土のうと水のう

 水の浸水害を防ぐ方法の一つとして、土のうまたは水のうを積むというのがあります。玄関などの簡易な浸水防止手段として使えたり、堤を作ることで害の少ない方向へ水の流れを誘導することに使ったりします。
 ただ、どちらも事前に準備していないと使えないものですから、あらかじめその場所で浸水害が発生するのかどうなのかということを知っておく必要があります。
 周囲に比べて低地であったり、雨の際には水たまりや水の流れができやすい場所であれば、土のうや水のうは準備しておいた方がいいと思います。
 最近では吸水素材を使った土のうなどもありますから、ご自身の都合や保管場所にあわせて選択しておけばいいと思いますが、それぞれの利点と欠点を考えてみましたので参考にしてみてください。

1.土のう

 排水性のある袋に土砂を入れて積み重ねることで水を防ぎます。
 主に河川の決壊対策や土砂崩れを防ぐためなど、大規模な対策に使われますが、それ以外にもさまざまな場面で使われています。
 簡単に作れて設置も楽ですが、中に詰める土砂をあらかじめ準備しておかないといけないことと、詰め方や積み方にコツがあって人手が必要というところが問題点です。

2.水のう

 ポリ袋を二重にして中に水を詰め、それを置くことで家の玄関や排水溝などからの浸水を防ぎます。
 土のうに比べるとサイズが小さくなるため、家庭や事業所など小規模な浸水対策に使います。
 ポリ袋のため比較的形状が変わりやすく、複数の水のうを積み重ねて抑えることで、土のうに比べると浸水量を少なくすることが期待できます。
 また、水を詰めて置くだけなので、土のうに比べると技術が必要とされないところもメリットです。
 水は重いので大きな袋で作ると破れてしまうため、水のう用のポリ袋が大量にいることと、土のうに比べて作るのに時間がかかることが問題点です。

3.吸水土のう

 吸水ポリマーを使うことで、普段は保存場所を取らず必要な時に水を含ませることでしっかりとした土のうを作る災害対策用の土のうです。
土のうに近い性格を持っていますが、吸水させるだけで形ができて誰でも取り扱えるという点で土のうよりも優れています。
 よく誤解されていますが、浸水時に浸水箇所にこの吸水土のうを配置しても吸水している間に流れてしまいますので、浸水箇所のところで吸水が終わるまでしっかり押さえておくか、あらかじめ吸水したものを使う必要があります。
 土のうや水のうに比べて割高なこと、そして使い終わった後の吸水土のうの処分が問題点です。

 他にもゴムチューブを使った簡易堰(「ゴム引布製起伏堰」と呼ばれるそうです。)などもありますが、個人では殆ど使うことがないと思いますのでここでは触れません。興味がある方は「ラバーダム」や「タイガーダム」などで検索してみてください。

 最後に、土のうにしても水のうにしても非常に重たいので、運ぶときには腕や腰を怪我しないようにしてください。
 また、浸水が始まってから設置しようとしても遅いですから、浸水する可能性があると考えたら、天気が落ち着いているうちに設営しておくことをお勧めします。

災害になって慌てても遅い

 台風や大雨による越水、氾濫などによって自宅などが浸水したときになってから、慌てて市町村や消防、警察などの行政機関に救援を求める人が相変わらず多いです。
 特に「水に浸かるはずがない」とか「うちは絶対大丈夫」といった根拠に基づかない楽観論で構えていた人ほど慌てるようです。
 そういった災害時には、行政機関は被災地域での被害をできる限り小さくすべく頑張っているわけですが、その中で避難遅れによる「助けてくれ」の連絡はあらゆる仕事の邪魔になります。
 自分の住んでいる場所は自分で選択しているわけですから、本来はその場で発生することが予測される危険性は知っておかないといけないですし、いざというときの対応もきちんと考えておかないといけません。
 助けてもらおうと電話する人は、被災者が自分だけと思っているのですが、そういった人達が大量に発生することが殆どですので、救助の手は非常に遅くなると考えてください。
 身の安全は自分で確保しておく必要があるのです。
 そのためのハザードマップであり、避難訓練や防災研修会だったりするのです。
 災害時に慌てて避難先を行政機関に電話して聞くような愚かなことはしないでください。
 もしも避難が必要な場所に住んでいるのであれば自分の避難先や避難方法、避難開始判断の鍵はきちんとわかるようにしておいて、災害が発生してから慌てることがないようにしておきたいですね。

台風について考える

 例年ほどのペースではないようですが、台風14号が週末に日本にやってくるような気配です。あなたの備えは大丈夫ですか。
 以前に比べると台風の動きが予測しづらくなっているのですが、今回は台風についての基礎知識をおさらいしてみたいと思います。

1.台風ってなんだ?

