被災写真はしっかり撮っておこう

 台風10号は北の方に去って行きましたが、あちこちで大きな被害を残していったようです。全容把握はこれからといったところでしょうが、被災された方にはお見舞い申し上げます。
 今回の台風10号に限らず、大規模な災害が起きるたびに書いていることではあるのですが被災した後は復旧が待っています。
 少なくとも、自宅が被災したらその片付けと掃除、消毒、乾燥、そして修繕と、復旧が完了するまでにはかなりの労力と時間を投入しなくてはいけないのですが、それらの作業に入る前に必ずやっておいて欲しいことがあります。

それは

被災したことをはっきりさせるための写真をたくさん撮っておくこと

です。


 自宅の被災では、自分の生活環境を取り戻すために片付けをすぐに開始したいところなのですが、行政の罹災証明書にしても、保険会社への保険請求にしても、基本的には被災した状況を現地で確認するという原則があります。勝手に片付けを始めてしまうと、行政や保険会社が調査に来たとき、そこまで大きな被災はしていないと判定されてしまって後で困ることがよく起きます。

 また、大規模災害だと調査そのものがいつ来るか分からないという状況になることもあります。そのため、被災状況が確認できる写真をなるべくたくさん撮影しておいて一致調査しなくても手続きをすることができるようにしておく必要があるのです。
 遠景、近景、被災箇所の確認できる写真など、こんなにたくさんと思うくらい撮影しておいても困ることはありません。
 被災状況が撮影されていないことの方が問題になるのですから、無駄になってもいいので、とにかくいろいろな角度からいろいろわかる被災状況写真を撮っておくことです。被災状況をどのように撮影したら良いのかについては、「浸水した家屋の片付けと掃除のしかた」(NHKウェブサイト・災害列島)を参考にしていただければと思います。
 それから復旧に際して意識しておいた方がいい点については、以前「被災後の段取りあれこれ」で書いておりますので、よかったら参考にしてください。

 いずれにしても、自宅など生活や仕事をする空間は調査を待っているわけにもいきません。行政や保険会社に了解を得た上で、さっさと復旧作業に入るようにしましょう。また、最近立て続く災害のせいで、復旧を始めたら次の災害を受けたという地域も出てきています。手早く全てを行うことはできませんが、何から手をつけるのかをしっかりと決めた上で作業に入り、できるだけ早い復旧ができますことを願っています。

参考情報

浸水した家屋の掃除と片付けのしかた」(NHKウェブサイト「災害列島」へ移動します)

台風の勢力を知ろう

 大きな台風10号が近づいていますが、あなたのおうちの台風対策は完了していますか。
 地震と違って、あらかじめ来ることが分かっている災害ですので、周囲に被害が出ないように、そしてあなたが遭難しないように状況を見て命を守るための行動を取ることが大切です。
 家を守れない、または被災するかもしれないと心配であれば、お近くの丈夫な宿泊施設に宿を取って待避するか、もし行政が避難所を開設しているようであれば、そちらへ避難することをお勧めします。
 ところで、今更ながらなのですが台風の勢力はどのように見るのかご存じですか。
 今回の台風10号では、令和2年9月6日16時時点で「大型で非常に強い」という表現がされています。
 この台風の表現、予報官がノリと勢いで勝手に決めているわけでは無く、気象庁が定めるルールに従って発表されていますが、そのルールは以下の表になります。

この表で考えると、今回の台風10号は「大型で非常に強い」なので「風速15m/sの範囲が500~800kmで、最大風速44m/s以上54m/s未満の風が吹いている台風」ということになります。
ただ、そう聞いてもピンと来ない方もいると思いますので、イメージがつきやすいように気象庁が作成した「風の強さと吹き方」を見てみてください。

