地震の起きる確率

 大地震の起きる確率、ということであちこちで数字が出されています。
 南海トラフ地震の場合、今後30年以内に大地震の発生する確率は70~80%だそうで、まず近いうちに起きると考えて間違いなさそうです。
 これは南海・東南海地震がほぼ似たような周期で発生しているために予測がしやすいという前提があります。
では、確率が低ければ安心できるのかというと、実はそうでもありません。
 2016年に熊本地震が発生しましたが、地震が発生するまで発生する確率は0~0.9%というもので、ほとんど起きないのではないかと考えた人も多かったようです。
 結果はというと、2016年4月14日にM6.5、その28時間後にM7.3の地震が発生し、大きな被害を受けました。
 実はこの地震活動の評価というのは、定期的に発生することがわかっている海溝型地震を別にすると、かなり適当だと考えていいと思います。
 南海トラフ地震のように、起きると言われてから10年以上経ちますが、まだ起きていないこともあれば、確率は低くても大地震に見舞われることもあります。
では、この数字をどうみたらいいのか。
 答えは簡単で、0%でない場合には地震は起きると考えておけばいいのです。
 起きる時期がわからないだけで、地震は起きる。そう考えたほうが精神衛生上いいと思います。
 日本に住んでいる場合、ほぼ100%の人が一生の間に一回は大きな地震に出くわすと考えてほぼ間違いないです。
 震源近くにいるのか、それともマスメディアで光景を見ることになるのかはわかりませんが、地震は起きるから備えておく。
 確率が0%以外の場所にお住いのかたは、それくらいの気持ちでいたほうがいいと思います。

長期評価結果一覧(政府 地震調査研究推進本部のウェブサイトへ移動します)

あなたは地図が読めますか

普段住んでいるところでも案外とわからないところがある。写真は防災マップを作る一シーン。

非常用持ち出し袋のアイテム類の一覧を見ると、多くのものに「地図」が入っています。
田舎に住んでいる人にはピンとこないアイテムなのですが、普段公共交通機関で移動している人の場合には、いざ歩いてときに道がわからないという大問題があるため、地図が必要だと考えられているのです。
ただ、この地図にもさまざまなものがあり、それぞれに特徴があります。
どのような地図を準備してもいいのですが、その地図がきちんと読めないと何の役にも立ちませんので、せっかく地図を準備するのであれば、その地図に書かれているものがどのようなものを意味するのかをきちんと理解しておきましょう。
例えば、自分のいる現在位置がわからないとそもそも地図が使えません。
また、場所がわかっていたとしても、自分がどの方向に向けて移動すればいいのかが理解できていなければ、全く違った方向に移動してしまうことになります。
最近都会地では「避難用マップ」というような名称で徒歩避難者向けの地図も販売されているようですが、地図を用意するのであれば、方位磁針もセットで準備したほうがいいと考えます。
例えば、日本で作られて日本で使う地図の場合には、基本的に上側が北になっているはずです。そうでない場合には地図面のどこかに方位が記載されていますので、それを確認してください。
では、方位磁針がない状態で自分がいま見ている方向を当ててみてください。
次に、30分ほどその地図で歩いてみて、今見ている方向が東西南北のどの方向なのか、もう一度当ててみてください。
結構な確率で方向がわからなくなっていると思います。
平時にはさまざまな目標や目印があって移動もわかりやすいですが、災害時にはそれらが燃えたり崩れたりしてわからなくなるかもしれません。
地図を準備するなら、方位磁針も併せて準備し、そのうえでそれを読み取ることが可能な程度には見慣れておく必要があります。
現在はスマホやカーナビが充実しているため、地図を見ることはあまりないと思います。
地図は普段から見慣れていないと内容を読み取ることは難しいですので、特に長距離を公共交通機関で通勤・通学している人は機会を作って地図と方位磁針に慣れるようにしておいてください。

逃げるべきか留まるべきか

当研究所のある益田市市街地のハザードマップ。あなたのおうちは避難が必要ですか?

