技術の普及や周囲の理解もあってか、日常生活に支援が必要な人でも地域で暮らすことができるようになってきています。
生活の支援といってもさまざまですが、自分で自分が生活する場所を選ぶことができるようになったことは非常に喜ばしいことだと思っています。
ただ、生活の支援がいる人は、全てを自力でできる人たちに比べると、どうしても避難の判断や準備、行動が遅れがちになってしまうので、対策としては事前に決められることを全部決めて、いざというときにすべてが自動で動くようにしておく必要があると思います。
さて、今回のお題のバリアフリーですが、避難所におけるバリアフリーというと、どうしても車いすや足の不自由な人が移動しやすいようにスロープや傾斜を準備するというのが最初にイメージされることが多いようです。
でも、バリアフリーというのは、そもそもがバリア、つまり「障害」がフリーの状態、障害がない状態といった意味合いになりますので、一般的に思い浮かぶような物理的なものだけではないはずです。
一般的には、生活するときのバリアには4種類あるそうで、「物理的バリア」「制度的バリア」「文化情報面のバリア」「意識上のバリア」がそれにあたります。
災害時には普段のあれこれが先鋭化してしまいますので、どうしても生活に支援が必要な人たちには厳しい状態になりがちですから、事前にさまざまなケースを考えて想定し、備えておく必要があります。
先ほどのスロープ一つとってみても、健常者が考えるスロープと必要な人の考えるスロープでは出来上がりが違うかもしれません。
同じように、避難所に掲示される情報が難しく書かれていてわからない人がいるかもしれません。
状況がわからず、一人一つの配給品をたくさん取ってしまう人がいるかもしれません。
できあがった仮設トイレが使えない人や、仮設トイレがわからない人がいるかもしれません。
そこで生活する人たちがお互いの家庭の文化が可能な限りぶつからず、必要最小限のストレスで済むような避難所にするためには、開設してからさまざまな人の意見を吸い上げる仕組みを作ることも大切ですが、事前にバリアを持っている人たちに参加してもらって実際の避難や避難所の設営や運営で気づいた点を教えてもらい、改善を続けていくしかありません。
バリアはストレスに直結しますし、へたをするとバリアを感じる人の生死にも影響してきます。
その地域に住む人たちがどのようなバリアを持っていて、どのように支援すればとりあえずの生活が確保できるのか。
避難所のバリアフリーはそういうことをしっかりと考えることが大切です。
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垂直避難で気を付けること
あちこちで大雨が降っていますが、あなたのお住いの地域ではどのような状態でしょうか。
ここのところの雨の降り方は数時間で河川氾濫や内水越水が起きるような強烈なものになっているため、行政の避難情報が間に合わない事態も起きているようです。
自分の命を自分で守るためには、自分で避難すべき基準を作り、確認しておく必要がありそうです。
ところで、こういった雨の降り方をすると、場合によっては安全な場所に逃げるための水平避難が間に合わない場合が想定されますので、いざというときに備えてご自宅の二回以上に避難する垂直避難も逃げる選択肢に入れておいたほうがよさそうです。
垂直避難では、基本的に二階以上に避難したら、水が引くまではそこで過ごすことが原則となります。地域によっては水防団などが救助に来てくれる可能性もありますが、基本は避難した場所から移動ができません。
そのため、そこで過ごすために必要なあれこれをあらかじめ備え付けておくようにしてください。
水、携帯トイレ(もしくは簡易トイレ)、食料、着替え、布団、ポータブル電源、テレビやラジオなどの情報が確認できるもの、そして暇つぶしのできるものなどを用意しておくといいと思います。
ただし、垂直避難できるのはその地域の水没する水の高さが1階の高さ以内に収まることが前提となりますので、二階以上が水没するようなハザードマップが出ている場合には、危険だと思ったらすぐに域外へ避難することです。
