岡山県総社市でペットとの共生を掲げてペット避難所を作ること、そして行方不明になったペットの捜索を掲げた条例が議会で否決されたそうです。
記事によれば、市長さんは「ペットの問題で毎回現場が揉めるので明文化しようとした」ということだったのですが、議会では「人命救助に支障が生じる」「人的資源がない」などといった理由で現状維持でいこうという判断をしたようです。
避難所の収容人員がコロナ禍でかなり減っており、この上ペットの収容まで考えるとパンクするという考え方も、そうでなくても手が足りない災害時に行方不明になったペットの捜索をするのは物理的に無理です。
ただ、ペットと避難については、いつの災害でも必ず避難所運営者を悩ませる問題になってしまっていて、関係性を明文化しておくということは大切なことなのではないでしょうか。
その避難所がペット避難可なのか、ペット可だとして、同行避難なのか同伴避難なのか、収容する場所や収容できる動物は何かなど、考え出すと結構問題がたくさんあるのですが、現状でうまくいっていない状態はどうにかしないといけないと思います。
とはいえ、ペット問題は本当に多岐に及ぶので、一律的に決めるのも難しいことは事実。さまざまな団体や避難所運営者が試行錯誤していますが、なかなかこれだという解決策は出てきていません。
ペットは家族の一員であり、人によっては家族以上の存在になっている場合もあります。そしてペットの避難ができいのであれば自分も避難しないという人が多いのも事実です。
人間が一時避難所で難を避けた後、指定避難所に移動するように、ペットも一時避難したあと、しばらく過ごせるような場所について選択肢を作っておくのは一つの方法なのではないかという気がしています。
カテゴリー: 避難所運営
発電機は絶対に屋外で使う
冬場に長時間の停電が起きると、電化されている最近の住宅では暖が取れなくなることがあります。
その時に備えてガソリン式やカセットガス式の発電機を備えている方もおられると思いますが、屋内では絶対に使用しないでください。
発電機に限りませんが、燃焼するときには酸素が燃焼により二酸化炭素に変わっていきます。
ただ、供給される酸素が不十分になると、二酸化炭素になれずに一酸化炭素が発生し始めます。
この一酸化炭素は人間が吸い込むと中毒死するような危険な気体なのですが、寒いと屋内やテントの中で発電機や炭火などを使い、酸素不足で一酸化炭素が発生して中毒死する事故がほぼ毎年起きています。
災害後に電気が再開するまでは発電機に頼ることも多いとは思いますが、発電機はいくらコンパクトでも絶対に外で使用すること。
そしてできるだけ開放的な場所で空気がしっかりと流れるようにしておくことに注意しておいてください。
発電機は絶対に外の風の良く通るところで使うこと。
周囲が住宅地の場合には発電機の音が気になってしまうかもしれませんが、命にはかえられませんので必ず守るようにしてください。
避難所は土足厳禁が基本
避難所では、生活空間は土足禁止にしたほうが健康を保ちやすいのでお勧めです。
というのも、避難所の就寝場所がすべて床面から20cm以上の高さがある場所ならいいのですが、そうでない場合、土靴から落ちた汚れやごみ、ウイルスや雑菌などを吸い込んでしまい、呼吸器系の病気を発症することが多くなります。
日本では床に直接寝る習慣があるために靴を脱いで生活空間に入るという習慣ができたのだと思いますが、これは理にかなっています。
地表に舞っている病気の元であるゴミやほこりなどを吸い込まないために、靴を脱ぐ習慣になっているのです。
逆に靴を脱ぐ習慣のない国では、寝る場所の高さを上げてベッドというものになっていて、地表で舞っているさまざまな雑菌から呼吸器系を守るようになっています。
とはいえ、避難所は人の出入りも多く、土足を禁止してもしっかりとした衛生面の確保は難しいと思います。できるなら土足は禁止したうえで、床から少しでも高さを上げたところで寝ることにするようにしてほしいと思います。
避難所の生活空間での土足を禁止することは、避難所で大きな病気を出さないためには大変重要なポイントです。
ペットの避難先を考える
住んでいる場所から避難すべき地域のお住いの方でよく問題になるのが飼っているペットの扱いです。
実際に避難を呼びかけた時、ペットがいるからという理由で避難をしない人やペット連れで避難所に避難してトラブルになるケースもよくありますので、平時にしっかりと話を決めておかないといざというときに逃げ遅れることになってしまいます。
