活断層を見てみよう・浜田沖他海中断層

 ずいぶんと前に弥栄断層についてご紹介したことがありますが、島根県の作成した「地震・津波被害調査報告書(概要版)」では、海の中にある海中断層についても触れられています。今回はその海の中にあるとされる活断層をいくつかご紹介できればと思います。

波子海水浴場から浜田市の沖合を望む。

 まずは浜田沿岸にある活断層から。ここは過去の地震の記録から地震が起こりうる場所として設定されています。
 さて、この活断層が動いた場合にどうなるのかというと、想定ではマグニチュード7.3、震度6強となっています。 

国府海水浴場から沖合を望む。

 次に浜田沖合断層。この地震は発生するとマグニチュード7.3が推定されています。ここの設定は1872年に起きた浜田地震の震央部で再び起きるものとして想定されています。浜田地震における推定マグニチュードは7.1。最大震度は、気象庁の公開情報では不明となっていますが、震度7程度ではなかったかという資料があります。
 割と最近の地震ですのでさまざまな記録が残っていますが、海岸が隆起して畳ヶ浦の誕生と小規模な津波の発生はあったようです。
 なお、この畳ヶ浦は浜田の観光地の一つで、非常に面白い地形をしていますので一度見学に訪れてはいかがでしょうか?

また、海で起こる津波の到達時間は益田市土田漁港に到達するまでが22分、最高水位が1.22mとなっています。

 この他にかなり大きな断層として島根西方沖合(F57)断層が確認されていて、ここが動くとマグニチュード7.5、震度6弱、津波は益田市土田漁港に到達するまで47分、最高水位が3.48mと予測されています。
 いずれにしても海底活断層が動いた場合にはもれなく津波もついてきますので、震源が海底である場合には速やかに高台に避難することが大切です。

 なお、詳しい情報が知りたい方は、「島根県・地震被害想定調査報告書」のウェブページをリンクしておきますのでご一読ください。

ものの置き場所と導線

 家に限らず、人がいるところでは知らないうちにものが貯まっていくものです。
 よく使うものは自然と置き場も決まってきて、そこにないと「どこへ行った?」と探すことになったりします。
 ただ、その置き場は自分が避難するときに支障になりそうな場所や状態ではないかどうか、一度確認してみてください。
 最近は意識してものが置かれないようにしている施設が多いですが、一昔前には非常口の前に仮置きの段ボールや箱、いろんな道具が置かれていることがよくありました。
 非常口の意味はみんな知っているし、いざというときに使えないとこまるものという認識ももちろんあります。
 ただ、「とりあえず置いた」という仮置きが、いつの間にかそこがものの置き場所になってしまっていた結果、非常口が使えなくなっているという状態になっていたのです。
 確かに、普段使われない非常口の周辺はいつも何も置かれていないので、ものを置く場所を探している人にとっては絶好の置き場所に見えてしまいます。
 でも「ちょっとだけ」置いたが最後、気がついたらそこが定位置になっていたりして、非常口が本当に必要なときに使えない状態になってしまっているのです。
 これは一般家庭でも良くある話で、ちょっとした空間が空いていると、つい本棚やタンス、食器棚や箱などを置いてしまい、地震の時にはそれらが倒れて通路を塞いでしまい脱出不能になってしまう事例は、あちこちで見られています。
 それを防ぐためには、まずは人の移動する線、導線がどのようになっているのかを確認し、その導線を妨げないようなものの配置をすることです。
 そして確保しなくてはいけない空間は、ものを仮置きをさせないように、そこが物を置いては行けない場所であることを意識させることが大切です。
 よくデパートなどで非常扉の可動範囲の床が赤や黄黒のしましまなどで派手に塗られていることがありますが、そうすることでそこに物を置いてはいけないということが意識できるようになっているのです。
 家庭でこれをやると、ちょっと殺伐とした雰囲気になるかもしれませんが、玄関マットを敷いたり、シートやラグを敷くことでものが置かれるのを防ぐことはできると思いますし、仮置きの場所というのを導線から外れた場所に作ってもいいかもしれません。
 必要なのは、自分が普段どのような場所を通っているのかということと、万が一のとき、その移動経路を妨げるようなものがないようにしておくということです。
 部屋に閉じ込められてしまって、せっかく災害では助かったのに餓死してしまったなどということがないようにしておきたいものです。

