伝言ダイヤルの鍵を決めよう

 2023年の正月を無事に迎えることができ、皆様方には厚くお礼申し上げます。
 引き続き、当研究所をよろしくお願いいたします。
 さて、年末年始、ご家族や仲良しの方と集まることも多いのではないでしょうか。
 せっかく集まるのですから、いざというときに連絡を取るための災害時伝言板およびweb171の鍵となる番号を決めておいてはいかがですか。
 災害時伝言板は災害時に連絡が付きにくい状態でも伝言板を経由して情報交換ができる非常に便利なものです。
 ただ、カギとなる電話番号が決まっていないとお互いにやり取りをすることが難しいので、災害時伝言板を使うときに指定する電話番号を決めて、共有しておきましょう。
 普段は合わない人だからこそ、災害などが起きた時には生存や状況が気になるものです。
 被災地内への電話はまず通じないと思っていいですから、災害時伝言板を上手に使って、生存情報や自分の状況などが心配している人たちに届くようにしておけるといいですね。

災害用伝言ダイヤル(NTT西日本のウェブサイトへ移動します)

発電機は絶対に屋外で使う

携帯発電機を室内で使用して一酸化炭素中毒になる事故の再現映像(製品評価技術基盤機構(nite)作成)

 冬場に長時間の停電が起きると、電化されている最近の住宅では暖が取れなくなることがあります。
 その時に備えてガソリン式やカセットガス式の発電機を備えている方もおられると思いますが、屋内では絶対に使用しないでください。
 発電機に限りませんが、燃焼するときには酸素が燃焼により二酸化炭素に変わっていきます。
 ただ、供給される酸素が不十分になると、二酸化炭素になれずに一酸化炭素が発生し始めます。
 この一酸化炭素は人間が吸い込むと中毒死するような危険な気体なのですが、寒いと屋内やテントの中で発電機や炭火などを使い、酸素不足で一酸化炭素が発生して中毒死する事故がほぼ毎年起きています。
 災害後に電気が再開するまでは発電機に頼ることも多いとは思いますが、発電機はいくらコンパクトでも絶対に外で使用すること。
 そしてできるだけ開放的な場所で空気がしっかりと流れるようにしておくことに注意しておいてください。
 発電機は絶対に外の風の良く通るところで使うこと。
 周囲が住宅地の場合には発電機の音が気になってしまうかもしれませんが、命にはかえられませんので必ず守るようにしてください。

【お知らせ】「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の運用が始まりました

 2022年12月16日12時から、北海道三陸沖後発地震に関する注意情報の運用が始まりました。
 これは北海道三陸沖でマグニチュード(Mw)7程度の地震が発生した際、その後1週間以内にそれ以上の大規模な地震となるマグニチュード(Mw)8以上の地震が起こる可能性があることから、大きな地震の後により大きな地震に備えるための注意を促すためのものだそうです。
 最近では2016年4月14日、16日と立て続けに大きな地震が起きた熊本地震がこのケースにあたるのかなと考えますが、マグニチュードが1上昇すると揺れる力は32倍になるので、とてつもない地震が起きる可能性があるということが言えます。
 そういった事態に備えて、大きな地震が起きた後、より大きい地震が起きる可能性があるということを周知するのが、この北海道三陸沖後発地震注意情報なのだそうです。
 報告書では実際に北海道三陸沖地震が起きて、その後1週間以内にさらに大きな地震が起きる確率は100回に1回とされていますが、たとえ空振りになっても危険性を周知したいということで、こういった注意情報が発表されることになりました。
 ただ、これを受けてどうするかは各人に任されていますので、避難するもより強い地震への対策をするも、そして何もしないのもすべてそれぞれの考え方や判断に任されることになります。
 そう考えると、大きな地震の際に気象庁が出す「今後1週間程度は大きな揺れに警戒する必要がある」という発表とどこが違うのだろうかというのがいまいちよくわからないのですが、地震が発生したらより大きな地震が来る可能性があることは事実。
 どこで起きる地震についても、大きな地震の後にはより大きな地震が来るかもと考えて備えをしておいたほうがよさそうです。