 台風とは東経180度より西側の北西太平洋、または南シナ海で発生した低気圧の最大風速が17m/s以上のものを指します。
 高い海水温で発生する上昇気流によってできたたくさんの積乱雲が渦状になって中心部の気圧が下がってくると熱帯低気圧になるのですが、これがそのまま海面からの水蒸気をエネルギーとして勢力が強くなっていくと台風になります。
 移動していく際に段々とエネルギーを失って勢力を落としていくのですが、海水温が高いと得られるエネルギーが大きいため、勢力を落とさないまま日本にやってくることになります。

2.台風の強さ

 台風は巨大な渦巻きになっていて上空から見ると反時計回りに回転しています。これは地球の自転とコリオリの力によるもので、北半球では反時計回り、南半球では時計回りに回転が作られます。
 台風の場合は、進行方向に向かって右側は台風の風と台風を移動させる風の相乗効果で左側よりも風が強くなります。
 また、暖かく湿った空気を吸い上げるのも右側になりますので、台風の雨雲から降る雨についても右側が強いことになります。
 上空から見て左側は、台風の回転と進路が逆になるため風が弱まり、北からの冷たい空気を吸い上げるため雨雲も発達しにくいため、右半分と左半分では右半分の法が勢力が強いということになります。


 ただ、左側は安全というわけではありませんので、台風の進路に入っている場合には準備や警戒が必要であることには代わりありません。
 台風の大きさや強さは以下の表のとおりになります。

3.台風の動き

 台風は台風自身の風と偏西風、貿易風などの風によってその進路を変えていきます。
 北緯30度くらいまでは貿易風の影響で北西に移動していきますが、北緯30度より北にくると、今度は偏西風の影響を受けて北東に進路を変えます。
 今年は偏西風が朝鮮半島の上あたりにいるため、それに流されて台風14号が大陸から日本に向かって移動して来る予想が出されています。
 台風が迷走するときには、防衛風や偏西風の吹き方がいつもの年と異なっていたり弱かったりするために発生する現象です。

4.台風対策

 台風対策は風対策と雨対策です。
 瓦や雨樋、家の周辺のものが飛ばないように収納したり固定したりすることと、雨台風の可能性がある場合には早めに安全な場所へ避難すること。
 この二つに気をつけることでかなりの被害を抑えることができると思います。

非常用持ち出し袋にはマスクを一箱入れておく

呼吸器はマスク、目はゴーグルで守るようにしよう。

 非常用持ち出し袋には、個包装された使い捨てマスクを一箱入れておくことをお勧めします。
 新型コロナウイルス感染症を含む感染症対策と言うこともありますが、一番の理由は災害後に呼吸器官系のトラブルから身を守るためです。
 というのも、地震や洪水と言った災害の後では細かい粉塵が舞っていることが非常に多いです。
 この粉塵を吸い込んでしまうと、咳や鼻水、ぜんそく、肺炎といった呼吸器系のトラブルが発生する可能性があります。
 特に子どもは早めに着用させる必要があります。
 地震で舞い上がる粉塵は50cm~1mくらいとされていますので、例えば地震後の避難時には子どもはマスクを着用しておかないと粉塵を吸い込んでしまいます。
 子どもは大人に比べると呼吸器の防御機能が弱いので、呼吸器系のトラブルが非常に起きやすくなります。
 マスクが無い場合には、ハンカチやタオルを使って口や鼻を守るようにしてください。また、粉塵を生活空間に持ち込まないということから、外から帰ってきたら使っていたマスクは密閉できる袋に入れて処分するようにします。
 呼吸器系からくる健康被害を防ぐためにも、マスクは忘れないようにしたいですね。

ビニール袋と新聞紙

 非常用持ち出し袋や避難所で備えておくといいものにビニール袋と新聞紙があります。どちらもありふれたものではありますが、使い方を知っていると非常に使えるアイテムです。


 例えば、どちらも紐で吊せば間仕切り、袋として使えば物入れやゴミ入れに使うことができますし、他にもビニール袋は生活水の運搬や洗濯、新聞紙は汚物処理や燃料としても有能です。
組み合わせると枕や布団、座布団や防寒具と言ったアイテムを作ることができますし、緊急時の簡易トイレも作れます。
 単価も安く、場所も取らないので備蓄もしやすいのが特徴のこの二つのアイテム。
 ビニール袋の有料化や新聞を取らないおうちが増えているのあまり手元にないことも多くなってはきましたが、準備しておくといろいろと使えて便利ですよ。

まずは身の安全の確保から

机の下でダンゴムシ
机の下でダンゴムシはお約束です

 地震が起きたとき、その後どんな行動をしていたのかを体験者に尋ねると、割と高確率で帰ってくる返事が「その場で何が起きたのかを確認した」というものです。
 慣れっこになっている地域だと、「ほうきとちりとりで片付けを始めた」や「家の点検をした」といった答えが返ってくることもありますが、本当はまず自分の安全確保をすることが最初の行動になっていないと困るのではないかと思います。
 もちろん、何が起きたのか分からないから状況を確認して行動を決定するというのは非常に大切なことです。また、復旧対応をすることも悪いことだとは思いません。
 ただ、情報収集もお片付けも点検も、身の安全を確保ができていないと非常に危険です。普段から意識していて、自分の居る場所が安全だと分かっている場合には情報収集はしても問題ありませんが、安全かどうか分からない場合には、一度確実に安全な場所まで待避して状況を調べる習慣を作っておきましょう。
 以前、緊急地震速報がその場にいた人の携帯電話から一斉に流れ出し、筆者も含めた全員が携帯電話を確認しているうちに揺れ始めたことがありました。
 緊急地震速報の音は覚えておいて、もしそれが鳴ったら取りあえず安全確保するように習慣づけておかないと、緊急地震速報があまり役に立たないなと自分で反省したことを覚えています。
 普段意識していない身の安全かもしれませんが、もし地震が起きたらどう行動するのかを、その場所に応じて考えて、いざというときに行動できるようにしたいものですね。