避難所の環境について考える

 避難所、避難場所、一時避難所(以後「避難所」とします)については過去にも触れているところですが、ここのところ続いている大規模な災害の報道を見ながら考えることがあります。
 それは、避難所の収容人数の問題です。
 例えば、内閣府の発表によると7月3日から4日にかけて降り続いた九州南部の大雨では避難指示(緊急)は約110万人に出されたそうです。そのうち、実際に避難した方が6,301人。率にすると0.005%となり、殆ど避難していないとみることができます。
 では、避難所の収容人員はどうなのでしょうか?
 市町村が定める防災計画に記載された避難計画を見る限りでは、避難所の周辺人口をそのまま収容するような計画になっていることが多いのかなと感じています。
 例として、当研究所のある益田市高津町の避難所で考えてみたいと思います。
 研究所から一番近い避難所は「高津小学校」です。平成30年度益田市防災計画の想定では、収容能力は1,000名。圏域人口は1,554名とされていますので、この時点ですでに収容能力を超えています。
 ただ、実際に避難してきそうな地区の数字を拾ってみると1,038名となるので、これなら大きな誤差ではなさそうです。
 一時避難所として校庭が指定されています。国土地理院の地図からざっくりと面積を拾ってみたら5,857㎡。圏域人口一人あたりの専有可能面積は3.76㎡となります。
 仮に車で避難するとして、車のサイズを5m×2m=10㎡と想定すると、3人で1台分のスペースは確保されることになります。また、単にテントを設営するのであれば圏域人口をなんとか吸収することはできそうです。
 次に、避難所開設時には普通最初に解放されるであろう体育館で考えてみます。
 校庭と同じく、国土地理院の地図でざっくりと体育館の大きさを拾ってみると、その大きさは926㎡。実際の避難者になりそうな1,038名で割ると、一人あたりの専有面積は0.89㎡となり、スフィア基準で定められている難民キャンプでの難民一人あたりに必要とされる面積3.5㎡を下回る数値になってしまいます。
 一人寝るのに必要な面積が2㎡と言われていますので、1㎡を切ると寝ることもできません。その上、実際には避難者はそれぞれ荷物を持ってきますので、間違いなく収容できないという状態になるでしょう。
 逆に考えてみると、926㎡の体育館で3.5㎡の個人スペースを確保しようとすると、避難が可能なのは264人ということになります。
 想定人口の1/5にも満たない数字ですが、大抵の避難所の設定はこんな感じですので、避難所周辺に住む全ての避難者が避難してきた場合には施設がパンクしてしまうわけです。
 これは過去の大規模災害で毎回繰り返されている光景ですが、これに対して打てる効果的な手段というのはさほど多くはありません。
 自分が悲惨な目に遭いたくなければ、なるべく自宅で過ごせるように、もし避難するのなら安心して過ごせる避難先をあらかじめ選んでおく必要があるということです。
 家の立地条件から見て避難すべきなのか避難すべきでないのか、避難するとしたらどこへどんな手段で行くのか、そして避難所でどのように生活をし、どういう状況になったら自分の避難を解除するのかということをきちんと決めておくこと。
 地震は突然やってきますが、それ以外の殆どの災害はあらかじめ起きるのはわかっている場合が多いので、被災想定区域外に出てしまうのも避難の一つです。
 もう一つ、大規模な災害が起きると医療・介護体制が維持できません。そのため病気や障害をお持ちの方は、あらかじめ何か起きた場合の対応方法をお医者様や介護担当者としっかり詰めておく必要があります。
 避難所では適切なケアはされないということを前提に、自分の避難計画を作っておくことをお勧めします。

