災害時には最初の行動を一つの流れに決めておく

防災計画では、行動をどこまで単純化できるかが使ってもらえるかどうかの鍵になる

 学校や施設での防災計画ではさまざまな災害に対して対応する行動を決めています。
 特に火災と地震に対する計画は、殆どの施設や学校でしっかりと定めているのでは無いかと思います。
 ただ、拝見する学校や施設の防災計画の中の火災と地震の行動計画でちょっと気になる部分があり、なんとなくすっきりしないので、今回は少しそれに触れてみたいと思います。

 火災や地震が発生したときにどのような行動を取るのかというと、まずは安全確保となります。
 では、その次はというと、多くの場合にはなぜか「指示に従って避難を行うこと」とされています。
 それまでは「安全を確保しながら指示を待つ」という時間の浪費が行われてしまい、場合によっては避難できなくなる恐れが発生します。これは「不用意な混乱を防ぐ」ことが目的とされているようですが、安全な場所への移動は行動開始の時間が早ければ早いほど安全に避難完了ができるものです。
 責任者の指示により確実に避難できることの条件として、全体に確実な連絡が行き届き一糸乱れぬ行動がとれることが必要ですが、果たして作られている避難計画書でそのような理想が実現できているでしょうか。
 火災や地震の時に使う避難計画書を作ったことがある方ならイメージができるかもしれませんが、火災や地震の発生時には、責任者は短時間の間に非常にたくさんの判断をし、指示を下さなければいけない計画になっていることが非常に多いです。これは可能な限り状況を制御しようとして起きるもので、例えば軍艦などで行われるダメージコントロールなどの考え方がベースになっています。
 しっかりと訓練されている人達ならばそれでいいのですが、多くの場合には訓練はせいぜい年に一度、多い人でも数回程度では、どんな人であれ複雑な行動を取ることはまず無理だと考えなければなりません。
 ではどうすればいいか。
 答えは簡単で「発生条件に対する行動を単純化すること」です。
 例えば、学校の場合で考えてみると、地震が来て治まったら「とりあえず校庭へ全員避難させる」ことにします。この場合、震度の大小は関係なくそう行動することを決めておくのです。そうすると、何も指示がなくても校庭への避難までは自動化されますから、その間に情報を収集し、次の手順を考える時間が作れます。
 情報を集めた結果、もしもすぐに津波が来るのであれば校庭から高台や校舎の屋上に避難するようにすればいいのです。また、津波発生から到達までの時間が短いと考えられている地域であれば、避難先を高台や屋上にしておいてもいいでしょう。
 火災ではどうでしょうか。
 火災の場合にはどこで起きているのかが問題になります。火災警報器は管制板を見ればどこで火災を検知したかはわかりますから、火災発生箇所だけを放送するようにします。それが事実であるか誤報であるかは後で確認すればいいことなので、まずは避難する。その際に火災発生場所が分かっていればそこを避けて避難経路を選べばいいのです。
 優先すべきは「各自の身の安全の確保」であって「無駄な行動をしないこと」ではありません。
 誰でも安全を確保できるようにするためには、とにかく行動を単純化すること。そうすればとりあえずは何も考えずに行動をすることができます。
 「○○の場合には」というような選択肢は、各自の安全が確保されてから責任者が考えればいいことです。最初の行動が自動化されていれば、その間に責任者は次の安全確保のための行動を決める時間が作れますから最終的により確実な安全が確保されます。
 災害時における安全のための行動は大げさすぎるくらいでちょうどいいと思っています。
 各自の最初の行動が一つに決められている防災計画は、誰もが理解しやすいのではないかと思います。少なくとも、被災時に読み直さないと理解できない難しい防災計画よりもずっと現実的なのではないかと思うのですが、あなたはどう思いますか。

頭の安全を確保する

いろいろな種類の防災用ヘルメット。持っていてもすぐに出せるようになっていないと使いづらい。

 落下物などからの頭の安全確保は、災害時においては大切になります。
 頭が無事で状況の判断がきちんとできるようであれば生き残れる確率は高いですが、他が無事でも頭に怪我をして意識を失ってしまうと、助かる確率は一気に下がってしまいます。そのため、防災訓練などではヘルメットや防災ずきんをかぶって訓練を行うこともよくあります。

