地震の時は自分の重心を下げよう

 例えば歩いているときに不意に地震が来たとしたら、あなたはどうしますか。
 人は生き物としては異常なくらい頭が重たい、つまり重心が高いので、いきなり揺れるとそれだけで転んでしまう可能性が大です。
 それを防ぐためには、とにかく姿勢を低くすること。揺れ始めてから逃げることなどできませんので、とにかく重心を下げ、揺れに身体を持っていかれないようにすることです。何か捕まる場所があるならば、そこに捕まるのも手ですが、それでもやはり重心は下げること。しゃがむ、座るなど、もし転がっても怪我をしないようにすることが重要です。揺れると、上からさまざまなものが落ちてくる可能性があるので頭を守る必要がありますが、それ以上に高いのは転んで頭を打ってしまうこと。これを避けなければなりません。
 理想的なのはダンゴムシのポーズですが、それができない状況もあると思いますので、どんなときでもまずはしゃがむこと。
 それだけで大けがをしなくてすむ確率はあがります。とにかく揺れたときにはまず自分の重心を下げることを忘れないようにしてください。

食べられる野草を知っておく

 今日は七草がゆの日。おせち料理を食べて疲れてしまった胃腸を整え、野菜が乏しい冬場の栄養を補うという理にかなった風習です。
 もっとも、現代では普通に野菜が売られていて食べることができますので、昔ほど栄養を補うという要素は重要視されないのかなとも思います。
 さて、この七草、「せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ」の七種類で構成されていますが、野草としては冬でもしっかりと生えているものばかり。つまり、災害が起きたときに食料となり得るものなのです。
 元々野菜は食べられる野草を品種改良して食べやすくしてきたものなので、味はともかく、野草も食べることはできます。ただ、生えている草を片っ端から摘んできても、中には食べられなかったり処理が必要だったりするものもありますから、食べるためにはその処理方法や調理法も知っておく必要があります。
 地域によって食べられる野草が生えている場所や生えているものが異なりますので、お住まいの地域でどのようなものが生えているのか、どうやったらおいしく食べることができるのかについて、余裕のあるときに調べて食べてみるといいと思います。
 春の七草は、そういう意味では日本国内であればわりと手に入りやすい野草たちですから、それらの野草から探してみてもいいかもしれません。
 被災後に生き残るためには、食べられるもの食べられないものを判別できる能力が不可欠です。調べて食べてみて、自分の口にあうものを見つけておけば、いざというときでも焦らなくてすむかもしれませんよ。

石西地方のAEDマップのご紹介

 応急手当の講習会に行くと、100%と言ってもいいくらい出てくるのがAEDです。簡単な操作で誰でも取り扱うことができ、心臓マッサージとこのAEDの併用で助かる命が出てくるとなれば、しっかりと講習を受けて使えるようにしておいて損はありません。
 ただ、いざというときにそのAEDがどこにあるのかを知っていないと、使うことができません。
 このAEDの設置場所というのは案外とわかりにくくて、いろいろな団体がAEDマップを提供しています。石西地方では益田広域消防本部が管内のAED設置情報をホームページで提供しています。定期的に更新もされているようですので、お住まいの場所の近くではどこにあるのかを確認しておくのも大切なことだと思います。
 ただ、一つ注意しておかないといけないのは、AEDが置いてあるところが24時間開放されているわけではないということ。殆どの場合施設の中に置かれているため、その施設が開いている時間でないと使うことができません。
 場所の確認と同時に、そこから持ってくることができる時間も合わせて確認しておくといいと思います。

「命を守る」とは?