避難開始の合図を決めておく

 情報量が少なくても多くてもマスメディアからは文句が出るので難しいところなのですが、さまざまな場所で同時進行で起きている災害をその場で整理して判断を下すことは相当難しいことだということは理解していただけるでしょうか?
 行政の職員は行政のプロではあるかもしれませんが、災害対策のプロではありません。ましてや、行政改革で極限まで減らされている職員が、普段やっていないのに的確な災害対応ができるとは思わないことです。
 さまざまな警戒情報は、気象庁や国土交通省、都道府県、市町村からそれぞれに発信されており、そのままでは判断が難しいということで、先日導入された避難レベルにより一元的に管理しようとされています。
 ですが、本来レベルを発令すべき市町村は現場の対応に追いまくられることになりますので、避難勧告や避難指示(緊急)を出すべき市町村からの指示を待っていたのでは、遅れになる危険性があります。
 そのため、発表される情報の中から自分が避難を判断するための情報を決めておく必要があります。
 市町村が出す避難勧告や避難指示(緊急)は、その元となる情報もインターネット上で一般公開されていますので、自分が住んでいる場所で避難が必要な災害をあらかじめ確認しておき、例えば自分の住んでいるところが川のそばであれば、その川の水位を確認して、ある一点を超えたら問答無用で避難すると決めておけば、市町村の判断を待たずに避難を開始することができます。
 また、崖が気になるような場所に住んでいれば、都道府県が出している土石流警戒情報のタイルメッシュを確認すれば、自分のところが今どんな状態なのかを確認することができます。島根県の場合には土石流の警戒レベル3が発令されると住民への避難勧告を実施するとなっているので、これを目安に避難を判断すればいいと思います。
 今、行政は「災害レベル4は全員避難」ということを言っていますが、レベル4には避難勧告と避難指示(緊急)の両方が含まれています。お住まいの場所によっては、レベル4が出されたときにはすでに避難ができない状況になっている可能性もあるわけです。
 自分が行動を開始するための鍵を決めておいて、それを超えるような状況になったら速やかに安全な場所へ逃げること。
 それを徹底しておけば、命を守ることができます。
 そんな判断はできないといわれる方がいらっしゃるかもしれませんが、これは慣れでできるようになりますので、とりあえず一度やってみてください。
 難しい場合には、それができる人にチェックをお願いしておき、「逃げようコール」をしてもらうようにしたら、行政の出す避難情報よりも早く安全に避難ができると思います。
 いずれにしても、自分が逃げ出すための条件を整備して迷わずに逃げること。それが生き残るためには必要です。

やっていないことはできない

ポンチョ着用
豪雨の中を非難するときには傘は役に立たない。帽子と雨合羽、それに運動靴を身につけての避難となることに注意しよう。

 梅雨に入ってからあちこちで集中豪雨の情報が出ています。
 今この瞬間にも、避難勧告や避難指示といった避難レベル4の情報が出ている地域があります。
 もしもそれがあなたのお住まいの地域だったとして、あなたのお住まいの場所は水害や土砂災害に強い地域ですか?
 避難が必要だとしたら、どの段階で何を持って誰とどこへ避難するかを決めてありますか?
 それが昼間でなく、夜だったとしたらどうでしょうか? 家にいるときだけで無く、仕事先や出かけた先でそうなったら?
 その状況になってからでも間に合うと、もしもあなたが思っておられるとしたら、それは大きな過ちです。
 災害が起きそうになったとき、通常時と非常時の切り替えというのはなかなかできないもので、あらかじめ決めておかないと、判断に迷っているうちに手遅れになってしまうことがよくあります。
 周囲に水がやってくる前に避難を開始しなければ、安全な避難はできません。
 もしも家の周囲に水があふれ出したなら、域外避難を諦めて、二階や屋根の上に逃げ出す垂直避難をするしかありませんが、垂直避難した後、水が引くまで待てるだけの備えがあるでしょうか?
 避難をするとしたら、どの経路をたどってどこへ避難しますか? そしてその経路は水に対して安全ですか?
 低地だったり、川になるような場所は通っていませんか?
 避難をしなくてはいけないときというのは、いつもとは異なる状況になっていることが殆どです。
 そして、いざ避難となって歩こうとしても、普段歩き慣れていない経路だと、どこに危険があるのかもわかりませんからどうしても動きが遅くなり、避難が間に合わなくなる可能性だってでてきます。
 いざというときに備えた避難の練習や避難場所の選定、そして避難するときに持参するものを収めた非常用持ち出し袋。
 これらを繰り返し確認し、練習しておくことでいざというときにも考えずに行動ができます。
 人間、やっていないことはできません。
 避難が必要の無い場所にお住まいならともかく、そうでない場合には、年に1~2回は避難の練習をしておきましょう。
 馬鹿馬鹿しいと思うかもしれませんが、その積み重ねが結局自分の命を守ってくれるのです。