ヘルメットと防災ずきん。防災訓練ではよく登場するアイテム。

 ちょっと気になるのは、この訓練でかぶっているヘルメットや防災ずきんが、地震の発生時に本当にすぐにつけることができる場所にあって本当にかぶることができるのだろうかということ。
 ヘルメットや防災ずきんをかぶるために怪我をしてしまっては何にもなりませんので、もしそれらを使うのであれば、日頃から身近に備えておく必要があるでしょう。
 落下する破片から頭部を守るのであれば、そういった丈夫なものでなくても、例えば帽子でも構いません。衝撃に備えるというのであれば、帽子の中にタオルでも入れておけばそれなりの対策にはなります。
 他にも、例えばかばんを手に持っているのであればそれで頭部を守れますし、最悪手で守るだけでもある程度までの保護は可能です。
 避難時には両手は空けておいた方が安全確保がしやすいことを考えれば、帽子が一番いいのかなという気がしています。
 あるいは、普段から頭上を少しだけ意識しておいて落下物がなるべくない場所を選ぶようにしておくと、あえて頭部を保護する対策をする必要はないような気もするのですが、避難するときには必ずそんな場所ばかりでもないわけで、そのあたりが悩ましいところではあります。
 いずれにしても、その場所で何か起きたらどうやって頭を守ればいいのかなということは、普段から少しだけ意識しておいて欲しいなと思います。

靴下とスリッパ

市販の非常用持ち出し袋に入っているスリッパ。足首を止められるベルト付き。これなら屋外で使うにも大きな問題はなさそう。

 地震に備えて枕元に履き物を準備しておくことについては、災害対策の準備の一つとして言われることが多いものです。
 また、非常用持ち出し袋にも履き物を入れておくようにと書いてある防災関係の本もあります。
 市販の非常用持ち出し袋にスリッパが入っていることが多いことは興味のある方ならよくご存じだと思いますが、自分で作る非常用持ち出し袋の中にも靴下1組とスリッパを備えておくようにしませんか。
 というのも、非常用持ち出し袋にセットされているスリッパは、、履き物の代わりに避難に使うためだけのものではないからです。
 例えば、避難後に自宅に帰ったとき、屋内にいろいろなものが飛散している場合に、確実に安全だとわかっているスリッパがあると安心して使えます。
 また、被災したときに生活を送る避難所では、衛生管理上、人が生活する空間については殆どの場合土足禁止となるのですが、その避難所の生活する空間で使えるスリッパがあるとは限りません。
 その際、スリッパがあると生活空間でも快適に過ごすことができます。また、避難所から緊急で逃げ出さなければいけないときにもとりあえずの足下の安全は確保できます。また、靴下があると足の裏の安全をより確実に確保できますし、例えば水害時の避難などでは冷えた足下を保温することにも使えますから、一組はあると助かります。
 避難所で使うだけなら、スリッパは旅行用の折りたためて使い捨てるタイプのもので構いません。でも、避難用と兼用させたいと考えるのであれば、もう一組屋外でも使えるような丈夫なものを備えておくといいでしょう。
 避難の時にはいろいろと気にすることの多い足下ですが、避難後のことも考えて準備をしておくとよりいいと思います。