 地震や津波などが起きる際には、マスコミ報道等では必ず「命を守る行動をしてください」という言葉が入ります。「命あっての物種」ですから、とにかく生き残らないことにはその後の準備をいくらしていても何の役にも立ちませんので、マスコミ報道の伝えていることは完全に正しい内容だと思います。
 では、命を守るとはどういうことなのかというと、まずは「死なないこと」です。そして「怪我をしないこと」。
 当たり前のような話です。
 では、もし今地震が起きたとしたら、あなたはどうやって自分の命を守るのか、その方法と理由を説明することができますか。
 机のある学校や職場ではとりあえず机の下に潜るようにと指導を受けますが、なぜそうするのかをきちんと知っている人はあまりいません。頭、そしてできれば身体全部を落下物から守るために、机の下に潜るという行動が推奨されているわけです。
 でも、机の下に潜る「理由」ではなく「行動」しか教えていないため、安全な校庭にいる子ども達が緊急地震速報の音で慌てて危険な校内に避難するようなことが起きているのが現状です。最近では「ダンゴムシのポーズ」を教えることも多いようですが、これもやっぱりなぜこのポーズをするのかについての説明がされていません。逆に言えば、なぜそうするのかという理屈さえわかっていれば、それが災害時の行動規範になります。その結果、助かる確率があがることになるのではないでしょうか。
 例えば、家の耐震補強をするのは、地震が起きたときに家に潰されないようにするためです。どんなに命を守る訓練をしていても物理的に潰されてしまったら死んでしまいますから、潰されないように対策をしておくことが必要です。同じ理由で「家具の固定」も行っておく必要があります。他にも高いところに重たいものを置かないようにするとか、窓ガラスが割れて飛び散らないようにフィルムを貼るといった行為も自分が死なない、怪我しないために行う準備なのです。
 まず命が助かること。災害を生き残るためにはそれが一番最初であり、一番大切なことなのです。
 もしもあなたが災害対策にかける予算が少なくて何をするのかを迷っているようでしたら、まずは寝室のお片付け、そして家具の固定、できれば耐震診断をして家の耐震補強をするところから手をつけてみてください。
 また、学校や勤務先等ではものが落ちないように対策をしたり、頭や身体を守れるように身を隠す場所を決めたりしておきましょう。
 災害時にしっかりと命を守ることから、災害対策が始まるのです。

災害関係の碑あれこれ

 災害が起きると、何らかの理由で碑が建てられることがあります。
 大きく分けると、教訓を示すための碑と、何らかの災害対策を行った者を顕彰するための碑、そして鎮魂のための碑です。
 石西地方では、私が知る限りは顕彰碑か鎮魂の碑なのですが、これはこの地方で起きるのは水害や大雨による災害が殆どであるため、教訓の碑を建てるよりも、実際に被害に遭わないために水に浸からない場所に居所を建て、水に浸かる部分は田として遊水池の機能を持たせて被害を最小限に食い止めるための行動をしているためではないかと考えています。碑は丈夫な石で作られているとはいえ、そのままでは時間の経過とともに記憶が風化して人々から消えていくものですから、教訓よりも行動で示しているのではないかなと思います。。もっとも、当地方でもいろいろと調べてみても由来がはっきりしない碑が多いので、、その中には過去の災害の教訓についての伝承のあるものがあるのかもしれません。
 教訓の碑としてよく知られている東北太平洋岸に点在する過去の津波被害の碑も、記憶の承継がされていた一部の地域を除くと、このたびの東日本大震災で「そんなものがあった」と注目を浴びるといった状態なので、意識しない限りは忘れ去れていくことは仕方がないのかなと思います。
 教訓を未来に向けて残していくためには、それをいかに日常生活の中に溶け込ませていくかが鍵になると思います。例えばインドネシアのある島では「歌」で津波の教訓を伝えていて、その歌が歌い継がれていた結果スマトラ大津波でも死者が少なかったという風に。
 そういえば、教訓の書かれた碑の中に、今でもそのように考えなければいけないのだろうなと思ったものがありました。

東桜島小学校にある桜島爆発記念碑。「科学不信の碑」とも呼ばれているらしい。
出展:桜島・錦江湾ジオパーク推進協議会ホームページ

 それは鹿児島県にある桜島で起きた、大正3年の大爆発のあと建てられた桜島爆発記念碑の一つなのですが、その中に「(前略)住民ハ理論ニ信頼セズ、異変ヲ認知スル時ハ、未然ニ避難ノ用意、尤モ肝要トシ、平素勤倹産ヲ治メ、何時変災ニ値モ路頭ニ迷ワザル覚悟ナカルベカラズ。(後略)(※1)」という一文があります。
 大正3年の桜島の大噴火では事前にたくさんの地震や井戸からの熱湯ふきだしなど、さまざまな異変が起きましたが、地元の測候所が「桜島は異常なし。噴火はしない」と言い続けていたため、それを信じた住民達が大噴火の犠牲になってしまったことから「科学的な判断を鵜呑みにせず、自分の勘や判断で以上だと思ったら、事前に準備して災害後に路頭に迷うようなことのないようにせよ」という教訓を残しています。その記載から「科学不審の碑」とも呼ばれているそうですが、誰かの言うことに振り回されるのではなく、起きている事象から自分で判断して行動するというのは、災害対策として現在でも非常に大切な教訓なのではないかと思っています。
 災害の碑は、国土地理院の地図でも「自然災害顕彰碑」として地図上に表示されるようになりました
 もしもお近くに何かの碑があるなら、その碑がなんのために作られたのかについて調べてみるのも面白いのではないでしょうか。もしそれが災害の碑であったとしたら、その碑が何を伝えるために建てられたのかについて確認してみると、昔の人の思いが伝わってくるかもしれませんね。

