使っているものを持ち込んだ方が安心です。

9.非常食は準備しておく

 避難所に入ると食事の配給があることがありますが、ほとんどの場合はおむすびや総菜パン、菓子パンといったものになります。
 提供してもらえるのは非常にありがたいことなのですが、それだけでは栄養素が偏ってしまいますので、果物などを持参しておくといいと思います。
 また、中にはそれらの配給品が食べられない人もいると思いますので、そういった方は自分で準備しておく必要もあります。
 大規模災害の場合にはまず配給はしてもらえないので、とりあえず最低1日分の水や食料は持参するようにしてください。

 他にもいろいろとあるのですが、以上の内容は多くの人に共通する部分だと思います。あなたにとって何かの参考になれば幸いです。