災害時の危険ってどんなこと?

 防災関係でよく言われる言葉に「災害が発生しそうなときに危険だと思ったらすぐに避難してください」というのがあります。
 命を失いかねない状況になることだと考えると、「避難=命を守る」ということになりますので、命の守り方をしっかりと理解していないといけません。
 では、災害で起きる命を失いかねない状況を考えてみましょう。
 まずは大雨。大雨になると水路や地面が水を裁ききれなくなって越水や水没、土石流、地すべり、土砂崩れなどの土砂災害が発生し、それに巻き込まれることによって命の危険が生じます。
 対策はというと、海抜高度の低いところや川の周囲、又は川の跡、土砂災害の起きそうな場所には住まないことが一番です。とはいえ、実際のところはそこまで考えて住んでないと思いますから、危険なときにだけそれらの危険のない、海抜高度が高くて土砂災害の起きない場所に逃げておけば危険を避けて命を守ることができます。
 台風も同様で、これに風対策が追加になります。家の周りのものが飛ばないように、他からものが飛んできても被害が出ないように、例えば植木鉢やバケツなどは屋内にしまっておく、屋根の修理は早めにしておく、窓には飛散防止フィルムを貼っておくなどの準備をした上で、水の被害が起きそうなら、やはり水に対して安全な場所に逃げておくことで命を守ることができます。
 風が強いと停電になることが多いので、ランタンや懐中電灯といった照明具やカセットガスといった調理器具の準備も必要になるかもしれません。
 最後は地震。いきなり来るとは言え、大きな揺れだけでは心臓の悪い方以外で危険を感じる方はいないと思います。
 問題になるのは揺れによって発生するさまざまな被害です。例えば、家屋の倒壊、土砂災害、高いビルだと長周期振動も問題になりそうです。
 対策としたら、家屋の耐震調査をし、必要があれば耐震補強すること。家具が人のいる場所に倒れないようにしておくこと、なによりも危険な場所には住まないことです。

 「三十六計逃げるに如かず」という言葉もありますが、危なければ危なくないところへ逃げれば良いだけで、その情報の一つとして自治体のハザードマップが存在します。
 ハザードマップを過信してはいけませんが、一つの目安になるものであることは間違いありません。
 自治体が配っているハザードマップにしっかりと目を通して、避難所以外でも危険がなさそうな場所も探しておいてください。

 また、ものの特性を理解しておくこと。例えば、水は高いところから低いところへ必ず流れていきますので、水の通り道を避けて高いところへ移動すれば安全は確保できます。粘土質な土地なら、土石流や地すべりが起きやすいかもしれませんので、早めに逃げておく方がいいかなという予測ができます。

 災害なんかで死なないために、自分の身を守るための行動基準を作ることはとても大切なことです。いろいろなことを検討しながら安全に逃げられるやり方を見つけてくださいね。

雨の降り方と気象情報の表現方法

 テレビやラジオの気象情報などで「強い雨がふるでしょう」や「激しい雨にご注意ください」といった雨の強さの表現をお聞きになることも多いのではないでしょうか。
 実はこの言い回し、気象予報士さんが勝手に言っているわけではなく、予報用語としてこういう予報のときにはこう言いましょうというルールが決められていて、同じ雨量であれば同じ表現が使われるようになっています。
 気象庁のホームページには雨の強さと降り方についてまとめた表があるのですが、そのまま借用するわけにいかないので当研究所で作成したものを貼っておきます。
 1時間雨量と予報用語はそのままですので確認しておいてください。

 ところで、ここに書かれた1時間雨量。言葉としてはわかるのですがうまくイメージができるでしょうか。
 参考までに、日本気象協会が作成した画像をリンクしておきますので、興味のある方は確認してみてください。

動画でみる「〇〇ミリの雨ってどんな雨?」(tenki.jpのウェブサイトへ)

 以前のようにひたすらシトシトした雨が降るうっとうしい梅雨ではなく、晴れるときはからっと晴れて、降るときにはドカッと降るような妙な梅雨になっていますが、気象情報には気をつけて、行動が必要な時には早めに開始するようにしてくださいね。