避難の時の逃げ道を検討する・水害編

ここ数年、高津川は上流域の大雨により危険水位まで上昇することが増えている。写真は2018年
7月に撮影したもの。

 当研究所を始めるに当たって、研究所の所在地である益田市高津町上市で水害が起きた場合、もしくは起きると想定した場合、どの時点でどこへ避難するかについて研究員達と検討したことがあります。
 先日、益田市のハザードマップが更新されたことに伴って情報が追加されましたので、この情報を元にどのように避難を考えたらいいのかをもう一度考えてみたいと思います。
 考えてみたら、災害時の避難というのはさまざまな判断が求められ、その上住んでいる場所によっても判断が変わるものです。
 以前に避難経路を考えてみる必要があることについては触れていましたが、今回は、地元の地区を例に挙げて、水害対策についてどのように検討したらいいのかについて考えてみます。

1.ハザードマップの限界

  いきなりなのですが、行政の製作するハザードマップには限界があります。
 今回は時期的に水害対策で検討をしたのですが、ここで予測されているのは「想定された氾濫時に最大でどこまで浸水するか」というものを示した図でしかありませんので、どのあたりから越水して堤防が切れ、どのように浸水するのかについては当然ですがわかりません。
 でも、避難をするに当たってはどこからどのように水が流れてくるのでどこへどんな風に避難すればいいかということが大切な検討材料になります。

2.水の特性を考える

 水は必ず高いところから低いところへと流れていきます。つまり、流れている川のカーブでは、カーブから見て上流側の堤防よりも下流側の堤防に力がかかります。
 そのため、同じような堤防であればより力のかかる側の堤防が決壊する可能性が高いと考えられるわけです。

国土地理院の地図を3m刻みで着色したもので、川は図の下から上に向けて流れている。川の合流点から変電所の脇を抜け、奥の田に向けて低地があるため、水害発生時にはここが最初の水の道になりそう。

3.地域の特性を考える

上市地区の少し上流部には川の合流点があり、ここで本流と支流がぶつかります。大雨が降って水量が増しているときには、支流の水は本流にはじかれてしまうので、合流点で水が滞留しやすくなります。バックウォーターと呼ばれるこの現象が起きると、逃げ場を失った水は堤防を越水して低地に向けて流れ込んでいきます。

 また、排水路が一カ所堤防の中腹に抜けていて、ここには逆流防止装置がついていないことから、排水路を越える水が流れてきた場合、ここから水が噴き出してきます。昭和47年7月の水害では、この付近から水が越水し、家屋流出の被害も出たことをお住まいの方からも伺っています。

4.水がどこを通って流れていくかを考える

 バックウォーターで越水すると、水の流れは人麻呂神社の駐車場から翔陽高校の実習田がある方へ流れていくことになりそうです。また、神社前から下流に向けても角度がついていますので、水は二手に分かれて流れていくことが予測できます。

最初の地図に水の流れる方向を落とし込んだもの。郵便局の周りが上市地区になるが、高手に避難しようとすると、どうやっても水の道を突破しなくてはならないことがわかる。

 また、蟠竜湖停車場線は翔陽高校方面に向けてゆるやかに下降しているので、ここも水の道になることが予測されます。また、排水路からの逆流水もここを流れていくことになりますので、殆ど川状態になりそうです。
 どちらにしても、この場合には側溝が溢れる内水面越水ではなく、川を流れる濁流ですので、一度氾濫すると流れてくる水の勢いは歩ける状態ではなさそうだということも予測できます。