日本海溝・千島海港沿いの後発地震への注意を促す情報発信に関する検討会報告書(気象庁のウェブサイトへ移動します)

【お知らせ】1月開催のイベントのご案内

 石西防災研究所では、1月に一般向けワンコイン研修会を2回開催します。
 1回目は1月14日で、「ハザードマップの読み方を知ろう」。
 これはハザードマップに書かれている情報はどのようなものがあるのかということに始まるハザードマップの見方の研修会です。
 2回目は1月24日で、「マイタイムラインを作ろう」。
 これはハザードマップを読める人向きの研修会で、ハザードマップを元に、自分が置かれた状況や環境からどのような行動をすべきなのかについて時系列に整理し、それを行動計画書、防災ではマイタイムラインといわれるものですが、それを作って行動手順をみてわかるようにしていきます。
 どちらも災害への備えに対して有効な研修会ですので、興味があって都合のつく方はぜひご参加ください。
 参加費は500円/人。
 いずれも準備の都合上事前申し込みをお願いします。
 詳細は付属のチラシをご覧いただくか、事務局までお問い合わせください。

機内モードとモバイルバッテリー

スマホを音有りで使うなら、イヤフォンも忘れずに。

 災害が発生すると、被災地内では輻輳を防ぐために通信規制が行われます。
 そのため、なかなか電話やメールがつながらない状態になるのですが、基地局の電池設備が使えなくなると同時に通信そのものができなくなります。
 ただ、スマートフォンや携帯電話は基地局の電波を探そうとしますので、電池をいつも以上に消費することになり、繋がるようになったころには電池切れというパターンが多くなります。
 それを防ぐためには、モバイルバッテリーを持ち歩くことです。
 できれば2回以上フル充電できるくらい大きな容量のものがあると安心できます。
 また、携帯電話は通信が使えなくなったらスイッチを切っておくようにすると電池の持ちがよくなります。スマートフォンの場合には、画面の明るさを見られる範囲で暗くするのと同時に、できるだけ機内モードにするようにしてください。
 機内モードにすることで、スマートフォンは基地局の電波を探しに行かなくなりますので、その分電池の消費を抑えることができます。
 スマートフォンや携帯電話はさまざまな形で情報を集める手段として有効なアイテムです。このアイテムを活かすために、まさかの電池切れを起こさないように、二重三重の対策をしておいてください。
 ちなみに、乾電池式の充電器はスマートフォンへの充電はしっかりとはできないことが多いです。ただ、支援物資として乾電池が届くことがありますので、荷物にならないようであれば乾電池式の充電器も用意しておくと安心だと思います。

ハザードマップが読めますか

 市町村などが作っているハザードマップですが、完成したり改訂があると、多くの場合は各家庭に配られているようです。
 ただ、その中身の説明がないために、次の資源回収日には大量に出されているケースもあるとか。
 本来なら災害から身を守るために作られたはずのハザードマップがただの資源になってしまっているのは、ようするに見方がわからないからです。
 見方さえわかれば結構役に立つのですが、配られているハザードマップに書かれている解説を読んでも、よくわからないという方が多いのではないでしょうか。
 研修会などで説明すると「ああそういう意味なのか」と言ってもらえることも多いのですが、わからないから資源にされているのです。
 また、中途半端に細かいサイズになっているため、かなり使いにくいものも多いです。見やすいだろうと思って冊子にしていても、実際には非常に使いにくくわかりにくくなってしまっている残念なケースもよくあります。
 見方さえわかれば、あとは更新されても改訂されても大きく表示方法が変更されることもないですから、見方をしっかりと周知してほしいと思います。
 見方と用語。
 これがきちんと理解できるような機会の提供が少ないような気がするので、結果として理解が進まないという状態が続いている気がします。
 せっかく大金をかけて作ったハザードマップです。
 しっかりとハザードマップが役立つような、そういった心配りがいるのかなと感じています。