 避難という言葉を調べてみると、「災難を避けてその場から立ち退くこと」といった意味になるそうです。
 防災対策でよく使われるこの避難という言葉ですが、その中身を見ると「垂直避難」「水平避難」「その場で待機」という大きく3つに分けられています。
 「水平避難」は言葉の意味のとおり、災害が発生するであろう場所から災害が起きない場所への水平移動のことを指します。
 「その場で待機」は、そもそも避難の必要がない場合に使われるもので、自宅待機ともいわれます。
 そして、「垂直避難」は、「その場にいるが、なるべく高いところへ移動する」ということで使われています。


 確かにその場から移動はしているのですが、危険地帯から移動しているわけではないので、避難に該当するかどうかは正直疑問ですが、それでも例えば1階にいたら間違いなく溺れてしまうような場所の場合には、2階以上の場所へ逃げるのは一つの考え方なのかなと思います。
 ただ、垂直避難には限界があります。都会の何十階建ての建物ならともかく、田舎の一戸建てだとせいぜいあっても3階くらいまで。そんな場所で垂直避難することは、果たして正しいのだろうかとも考えてしまいます。
 自分が垂直避難でもなんとかなりそうかどうかは、お住いの場所のハザードマップを確認して判断するしかありません。ハザードマップを100%信用することは危険ですが、それでも一つの判断基準にはなります。
 さまざまな条件でそこから遠方へ逃げられない人や、逃げ損ねた場合には、上層階に逃げることで命をつなげるかもしれません。
 基本は水平避難ですが、もしも垂直避難になった場合に備えて、どのような条件だと危険なのかについて確認しておくことをお勧めします。

【活動報告】ワークショップ「防災マップを作ろう!」を開催しました。

横断歩道の見通しが悪いと、渡ったあとで危険認定。

 去る10月15日に益田市の高津上市地区で小学生による地域安全点検として防災マップ作りを行いました。
 参加者が全部で5名と少し寂しかったですが、そのぶんしっかりと地域の安全点検をして回ることができました。
 普段通学路として使っている道も、安全点検してみるとかなり危険だということに気づいたようで、どうすればいざというときの安全が確保できるかについて参加者でいろいろと話をしていました。

地域のお年寄りとちょっと立ち話。しっかりやってと激励される。

 また、防災や防犯といった普段あまり気にしていないものの見方がわかると、普段の生活でもかなり見方が変わってくるというご意見もいただきました。
 今回はこれで終了しましたが、今後各地で防災マップを作る機会が増えるといいなと思っています。
 子どもたちと一緒に地域の安全点検をしてみませんか?
 興味のある方で講師やお手伝いが必要であれば、ぜひお声がけください。
 できる限りのお手伝いをしたいと思っています。
 今回参加してくれた子供たち、そしてお手伝いいただきました皆様に心から感謝いたします。

どこに避難しているのかを知る

避難先や避難経路を知るには、防災マップを作ってみるのも一つの方法。

 あなたは津波などで避難が必要な状況になったとき、自分がどこへ避難すればいいのかを知っていますか。
 また、ご家族がどこへ避難するのかを知っていますか。
 学校や施設などにいるとき、そこからどこへ避難しているのかについては、案外と知られていないことが多いですので、どこに避難するのかをしっかりと確認しておきましょう。
 できれば避難経路もあわせて確認しておくといいと思います。
 どのような判断でどこへどんな経路で避難しているのかを知っていると、いざというときにもある程度どこにいるのかが予測がつきます。
 そして、探しに行ったり迎えに行ったりするときにも迷わなくて済みます。
 また、自分の子供が遊んでいるときに避難すべき状況が起きた時にはどこへ避難すれば安全なのかを、子供と一緒に現地で確認しておくと安心です。
 誰がどこにいてどうなっているのかがわからないことは、人の心に不安を招きます。
 その結果、その不安を解消するために助けに出かけて遭難するというケースは過去の災害でもたくさん起きています。
 いざというときに誰はどこに避難しているのかを事前に知っていることで、そういった不安を排除することができますから、お互いにどのような行動をするのかについて、しっかりと話をしておくようにしてください。