大雨特別警報「解除」が「切り替え」に言い換えられた理由

 先頃、「大雨特別警報の解除」を「大雨警報への切り替え」と言い換えるという内容がNHKニュースで報道されていました。
 何を当たり前のことを言っているのだろうと思っていたのですが、これは気象情報の発表の仕方に起因するものだと言うことに気づいて「そういうことか」と考えてしまいました。
 気象に関する情報を見ていると、「注意報」→「警報」→「特別警報」という流れを伝えるときに「~が発表されました」といういい方をします。
 そして解除に進む場合には「~が解除されました」といういい方をします。
 この解除といういい方がくせ者で、実際には殆どの場合「特別警報の解除」=「警報の発表」となっています。普段こういった警報などあまり気にすることのない人がこの「特別警報の解除」を聞くと「命が危険な状況は終わったと感じてしまうのではないでしょうか。緊張し、不安な状態が「解除」という言葉で状況が終わったと捉えてしまい、その後に続く「警報の発表」は耳に入らない状況になることは当然あり得ると思います。
 同じ内容、例えば大雨注意報と大雨警報と大雨特別警報は同時に出ることはありませんから、どうせやるのであれば、注意報、警報、特別警報の各ステージの変更時に「~に切り替えられました」といういい方にした方がすっきりすると思うのですが、本当に危険を招きかねない言い回しの変更だけでもされたことは誤解を防ぐ意味ではとても大切なことだと思います。
 ところで、なんでこんな変更が入ったのだろうかと調べてみると、気象庁が設けている「防災気象情報の伝え方に関する検討会」の令和2年3月9日の議事の中で特別警報が解除になったときの伝え方について「解除」という言葉が適切かどうかという話が出ていました。
 最終的に出された「令和元年度報告書」の中では「特別警報の解除」を「警報への切替」と表現すべきされ、「可能なものから取り組む」と概要では書かれています。
 その後のプレスリリースには記事が出ていませんが、大雨による出水期を迎え、気象庁はこれに沿って特別警報については解除ではなく「警報への切り替え」という表現に改めたようです。その準備ができたので各報道機関に依頼を行った結果、今回のNHKの報道のようなことになったのではないかと思われます。
 対象が国の河川だけというところが気になるところですが、これにより一人でも勘違いをする人が減るといいなと思います。
 参考までに今回の資料の飲用先を記載しておきますので、気になる方はぜひご確認ください。

NHKウェブサイト内「NEWSWEB」

「大雨特別警報「解除」を「切り替え」に 氾濫の警戒呼びかけへ」(2020.6.16付)

気象庁ウェブサイト内

「防災気象情報の伝え方に関する検討会」

筆記具とメモ帳

 災害発生後にさまざまなことを記入しておく備忘録として用意しておきたいのがメモ帳です。
 メモ帳と一口に言っても、大きいの、小さいの。耐水性のあるもの、字が書きやすいものなどさまざまですが、伝言メモや張り紙といったことにも使うことを考えると、耐水性のあるものがよさそうです。
 では筆記具はどうするかというと、やはり耐水性のことは重要ですが、それ以上に書いたものがにじんだりかすれたりせずきちんと読み取れる状態になっていることが大切です。
 その条件で考えると、鉛筆、油性ペン、ダーマトグラフ、クレヨンといったところが候補になります。
 それぞれ一長一短あるので一つあればいいということにはならないと思いますが、メモを取るのなら鉛筆がいいでしょうし、油性ペンならガラス以外のものなら殆どしっかりと書き込むことができ、なかなか消えないのが強みです。
 ダーマトグラフやクレヨンはガラスなど油性ペンが苦手なところにもしっかり書けますし、不要になればすぐ消せるという強みがあります。
 筆記具とメモ帳、案外と使うことが多いので、非常用持ち出し袋だけでなく、防災ポーチなどにもいくつか種類を変えて揃えておくといいのではないでしょうか。
 ちなみに筆者の非常用持ち出し袋には、キャップ付き鉛筆と油性ペン、それにダーマトグラフが入れてありますが、先日使おうとしたら鉛筆の芯が折れていました。
 鉛筆を持って歩くときには、鉛筆削りなどの鉛筆が削れる道具もわすれてはいけないなと感じました。

大雨の警報基準をおさらいしよう

 梅雨に入るのを待ちかねていたように県内では激しい雨が降るようになってきました。一部の地域では「大雨警戒レベル3」が発表されたところもありましたが、一口にレベルと言っても何をしたらいいのかピンと来ない方もいらっしゃると思います。
今回は現在の警戒レベルと以前の警戒名称、そしてそれにより住民が期待されている行動についておさらいをしてみることにします。

報道発表がレベル表示だけになったので、この警戒レベル表が頭に入っていないと訳がわからなくなる。

1.レベル1

 これはあまり意識しないと思いますし、報道発表などでもレベル1はでてこないと思っていいと思います。
 気象庁が大きな災害が起きそうだと判断したときに発表する「早期注意情報」がレベル1の基準となっています。
 これが発表されたら、家の周りのお片付けや雨樋、溝などが詰まっていないか確認し、できれば掃除をしておくといいでしょう。
 また、非常用持ち出し袋や備蓄品のチェックを行って、足りないものがあれば買い足したり交換したりするようにしてください。