実際、環境省などの呼びかけではペットとの同行避難が推奨されていますが、同行避難は同じ避難所に避難できるというだけで、同じ空間にいることができるわけではありません。
そして、一緒の空間で避難ができる同伴避難を受けいれている避難所は、そんなに多くないのが現実です。
最近ではペットのみ受け入れるペット用の避難所も出てきていますが、絶対的な受け入れ数が少ないことと有償であることが基本なので、事前にきちんと打ち合わせをしていない限り、いきなりの受け入れはかなり難しいものがあります。
一緒に過ごすという点では「車中泊」という選択肢もありますが、しっかりした宿泊設備がない状態だと、飼い主にもペットにもかなりの負担を強いることになってきます。
そして、一番の問題はペットの種類が非常に多岐にわたること。
ペット可の避難所でも、想定は犬や猫で、例えば蛇や昆虫といったものを想定しているところはないと思います。
ではどうするか。
正直なところこれだという解決策はないですが、まったく違う場所に住んでいる人とお互いに応援協定を結んでおくか、それとも安全な場所をもう一か所確保しておくか、いずれにしてもペットが安全に避難できるための場所を確保しておく必要があります。
自分の身を守るために、ペットの行き先についてもしっかりと考えておいてほしいと思います。
自主防災組織のお悩み
防災の仕事をしていると、自主防災組織の方から組織運営について相談をいただくことがあります。
最初は地域の人を災害から守るという熱い思いで結成された自主防災組織も、時がたって災害が起きなければ、だんだんと熱も冷め、次世代への承継もうまくいかないことが多いようです。いただくご相談は、今後どうやればうまく活動ができるのかとか、人がいない、集まらない、動けないといった内容で、あまり明るい内容ではありません。
ただ、聞いていると不思議に思ってしまうことが一つあります。
それは、なぜ身の丈にあった計画に変更しないのかということ。
ご相談いただくときの前提が「この活動計画ができなくなっている」というのが大半なのですが、できないのであれば、できるような活動計画に変更すればすむのではないかと思います。
自主防災組織の中には、非常に立派な行動計画を作って毎年それを更新しながら組織をうまく運営しているところもあります。
でも、地域によってはその行動計画を実行するだけの力がなくなっているところもありますので、そういった状況で持っている行動計画をやろうとするとどうしても無理が来ます。
自主防災組織はあくまでも「共助」のために結成されている地域のボランティア的な組織ですから、実行することが難しい行動計画でできないというのであれば、行動計画自体を変えてしまえばいいのです。
基本的な考え方は「できることをできる範囲で」です。
理想を掲げても物理的にできない場合にはできませんので、できることをできる範囲で設定しなおすことで、無理のない自主防災組織の運営が続けられることになります。
もちろん、人が増えたりやる気のある人たちがたくさんいる状況になれば、活動計画を組み替えて大きなものにすればいいだけなので、その時々に応じてやる活動を変動させるくらいの気持ちでいればいいと思います。
よく誤解されているのですが、自主防災組織は自主防災組織に所属する人たちを守るために存在しています。
自治会や自治体とは異なる任意組織ですので、あくまでも自主防災組織に加入している人をどうやって守るのか、を基礎にしてください。加入していない人を相手に考える必要はないのです。
自主防災組織に加入している人達が、お互いにできる範囲でできることをして助け合うだけでいいと考えると、何となく肩の荷がおりませんか。
自主防災組織を難しく考える必要はありませんん。地域の人間関係がしっかりと生きているなら、存在しなくてもいいくらいの組織であり、あくまでもお互いをできる範囲で助け合うために作られているのです。
できることをできる範囲で、無理なくやり続けること。
これからの自主防災組織はそれを前提にして活動計画を作ったほうがいいのではないか。そんな風にお話をしています。
あるものでなんとかするには
災害が起きた後は、とりあえずあるものでなんとかするしかありません。
ですが、あるものでなんとかするには、あるものの活用法を知っておかないとなんとかすることができません。
一番いいのはあるものでなんとかする羽目にならないような準備がされていることなのですが、なかなかそこまで準備のできている人は少ないような気がしています。