一番いいのは安全な場所にいますぐに引っ越しをすることですが、それができない人は、雨には十分に警戒するようにしましょう。
最近は精度の高い雨雲レーダーの情報(リンク先は日本気象協会)や気象庁のキキクルなどもありますので、自分できちんと情報を集めてどうするかの判断をするようにしてください。
そして、自分で判断が難しい場合には、そういったことが得意な人に注意を促してもらうようにしておくといいでしょう。
いずれにしても、垂直避難は決して安全な避難ではありません。
もし垂直避難するのなら、避難後に困らないような準備を、二階以上に備えておいてくださいね。
テレビとラジオと防災無線
テレビやラジオである地域の災害情報を提供したとしても、その地域でそれを見てすぐに避難やその他の行動を起こす人はどれくらいいるでしょうか。
また、同じ情報が防災無線で流れてきたとしたら、それを聞いた人はどんな行動をするでしょうか。
テレビやラジオなど、いわゆるマスメディアによる報道というのは、映像で見ても音声で聞いても、どこか他人事な感じがしてしまうようです。
これは普段から取り扱っている情報が日本や世界ですので、災害の情報も割と見慣れている日常の光景だからなのかもしれません。
では、防災無線で同じ内容が流れるとどうなるかといえば、それを聞いたら、自分がどのように行動するのかについて考え出すと思います。
普段は災害情報が流れないところから流れてくる身近な情報だと考えるのです。
最近では経費削減と称して防災無線を廃止するような行政の動きもあるようですが、もし廃止した場合、ある程度はメールやマスメディアを聞き流してしまう人達が出ることを想定しておくべきです。
防災無線は、あるだけでは無駄と言われることも多く、行政からのお知らせなどを流していることも多いのですが、本来は非常事態を告げるものですから、日常的にさまざまな情報を流しているとこれまた聞き逃されてしまう可能性が出てきます。
非常事態を告げるものは、普段は役に立っていないと思われるくらいでちょうど良いのかもしれません。
テレビやラジオは自分の日常とは別世界の話、そんな風なイメージがある以上は、防災無線はまだまだ活躍してもらわないといけないのではないかという気がします。
公衆電話を確認しておこう
とある携帯通信会社の回線が長時間ダウンしてしまっています。現在では概ね復旧したようですが、未だに繋がらないところもあるようで、該当するユーザーさんはかなり大変だと思います。
普段何気なく使っている携帯電話ですが、データ通信も含めた通信環境が全てダウンしてしまうと、思った以上に困ってしまうことが分かった方も多いのではないでしょうか。
以前は家庭に普通に置かれていた固定電話も、そもそも引いていない家が結構ありますし、家族割りなどもありますから、家族全部が同じ携帯通信会社という方も多いでしょう。危機管理上は固定電話はあった方がいいと思っていますし、家族でも事情がない限りは携帯通信会社は別である方がいいとは思います。
とはいえ、それは普段の生活とを天秤にかけての選択肢になりますので、普段からかかる経費をなるべく安くしたいと考えると、現在の状態になってしまうのでしょう。
ただ、今回のようなケースだと、家から緊急時に電話をする手段がなくなってしまっているわけで、何らかの代替え手段を考えておかないといけません。
そこでお尋ねしますが、あなたは自分の近くにある公衆電話の位置を2台以上思い出すことができますか。
携帯電話が使えないときには、公衆電話を使うしかありません。
一時期公衆電話不要論なども出ましたが、現時点ではまだ数百メートルに一台程度は残っていますので、いざというときに備えて場所を把握しておきましょう。
また、その公衆電話で使える支払い方法もきちんと確認しておくことです。
公衆電話は、基本的には10円玉は必ず使えるようになっているはずですので、公衆電話の位置の把握と同時にお財布には数十円が常にあるようにしてください。
それと、当たり前のことですが、公衆電話のかけ方をきちんとマスターしておいてください。