 この表で見ると、瞬間最大風速44m/s以上54m/s未満なので、一番右側の「おおよその瞬間最大風速」の欄の「40」のところを見ます。
 すると、人への影響は「屋外での行動はきわめて危険」、屋外・樹木の様子は「細い木の幹が折れたり、根の張っていない木が倒れ始める。看板が落下・飛散する。道路標識が傾く」、走行中の車では「走行中のトラックが横転する」、建造物では「固定の不十分な金属屋根の資材がめくれる。養生の不十分な仮設足場が崩落する」となっています。
 もっともひどい54m/sくらいになるといろいろなものが飛散し、倒壊していくように書かれています。
 このような状況下で、家が壊れそうだから避難所へ避難しようとしても、その避難がかえってあなたの命の危険を招くことになってしまいます。
 避難経路をハザードマップで確認しておくのはもちろんですが、家に不安があるようなら、早めに近くのしっかりした宿泊施設に自腹で宿泊するか、行政の開設する自主避難所に避難することをお勧めします。
 もしも家で待機するのであれば、風の強い場所にある窓は割れないように補強をしっかりとしておいてください。
 また、今回の台風では雨のことはあまり触れられていませんが、雨を表現する用語も決まっていて、それは次の表のとおりになります。

台風が襲来すると、抜けるまでは何もできませんので、運を天に任せる状況になる前に早めに自分の命を守るための行動を取ってください。
 余談ですが、自主避難所は場所貸しだけですので、自分の食料や就寝具といった生活に必要なアイテムは自分で持ち込む必要があります。生活に自信の無い方は、自腹で安全と思われる宿泊施設に宿泊避難されることをお勧めします。

 上記の表が見づらい場合には、下記リンク先から内容をご確認ください。

気圧配置・台風に関する用語(気象庁のウェブサイトへ移動します)

風の強さと吹き方(気象庁のウェブサイトへ移動します)

雨の強さと降り方(気象庁のウェブサイトへ移動します)

明日は防災の日です

 大正12年9月1日に発生した関東大震災にちなんで、毎年9月1日は防災の日となっています。
 そしてこの日を挟んで毎年8月30日から9月5日までを防災週間として防災に関するさまざまな行事が全国的に行われています。
 今年はコロナ渦で人の集まるイベントは軒並み中止になっていますが、こんなときだからこそそれぞれが自分の防災グッズや避難計画などを見直し、確認しておく時間にしたいですね。
 ちなみに、普段は1日と15日しか体験利用ができない災害用伝言ダイヤル171番は、この防災週間中は体験利用することができるようになっていますので、web171番と併せて使い方をしっかりとマスターしておいて欲しいなと思います。
 折しも大きな台風が近づきつつあります。週の中程にかけて西日本に影響が出るような予報が出ていますので、対策についてしっかりと確認しておいてくださいね。

当研究所記事「災害時伝言ダイヤルを使ってみよう」

台風に備える

 台風が日本にやってくるシーズンに入りました。
 今年もかなり暑いので、やってくる台風は勢力がさほど落ちずに来るのでは無いかと思っていますが、台風に備えた準備はできていますか。
 台風で備えるのは風と雨。いつ頃襲来するのかは分かっていますから、そういう意味では非常に対応がしやすい災害だと思っています。
 大きな台風が来たとき、最終的にどのような被害を被るのかは正直なところわからないところがありますが、それでも備えておくことで、ある程度までの被害を防ぐことが可能です。
 今日は台風シーズンに入る前にやっておいた方がいいことについて考えてみたいと思います。

1.台風対策、まずは掃除から

 台風がやってきて問題になるのは、溢れてくる水とそれに流されるもの、そして風で飛ばされてくるあれこれです。
 ですので、水を可能な限り排水させるために側溝や水路の掃除をしておきましょう。また、周囲に側溝などに詰まりそうなものがあれば、あらかじめ撤去しておくことも大切です。
 それから家の雨樋。ここの掃除もしっかりとしておくことで、排水能力の確保や貯まった水による雨樋の破壊を防ぐことが可能です。
 あと、見落としがちなのがテレビアンテナ。強い風雨にさらされると、劣化したテレビアンテナが壊れて落下したり飛んだりすることが起きます。
 筆者の家でも、何度かの台風でテレビアンテナがぼろぼろに壊れてしまったことがありますので、シーズン前に電気屋さんに点検してもらい、破損が起きないようにしておくことが大切です。
 家の周囲にも注意を向けておきましょう。
 風が吹くと落ちたり飛んだりしそうな場所に、物干し竿や植木鉢、プランターなどは置いていませんか。
 大風が吹くと、一見大丈夫そうな場所に置いてあるものでも簡単に飛んでしまいます。物干し竿などは飛びそうにないように見えますが、過去には物干し竿が飛んでよその家の窓ガラスを割ったというような礼もあります。
 飛びそうなものは、屋内に入れておくか、もしくは風が通らない場所に置いてください。
 家庭ゴミなども同じで、飛んだり散ったりするとあちこちでトラブルが起きます。これらも屋内または風や雨の当たらないところにおいてください。