あるものでなんとかするためには、その場にないが必要になったものの特徴を考えてみる必要があります。
その特徴を満たすような代替品を探すと、案外となんとかなったりします。
例えば、座布団で考えてみます。
座布団の機能は床の固さの緩和、床の冷気の遮断といったところになると思います。
そうすると、その場にビニール袋と新聞紙があれば新聞紙をくしゃくしゃにしてビニール袋の中に入れれば、とりあえずの代替品になるかもしれません。
大き目のボールがあれば、その空気を抜くことで代替品ができるかもしれません。
緩衝材があれば、袋にいれれば手軽に座布団ができるでしょう。
こんな風に、機能を考えることで代替品を用意できることがあります。
もちろん代替品の候補がどんな機能を持っているのかを知っていないとそもそもどうにもならないので、いろいろなアイテムの機能や特徴を調べて知っておくといいと思います。
例えば、極端な例ですが、穴が開いているからと言ってちくわをストローの代わりにすると、ちくわストローを使って飲んだ飲み物はみんな魚の味に染まってしまいます。
つまり、素材の特徴も知っておかないといけないということです。
あるものでなんとかすることは、ないに越したことはありません。
あくまでも代替品を作ることができるという前提で、必要なものの準備を怠らないようにしてください。
【終了しました】第2回「はじめての防災キャンプ」を開催します
2022年11月5日から6日に、島根県益田市の北仙道公民館で「初めての防災キャンプ」を開催します。
これは実際に体育館で宿泊をして、避難生活で起きそうなさまざまな出来事を体験したり、防災活動を学んだり、近くを散策して自然観察をしたりするもので、8月に開催した第1回は参加者に好評をいただきました。
新型コロナウイルス感染症の蔓延で参加できなかった方や参加した方から「次回はいつやるの?」というお問い合わせをいろいろといただきましたので、冬に向けて第2回を開催することとしました。
対象は小学生、中学生で、地域は限定しません。
先着15名となっておりますので、興味のある方のご参加をお待ちしております。
また、当日のお手伝いをしてくださるボランティアも募集しています。
短時間でも手伝ってくださる方がおられれば、事務局までご連絡いただければと思います。
発電機と延長ケーブル
大規模災害ではよく停電が起こりますが、そのための備えはできていますか。
蓄電池や発電機を備えている方も多いと思いますが、一つ注意しておいてほしいのが、発電機は屋外で使うということです。
太陽光パネルは屋外の日当たりの良いところに置かないと意味がありませんが、ガソリンや灯油、ガスといったエンジン式の発電機も家の中では絶対に使わないでください。
当たり前のことではあるのですが、エンジン式の発電機が動くためには燃料とそれを燃やすための酸素が必要となります。
燃料と酸素は、燃えたあとは二酸化炭素になりますが、屋内では燃やすための充分な酸素が取れなくなるため、酸素が足りなくなってきて不完全燃焼が起き、一酸化炭素が発生します。
一酸化炭素は無味無臭で非常に強い毒性を持っています。そのうえ、吸った人がおかしいと気がついた時には全身が中毒症状となって動けなくなってしまっていて、そのままだと死んでしまいます。
不完全燃焼しなければ一酸化炭素は発生しないので、十分な酸素が供給できる屋外で使う必要があるのです。
特に、最近の家は気密性が高いので、家の中でエンジン式の発電機を動かすとあっという間に一酸化炭素が発生しますから、絶対に屋内での使用はやめてください。
過去には玄関で動かしていた発電機による一酸化炭素中毒で一番遠い場所にいたそのおうちの方がなくなったという事例もあります。また、毎年停電が起きるとこの発電機による一酸化炭素中毒が起きています。
ただ、屋外に設置して発電すると使いたい電気器具までコンセントが届かないということも起こります。
それに備えて、延長ケーブルもきちんと準備しておきましょう。
延長ケーブルもなんでもいいというわけではなく、供給できる給電量がケーブルによって決まっていますので、その延長ケーブルで自分が使いたい電気を送ることができるのかどうかをきちんと確認しておいてください。
発電機はどこに設置して、どの電気器具に電気を給電するのか。そのためにはどれくらいの長さの延長ケーブルが必要となるのか。
何も起きてない普段のときに、おうちの給電計画を作って、実際にうまくいくかどうかを試しておいてくださいね。