2.レベル2

 気象庁発表の大雨注意報や洪水注意報がこれに当たります。
 避難経路の確認や避難所開設の時期の確認、避難に必要な資機材や車の燃料などを確認しておきましょう。
 また、大雨警報や洪水警報が発表されると、レベル3が発表されるかもしれないことを念頭に置くようにしてください。

3.レベル3

 以前の「避難準備・高齢者等避難開始」に該当します。避難準備とは言いますが、自宅や避難経路が崖崩れや水没の危険がある場所にあるようなら、準備ができ次第安全だと思われる場所に避難を開始してください。
 また、高齢者や要支援者など避難に時間がかかったり避難先に特定の資機材が必要な人は準備が完了次第安全な場所へ避難します。

4.レベル4

 以前の「避難勧告」「避難指示(緊急)」です。これが出るともうどこかで災害が発生していると考えても問題ありません。
 安全な場所への避難が難しくなっている場合には、自宅で上層階に避難する垂直避難を検討しましょう。可能な限り安全な場所へ避難してほしいという情報です。

5.レベル5

 「災害発生情報」で、これがもし発表されるとしたら、もう大規模な災害が発生していると考えて間違いありません。
 自分の周囲を確認し、現時点よりも安全が確保できる方法で、自分が生き残ることを最優先に行動しなくてはなりません。

 こうやってみると、レベル3とレベル4が重要な意味を持つと考えてよさそうです。
 レベル3とレベル4の違いははっきりとしないのですが、もしも避難所があなたや自治会の判断で開設できるのであれば、レベル3が出る前に避難所の開設をしておくことをお勧めします。また、逃げ込む場所が空けられていないと避難してきた人が途方にくれることになりますので、もし自分たちで開設が決められない場所が避難先になっているときには、避難所の開設時期について自分たちで明確に確認しておくことをお勧めします。
 これからの時期、大雨や大風が起こる可能性は高いです。
 気象庁や自治体が発表する警戒レベルを意識して、早めに行動するようにしておいてくださいね。

大雨の時に気をつけておきたいこと

上流部の大雨で増水した高津川。

 地震や大風はその場所でそれとわかるような揺れや音などの現象が起き、今災害が起きているかもと実感させるような内容がついてきます。
 ただ、雨の場合は必ずしも目の前で大雨が降っていないからといって安全だと言えないことが多くあります。
 例えば、その場所が晴れていても上流部で大雨が降った場合には河川の氾濫が起きる可能性があるので要注意です。
 殆どの河川では、本流に流れ込む大小様々な支流がありますが、この支流の水が増えると本流が受け止めきれなくなって、ある地点で堤防が決壊したり水があふれ出したりします
 また、水かさが増した本流からの支流への逆流を防ぐための堰がもうけられているところもあるのですが、この堰を閉めると本流に出られない水が堰の内部で滞留を始め、堤防はなんともないのに堰の周辺が水没したりすることになります。
 いずれにしても、周辺の水かさに気をつけておかないと、気がついたら家の周りが水没していたと言うことになりかねません。
 もしも自分の住んでいるところが低地だったり、堰の近くだったりする場合には雨の状況に応じて高いところに避難する計画を作っておいた方が安心です。
 また、避難先は複数確認しておいて早めの避難をすること。それにより避難した先が人でいっぱいでも、他の避難所に移動するだけの時間を確保することができます。
 たとえ雨が降っていなくても、河川に関する情報が出た場合には速やかに避難するような練習をしておいたほうがよいと思いますから、普段の気象情報で、自分が住んでいる地域の川の上流がどうなっているのかについても意識しておいてくださいね。

ハザードマップを確認しよう

2019年に実施した当研究所の防災マップ作りの一シーン。ハザードマップを確認するだけで無く、実際に歩いてみないとわからないことも多い。

 そろそろ梅雨の声が聞こえてくる時期になりました。
 ここ数年は毎年どこかで大雨による災害が発生していますが、あなた自身の備えはできていますか。そして、安全な場所の確認はできていますか。
 自分が長時間過ごすところ、例えば自宅や職場、学校がどのような場所にあってどこに避難すれば安全なのかを知る一つとしてハザードマップがあります。
 浸水害、土砂災害の危険区域が色分けされていて、その場所でどのような危険があるのかが見ればわかるようになっています。
 もし自分のいる場所が安全を確保できない場所であるなら、安全を確保できる場所、例えば指定避難所までの安全な道順を確認してください。
 もしも浸水害や土砂災害の危険地帯を避けて避難することが無理なら、どのタイミングで避難を開始するのかについて決めておきましょう。
 災害は必ずしもハザードマップのとおりに起きるとは限りませんが、ある条件下で災害が起きそうな場所について一目で分かるようにしたものですから目安にはなります。
ハザードマップに普段の生活で感じている危ない場所を書き込んでいくことで、より安全な自分だけのハザードマップを作ることができます。
 大雨が降る前に、一度ハザードマップを確認し、念のために避難経路を一度歩いてみてください。
 災害は待ってくれません。安全なときに自分の安全を確保するようにしましょう。