「個別支援計画」ってなんだろう

 災害時に命を守る行動をとるのは自分自身です。
 ですが、例えば妊産婦や乳幼児、障碍者の方、お年寄りなど、自分ではすべての行動ができない人もいると思います。
 そういった支援が必要な場合には、あらかじめ周囲の人や介護事業者、民生委員などに助けてもらうための段取りをつけておきましょう。
 この段取りを「個別支援計画」と呼んでいますが、防災と福祉の狭間にあることや個人情報保護の観点から、なかなか計画作成が進んでいないようです。
 つまり、放っておくといつまでも自分を助けてもらうための計画ができませんので、支援が必要な人が自身で自分を助けてほしいこと、そしてなにをどんな風に助けてほしいのかについて、支援をしてくれそうな人に伝えておく必要があります。
 普段からさまざまな支援を受けていると、災害時にも支援がしてもらえると思いがちですが、非常時には非常時の段取りをつけておかないと誰も助けてくれません。
 普段助けてくれている行政は、災害時にはそちらの対応で手いっぱいになってしまい、支援が必要な人の救助まではとても手が回りません。
 ですから、普段から支えてくれている介護事業者や民生委員といった人たちや、地域の人たちに助けてもらうようにお願いしておくのです。
 それが個別支援計画であり、これなしに災害時に必要十分な支援は受けられないと考えてください。
 もちろん、災害の情報収集や避難のタイミング、避難先の選定から避難後の生活に至るまで、全部自分でできるという人は個別支援計画などは作らなくても問題ありません。
 でも、助けが必要な場面で助けがないと、生活をするのに困難が生じてしまうと考えられる人は、すぐにでも個別支援計画を作るようにしてください。
 個別支援計画は、普段やり取りをしている介護事業者やケアマネジャー、民生委員といった方に相談すると段取りをしてくれます。また、地域の自治会や自主防災組織などが機能していれば、そちらにも相談をしておくとやりやすくなります。
 自分が自分の命を守る行動が取れなくても、段取りをつけて助けてもらえるように準備をしておくこと。
 それをしておくことが、自分の命を守ることにつながりますが、あなたは大丈夫ですか。

「大丈夫」という情報の大切さ

 災害が起きた時に自分に大きな被害がなかった場合には、あえて自分は大丈夫という情報発信はしないという方が多いと思います。
 特に大きな災害の場合には、短時間で相当数の安否確認の電話やメールが集中してしまうので、通信環境への負荷を防ぐという意味でも発信を控えるということはよくあることだと思います。
 ただ、心配している人から見ると情報発信がないというのは「大丈夫」だから発信していないのか、それとも「発信できないような状況」になっているかがわかりませんので、不安に駆られて相手が出るまで電話やメール等を送り続けて通信環境を悪化させてしまうことが発生します。
 被災地外で被災地にいる人の心配をする人は、とりあえず無事なことがわかればいいのですから、とりあえず被災地にいる人は自分が大丈夫である旨の情報は発信したほうがいいわけですが、電話やメールでやりとりしていると状況はあまり変わりません。
 SNSや災害時伝言ダイヤル、災害用伝言版などを活用して、なるべく通信環境に負荷をかけずに大丈夫なことが伝えられるといいと思います。
 SNSであればいいのですが、災害時伝言ダイヤルや災害用伝言版では一つ気を付けておかないといけないことがあります。
 それは「鍵となる電話番号を決めておくこと」です。
 「J-Anpi」というシステムによって、固定電話、携帯電話会社に関係なく、登録されている伝言はどこからでも見たり聞いたりできるようになっていて、いちいち探す手間はかなり減りました。