5.避難する先はどこになるかを考える

 上市地区の近傍の避難所である「高津小学校」は水没地域のど真ん中、「高津公民館」は家屋倒壊等氾濫想定地域のど真ん中にあり避難所としては不適切です。おまけに上市地区と各避難所を結ぶ避難路がもろに水の通り道になってしまうのでどちらにしても避難することは現実的ではありません。

柿本神社は土石流警戒区域になっているため、荒天時の避難には注意が必要。ただ、柿本神社を抜けて万葉公園の管理センターに避難するのが一番無難そうではある。

 水に浸かる可能性のない「万葉公園」「翔陽高校」「希望の里」そして画像では切れていますが「高津中学校」が避難の選択肢となりますが、避難するのであれば越水する前という条件がついてきます。

6.結論

 上市地区はハザードマップ上の浸水域は2~3mとなっています。最悪の場合には、住家内で2階への垂直避難を行えば助かることはできそうです。
 ただ、より安全を考えるのであれば、国土交通省が出す高津川氾濫情報の氾濫危険水位到達時に避難を開始することが必要で、避難先との調整をしておく必要があるということになります。また、高齢者が非常に多い地域なので、親戚や知り合いが高手に住んでいるようなら、気象庁の「Lv.3発表」時点や、高津川氾濫情報のはん濫警戒水位に達した時点で域外に移動してしまうことも検討すべきでしょう。

 以上、簡単に地区の水害に対する分析を行ってみました。
 この分析結果をどのように使うのか、使わないのかはそれぞれの判断となりますが、これからの季節、お住まいの地域やおつとめの地域のハザードマップと国土地理院の地図を使って、もし水害が起きそうな状態になったら自分のいる場所ではどのようにしたら安全が確保されるのかについて検討してみてはいかがでしょうか。

最初は自宅の耐震強化から

 災害対策としていろいろと備えをしなくてはと言われることが多いですが、一番最初にしないといけないことは、建物の耐震補強で、以前にも少し触れたことがあります。
 あなたのお住まいの耐震補強は大丈夫ですか? そして、お勤め先はどうでしょうか?
 他の災害と異なり、地震だけはいきなりやってきます。そしてその時に一番多い死因は「建物や家具の下敷きによる圧死」なのです。
 建物の耐震補強と家具の転倒防止。これをしておくだけで、生き残れる確率はかなり高くなります。現に大雪に耐えられるように強固に作られた家の多かった東日本大震災では地震における建物の倒壊は殆ど無く、死因の第一位も津波であることがわかっています。また、先頃震度6強の地震に見舞われた新潟や山形でも、家屋の倒壊はほとんど無かった結果、死者も出ていません。
 そのため、災害対策の一番最初に建物の耐震補強を行うことがあげられているのです。
 一般的な話になりますが、住家の場合、1981年以前の建物であれば、まず耐震診断を受けておきましょう。
 1981年以降の建物であればより厳しくなった耐震基準を元に建てられていますのでそこまで急ぐ必要はないのですが、1981年以前に建築された建物の場合は地震に対しての備えがさほど考えられていなかったですので、建物の補強は必須となります。
 石西地域の各自治体には比較的古い建物が多いので、耐震診断や耐震補強に関する補助が用意されています。
 災害対策を行うのであれば、まずは建物の耐震診断、そして耐震補強を行うことです。
 益田市役所津和野町役場吉賀町役場の実施内容へのリンクをしておきますので、まずは内容を確認してみてください。
 もしも高額になって困った場合には、例えば寝室や居間だけ耐震補強するやり方や、建物倒壊の時に逃げ込めるシェルターなどもあります。
 まずは生き残ること。そこから災害対策を考えてみてください。

ダーマトグラフは便利な筆記具

 先日、とある防災用品セットを見る機会があったのですが、その中でちょっと興味を引かれた道具がありました。
 それは「ダーマトグラフ」と呼ばれる筆記具なのですが、これ、どれくらいの人がご存じでしょうか?
 イメージとしてはクレヨンに近いのですが、あんな感じの太めの芯に紙でできた軸が巻き付けてあり、芯がちびると、軸をひもで裂いて新しい芯を取りだして書く構造になっています。

