大水の災害時の鉄則

 大雨や雨台風など、大水が出るような災害時には早めの避難という鉄則があります。
 お住いの場所が低地や崖の上や下、水の通り道になっている場所などの場合には、雨がひどくなるような予報が出ているときにはより安全な場所に避難を考えましょう。
 雨が降ることは予測できていますし、レーダー解析などから、その雨がどれくらい激しいのかについてはある程度予測がつきます。
 特に夜間に引っかかりそうな場合には、陽のあるうちに安全な場所に避難を完了するようにしておきましょう。
 夜間の移動は、足元が見えませんし、雨の場合には視界もききません。
 危険度はかなり高いと考えてください。
 水の災害ではほとんどの場合予測ができるので、見極めさえできれば命を守ることはそんなに難しくありません。
 普段の排水状況や雨の降り方、そして雨の予報などを確認しながら、どうやって自分の安全を確保するのかを考えておいてくださいね。

【お知らせ】「初めての防災キャンプ」を開催します

 2023年7月22日から23日にかけて、益田市大草町の北仙道公民館で「初めての防災キャンプ」を開催します。
 コロナ禍のさまざまな規制も解除されたことから、初めて全力運転での防災キャンプとなります。
 地震からの避難方法、心肺蘇生、ご飯炊き、食べられる山野草探し、寝るための避難所設置など、本来計画していた内容での初めての防災キャンプ。
 防災に興味はあるけれどどんなことをすればいいのかよくわからないというお子様の参加をお待ちしています。
 対象は小学生全般になっていますが、過去の経験上、小学校4年生以上、外で遊んで暑熱順化済のお子様にお勧めとなっています。
 詳しくはチラシをご確認ください。
 締め切りは2023年7月10日とし、参加者は抽選となりますことをご承知ください。
 自分から行ってみたいというお子様のお申し込みをお待ちしております。

【活動報告】「外あそびごはんの会inみと自然の森」を開催しました

 去る6月25日、益田市美都町にあるみと自然の森で外あそびごはんの会inみと自然の森を開催しました。
この外あそびごはんの会は、外で遊んで一緒にご飯を作って食べるという当研究所のイベントの一つで、今までは街中の公園や河川敷などで行っていましたが、今回は町を飛び出して山の中でやってみました。
山あり、川ありの素敵なフィールドで、たくさんの子どもが集まってくれて、ゲームや飯ごう炊飯、たき火づくりや山と川の自然観察を一緒に楽しむという企画です。
募集人員は20名でしたが、ご家族での参加もあったりして、最終的に未就学児をいれて24名の子ども達が一緒に楽しんでくれました。


 現地では、最初に「キャンプだホイ!」というゲームをやり、その後でスタッフ紹介、そして各班の中でお互いに自己紹介をしてもらい、自然の色探し、音探しをやりました。
 それから飯ごう組と空き缶組に分かれてご飯を研いて水につけ、それからたき火づくり。メタルマッチを使って火をつけるのですが、火を大きくするのがうまくできずに大苦戦!


 ここで2時間ほど使ってしまったので、火が付いた班から順次ご飯炊きに。
 最後までつけられなかった班は、講師の先生につけてもらい、「乾いた葉っぱ」の乾き具合によって火がついたり消えたりするということを身を持って体験していました。
 飯ごう炊飯では、水加減が様々で少し硬めになったり柔らかくなったりといろいろでしたが、初めて直火でご飯を炊いた人もたくさんいたのに、全ての人が炊いたご飯がちゃんと食べられたのは参加者の皆さんのスキルの高さを感じました。


 結局お昼ご飯が13時を回ってしまったので、山の自然観察は取りやめて、14時から川でちょっとだけ遊ぶことにしました。
 川の水はとても冷たくて、大人たちは感覚がなくなるという感じでしたが、子ども達は水に飛び込んでおおはしゃぎ。おっかなびっくり川の中を歩く子や岸から見てるだけの子もいましたが、みんな楽しそうに遊んでいました。