【終了しました】小学生向けワークショップ「防災マップを作ろう!」を開催します

10月15日の13時30分から高津柿本神社駐車場を集合場所にワークショップ「防災マップを作ろう!」を開催します。

地域の安全点検をしながら防災マップを作っていきます。最初に点検のポイントを説明した後、実際に地域を回って点検し、最後にどうやったらこの地域で安全に過ごすことができるのかを考えてみます。

対象は小学生ですが、それ以外の方のご参加も歓迎します。

小学生以下のお子様が参加される場合には、保護者の方も一緒にご参加ください。

興味のあるかたのご応募をお待ちしています。

台風には気を付けて

 台風14号はどうやら本州縦断コースをたどる気配です。
 2022年9月18日14時現在のこの台風の勢力は「大型で非常に強い」となっていますが、この台風の大きさの表現がどのようなものなのかは、以下のリンクからご確認ください。

台風の表現を知ろう」(当研究所のウェブサイトへ移動します)


 また、台風の進路予想図には見方があり、これを間違えると本来とは違う予測の見方になってしまいます。
 台風の進路予想図の見方は、以下のリンクからご確認ください。

台風の進路予想図の見方」(当研究所の該当ページに移動します)
 九州から中国地方に向けて移動していくこの台風の影響が出る前に、周囲のお片付けや、場合によっては日のあるうちの避難など、適切に命を守るための行動をとってほしいなと思います。

おうちの水害対策

土のうをブルーシートで包んで即席の堤防を作る。土のうだけであれば土砂やごみの流入を防げるし、ブルーシートを敷くと水そのものの流入を防ぐこともできる。

 台風、そして秋の長雨の季節がやってきたみたいですが、あなたの雨と風の対策は進んでいますか。
 もしもあなたが何らかの条件で水があふれてしまったときに浸かってしまう地域にお住いの場合には、家の完全な水没を防ぐため、土のうや水のうの準備をしておくことをお勧めします。
 土のうは、土を入れた袋を積み上げて水の侵入を防ぐもので、ある程度までは水の流入と、土砂やごみが流入してくるのを防ぐ効果があります。
 土のうは重いので、小さいものをたくさん積み重ねるか、あるいはプランターなどを使って重しを作り、ブルーシートを巻き込むことで水を防ぐ効果を期待できます。
 もちろん土のうの高さ以上に水が出てしまったら役には立ちませんが、しっかりとやっておくと水害後の片づけが格段に楽になります。

玄関に積んでいく水のう。直接水に当たると流されてしまうので、玄関の内側など、建物内部の水の流入を防ぐのにつかう。
凹凸に上手にはまり込むので、屋内への水の流入防止には役立つ。ただし入ってくる水の勢いが強くなってくると役に立たなくなる。

 また、土のうと同じようなものに水のうがあります。
 こちらは二重にしたビニール袋を玄関などの扉の内側に積んでいくもので、袋の中の水が玄関の空間に沿って塞いでくれるので、かなりの効果が期待できます。
 ただ、こちらもかなり重いので、事前の準備をしっかりとしておく必要があります。
 吸水ポリマーを使った土のうもあるのですが、こちらは水を吸うまでは簡単に流されてしまうので、水が流れてきてから水に投げ込んでもあまり役には立ちません。
 土のうと水のうのどれをするにしても、作業完了から逆算して、どの段階にになったら作業を始めるのかというしっかりとした判断を作っておく必要となります。
 また、完全に水没するような場所の場合、開き直って扉や窓を全部外してしまうのも一つの方法です。
 抵抗がなければ建物が壊れることもないので、かつては水害多発地帯ではふすまや障子を外し、畳や床板を外して水害に備えたという話を聞いたことがあります。
 そうそう、基礎にある通風孔もきちんと塞いでおきましょう。