※注 災害時伝言ダイヤルとweb171は連携しており、相互に情報確認ができる。

 ただ、J-Anpiの伝言を聞くためには鍵となる電話番号が必要となります。
 「もし自分が被災したとき、安全だったら伝言を出しておくから、〇〇番で検索してくれ」という情報を連絡してくるであろう相手に伝えておくことで、いざというときに通信環境に負荷をかけずに安否が確認できます。
 これは家族間でも同じことで、いざというときにどの番号で伝言をやりとりするのかについては事前に決めておくようにしてください。
 また、災害時伝言ダイヤルや災害時伝言版は平時でも訓練用に開放されているときがありますので、そういった機会を使って、実際にやりとりする練習をしておいてください。
 「私は大丈夫です」ということを伝えることは大切な情報です。
 自分が無事だから発信しなくても大丈夫、ではなく、無事だからこそ大丈夫だという情報を早めに発信するようにしてください。

J-Anpi(J-Anpiのウェブサイトへ移動します)

NTT西日本の災害への備え・対策サイト(NTT西日本のウェブサイトへ移動します)

揺れやすい地形、揺れにくい地形を知る

 地震では震源から同じ距離であっても同じ震度や同じ揺れになるわけではありません。
 揺れを拾いやすい地形だとより揺れますし、逆に揺れにくい地形だとほとんど揺れません。
 揺れを拾いやすい地形は、俗にいう「軟弱地盤」と言われるような場所で、硬い岩盤の上に柔らかな地盤が乗っているため、本来の揺れ以上に揺れてしまいます。
 そのため、震源から離れていても、建物が倒壊したり大きな被害が発生します。
 建物の構造自身がよく問題になりますが、実は建物の構造よりも建物が乗っている地盤の状態のほうが、地震に対して大きな問題となるのです。
 1995年に神戸や淡路島が大きな被害を受けた阪神淡路大震災や2004年に新潟県の中越地方が大きな被害を受けた新潟県中越地震では、この地盤の脆弱性が建物の倒壊を増やしてしまったと言われています。
 では、地盤の柔らかさや固さはどうやって調べればいいのでしょうか。
 実際には専門家に地盤調査をしてもらうのが一番ですが、おおざっぱに見るのであれば、「地震ハザードカルテ」というものがあります。
 これは全国を250mのメッシュで区切って、揺れやすい場所や揺れにくい場所の診断をするもので、大まかな参考になると思います。
 さまざまなところで言われているところですが、地震は起きた時には勝負がついています。
 建物の倒壊や半壊といった被害を防ぐには、こういった地味な調査も重要になってきますので、よかったら参考にしてみてください。

地震ハザードステーション(防災科学技術研究所のウェブサイトへ移動します)

地震の起きる確率

 大地震の起きる確率、ということであちこちで数字が出されています。
 南海トラフ地震の場合、今後30年以内に大地震の発生する確率は70~80%だそうで、まず近いうちに起きると考えて間違いなさそうです。
 これは南海・東南海地震がほぼ似たような周期で発生しているために予測がしやすいという前提があります。
では、確率が低ければ安心できるのかというと、実はそうでもありません。
 2016年に熊本地震が発生しましたが、地震が発生するまで発生する確率は0~0.9%というもので、ほとんど起きないのではないかと考えた人も多かったようです。
 結果はというと、2016年4月14日にM6.5、その28時間後にM7.3の地震が発生し、大きな被害を受けました。
 実はこの地震活動の評価というのは、定期的に発生することがわかっている海溝型地震を別にすると、かなり適当だと考えていいと思います。
 南海トラフ地震のように、起きると言われてから10年以上経ちますが、まだ起きていないこともあれば、確率は低くても大地震に見舞われることもあります。
では、この数字をどうみたらいいのか。
 答えは簡単で、0%でない場合には地震は起きると考えておけばいいのです。
 起きる時期がわからないだけで、地震は起きる。そう考えたほうが精神衛生上いいと思います。
 日本に住んでいる場合、ほぼ100%の人が一生の間に一回は大きな地震に出くわすと考えてほぼ間違いないです。
 震源近くにいるのか、それともマスメディアで光景を見ることになるのかはわかりませんが、地震は起きるから備えておく。
 確率が0%以外の場所にお住いのかたは、それくらいの気持ちでいたほうがいいと思います。

長期評価結果一覧(政府 地震調査研究推進本部のウェブサイトへ移動します)