2.おうちの対策をしておく

 瓦屋根のお宅では、風で瓦が飛んだりしないように点検をしてもらっておきましょう。またトタン屋根などではめくれている部分や破損している部分がないかどうかを点検しておき、できれば修繕しておきましょう。
 窓は飛散防止フィルムが張ってあればいいのですが、そうでない場合には、ガラス窓にはガムテープなどで飛散防止対策をしたうえで厚手のカーテンを引き、ガラスが飛散しないようにしてください。
 側溝や水路に面しているお宅では、状況によりますが土のう袋が必要な場合もあるかもしれません。あふれそうな場所があらかじめ分かっているときには、土のうを作って置いておくのもいいと思います。
 停電に備えて、乾電池式のランタンや懐中電灯、およびそれらに使う乾電池も準備しておきましょう。また、オール電化のおうちでは、念のためにカセットガスコンロも準備しておいた方がよさそうです。
 非常用持ち出し袋の点検をし、着替えや靴なども準備しておきましょう。また、断水に備えてお風呂などに水をためておくことも忘れずにやっておきましょう。

3.台風の進路の情報収集しておく

 台風の進路は、昔に比べると読みづらくなってきています。そのため、前の日の予想進路と今日の予想進路が変わっていることが起こりえますので、天気予報は定期的に見ておいてください。
 台風の強さと家の状況によっては、台風の勢力圏に入る前に安全と思われる避難所に避難してしまうことも検討しておきましょう。
 また、状況によっては学校や会社に行けても帰れなくなる可能性がありますので、天気予報を見た上で、場合によっては自主休業・自主休校することも視野にいれておいてください。
 どうしても出社や登校しなければならない場合には、職場や学校で待機しなくてはならないことを想定して非常食を用意しておくことをお勧めします。
 台風そのものは、1日程度あれば勢力圏から抜けることが殆どですから、その期間が凌げるだけの準備をしてあれば大丈夫です。

4.情報共有しておく

 家族のいらっしゃる方は、当日は誰がどこにいるのかをお互いに確認しておきましょう。
 いざというときにどんな行動を取るのかについて確認しておき、例えば最悪家に子どもだけしかいなくても大丈夫なような準備をしておくことが大切です。
 非常食、避難所に行けない場合どうするのか、連絡手段をどうするかなど、しっかりと詰めておきましょう。

 災害対策はいくら準備をしてもしすぎるということはありません。
 幸い、台風は進路予測ができますから、それに対応して準備をすることが可能ですから、直撃したときに自分や周囲に被害がないように、あらかじめしっかりと準備しておきましょう。