避難所のごはんの現実
非常用持ち出し袋を作っておいて、避難が必要な時にはそれを持っていくということは、災害が起きるたびにさまざまなところで言われていることですが、でも、実際に自分が対象になると何も持たずに身一つで避難する、あるいはいつものカバンだけ持って避難するという人がまだまだたくさんいらっしゃいます。
災害が発生した後での避難の場合には仕方がありませんが、避難所に避難した後、避難所には何もないということを初めて知る方もたくさんいて、そこで揉めることも多いです。
毎回ここでも書くことですが、避難所には原則として何もありません。
毛布や非常食の備蓄はいくらかあるかもしれませんが、避難者全員に行き渡るようなものはとてもありません。
そんななかで、自分の居場所や生活を確保していかないといけないので、かなり厳しい条件になっているということを理解しておいてください。
居・食・住のいずれも厳しいのですが、今回はごはんについてのリアルです。
地震のように突然発生する災害ではなく、大雨や台風などであらかじめ避難ができるような災害の場合には、自治体および避難所によっては避難食ともいうべき軽食が支給されることはあります。
菓子パン、おにぎり、お茶、水またはスポーツドリンク。これが提供されるものの全てです。
当然アレルギー対応などは考えられていませんから、アレルギーを持っている人はそれらを食べることには覚悟が必要になります。
そして、避難が長時間に渡る場合、食べられる避難食は毎回同じものになるので、だんだんと食べられなくなってしまう場合もあります。
特に高齢者の方にはそれが顕著にでますが、あらかじめ自分が食べるものを用意しておかない限りは、与えられるものでやっていくしかありません。
災害後は、通常の物流は止まりますので何もしなければ、数日間は食べるものがない生活になります。
やがてプッシュ式で送られてくるのはお弁当になりますが、油ものや練り物などで占められよく冷えた(たまに凍ったままの)お弁当が三食となります。
正直なところ、これではどんなに元気な人でも体調を崩すよねと言いたくなるような不健康な食事が数週間、下手するとひと月以上続くことになりますが、それが理解できているでしょうか。
そんなとき、自分の好物が一つでもあれば、随分と気分が変わると思います。
非常用持ち出し袋に入れておく食料品には、そういったものも入れておく必要があると思っています。
自分が好きな味付けの防災食を準備しておいて、同じ食事が続くときには追加して目先を変えたり、不足するビタミン類や繊維質のものを加えておいたり。
人口が少なかったり、農業地域なら自分たちでの毎食の炊き出しもできると思いますが、そうでない場合には、しっかりと備えておくようにしてください。
非常食がなぜいるのか
非常食がどうして必要なのかについて、たまにご質問をいただくことがあります。
答えから行くと「プッシュ型支援で食事が届くようになるまでの間、自分の命をつなぐため」なのですが、あまりピンときていない方も多いと思います。
田舎だと、野菜は畑からとってくる、コメは倉庫にたくさんある。水は井戸、というようなご家庭も多いので、非常食がなくても食事はできるのですが、何らかの理由でそれらが手に入らなくなることがあるかもしれません。
例えば、野菜のある畑が断層に飲まれたり、流れてきた土砂に埋まったり。あるいはコメの入っている倉庫がつぶれてしまったり、火事で燃えたり。停電でポンプが止まって水のくみ上げができなかったりといった事態が想定されます。
そういったときにでも胃袋に食べ物が入るというのは、非常に気分が落ち着くものです。そのために準備するものだと考えておけばいいと思います。
また、災害発生から72時間はどの組織も物資の輸送ではなく救助に集中しています。72時間を過ぎると生存確率がかなり落ちるということが言われていて、この間はほかのすべてを止めてでも救助が優先されています。
つまり、避難者に食事が回ってくるのは早くても72時間経過後ということになるのです。
それから、大規模災害だと道路の開削から始まりますから、食料が届くのに1週間以上かかる場合が出てくるかもしれません。
そのことを見越したうえで、最低3日分、できれば1週間分の食べ物をストックしておくようにさまざまなところで広報がされているのです。
どんな人であれ、食事をする以上はある程度の準備は必要だということを認識したうえで、せめて自分が食べやすいと感じるものを準備しておいてください。