避難所に持ってくるものはあらかじめお願いしておく

 平時から避難所運営委員会が機能している地域では、避難対象になるであろう地域の人達に「避難するときに持ってきてほしいものと持ってきてほしい量」についてあらかじめお願いをしているところもあるそうです。
 考えてみれば、避難所として指定されている場所のうち、どこを最初に使うのかやどんなものが使えるのかなど、知っているようで知らないことがたくさんあります。
 小さな集落で普段使っている公民館などが避難先であれば、ある程度どこに何があるかがわかっているので何を持って行けばいいのかイメージもつきやすいと思うのですが、例えば学校や体育館、行政施設といった場所だと、何があるのか何が必要とされているのかイメージが沸かないことも多いと思います。
 避難所が避難所として機能するためには避難が長期化したときにも対応できるだけの設備が必要となりますが、残念ながら大きな場所になればなるほど、避難者用に使える道具がなくなっていくというのが実際のところで、避難時には家からさまざまなものを持参しなくてはいけないことになります。
 でも、例えば「食料はそのまま食べられるものを2日分」とか「水は一日1リットルとして2リットル」といった風に具体的に避難所に持って行くものが指示されていれば、準備する方はそれに従って準備すれば良いのでかなり気分が楽になります。
 いつ避難所が設置され、いつまで耐えればとりあえずの救援物資が届くのかがわかっていればそれまでの命を繋げばいいだけなので、避難所運営委員会の人達も具体的な目安を指定でき、初動は各自が賄ってくれることが基本になっているので、避難所の設置初期におきるさまざまなトラブルの一部でも心配をしなくても済むようになります。
 災害時にその避難所が避難所として機能できるのかということは、恐らく災害が起きてみないとわからないところはあります。
 ですが、地域の避難者を安全確実に受け入れて困りごとをなるべく減らすためには、平時からさまざまな約束事を地域全体で共有しておくことです。
 せっかく地域に避難所が指定されているのであれば、その地域で避難者を受け入れるための避難所運営委員会を普段から開催してお互いの顔つなぎをし、さまざまな約束事を決めておくようにすることをお勧めします。
 避難所に非常用持ち出し袋を持って避難することは自助ですが、避難所の設営や補給物資の管理、そして避難者に持ってきてもらうものを消えておくのは地域における共助になります。
 自助と共助を上手に組み合わせて、避難後に飢えや渇き、睡眠不足で苦しむことがないように準備しておきましょう。

台風の進路予想図の見方

 近づいてきている台風14号は進路予測がちょっと難しいようで、かなり大きな予報円が描かれていますが、この予報円を始めとする台風の進路予想図について、あなたはご存じですか。
 恐らく、なんとなくのイメージはあると思うのですが、それを言葉にしようとすると結構難しいものです。
 今日はこの台風の進路予想図の見方を再確認しておきたいと思います。もしご存じでない方がおられたら、せっかくなので覚えていただけるとうれしいです。

1.台風の進路予想ってなんのため?

 台風が発生すると、被害や事故を防止するために台風情報が発表されます。
 これは台風が発生し、どのような状態なのか、そしてどこへ向かうのかを予測するもので、最近では気象庁を始め世界各国の気象担当機関がさまざまな予測を出しており、矢印のたくさんついた進路予想図を見たことのある方もおられるのではないでしょうか。
 この台風情報、台風が発生すると発表時点から24時間後までの予想は3時間ごとに、120時間先までは6時間ごとにそれぞれ提供されます。また、日本列島に近づいて災害などが予測される事態になると、1時間ごとに現在位置と1時間後の推定位置が発表されるようになっていて、その台風の影響域から日本連騰が抜けるまではいずれかの方法で情報提供が続きます。
 台風に備えるためにはいつ頃来るのか、自分の住んでいる地域はどうなるのかという情報が必要なので、この進路予想は非常に重要なものです。

2.台風の進路予想図

台風の進路予想図は次のような図面になっています。

 青線は今までの進路です。
 赤い円はその台風の「暴風域(風速25m/s以上)」です。
 かなり見にくい状態になってしまったのですが、黄色の円はその台風の「強風域(風速15m/s以上)」です。
 黒い丸印(わかりにくいですが破線です)の部分は、その時間にその円の中に台風の中心が来る確率が70%とされる予報円で、黒線(これも破線です)は予報円を結んでいるものです。
 気をつけておいて欲しいのは、台風の中心は予報円の真ん中にくるのではないということです。台風の中心が予報円内のどこかに来る可能性があるというになっており、その確率は70%とされています。そして、予報円の外側にある赤線は、台風が予報円の中に来たときに暴風警戒域となる可能性のある範囲を表しています。
 台風の中心位置によっては、暴風域にはいらない可能性があるということです。また、暴風域がなくなると予測されている時点でこの赤線は消えて予報円だけとなります。上のサンプルでも3日目には赤線が消えた状態になっています。