要支援者ほど早く避難しろという意味

 風水害の警戒レベル3は「避難準備・高齢者等避難開始」ということになっています。レベル4には「避難勧告」と「避難指示(緊急)」が同居していて訳がわからなくなっているということでどうやら修正がされるという話も聞いていますが、ともあれレベル3が発令されると「高齢者等」は準備ができ次第安全な場所、例えば避難所等に避難を開始することになります。
 この「高齢者等」には、高齢者だけで無く妊婦や乳幼児を含む家族、障がいを持っている人、その他避難する準備がかかる人達、いわゆる要支援者のことで、手間のかかる人は早く準備して早く避難しろというのがこのレベル3の趣旨です。
 ではなぜ普通の人よりも早く避難した方がいいとされているのでしょうか。
 何かあったときにすぐ避難できないから避難するというのは大きな理由ですが、それ以上に「早く避難して自分のスペースを確実に確保しておけ」という意味があります。
 過去に起きた様々な災害では、声の大きく元気な人ほど避難所で生活しやすい良い場所を占拠し、支援品や補給品を優先して受け取るという傾向が一貫してみられます。
 そうすると、本来は支援が必要な人達は避難所の片隅または避難所から追い出されてしまって、車や倒壊した家屋などで生活することを余儀なくされてしまうのが現状です。
 支援の必要な人が先に避難所に入って条件の良い場所を使っている場合には、いくら元気な人でも押しのけてその場所を奪い取ることはなかなか難しそうなのですが、実際には後から来た人の方がいろいろな意味で本人の状況が悪くなっているので、それを盾にして先住者を追い出すということが発生したりしています。
 大きな街ほどそういった傾向が見られるので、本当のことを考えると支援がいる人は支援がいる人専用の避難所を作ってしまった方がいいと思うのですが、いろいろと理屈をつけてそこまではしないというのが現在の行政の限界でもあります。
 そうすると、普段の生活に何らかの支援がいる人、支援があった方がいい人は早めに避難して避難所を占拠するくらいの行動力を見せないと自分たちが路頭に迷うことになってしまいます。
 実のところ、他人様に迷惑はかけられないと避難を渋る人達が大勢いるのですが、収容先のない要支援者が路頭に迷うことの方がよっぽど迷惑ですから、ひどくなりそうな気配を感じたらさっさと非常用持ち出し袋を持って避難所に避難し、良い場所を占拠してしまいましょう。
 避難所運営スタッフからスペースとして使って良い場所を確認しておけば、あとは安心して事態が収まるのを待てば良いのです。
 普通の人と同じように行動していると、要支援者はかならずひどい目に遭います。
 普通の人よりも早く動くことで、自分の安全を早く確保することができますから、準備ができたらそのまま避難するようにしましょう。
 なお、特殊な医療用設備が必要な要支援者のかたもいらっしゃいますが、そう言った人は避難所では無く、できれば被災しないであろう地域まであらかじめ避難しておく方が無難です。
 そういった事態に備えて、かかりつけのお医者様といざというときに支援してもらえる医者を決めて準備してもらうようにしておきたいですね。
 繰り返しになりますが、状況を見て早めに避難し、自分の居場所を確実に確保することが、要支援者が生き残る道です。
 他の人の動向など気にすること無く、自分が決めた避難計画に従って避難してくださいね。

どこに何があるかを知る

 被災時に痛切に感じるのは、どこにいったら何があるのかを実は知らないということです。
 例えば、家の中に飲める水がどれくらいあるのかを意識したことがあるでしょうか。
 保存している水はもちろんですが、例えばトイレの水洗タンクの中、あるいは太陽熱温水器があれば水だけで無くお湯が手に入ります。
 でも、意識していないと水があるのに水が無いと思い込んでしまうことになりかねません。
 食料でも同じです。冷蔵ものや冷凍ものは冷蔵庫が駄目になるとすぐに食べられなくなると思ってしまいますが、クーラーボックスに詰め替えれば、半日から一日程度は食べることが充分に可能です。
 冷蔵ものの上に冷凍物を乗せておけば冷気で冷蔵物の保温もできますし、冷凍物はそのうち自然解凍されて調理しやすくなります。
 家の中に何があるのかは案外と知らないものなので、災害対策の備蓄を確認する際には、どこに何があるのかをチェックしておくと慌てなくて済みます。
 同じように、自分がいる街のどこに何があるのかを知っておくと、いざというときに自分の命を守ることにも繋がります。
 避難するのに使える場所だったり、公衆電話や公衆トイレ、自動販売機、下水用マンホールなど、普段目にするものでも意識しなければ無いのと同じ。
 家や地域の防災マップ作りは危険な場所を確認するだけで無く、いろいろな資源を知る作業でもあります。
 しっかりと意識して、できれば所在図や地図を作っておいて、災害発生後、自分の生活を守るための武器として使いたいですね。