ダーマトグラフの黄色。つるつるした面に書けるため、印刷屋さんや眼鏡屋さんなどで見ることがある。

 このダーマトグラフ、割とどんなものにでも文字や絵が描けて非常に便利なのですが、芯が太いためにノートなどに書き込むには不向きです。
 ただ、小さく文字が書けないということは誰にでも読めるサイズの文字を書くということにもなり、これで書いた文字は簡単に読み取ることができるというのは、非常に災害対策向きだなと思いました。
 よく、防災の本などには油性ペンを入れるように書いたものがありますが、油性ペンでは苦手な濡れている面やすべすべしたところにもこれなら書くことができます。
 逆にしっかりと定着はしないので、こすれたりすったりするような場所に使うには不向きです。
 窓ガラスやつるつるした壁に文字が書けて、ティッシュペーパーなどで簡単に消せるので、一本あるといろんなことに使えそうです。
 インクは使っていないので乾燥を気にする必要はありませんし、色もそれなりにあるので、使い分けも簡単です。
 あまり知られてはいない筆記具だと思いますが、非常用持ち出し袋の中にいれる筆記具の一つとして、これを準備してみてはどうでしょうか。

応急手当をwebで学ぼう

 応急手当については先日ちょっとご紹介したところですが、消防庁のサイトに「応急手当web講習」というのがあります。
 インターネットで応急処置の流れを映像で見ることができ、非常にわかりやすく作られています。
 終了後は修了証がインターネットから印刷することも可能になっており、いつでも見ることができて便利です。
 実地講習は各消防署や日本赤十字社が行う講習を受けなければ体験できませんが、どんな感じでどんな風に判断すればいいのかだけでも理解していると、万が一の時に活用できます。
 普段忙しくてなかなか講習会に参加できない方も、この「応急手当web講習」で応急処置について学んでみてください。

避難所は立入禁止エリアをあらかじめ決めておく

 避難所を開設するに当たっては、どこを使おうかというところから話が始まると思いますが、大規模な災害の場合には収容能力を超える人が避難してくる可能性があります。
 その時に避難所として使える場所を決めている状態だと、最終的にどこもかしこも避難者だらけになって通常業務どころか避難所運営すらおぼつかなくなってしまいます。
 そのため、避難所を開設する際には最低限使っては行けない部屋と、その理由をはっきりとさせておく必要があります。
 例えば、学校なら職員室や事務室は避難者が入ってくるといろいろな不都合が生じるでしょう。体調不良者や妊産婦、授乳などのことを考えると、保健室も避難者が使ってはいけない場所となります。また、水が止まっているようであればとりあえずトイレも使用禁止にしておかないと、水を持ってきた頃には汚物で溢れて大惨事になっているかもしれません。

テープで出入口を閉鎖したトイレ
水が止まったら、とりあえず最初にトイレを閉鎖しないと汚物で大惨事となります

 次に、避難所運営のための本部の位置を確保します。
 大規模になればなるほど、ここがちゃんと確保されていないと、あとで揉めることになってしまいます。
 また、駐車場となる場所では、仮設トイレや給水支援などが受け入れられる場所を確保しておく必要があります。
 忘れがちですが、ゴミ置き場についても臭いが避難所に入りにくく、収集のしやすい場所というのを考えておかなくてはなりません。
 こうして考えていくと、避難所の設営準備というのは災害発生時では無く、平常時に決めておかなければいけないということが分かると思います。
 もちろん、実際の災害時には決めたように動かないかもしれませんが、少なくとも「使えない・使っては行けない場所」をあらかじめ決めておくだけで避難者の誘導がずいぶんとやりやすくなります。
 逆に考えれば「使えない・使っては行けない場所」以外は使えるわけですから、最悪、あらかじめ決めておいた場所以外全ての場所に避難者を入れることが可能になります。
 理想としては避難所として設定したエリアで収まるのが一番ですが、避難所が必要になってくる災害では、殆どの場合総定数を上回る避難者が来るものです。
 避難所開設を訓練するときには、そういった考え方を取り入れて行うとよいのではないかと思います。