3.台風のサイズ

 台風は10分間平均風速が17.2m/s以上の風を伴うものだということはご存じだと思いますが、その大きさや勢力を表す表現というのも、気象庁発表では決められています。
その用語は次のとおり。

 例えば「大型で非常に強い」と書かれると強風域の半径が500km~800km未満で最大風速が44m/s~54m/sの勢力があることになります。

最近の台風は迷走するものも多く、進路の予測がかなり難しい状態のようです。
最初の予測で範囲ではなかったから安心するのではなく、定期的に気象情報を確認して予報円や暴風警戒域に変化がないかを確認し、もし影響がありそうな予報に変わったら、しっかりとした対策を取るようにしてくださいね。

乳幼児のいるご家庭で用意して欲しい避難所グッズ

避難所では着替えや授乳などできるだけ人目を避けたいものがいろいろとあるが、避難所運営計画ができていないと忘れられることが殆ど。写真は益田市子育て支援センターのもの。

 乳幼児のいるご家庭では、災害時には自宅待機が一番お勧めですが、さまざまな状況によってどうしても避難所に避難しなくてはいけないケースも出てきます。
 その際に問題になるのが、乳幼児への授乳やおむつ交換、就寝場所の確保です。
 だだっぴろい避難所の中で、乳幼児がたくさんいれば配慮してもらえるかもしれませんが、年寄りばかりの地域だとそういった配慮はなされない場合が多いです。
 誤解のないように書いておきますが、年寄りの多い地域であっても、避難所の設置計画がきちんとなされていて乳幼児がいることが認識されていれば、そういった配慮はしてもらえる場合が殆どです。
 ただ、避難所の設置計画がなくなし崩しに避難所が設置された場合には、どうしても声の大きなものや数の多い人に運営の意見が振り回されてしまい、乳幼児のいるご家庭だけでなく、障害者や要支援者など、俗に言われる「生活弱者」は切り捨てられてしまう傾向が強いと言うことです。
 そんななかで避難を継続するためには、早めの避難で場所を確保することと、乳幼児への授乳やおむつ交換の風景を物理的に他者から見えなくする日よけテントを持って行くことをお勧めします。

日よけテント。風通しのよい天井と床だけのものと、着替えにも使える密閉型がある。災害時の避難所で使うのは密閉型が安心。

 日よけテントは屋外で使うことが前提とされていますが、簡単に設営できて自立して建ってくれるので避難所内で外部からの視線を遮りたいときにも役立ちます。また、おむつ交換などで発生する臭いをあるていど封じ込めることもできますから、ぶしつけな視線や臭いに対する苦情を受けなくても済みます。
 余談になりますが、災害時には布おむつは洗濯できないことが殆どなので必然的に紙おむつを使うことになるのですが、交換後の臭いを抑えるために臭い抑制能力のあるビニール袋も一緒に用意しておきましょう。
 それから、避難所は防犯上完全に消灯されることはまずありません。そのため乳幼児の生活リズムに影響が出る可能性がありますが、日よけテントがあれば、タオルや毛布をかけることである程度内部を暗くすることができるので生活リズムを守ることも可能になります。
 また、母親が一緒に昼寝していても外部から見られる心配がありません。
 正直に言えば、できる限り早く被災区域外に広域避難したほうが乳幼児のためであり、授乳している母親のためにもなりますので、避難計画を作るときにはそこまで検討しておいたほうが確実です。
 大切なのは「乳幼児の健康と生活を守る」こと。そのことを前提にして、あなたの家の避難計画を立てるようにしてくださいね。

量にあわせるか入れ物にあわせるか

市販されている子ども用非常用持ち出し袋の一例。必要なものはセットされているが、食料品や飲料水は入っていない。リュックはアイテムでいっぱいなので、何かを入れようとすると何かを出すことになる。