エリアメールの怪

2020年7月14日午前7時現在の高津川高角橋付近。かなり水位が上がっていた。
リモートで撮影。

 今日は地元の高津川が氾濫危険水位まで上昇し、一時は避難勧告まで出たそうです。
 「そうです」と伝聞調になってしまっているのは、益田市の防災メールでも県の防災メールでも、益田市の避難勧告に関するメールは一切来なかったから。
 避難勧告はエリアメールで流されたそうで、筆者自身は市外にいましたのでエリアメールを受け取ることができませんでした。
 エリアメールというのは大手の携帯電話会社と契約している人が携帯電話網を使って特定のエリアに発せられた警報などの情報を強制的に受け取らせるサービスです。
 益田にいた吉田地区、高津地区の人達はエリアメールを受け取ったそうですが、当然それ以外の地域の人にはエリアメールでは届きません。
 市外に勤めている方もいらっしゃると思うのですが、避難勧告などの重要な情報がエリアメールだけで配信されるとエリア外の人に届かず迎えなどの対応が後手に回ってしまいます。
 エリアメールは便利なのですが、エリア外にいるけれどそのエリアの情報が必要な人に対しても情報を提供して欲しいなと思いました。
 ちなみに、益田市の防災メールでも県の防災メールでも、県の防災ポータルの避難情報でもレベル4の避難勧告は出たことになっていないのですが、避難勧告のエリアメールが配信された理由はよくわかりません。
 まさか防災メールや防災ポータルへの登録漏れではないと思うのですが、結局よく分からないまま避難情報は解除されました。
 結局、何が本当だったのかは筆者にとっては謎のままです。

水害で被災したら気をつけたいこと

 日本のあちらこちらでびっくりするくらいの量の雨が降っています。河川の氾濫や決壊でいろいろな場所で水害が発生していますが、まずは自分の命を守ることを最優先に安全確保をしていただきたいと思います。
 そして被災した方にはお見舞い申し上げます。まだ状況が治まらないとも聞きますので、どうぞ体調維持にご配慮ください。

 ところで、水害で被災した後にはどんなことに気をつけたらいいのか。
 今日はやっておいたことがいいことや、忘れがちなことについて3点だけ触れておきたいと思います。

1.片付け前に写真をたくさん撮っておこう

 被災して状況が落ち着いたらまずはお片付けになると思いますが、お片付けをする前に被災したものや場所の写真をさまざまな角度から撮影し、記録を残しておいてください。このときに写真をしっかりと撮っておくと、後で役所の発行する罹災証明書や保険会社の保険申請のときにびっくりするくらい役に立ちます。
 罹災証明書の発行や保険会社の保険適用は原則として全て現地調査を行うのですが、大規模災害になると手が回らなくなります。そのため調査が遅くなり、片付け終わった家屋や周囲の状況で罹災状況の判断がされてしまうことになり、いろいろと困ったことが発生します。
 ですが写真をしっかり撮影しておくと、申請書にその写真をつけることで現地調査が省略され、証明書や保険金の支払いが早くなることがあります。
 また、行政機関でさまざまな手続きをする際にも被災状況の写真があれば説明が非常に早くでき、損になることはありません。お手元のスマートフォンや携帯電話のカメラ機能であらゆる角度からしっかりと被災状況の写真を撮影しておいてください。コツは近くと遠くで撮影すること。全景も忘れずに撮っておいてくださいね。

2.いろんな手続きは自分でしよう

 被災地では、各種申請手続きの代行業者が言葉巧みに自分に手続きを代行させるように誘ってくることがありますが、これらの業者にお願いすると多くの場合は異常に馬鹿高い手数料を取られてしまいます。
 また、代行業者に頼んだからと言って各種手続きが早くなることもありません。
 確かに書類を書くのは面倒くさいですし間違えて怒られるのは面白くないですが、役場の人や保険会社の人に教えてもらえば1時間もかからずに申請手続きをすることができますから、面倒くさがらずに自分で手続きは行うようにしてください
 どうしても自分で作るのがいやな人は、代行業者では無く、司法書士や行政書士にお願いしてください。代行業者よりも遙かに安く確実に手続きをしてくれます。

3.家族の記録の処分はちょっとだけ待って

 最後に、家族の記録写真やデジタルデータ、絵などが被災しても、復旧できる方法があるかもしれませんから、処分するのはちょっと待ってください。
 必要なのは、早い段階でしっかりと乾かすこと。劣化が抑えられれば、写真洗浄ボランティアやデータ復旧サービスなどでなんとかなるかもしれません。
 捨てるのはいつでもできますから、お片付けのときに家族の記録については優先して乾かして復旧方法を考えるようにしてください。