公衆電話も止まっているかもしれませんが、それでも携帯電話よりも使えなくなる確率は低いと思いますので、散歩のついでに確認しておいてくださいね。
災害がないと言えない件について
熊本地震以前、熊本県は地震のない安全な県として企業誘致を積極的に行っていました。でも、熊本地震以後、大雨や河川氾濫といった大きな災害が立て続けに起きていて、安全な県という言い方はもはやできないと思います。
もっとも、日本列島はどこも条件は同じで、全く災害の心配をしなくていい場所はないと考えています。
ただ、リスクをどう評価するかによって考え方が変わるため、どのような災害に備えればリスクが少ないのかについてはしっかりと検討をしておく必要があります。
熊本県が地震のない安全な県と言っていたのには理由があって、記録に残る範囲では、過去に大きな地震が起きた形跡がないのです。ただ、これはあくまでも人間の記録であって、断層の調査などでは周辺に活断層があるという結果は出ていましたから、そういう面で見たら、きっとリスクについて検討すべきものだと思ったのかなと思います。
太平洋戦争後の数十年は、日本はある意味で異常と言えるくらい大きな災害が起きませんでした。
そして、その災害を経験しなかった世代からみると、災害が起きないことが当たり前なので、災害に対する備えがおろそかになってきたのだろうなと思います。
地域の伝承を調べていくと、ことの大小はありますが、かなりの高確率で何らかの災害の記録が残っています。
あなたが住んでいる場所も、調べれば何らかの災害の危険性は必ずあると思いますが、それに対する備えはきちんとしていますか。
災害は起きるものです。どのような災害がリスクが高くて優先的に対応する必要があるのかをしっかりと確認し、災害が起きるという前提で準備をしておいてくださいね。
【終了しました】初めての防災キャンプを開催します【日程変更有】
2022年7月23日から24日にかけて、益田市の北仙道公民館で「はじめての防災キャンプ」を開催することになりました。
避難所に来てから、開設、食事やトイレ、洗濯やお片付けなどを、途中遊びながら実際に体験してみてもらいます。
「はじめての防災キャンプ」とありますとおり、当研究所も今回初めて実施する企画、どうなるかは参加者とスタッフの皆様によります。
夏休み、子どもさんの一つの体験として、興味があればご参加下さい。
なお、定員になり次第締め切らせていただきますので、それにつきましてはご了承下さい。
また、詳細については、問い合わせフォームからお問い合わせ下さい。
(2022年7月15日追記)新型コロナウイルス感染症蔓延のため、日程が変更になりました。新しい日程は8月27日~28日になりますのでご注意ください。
被災経験を伝承する
日本に住んでいると、殆どの人は人生で1回くらいは大きな災害に出くわすものですが、その災害の経験がうまく伝承されていないせいで、次に起こった大きな災害では同じような悲劇が繰り返されています。
長生きしている人でも、その寿命はせいぜい100年程度。
例えば、活断層の定義である「数十万年以内に動いた場所」から考えると、まばたきしているくらいの期間でしかありません。
年齢を重ねるにつれて、自分の経験から推し量るようになるのが人間ですが、過去に何も無かったからといって、これからも何も起きないという保障はどこにもないのです。
ただ、過去に起きたことで何が起こり、結果としてどうなったのかを伝えていくことで、未来で起こりうるさまざまな被害や悲劇を小さくすることは可能です。
技術が進み、さまざまな災害対策が進んだとしても、最終的に人は自然には勝てませんから、自分や周囲の人の命を守るためには過去の経験をきちんと伝え、きちんと承継することが大切なのです。
一代くらいならこれもできますが、二代、三代となると伝わらなくなっていきます。
そのため、昔話や伝説にたとえて、話を聞いてくれる年齢のうちにしっかりと教え込むようになっていたのです。
あなたが体験した災害について、きちんと子や孫、周囲の若い人達に語り継いでいますか。そして、若い人達は年寄りに体験した災害の話を聞いていますか。
高度成長期に年寄りの話を馬鹿にする風潮があったせいで、昔の年寄りから今の年寄りへの伝承は途切れていることが殆どです。