※1 碑文の出展元は「桜島爆発の日 大正3年の記憶(野添武著/南日本新聞開発センター)」から抜粋しました。

現金を持つ意味

 非常用持ち出し袋にはいくらかのお金をいれておくようにしようということが、殆どの防災関係の本には書いてあります。
 最近は電子マネーやクレジットカードなどを使うため、現金を持って歩かないという人もいらっしゃるようですが、災害時に備えて、せめていくらかの小銭は用意しておくようにしてください。
 というのも、災害時には小銭が非常に有効となるからです。例えば、最近では殆ど見ない公衆電話を使うときですが、10円や100円しか使えなくなっています。また、コンビニエンスストアで買い物をしようと思っても、停電していれば電子マネーは一切使えません。殆どの場合は手計算になるので、小銭以外は受け付けないという対応をされることも多いです。
 では、非常用持ち出し袋にいくら準備しておけば安心なのか。一概に言えませんが、あまりにたくさんのお金を準備してしまうと、今度は普段の盗難やいざ持って逃げるときに重量がかさんでしまいますので、数百円から数千円程度、硬貨で準備しておけばいいのかなと思います。
 また、出先など非常用持ち出し袋がない状況で被災する場合も当然ありますから、自分のお財布やポケットに、やはりいくらかの小銭は準備しておくといいと思います。
 電子マネーやクレジットカードは非常に便利なものですし、荷物にもなりませんから普段は快適です。でも、災害が起きて停電や通信環境が破壊されてしまうと使えなくなってしてしまいますので、自分を守るためにもある程度の備えをしておいた方がいいと思います。

暖かい食事のために発熱剤を準備してみる

 避難所で避難生活するにしても、自宅で生活するにしても、食事はしっかりと食べる必要があります。
 ただ、冷たいものや常温のものばかり食べていると、暖かいものが恋しくなってくるのは事実ですし、疲れて空腹な時に暖かいものを食べることができれば、それだけでかなりの気力を回復することができます。
 よくカセットコンロを準備しようという話をするのですが、ご家庭の事情によっては、それができない場合もあると思いますが、暖かいものを食べるための環境は整えておいた方が安心です。
 そこで、発熱剤を使ってみてはいかがでしょうか。「紐を引くだけであつあつのお弁当」などというキャッチフレーズでお弁当などにも使われていますが、普段の保管では危険は殆ど無く、劣化しにくく、いざというときには水を注ぐだけでしっかりと発熱してくれます。加熱するためには水が必要ですので、その分を余計に準備しておくという必要はありますが、水であれば基本的には発熱しますので、飲料用でなくても使うことが可能です。
 アウトドアや災害用に使う発熱剤は、殆どの場合ケースがついていますので、そのケースに缶詰やレトルト食品など暖めたいものを入れ、説明書に従って発熱させると暖かいものが食べられます。加熱温度は70~80度くらいですので、焦げたり発火したりすることはありませんし、よくある「○○のご飯」のような加熱しておいしくなるタイプのご飯もしっかりと温めることができます。また、授乳用の液体ミルクを温めるだけでなく、粉ミルクを調製するためのお湯を作ることも可能です。
 とても便利な発熱剤なのですが、欠点としては売っているところが限られているところです。いざというときにすぐ買えないと思いますので、一度買ってみて、自分のニーズにあっているかどうかを試してみてください。
 ちなみに、使い捨てカイロがあれば、その熱でもほのかに暖かくすることは可能ですので、あわせて使い捨てカイロも準備しておくとよいと思います。

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新年のご挨拶

 あけましておめでとうございます。
 旧年はさまざまな試みをさせていただきましたが、快く受け入れさまざまなことをさせていただきました皆様にこころから感謝申し上げます。
 今年も当研究所のテーマである「命を守る、命をつなぐ」を実現するためにいろいろなことに挑戦していきたいと思っておりますので、引き続きのご愛顧をよろしくお願いいたします。