 水害で被災すると、後片付けに追われてなかなかじっくりと考える時間がとれません。ですが、

1.片付け前にまず写真を撮っておく

2.各種手続きは自分自身でやるか、

  もしくは司法書士、行政書士に依頼する

3.思い出の品物は早く乾かせば救えるかも

という3つだけは覚えておいてほしいなと思います。
 被災後はあらゆることが一気におそってきます。気力をしっかりと持って、自分のペースで復旧して欲しいと思います。
 どうぞご安全に、そして無理はされませんように。

避難情報の再確認

 避難情報は現在は「レベル」で表示されるようになっています。
 数字が大きくなるほど危険が差し迫っていることがわかるようになっていて、過去の災害で「避難勧告」や「高齢者避難開始」といった言い回しがよくわからないという意見を反映したものですが、結果としてレベルだけでは緊急性が高いのか低いのか一般の方には理解されず、現在はレベルと発表情報の併用で情報が発信されています。
 ただ、この言い回しもちょっと難解な感じがするのでもっと簡単ないい方ができないのかなと考えてみました。
 一番問題になるのは、レベル3の「避難準備・高齢者避難開始」情報で、この情報、発表されて次のレベルに上がるまでには非常に間隔が空いています。
 内容は「このままの状態だと逃げる必要がある場合もありますので逃げる準備してね」という意味なのですが、この次の「レベル4 避難勧告・避難指示(緊急)」になるともう一部地域では災害が起きている状態なので、起きるか起きないかの境界線がレベル3ということになります。
 実際のところ、レベル3が出るとレベル4も出る場合が多いので、レベル3がでたら「逃げる準備して安全な場所へ移動開始」と考えると余裕のある避難ができると思います。
 このあたりはそれぞれの判断になりますのでこうしろとは言えない部分ですが、早めに逃げてしまえば少なくとも自分の命は確実に守れると言うことだけは確かです。
 避難所の開設は各市町村の防災担当課によって判断が異なるために一概に言えませんが、もしあなたが安全だとされている避難所に避難するときには、市町村の防災担当課に連絡しておくと避難所の入り口が開けてもらえることが多いようです。
 できれば緊急連絡先にお住まいの市町村役場の防災担当課の電話番号を書き加えておいてください。
 ちなみに、レベル4になると災害対応でてんてこまいになりますので、電話はまず通じません。同じ現象は消防でも警察でも起きますので、逃げ遅れたら行政機関に連絡して助けてもらうという発想は捨てた方がいいです。
 早めに行動を開始して、空振りでも怒らない。100回逃げて何も無くてもいいんです。逃げるのはあくまでもあなたの命を守るため。面倒くさいとか、今まで起きなかったからといった感覚的な逃げない理由を探さないでください。
 そういえば避難する場所についてですが、現在は新型コロナウイルスのことがあって大規模な避難所でも収容人員を押さえる方針が採られています。
 避難所はあくまでも行き場のない人に利用してもらい、つてや経済力のある人は知り合いのいる高台のおうちやホテルなどの宿泊施設を使うようにして3密を避けるようにしてください。
 また、自然災害は一度に一つしか起きないという保証はありません。
 一度に複数の災害が起きるかもしれないと考えて、それでも安全な場所を確認し、早めに避難行動を開始するようにしてください。

水の災害で持って避難してほしいもの

 大雨による水害や台風、高潮など水の災害ではいかに安全な高台に避難するかが生死をわけるといっても過言ではないと思います。
 自宅が完全に水没してしまう場所や平屋建てなどにお住まいの場合には、場合によっては雨と水の中をかき分けて安全な場所に避難するような場合も出てくると思います。
 その際、避難先に絶対に持っていってほしいものをいくつかご紹介しておきます。
 これらは安全な場所に避難が完了して初めて役に立つものですが、これがないとせっかく安全を確保できたのにその後に起きてくる問題で死んでしまうことにもなりかねません。

1.乾いた大きなタオル

 避難のタイミングでは全身がずぶ濡れになっていることがあると思います。その時に一番怖いのは水分蒸発で身体の体温を持っていかれてしまうこと。
 たかが濡れているだけと思われるかもしれませんが、長時間にわたって濡れた状態でいると、身体の体温が蒸発する水によって奪われて低体温症を引き起こすことになります。
 安全が確保されたなら、まずは乾いた大きなタオルで全身をしっかり拭くことが非常に大切です。