 非常用持ち出し袋のお話をしたときに良く出てくるものの一つに「食料品や水はどれくらい入れたらいいのか」というものがあります。
 非常用持ち出し袋のサイズによって量が決まるので、「安全に持てる範囲で入れてください」という回答になります。
 市販の非常用持ち出し袋を見ると、本当にいろいろなものがセットされています。ものによっては非常食や長期保存水までセットされていて、これ一つ備えればOKというようなものも売られています。
 これらの非常用持ち出し袋に共通して言えるのは、持ち出すものの量によって袋の大きさが決まっていると言うことです。
 妙な言い方になってしまいますが、袋に余裕がないので何か自分が必要なものを収めようとすると何かが入らないという事態が起こりえます。
 例えば、あなたがコンタクトレンズのケアセットを収めようとすると、非常用持ち出し袋の中のクッションを追い出さないと収まらないといった感じです。 
 非常用持ち出し袋の中身は、いろいろ入っていれば入っているだけ精神的に安心しますので、非常用持ち出し袋は大型化する傾向にあります。
 中には大型化した結果、背負うのではなくコロがついていて引っ張って歩くようなものも出ていますが、そこまでいくと非常時の持ち歩きに苦労するのではないかといらぬ心配をしたりもしています。
 ともあれ、基本は「保温」「乾燥」「保水」「情報」「安眠」の条件を満たせるようなアイテムをセットしていけばあなたに最適な非常用持ち出し袋を作ることができます。
 その結果として入れ物が大きくなるか小さくなるかは人それぞれですが、いずれにしても「飲料水」と「使い捨てカイロ」は必ず入れておいてください。
 怖いのは体を冷やすこととのどが渇くことです。どちらも人の判断を鈍らせてしまうものなので、判断力を維持するためにも準備を忘れないようにしてください。

非常用持ち出し袋と嗜好品

 災害が起きると、甘味や酒、たばこといった嗜好品が手に入りづらくなります。
 特に酒やたばこは支援物資としてはまず来ませんので、流通が再開されるまではいずれもお預けとなってしまいます。
 ただ、酒はともかくたばこが手に入らないといらいらする人も多いのではないでしょうか。
 この際「禁煙」といけばいいのですが、なかなかそれは難しい。
 そうであるならば、あらかじめ非常用持ち出し袋にセットしておく必要があります。
 甘味やたばこは愛好者にとっては精神安定にかなり有効ですので準備していても損はないと思います。ただし、嗜むときには周囲の人が困らないように配慮することは重要です。
 酒については、判断が鈍ったり他者に迷惑をかけたりといった事態が起こりえますので非常用持ち出し袋には入れない方が無難ですが、許す範囲で自分の精神安定に役立つものをいれておくといいですね。
 ちなみに、嗜好品と同じようなものにゲーム機があります。スマホゲームなどもそうなのですが、避難先で自分が楽しめるものを持って行くのは大切なことです。
 ただし、こちらでよく問題になるのは音。ゲームで流れている音はゲームをしている本人以外にとっては非常に耳障りで、場合によってはケンカや殺傷事件に発展しかねない危険性をはらんでいます。
 ゲーム機を持って行く場合には、かならずイヤホンなどの音が周りに漏れない装備も必ず一緒に準備しておき、遊ぶ場合には必ずそれをつけ、周りを困らせないようにしておいてください。