 さて、新年と言えば、ご家族で過ごされることも多いと思います。その際、災害が起きてみんながばらばらに被災したとき、どこでどのように待ち合わせて合流するのかについてお話してみてはいかがでしょうか。
 命を守るための行動は、起きた災害とその場にいたときの状況によって変わります。実はその後が結構大変で、家族がどうやって合流するのかを決めておかないと、お互いが避難所を探して歩き、結局なかなか出会えないという事態になってしまうことがあります。そのため、いつどこで合流するのかを取り決めておくと、そこを目指してくればいいのでお互いに不安にならなくてすむのです。また、合流するための時間まで決めておければ、その時間以外は他の作業ができるためより効率的に生きていくことが可能となります。
 また、帰省されたご家族とのお話では、伝言ダイヤルはどの番号を使うのかや、どの段階で救援に入るのか、あるいは被災後はどこに行けば会えるのかなど、お互いに話を決めておくと、慌てなくて済みます。
 いずれにしても、せっかく顔合わせをするのですから、ちょっとした時間でいいのでそれぞれの災害対策について話す機会をつくっていただければと思います。

寒さ対策をしっかりとしておこう

 年末年始は冷えるという予報が出ていますが、対策は大丈夫でしょうか。
 お出かけ時には、暖かい服装で風邪など引かれないようにお気をつけください。
 ところで、身体を温める服装と言うことでよく話に出てくるのが厚手の服を着るのがいいのか、それとも重ね着する方がいいのかということです。
 結論から行けば、「どちらでもいい」と思うのですが、どちらも以下の条件を満たしていることが必要です。

1)一番外側に来る服が風を遮断すること
2)服の間に空気がため込めるようになっていること
3)汗をかいても湿らない下着であること

 以上の三つの条件を満たせば、厚手の服でも重ね着でも充分に暖かいと思います。厚手の服としてよく使われているダウンのようなふわふわもこもこした空気の層の塊のようなものを着るときには、なるべく熱源である肌に近い部分に着た方が暖かいということくらいでしょうか。重ね着するのであれば、発熱素材と断熱素材を上手に組み合わせた薄手の服を使うことです。

 また、意外に見過ごされがちですが、足下を冷やさない条件も同じです。足下を冷やさないためには、一番最初に汗をかいても湿らない靴下にすること、そして靴の中に空気を貯め込めるようなボアがあるものを履くことです。

 いずれにしても、それらを上手に組み合わせて身体を冷やさないようにしたいものですね。

どうやって避難してもらったらいいのか

 災害時にレベル4以上、避難指示や避難勧告が出た場合でも、それに気づかない人がいるかもしれません。
 例えば、耳の聞こえない、または耳の聞こえが悪い人、目の見えない人やものが見にくい人、日本語がよく分からない人など、案外と気づかない可能性のある人は多いものです。
 以前、とあるところで大雨により夜中に水害が発生したとき、消防団の人が避難を呼びかけるためにいくら玄関たたいても出てこなかった高齢者の方がおられたそうですが、その方は補聴器を外して眠っていたために玄関での騒動にまったく気づかなかったそうです。幸いにして、その方の家は水に浸からなかったために笑い話で済んだそうですが、場合によっては亡くなっていた可能性があります。
 その地域では、その災害の後、夜中に状況が悪くなりそうな予報が出た段階で避難所を開設し、日のあるうちに聞こえの悪い方や身体の不自由な方はそこに避難してもらうようにしたそうです。状況に気づけない、または気づいても行動が難しい方は、できるだけ早めに避難してもらっておけば、仮に避難する必要が無かったとしても、「何もなくてよかったね」と言えるのではないかと思います。
 では、日本語が分からない人にはどうやって知らせたらいいのでしょうか。最近外国から来る人たちの多くはスマートフォンを持っています。そして、自治体の発信する情報も多言語化してきていますので、それで防災メールが受信できれば非難できるでしょう。
 ただ、自治体からの防災メールでは避難しなくてはいけないことはわかっても、いつどこへ何を持って避難すればいいのかまではわかりません。場合によっては、避難という概念がない人がいるかもしれません。そういう人たちに避難準備や災害時の対応を知らせるためのやり方は、まだまだ未整備の部分だと感じます。
 そして、避難の判断は自分でするにしても、本人だけではどうにもできない部分、例えば避難所の開設時期や使える資材や物資の状態など、共助や公助が必要な部分はたくさんあります。
 非常に基本的な話になるのですが、自分で情報をとれる複数の経路を準備しておくこと、そして、ご近所とあいさつでいいので声かけをしていくこと。近所づきあいは面倒くさいという声もよく聞きますが、せめてお互いの顔がわかるくらいにはしておきたいものですね。