2.乾いた長袖長ズボンへの着替え

 身体を拭き終わったら、速やかに乾いた服に着替えることが必要です。
 プール也海などで身体が冷え切ったときのことを考えていただければわかりやすいと思いますが、まずは身体の水気を拭き取ること、そして乾いた服に着替えること。
 これだけで身体がずいぶんと温まったのではないでしょうか。
 大雨の中での避難でも一緒で、ずぶ濡れになったらまずは水気を拭き取ること.次に乾いた服に着替えることが必要です。
 手足の先まで暖かい血を循環させてやる必要がありますから、まずは長袖長ズボンで身体を温めることを意識してください。
 女性の場合にはスカートでもいいのですが、できるだけ暖かい空気の層を身体に近いところに作ってやった方がいいですので、スカートを着用するのであれば、その下に暖まるまででいいので長ズボンを着用するようにしてください。

3.携帯カイロ

 冷えている身体を外部からの熱で温めることは命を守るための生命線になります。
 携帯カイロは、身体を温めるだけでは無く、後述する飲料水を人肌程度に温めたり、非常食を暖めたりと、さまざまなものを暖めるのに使うことが可能です。
 小さくて身体等に貼り付けることができるようになっているものを数個、持っていくようにしてください。

3.飲料水

 必死になって避難をするときには気がつかないことが多いのですが、さまざまな理由から身体から水分が結構消費されていることが多いです。
 そのため飲み水を準備しておきましょう。スポーツドリンクは糖分が高く、避難直後に飲むのであればいいのですが落ち着いてくると余計な糖分がのどの渇きを産むことになってしまいます。また、紅茶やコーヒーは利尿作用が高いですので、飲むと逆に脱水症状を起こすこともありえます。
 そのままで飲め、飲むこと以外にもいろいろと使える飲料水を準備しておきましょう。政府の推奨は一人一日二リットルですが、ご自身の体力や水を飲む量などを考えて、持って移動できるくらいの量にしておいてください。

4.非常食

 水害で避難した場合、すぐに水が引くことはあまりなく、少なくても半日以上は避難を続ける必要があります。
 どうしてもお腹がすいてきますから、何らかのお腹に貯まる非常食を準備しておきましょう。
 アルファ米やシリアルバーだけでなく、パンやインスタント食品でも構いません。
 ただ、水でも戻せるものであることが大切です。二食分くらいあれば、とりあえずはひもじい思いをしなくてすむと思います。

5.携帯ラジオ

 水害発生時には状況が刻一刻と変化していきます。リアルタイムの情報は難しいかもしれませんが、耳だけで聞き取れて避難中でも動きを止めなくてすむ携帯ラジオはぜひ準備しておいてください。
 携帯テレビやスマートフォンではどうしても画面を確認するために動きを止める必要があるので、避難行動中は安全な場所以外で画面を確認するのは止めるようにしましょう。

6.エマージェンシーシート

 名称だけではなんのことかわからない人も多いと思いますが、銀色や金色の薄い素材でできていて身体に巻き付けることができる道具だと考えてくだされば結構です。
 これは断熱効果がありますので、首から下の身体を覆うことができれば、身体の熱を逃がさずに暖かく過ごせる優れものの道具です。
 本来は空気を貯め込めて床に敷いても上にかけても包まれても大丈夫な毛布をお勧めしたいのですが、濡れてしまうと役に立たないという致命的な問題があるため、軽くて保温力があるエマージェンシーシートを持っていくことをお勧めします。

7.新聞紙

 新聞紙は水気を取ったり暖を取ったりするのに非常に役立つアイテムです。
 また、床に敷けば簡単な断熱材としてもクッション材としても機能してくれます。
一日分から二日分あると、いろいろなことに使えて非常に便利です。

 他にもさまざまなアイテムがあれば避難した先での生活は非常に快適になっていきますが、とりあえず今書いたものがあれば、避難した先でも安全を確保することはできると思います。
 ここで書いたさまざまなアイテムは、水害に限らずさまざまな災害でもきっと役に立つことは間違いないです。
 非常用持ち出し袋の中身、人によっていろいろと異なるのは当然ですが、何に使うのかをしっかりと考えた上で準備しておきましょう。