スマホが通じなくなる時

 災害が発生するときにはスマートフォンは強い武器になります。
 基地局が被災しない限り電話としても情報端末としても、電波が届くところであればどこででも情報を得ることができて非常に役に立ちます。
 非常用持ち出し袋の携行品の一つとしてスマホ用の充電器が加えられることが多いのも当然と言えますが、大規模な災害になってくるとある時点で突然スマートフォンがつながらなくなってしまう事態が発生することを知っておいてください。
 原因は携帯基地局の電源喪失。手元のスマートフォンに電源が充分にあっても、電波を中継する基地局を動かす電気が無くなってしまうとその時点でスマートフォンは無用の長物と化してしまいます。
 各携帯電話会社がさまざまな工夫をして基地局の電源喪失を防ぐ努力はしていますが、蓄電池にしても発電機にしても、外部からのエネルギー供給が絶たれてしまうとやがて電池切れ、燃料切れとなって動かなくなってしまうのです。
 もちろん、各携帯電話会社も基地局の広域化や移動中継局などを被災後速やかに展開して中継網を維持する努力はされていますが、山間などの不感地帯などではスマートフォンは通じなくなると思った方が良さそうです。
 そのため、情報収集の手段をスマートフォンだけに頼ることは危険です。スマホの通信網以外の電波が拾えるよう、FMやワンセグなどのついている端末や、携帯テレビ、小型ラジオなどを持っておくと安心です。
 基地局の電源喪失は電源供給が止まってから約12時間から36時間と言われていますので、被災後に停電が続くようならスマートフォンや携帯電話が通じなくなる可能性を意識するようにしてください。

追記・テレビはデジタル化により地上波の中継局が電源喪失すると映らなくなるようです。ラジオについてはアナログ波なら遠方の電波を受信することができそうです。そう考えると、テレビだと衛星系、ラジオはAM波がよさそうです。もちろんコミュニティFMがあれば、それが一番身近な情報を伝えてくれると思います。

【お知らせ】大雨の災害レベルを表示する色が変更されます

 大雨での災害レベルについて、表示する色の変更をすることが発表されました。
 詳しくは内閣府防災情報のページの報道発表資料を見ていただきたいのですが、色の判別がしにくい人にもわかりやすくするということで、レベル4の赤紫が紫に、レベル5の紫が黒にそれぞれ変更されるとのことです。
 災害時に伝える情報の中で、色は割と大切な意味を持っています。色で現在の状況を伝えることができれば耳の聞こえない方や日本語が不自由な人でも状況がわかります。
 色の問題は結構悩む部分ではあるのですが、弱視や色弱な方でもきちんと情報がわかるようなはっきりとした色で伝えることができるのならいいなと思います。
 参考までに、変更前と変更後の色について比較したものを載せておきます。

注:この表の色は指定された色コードを使っていませんので、厳密には異なります。

 指定されている色コードとは少し異なる色になっていますが、内閣府防災担当の報道発表資料には色の指定コードも出ていますので、活用されるときには参考にしていただきたいと思います。
 ちなみに、この変更は遅くとも9月までに行って欲しいとのことです。

○参考資料
令和2年記者発表・公表資料一覧
大雨の警戒レベルをわかりやすく伝えるために5色の配色を定めました
(R2.5.29公表:pdfファイル 256.7KB)

避難の行動開始のタイミングを考えてみる

 避難するための鍵を作ろうということは過去に「避難開始のタイミングを考える」という記事で書いているところですが、いざ行動開始の鍵を決めようとしても、なかなかそれでいいのかという疑問が出てきて踏ん切りがつかないものです。
 避難開始が早すぎるといろいろなところで支障を来しますし、遅すぎるとそもそも避難ができません。自分の避難開始の最良のタイミングが事前に決めたとおりでいいのかどうかは実際に起きてみないと分からないところではあります。
 ただ「行動開始ってなんだろう」という方や「やっぱり不安だ」という方、「他の人はどんな基準で避難を開始しているのだろう」という方には、内閣府が出した避難行動の鍵となる「避難行動判定フロー」が一つの参考になるかもしれません。
 ハザードマップで自分の住んでいる場所や働いている場所がどのような状況なのかを確認した上で、避難するタイミングはどうなのかをこのフローで確認すると、ある程度安全に避難ができると思います。
 興味のある方はぜひフローを見ていただき、避難行動開始の参考にしていただければと思います。

台風・豪雨時に備えてハザードマップと一緒に「避難行動判定フロー」を確認しましょう」(内閣府防災の該当PDFに飛びます)