飲料水の必要量

お水のペットボトルいろいろ。この他にも大きいのから小さいのまでさまざまなサイズがある。持ちやすいサイズ、持ちやすい重さを選んでおこう。

 「飲料水は一人一日2~3リットル以上必要」と言われていて、災害が起きるたびにその分量が増えてきています。
 家庭での備蓄量も3日分から7日分、現在では一部で10日以上用意すべきと言う声も聞こえてきており、この計算に従うと、水だけで一人30リットル。素直に従うと備蓄品で一部屋埋まってしまうような状況になってきています。
 もっとも、ここで書かれている必要量は一般的な話で、実際には年齢や体の大きさ、季節や普段摂取している量などによって本当に必要な量は人によってかなり変化します。
 本気で水の量を把握したいのであれば、まずは自分や家族が一日にどれくらいの水を摂取しているのかを大ざっぱでいいので確認してみましょう。水だけで無く、お茶やコーヒー、清涼飲料水といったものも全部含めます。また、食事を作るときに使っている水もこの計算に含めて家族の人数で割れば、一日一人あたりどれくらいの水が必要なのかが把握できますので、これを基準にして準備するようにします。
 思ったよりも水を摂取していない人、思った以上に水を摂取している人、人によってかなりの個人差があることがわかると思います。
 ただ、これらを充分に満たすための水の備蓄をしようとするとお金も場所も重さもありますので現実的ではありません。そのため、水道水を確保するためのバケツやジャグなどを用意しておくと安心です。
 次に非常用持ち出し袋にいれるべき分量を考えてみます。
 先ほどの飲料水としての一日摂取量に、非常食として用意しているものに必要な水の量を加えます。。例えば、アルファ米であれば水がないと食べられませんし、缶パンなら調理に水は不要です。
 この二つを足すと非常用持ち出し袋に必要な水の量が計算できます。
 次に重量を考えます。例えば、一日3リットルと考えて3日分を持って避難しようとするとそれだけで9kg。大人でも慣れていないと持って歩くのに躊躇する重さですし、この重さだとリュックサックもかなり大型なものでないと入りません。
 では、最低量の1日2リットルだとしたらどうでしょうか。500mlのペットボトルが4本ですから、これなら持って歩けるかもしれません。
 これでも重ければ、量を減らして自分が持てる重さにします。ただ、持たないという選択肢はありません。
 考え方は「ないよりははるかにまし」なので、たとえ500mlのペットボトル1本だとしても、ないよりはずっといい。「飲むものがある」という安心感は精神安定上非常に大切です。
 筆者自身は、子どもだろうがお年寄りだろうが自分で持てるものは自分でもってもらうべきだと考えていますので、どんなに少量でもいいので必ず水を持って避難するようにしてください。食事は一週間程度抜いても生きていけますが、水は3日も飲まなければ死んでしまいます。
 最近はマイボトルを持って歩く人も多いと思いますが、それらも活用して、飲料水をしっかりと確保できるようにしてくださいね。

防災訓練で思うこと

避難訓練の一コマ。津波に備えて階段を駆け上る。ただ、このとき揺れたらどうなるかは想定されていないし訓練もされていない。

 学校や施設の防災訓練を見学させていただくときにいつも考えてしまうことがあります。
 それは、放送によって状況や行動を説明すること。
 地震や火災の場合、何らかの原因で放送設備が損壊する可能性があります。行政の防災無線のように災害対策がきちんと取られていればよいのですが、学校や施設の放送設備でそこまでの対策が取られているものがどれくらいあるでしょうか。
 放送が使えなくなった状況下の訓練をしておかないと、本番で逃げ遅れたり混乱が起きたりするのではないでしょうか。
 どんな状況下にあっても避難をすることができるような体制、それぞれが自律的に判断して動けるようにしておくことが、訓練だからこそやっておかないといけないことだと考えます。
 防災訓練は失敗することが必要だと、筆者は考えています。
 さまざまな想定をし、その状況に応じてさまざまな判断をし、自律的な安全確保をできるようにするために、防災訓練では大いに失敗をしておくこと。
 本番では失敗は許されないのですから、訓練で失敗をして経験をしっかり積んでおくことが非常に重要です。
 防災訓練は、やることが目的ではありません。やった結果、身を守れるようになることが目的なのです。
 災害ではどのようなことが起きるか誰にもわかりません。
 だからこそ、さまざまな状況を想定して訓練を行うことが必要なのです。
 「訓練は嘘をつかない」という言葉があります。しっかりとした訓練は必ず本番で役に立ちます。
 せっかく実施する防災訓練だからこそ、少しだけ予定調和でないものを入れる必要があるのではないか。
 筆者はそう考えています。