でも、今の年寄りが経験したことは、若い人達に語り継ぐことができるはずです。
過去の災害体験は未来に向けて伝える義務があります。
どうかしっかりと若い人達に伝えてほしいと思います。そして、若い人達はその伝承を馬鹿にせずにしっかりと聞いて、自分の体験として受取り、次の世代に伝えていってほしいと思います。
ちょっとだけやってみる
防災関係では、さまざまな経験値が命に直結しますが、体験をしようと思うと、なかなかに難しいものです。
慌てていっぺんにあれこれやろうとしてもうまくいかないことが多いですし、わからないことや失敗ばかりが続くと、やっていて嫌になるものです。
災害対策は慌ててやってもいっぺんにあれこれできるようになるわけではありません。あくまでも日常生活の延長線上でちょっとだけ不便な条件を設定し、実際に体験してみることが大切です。
例えば、家族でお出かけするときにいつもは車で出かけるところを歩いてみるとか、お昼ごはんを外で作ってみるとか、ほんのちょっとだけ非日常を加えて、経験を重ねていけばいいのです。
ちょっとしたことでも、成功体験は次に繋がります。難しいことは必要なく、できることをできるようにやってみればいいのです。
この「ちょっとした」はやるだけ無駄という人もいます。きちんとした訓練でないと意味が無いという人もいます。
ただ、普段ならしないことを体験することで、やったことがなくてもできるという成功体験があれば、何も無いと絶望しなくてもすみます。
まずは体験してみること。自分の災害対策はそこから始まります。
キキクルを上手に使う
気象庁が提供しているキキクルというサイトをご存じですか。
「キキクル」は気象庁がウェブ上で公開している危険度分布を表すサイトのことで、雨による土砂災害や浸水害、洪水の災害の危険度を地図上で確認できるようになっています。
残念ながらスマートフォン用アプリは作られていませんので、検索エンジンで「キキクル 気象庁」と入力してもらって確認するしかありません。
できれば、平時にこのサイトを確認してもらい、スマートフォンのホーム画面にショートカットを作っておくといざというときに慌てなくて済むと思います。
このキキクル、提供されている情報は行政機関のものと同じなので、確認しておけば、行政機関よりも早く危険を読み取ることが可能になります。
また、その地域のハザードマップも表示できるようになっているので、組み合わせればどこが危険になっていて最悪どうなるのかが一目でわかります。
この情報が一つの判断基準として使えると思いますので、雨雲レーダーと併せて、上手に活用して下さい。
キキクル(気象庁のウェブサイトへ移動します)
避難訓練は失敗が大事
避難訓練を計画している人から見るととんでもない話かもしれませんが、避難訓練は何か失敗が見つかる方がいいと、筆者は思っています。
避難訓練が完璧にシナリオ通りに終わったとすれば、イベントとしては成功ですが、訓練としては失敗だと考えて下さい。
訓練でさまざまな想定をすると、実際に本当にいろいろなトラブルが発生します。
そのトラブルは、当然本番でも起こり得ることなので、対策を考えて手を打っておくことで、本番ではトラブルをできるだけ減らすことができるのです。
「訓練はうそをつかない」という言葉がありますが、さまざまな想定を経験しておくことは、本番のときに必ず役に立ちます。
体験していないこと、経験していないことはどうしても行動や判断に時間がかかってしまいますから、状況によっては致命的なミスが発生することもあり得ます。
イベントとしての避難訓練はさまざまなところで行われていますが、それでもやらないよりはずっとマシですので、やる意味自体はあると思います。
ただ、本番に備えた訓練ならば、いくら対策を準備していてもそのとおりになるとは限らないような想定を用意し、「意地悪だ」といわれるくらいひどい結果のものをやってみてほしいと思います。
そこから得られる教訓は、絶対に無駄にはなりません。
避難訓練はあくまでも訓練ですから、本番と同じような条件で行動し、問題点を洗い出すものだと思ってやってみてほしいと思います。