 ただ、終了時間は15時で、バスの都合もあるのでこれは厳守しなくてはなりません。大騒ぎして水から上がると、急いで着替えて暖かいものを飲んで、アンケートを書いてと、どたばたのエンディングとなりました。
 回数を重ねるごとにご家族連れの参加が増えてきているので、今後はご家族で楽しめるような外あそびごはんの会を企画してもいいのかなと思っています。
 ともあれ、今回参加してくださった皆様、相変わらず抜けの多い主催者をしっかりと支えてくれたスタッフの皆さん、そして現地までの送迎バスを安全に運行してくださった第一観光様、会場を快く貸してくださった(株)エイト様、焚火台を貸してくださったアウトドアベースsunpo様、ライフジャケットを貸してくださったペガサスクラブ様に心からお礼申し上げます。
 ありがとうございました。

災害対策用設備を過信しない

 人の命を守ることを目的に、はるか昔から、日本ではさまざまな災害対策用の施設が整備されてきました。
 ただ、最初は人の命を守るための設備、つまり避難する時間を稼ぐためのものという位置づけから、いつのころからか財産がくっついて、「絶対に災害を起こしてはならない」となり、どのような悪条件のところに住む人であれ、命と財産を守ることを目的に整備が進められています。
 でも、自然災害というのは昔も今も人知を超えるものがよく発生しているのですが、大きな災害が起きるたびに「想定外」という言葉が飛び出すという首を傾げてしまうような会見が飛び出したりしています。
 日本は昔から災害と付き合ってきた歴史があります。そのため、その土地にあったさまざまな災害を軽減し、避難する時間を稼ぐような仕組みがあったり、揺れて壊れても簡単に修繕できるような構造を取り入れたりしていました。
 もちろん進化し続けている土木技術のおかげで、昔よりもはるかに被災はしにくくなっているのですが、それでも50年に一度や100年に一度という表現が大雨や台風で頻繁に登場しているところをみると、そういった設備は災害を起こさないためではなく、災害時に人が避難する時間を稼ぐためのものと考えておいた方がよさそうです。
 もちろんさまざまな考え方があるわけですが、安全だと言っておいて被害に遭うよりも、災害が起きるかもと考えて行動する方が自分の命は確実に守れると思います。
大きな堤防であれ、ダムであれ、法面を押さえる設備であれ、完ぺきという言葉はありません。
 もしもに備えて、きちんと安全な場所を確認し、どのタイミングでどういう経路でどこに避難するのかを決めておくようにしたいですね。

【活動報告】すみれ保育園の避難訓練の支援をしました

 去る6月23日、益田市のすみれ保育園で実施された避難訓練の支援をしました。
 この保育園は地震から津波発生に備えた大規模な避難訓練を毎年やっていて、ここ数年は当研究所もこの避難訓練の支援を行って、善かった点や問題点、改善点などを報告書として保育園に提出しています。
 この報告書は職員会議で共有されていて、毎年しっかりとした改善がされていますので、いざというときの対応はかなり的確に行われると、参加するたびに感じています。
 今年も大地震から津波発生、高台への避難という訓練を実施。総勢50名以上の園児の皆さんが、保育士の先生たちに誘導されて近くの益田東中学校に移動していました。
 保育士の先生たちは避難準備をしながら子供を見て、安全確認をしながら誘導をして、と目まぐるしく動く状況の中を的確に行動していく力量が求められます。
 こういった大規模な訓練を実地でやっていれば、訓練でさまざまな事態に出会いますから、本番でも慌てずに対応ができ、子どもの命も先生方の命もしっかりと守れるのではないかと思っています。
 今回もさまざまな改善点はありましたが、改善点は出て当たり前で、時代や状況、想定によってどんどん改善していくことで、災害に強い、命を守れる保育園になってもらえることを願っています。
 いつも聞かれるのですが、実は訓練で何も問題が出なかった方が問題です。
 訓練で問題が出ないというのは、すでに予定調和で訓練をしているということなので、本番ではほとんど役に立ちません。
 いつもの状況から非常時に切り替え、非常時の対応を行うことが、本当の訓練なのではないかなと思います。
 実は、事前に避難経路の安全確認をする方法についてお問い合わせがあったので、無線機を使う方法を提案し、当研究所の無線機をお貸ししたのですが、お貸しするときに設定を間違えて、保育園さんが避難経路の確認で出動させた先生と避難に備えて待機している本体との連絡が取れなかったという問題を起こしてしまいました。
 でも、このことについても、訓練後にどのようにすれば問題が回避できたのかについての検討事例として、先生方が話し合ってくれ、どんな状況でも安全確保という姿勢はブレないなという強い印象をうけました。
 益田市内にはたくさんの保育園があり、それぞれに創意工夫を凝らした保育を行っています。
 でも、災害に備えて、しっかりと子供たちと一緒に実地で訓練をし、専門家を入れて改善点や修正点を見つけ、より安全確保をしようとしているところはそんなにないのではないかという気がします。
 保育園を選ぶときには、普段の保育はもちろんですが、こういった非常時の体制がどのようになっているのか、そしてきちんと対応するための訓練ができているかも確認しておくといいかもしれません。
今回お声がけいただきましたすみれ保育園の先生方、一緒に訓練をしてくれた園児の皆様に感謝します。