【お知らせ】防災研修会を開催します【終了しました】

 最近よく耳にするようになった「災害」という言葉ですが、あなたはこの言葉でどんな状況を想像しますか?
 今回は「災害」という言葉に注目し、災害と、その災害のとき、どのようにしたらあなたの命が守れるのかについて一緒に考えていきたいと思っています。
 災害について漠然としたイメージしか無い方や、災害対策と聞いて何をしたらいいのか分からない方、何かヒントがつかめるかもしれません。
 興味のある方のご参加をお待ちしております。

開催日時:2021年 9月18日(土)18:30~20:30
開催場所:益田市市民センター第103会議室(益田市元町)
募集人員:10名
募集方法:事前申し込み。定員になり次第締め切りとします。

参加費:会員 300円(資料代)
    一般 500円(会場使用料、資料代)

開催内容:1.災害とはなんだろう?
     2.その災害で身を守る方法
     3.助けられる人から助ける人へ
講師:石西防災研究所・伊藤(防災士)

消火器を備えていますか

 火災の時にとても大切だと言われているのが初期消火です。
 どんな火でも最初は小さいですから、他に燃え移る前に消せれば火事になることを防ぐことができます。
 消火方法はいろいろと言われていますが、誰にでもできて確実に消そうとすると消火器が一番確実です。
 後片付けの問題はありますが、火事でさまざまなものを失うことを考えれば許容範囲だと思いますが、あなたの家には消火器が備えてありますか。
 また、備えている消火器の使用期限は大丈夫ですか。
 使用期限を過ぎたり、外観が痛んでいるものは速やかに交換をしてください。
 最近では消火器を取り扱っているホームセンターなどでも回収してくれるみたいですから、更新するときに相談してみてもいいと思います。
 そして、使い方も覚えておきましょう。
 慣れると簡単なのですが、間違って消火剤を撒かないように、消火器はその手順を守らないと消火剤を発射できないようになっています。
 備えて使えるようにしておくことで、おうちの安全を高めることができますから、一家に一本、備えてみてはいかがでしょうか。

地震の時には頭上に注意

吊り天井の内部。

 地震の時に怖いのは、とにかく落下物です。
 頭は非常に重たい上に支えている首は細いので、何か重たいものが頭に当たるとそれだけで首が折れてしまいます。
 また、頭に怪我をするとその後の避難判断や行動にも支障が出てきますので、とにかく頭を守る行為をしておくことが大切です。
 手持ちにカバンなどがあれば頭の上にかざして頭を守るようにし、ない場合には、手で守るようにします。
 揺れ始めたら頭上を最初に確認し、ものが落ちてきそうにないことを確認してからダンゴムシのポーズなどの防御姿勢を取るようにして下さい。
 ちなみに、ビルなどでは天井が吊られているつり天井になっていることがありますが、この場合天井が落下してくることが予測されますので、充分に注意して下さい。
 必ずとはいえませんが、天井に点検口が作られていたり、照明が天井に埋め込まれている場合にはつり天井であることが多いので、一つの目安にしてみてください。
 劇場や映画館など、天井が高い建物では落下する速度もつきますのでより危険になります。その場合には、座席の間に身を隠すなどして、落下してくる天井の直撃を避けるようにしてください。

感震ブレーカーとスイッチオフ

 感震ブレーカーというものがあります。
 代表的なものは配電盤についていて地震の際に電気を止めて電気器具による火災を防ぐ装置ですが、このほかにも、ガスのマイコンメーターやストーブの耐震消火装置などもこれに該当します。
 要するに、揺れを感知したら電気やガス、灯油と言った燃料の供給を止めて火を消す装置なのですが、この装置が働いて消火された後、それぞれの器具のスイッチを確実にオフにしておくことが必要です。
 電気なら、機材のコンセントを抜いておく、ガスならコンロや給湯器のスイッチを切る、ストーブであれば確実に消火しておくなど、緊急時に対応してくれた安全装置を保管する作業をしておきましょう。
 電気もガスも異常がある状態で供給を再開しようとしても供給ができないようになっていますが、復旧作業をしてもうまく動かないのは、このスイッチを切るという作業がされておらず、診断装置が危険だと判断した結果復旧しないことがよくあるからです。
 耐震安全装置が正しく起動すれば消火は確実にできますので、地震の際にはまず身の安全の確保、そして落ち着いてからのスイッチオフという作業を忘れないようにしておきたいですね。