床下の換気口。ここを塞がないと床下に簡単に汚水が入り込んでしまうので注意が必要。

 せっかく土のうや水のうでおうちへの水の流入を防いでも、通風孔がそのままだとそこから汚水が床下に流れ込んできます。
 そうならないためにも、基礎の通風孔の周りもしっかりとした水対策を取るようにしてください。

土地を買う時の災害リスクからみた注意点

 土地の売買を行う際、売り主の重要説明事項として令和2年から洪水ハザードマップで売る土地の確認をさせることが追加されました。
 また、それ以前の土地でも、被災した時に売り主の説明がされなかったことが問われる裁判が増えてきているようです。
 買う側もしっかり調べたほうがいいのではないかと思うのですが、高い買い物なのにリスク分析がされていないという妙な習慣はなかなか治らないようです。
 このうちで注意しておいてほしいのが、該当地が宅地化される前がなんだったのかということです。
 田畑の場合には、地盤調査と水の流れについての調査はしておいてください。
 最近では元田畑の土地の地盤調査は割と当たり前になってきているみたいですが、その田畑にどうやって水を引っ張ってきていたのかということを確認することはまだまだないみたいです。
 田畑には大きく分けると開拓して田畑にした場所と、田畑にせざるを得なかった場所とが存在します。
 どちらにしても、水がどこから来ているのか、そして高さはどうなのかということをしっかりと確認してください。
 江戸時代に遊水地として整備された部分や、水が集まってくるために田畑しか使い道がなかった場所など、過去の地図を見ると案外と簡単にわかることも多いです。
水に浸かるのは何も越水だけではありません。流水でも家に水が入ってくることはあるのです。
 そして、水は昔の記憶を持っています。妙な言い方ですが、河川改修で川筋が変わっているような川でも、溢れた後は以前の川の跡を流れていくことがほとんどなのです。
せっかく高い買い物をするのですから、その土地の成り立ちをしっかりと確認したうえで、土地を選ぶことをお勧めします。

台風に対する事前予測をしておこう

 台風のシーズンになりましたが、あなたのおうちの台風対策は万全ですか。
 台風の場合、ある程度事前に針路が予測できるので、早めの対応を取ることで、少なくともあなたの命を守ることは可能です。

台風の進路予想はかなり早い段階から出ている。進路予想図を見ることが大切。

 台風で怖いのは風と水。強風の中、水があふれてきたからと言って避難することはできません。
 少なくとも、周囲と比べて自分の家の高さはどうなのか、それくらいは地図や家の周辺をみるとわかると思いますので、周りよりも低い場所や、全体から見て低地の場合には、台風が来る前に安全な場所へ移動しておくことをお勧めします。
 また、背後に山がある場合には、その山の傾きや土質、どのような木が生えているのか、普段の水の出具合はどんな感じかなどを調べておきましょう。
 少なくともハザードマップなどの防災マップでイエローゾーンやレッドゾーンに指定されている場所にお住いの方は、これも早めの避難が大切です。
 避難先ですが、台風の影響のない場所に逃げるのが一番いいのですが、かなりの長距離移動になることが多いので現実的ではない場合もあります。
 高台でなるべく風の当たらない場所というちょっと矛盾した表現になりますが、そういった場所を普段から探して見つけておくか、もしくは安全な場所に立っているホテルなどの宿泊施設に宿泊するのもいいと思います。
 台風では、どうしても避難所の開設が遅れがちです。避難所が開設される頃には台風の真っただ中といった場合も想定されますので、なるべく早く安全な場所への移動を自己判断で行ってください。
 また、家は安全だという方は、窓ガラスが割れないような補強や、屋根の点検、雨どいや排水路の掃除などをしっかりとしておきましょう。

いろいろといわれるが飛散防止にはガムテープは有効。張る時は屋内側に貼ること。

 台風は事前に予測できる災害です。報道機関や行政機関が発表する情報を丹念に集めて、どのタイミングで何をしておくことが適切なのかを、しっかりと考えておきましょう。