まずは体験してみる

 面白いもので、頭がいい人ほど理解ができていても実際にやっていないということが多いなと感じることがあります。
 例えば地震。揺れに耐えうる防御姿勢をしっかりととる必要がありますが、この防御姿勢はいる場所や条件によってさまざまな正解があります。
 ただ、頭で理解しているだけだと、机の下に入るか、頑なにダンゴムシのポーズを取るかの二択になってしまいます。
 実際にやってみると、机の下に入るだけでは頭は守れませんし、ダンゴムシのポーズが常に正解ではないということもわかると思います。
 また、非常用持ち出し袋では、政府の推奨が10kgから20kgなので、それまでなら誰でも持てると思っている人が多いです。
 でも、実際に6kgのリュックサックを用意して背負えるかということをやってみると、背負えない人も結構います。
 実際に体験してみることで、頭の中の想像を異なっていることに気づき、そこから初めて災害対策の行動が自分のものになっていく。
 そんな人が非常に多い気がします。
 頭がいい人は、実際には頭の中で完結してしまっていて、行動に移してみることはあまりしないようです。
 でも、一度でもやってみると、通り一遍の内容ではなくて自分にあった方法を考えるようになります。
 例えば起震車や降雨体験車などが存在するのは、体験を通すことで体そのもので考えるようになるからなのではないかと思います。
 そんなことはわかっている、や、やるまでもない、当たり前、という人はびっくりするくらいたくさんいます。
 では、実際に思った通りに本当に体は動かせるのか。
 まずは体験してみてはいかがでしょうか。

【活動報告】高津小学校で防災クラブを開催しました

 去る6月21日に益田市立高津小学校で、本年度第2回目の防災クラブを開催しました。
 今回は地震を体験できる起震車が益田地区に来ていたので、消防署にお願いして子供たちに実際に地震がどのようなものかを体験してもらいました。
 子ども達が体験した地震は東日本大震災と阪神淡路大震災。どちらも震度7の地震ですが、東日本大震災は海溝型、阪神淡路大震災は活断層型と、発生した原因が異なるために揺れ方も違います。
 最初は遊園地のアトラクションを待つように楽しそうな子供達でしたが、実際に揺れを体験してみるとかなり驚いたようで、起震車から降りてもまだ揺れている気がする子や、他の人が体験しているのを食い入るように見ている子もいました。
 この体験をした後で普段学校でやっている避難訓練での揺れた時に机の下に隠れることができるかや、先生が言われるような避難ができるかについて聞いてみると、「無理!」という回答が返ってきました。
 それまでは漫然とやっていた訓練でも、実際に揺れを体験してみたことで考えるところがあったらしく、すごく真剣に考えていました。
 イメージできなかったことがイメージできるようになってくると、訓練する様子もだんだん変わってきます。今回の起震車体験が今後子供たちの安全確保につながるといいなと考えています。
 今回起震車を配車してくださった益田広域消防本部の皆様、クラブ担当の先生、そして参加してくれた子供たちにこころからお礼申し上げます。

ごはんは復旧指標

 災害後にどれくらいの期間で災害発生前と同じ食事が取れるようになるのかは、結構重要な問題だと思っています。
 電気、水道、ガスなどのインフラが復旧し、自分でいつでも思ったように調理ができる環境になり、自分が思ったような食事時間に食事ができるという状態になるまでには、災害の規模が大きくなればなるほど時間がかかります。
 やらないといけないことはてんこ盛り。そして未来の様子はイメージできず、不安だけが募っていく状態は、精神的に決していい状態ではありません。
 気力がなくなると、復旧作業にも手間取るようになりますし、どうかすると絶望感に満ち溢れてしまう危険も予測されます。
 そうならないように、できるだけ早く、少なくともごはんに関してはいつもの食事に近づけるようにしてみましょう。
 例えば、冷たいお弁当を暖めてみるとか、食べにくいおにぎりをお茶碗に入れ、お湯を注いでお茶漬けにするだけでも、それまでの食事よりはマシになります。
 そして、不思議なことに食事の内容が災害前に近づけば近づくほど、あなた自身の復旧は進んでいます。
 中には普段の食事よりも避難所の食事のほうがいいという人がいるかもしれませんが、冷たいお弁当よりも温かいお弁当、暖かいお弁当よりも炊飯器等で炊いたご飯。そしておかず。
 災害前に食べていたようなごはんを食べることができるようになってくると、少なくとも自分の周りの復旧は進んでいます。
 自分の災害復旧で迷うことがある時には、自分の食事を見てみてください。そうすれば、自分がどこまで復旧しているのかの一つの目安になると思います。

どんなときに避難がいるのかを知っておく

 災害発生時にお住いの地区に対して避難を呼びかけられることがありますが、この避難の呼びかけはその地区に住んでいるすべての人に対して避難しろと言っているわけではないことをご存じですか。
 市町村が発表する避難レベルは多くは地区単位で発表されるので、安全なところも危険なところもごっちゃになって避難を呼びかけられることになります。
 もしも対象地区の人が全員避難所に避難するとしたら、中に入れない人がかなり出てくるのではないでしょうか。
 実際には「避難指示を出した地区のうち、本当に危ないところに住んでいる人、また危ないと思っている人」が対象となっているので、安全な場所にお住いの場合には、そのままおうちで様子を見ればいいということになります。
 ただ、自分の家が安全かそうでないかを知るためには、きちんとハザードマップを見て住んでいる場所ではどのような問題が起きると予測されていて、どんなときに逃げないといけないのかをしっかりと把握しておきましょう。
 あなたの住んでいる場所に対して、行政は個別に呼びかけたりはしません。あくまでも面としての地域に対しての避難情報の発表となります。
 過去には住んでいる地区に避難指示が出たからと言って、安全なおうちから避難所へ移動中に災害に巻き込まれたりした人もいますので、まずはあなたのおうちの周りの危険から把握するようにしてください。

行政の避難所対策

 研修会などで過去の災害での避難所の写真を参加者にお見せすることがあるのですが、それを見た人の感想というのが「どれがなんだかわからない」というものです。
 もちろん写真の雰囲気である程度の時代はわかるのですが、そこに出てくる風景というのは、それを除けばほとんど変化がないものになります。
 大きな体育館のような場所にござや敷物が敷かれていて、不安そうな顔の避難者が無秩序にプライバシーのない状態で過ごしているという状態。
 もしもお時間があるようでしたら、インターネットで検索してみるといろいろ出てくると思いますので見てみてほしいのですが、これだけ災害の多い国なのにもかかわらず、避難所については何の進歩もないのかなとちょっと悲しくなってきます。
 幸か不幸か、新柄コロナウイルス感染症の流行に伴って避難する最初の時点から空間を仕切るということが行われるようになりました。
 その結果は、避難所の収容人員の大幅な減少ということになり、避難所難民といった言葉が登場したりすることになったのですが、そもそも避難が必要な危険な場所に住んでいる人が相当な数がいるということが、貧弱な避難所の状態の大元になるのかもしれません。
 避難する場所があるだけでもいいというのは確かにそうなのですが、それでも難民キャンプでの最低限人道的な生活を送るための基準、いわゆるスフィア基準を下回るような状態は決してあるべき姿ではないのではないでしょうか。
 現在言われている南海地震・東南海地震が起きた時、どれくらいの人が被災者になって避難所に押しかけてくるのかはわかりませんが、人口が都市部に集中してきている現状を考えると、過去の大災害よりも悲惨な状況になることが予測されます。
 避難所は最後の手段と考えて、被災しないと思われる知り合いなどの家や被災地外の宿泊施設、また、そもそも被災しそうな場所に家を建てないなどして、避難所への避難が選択肢の一番最後になるようにすることと、避難所を細分化すること、そして避難所を設置するためのパーテーションやテント、トイレや生活空間の確保など、個人で準備すると持っていない人とトラブルになりそうな部分については、できるだけ行政が資材を準備しておくこと、そして避難所の運営についてはできる限り地元やボランティアに任せていくこと。
 そのためには、平時にいろいろな準備をしておく必要があるはずなのですが、あなたのお住いの自治体は大丈夫ですか。