管理責任を明確化しておく

  

 学校や公民館、集会所や体育館、大規模な寺社仏閣などは、平時はそれぞれの利用がされていますが、災害時には避難所やご遺体の収容所、応援部隊の仮宿など、さまざまなことに転用されることになります。
 もしあなたがこういった施設の管理者だった場合、転用されたときの責任は誰にあるのかについてきちんと明確化されているでしょうか。
 決まっていなかった場合には、かなり高確率でその施設を普段管理している人が災害後も引き続き管理させられる場合が多いですので、災害時にも普段の仕事にプラスしてややこしい仕事がやってくることを覚悟しておきましょう。
 避難所以外の場合には、行政職員や警察、消防、自衛隊、その他入居する団体がきちんと管理してくれるのですが、避難所だけはなぜか施設管理者に押し付けられるケースが多いのです。
 そうならないためには、例えば平時にその避難所を利用する可能性のある人たちを集めて避難所運営委員会を作り、その中で運営手順や管理責任者についてきちんと決めておくことをお勧めします。
 避難所の運営は避難者のことにプラスして、情報や物資の集積所、支援申請窓口などかなり多岐に渡ります。きちんと運営マニュアルややることになれている人がやるのなら問題はないと思いますが、そうでない場合には、自分のことは当座なにもできないことを覚悟しておきましょう。
 ちなみに、こういった避難所に派遣されてくる行政職員は当てになりません。行政職員という看板は背負っていますが、彼らは防災のことについてはほぼ何も知りません。基本的には災害や避難所運営の知識はないと考えておいた方がいいです。
 管理責任を明確化しておくことで、誰が責任者なのかが明確になります。責任者がはっきりしていれば、善かれ悪しかれ行動や判断が素早くできるようになりますので、平時のうちにしっかりとした検討をしておくようにしてください。

【活動報告】研修会「となりのタイムライン」を開催しました

 去る2023年4月8日に益田市民学習センターにて、ワンコイン研修会「となりのタイムライン」を開催しました。
 当日は参加者おひとりでしたが、マイタイムラインの説明から、実際に作っている人たちの実例を紹介し、どのような考え方で作成していけばいいのかについて考えてみました。
 「マイタイムライン」というのは、内閣府や国土交通省が推奨しているもので、来ることが予測される災害に対して、あらかじめどうなったら何をするのかを決め、本番時にはその決めたとおりに行動することで手おくれや漏れを無くすという、時系列にまとめた災害時行動計画です。
 ただ、実際に作成してみると何を書いたらいいのか結構悩むことが多いので、実際に作った人たちのものを参考にすることは、やってみて役に立つなと思いました。このマイタイムラインは、自分が必要とする行動を分解して全て可視化する作業を行うので実は結構大変ですが、一度作っておくとかなり役に立つものなので、その作成方法を知ってもらって、自分用のものを作成しておいてほしいなと思います。
 今回参加してくださった方に、こころからお礼申し上げます。

避難訓練

 避難訓練は少なくとも年に1回はやることになっているところが多いと思いますが、あなたは参加していますか。
 自治会や地区の避難訓練ではそうでもないのですが、学校や施設等の避難訓練だと、なぜか偉い人ほど参加しないという光景が見られます。
 例えば施設長や園長、校長や、担任の先生も参加せずに指示を出していることもよく見られる風景です。
 自分が目を光らせて全員を訓練に参加させるという考え方はいいと思うのですが、実際に自分もやらないと、本番では怪我したり、避難し損ねたり、場合によっては死んでしまったりすることも考えられますので、できる限り当事者として訓練に参加してほしいと思います。
 訓練参加者は、言われることではなく行動を見ています。
 偉い人が真剣にやれば、それは訓練参加者にもしっかりと伝わるので、きちんとした中身の濃い訓練になります。
 訓練の講評は、講評担当の人を毎回ランダムで選んでしてもらうか、当研究所のような防災の専門家に依頼すれば済む話なので、偉いからと傍観者にならずにしっかりと訓練に参加してください。
 新年度に入って、これから避難訓練を行うところも多いと思います。
 毎年同じような訓練になるかもしれませんが、その場所にあった知見を取り入れて行う訓練なら、必ず本番で役に立ちますから、訓練を目的にするのではなく、訓練によって得られる成果を目的に取り組んでほしいなと思います。

まずは身の安全を確保する

机の下でダンゴムシ
机の下でダンゴムシはお約束です

 防災の普及啓発をやっていると、災害に対してどんな備えをしたらいいのかと聞かれることがよくあります。
 災害に対してどんな備えをするのか、という問いに対する回答は結構難しくて、人によってさまざまな回答をすると思いますし、恐らくはどの回答も間違っていないと思います。
 筆者なら、まずは自分の身の安全を確保するための方法を身に着けることを推奨します。どんな備えでも、本人が死んでしまったら何の役にも立ちません。まずは自分の安全確保が最優先になるからです。
 安全確保とは、物理的安全、精神的安全、身体的安全になると思っていますが、災害発生時にはまず身体的安全を確保することが優先であり、そのための方法を学ぶことが必要です。
 東日本大震災の時に流行った「津波てんでんこ」は、まずはそれぞれが自分の安全を確保するための言葉です。地震に対する備え、準備、対策、水害や台風、津波に対する情報収集、準備、対策をしっかりと行っていくことが大切になると考えています。
 そして、そのための訓練は怠らないようにしてください。
 訓練はうそをつきません。
 身の安全を確保するための行動は、普段から意識していなければ行うことは難しいですので、物理的な備えを行うのと同時に、想定される被害に対して安全確保をするための訓練も、しっかりと行うようにしてください。

避難所と人目

 何らかの理由で避難所生活をしなければならなくなった場合、いろいろと困ることが起きてきますが、その中でも他人の目については対策を講じておく必要があります。
 普段の生活では、例えば家にいたり、自分の部屋に入ったりすれば他人の視線を防ぐことができるのですが、避難所ではそういうわけにいきません。
 24時間常に人目にさらされる生活を送ることになりますので、それが嫌な場合にはしっかりとした対策を用意しておきましょう。
 具体的には、安いものでいいので自立型のテントを一張準備しておきましょう。それがあるのとないのでは、自分の中の安心感がまったく異なります。
 テントがあれば、最悪避難所以外でも安全な場所があれば、そこで張って生活する場を作ることができます。
 行政が避難所に届けてくれる目隠し用の壁は、数が少ない上に視線を遮るのには中途半端な高さであまりあてにはなりませんので、当座の安全な場所として、自立型テントを非常用持ち出し袋に入れておくことをお勧めします。

【活動報告】「ちりめんモンスター図鑑づくり」を開催しました

 2023年4月3日、益田市のよつばキッズスクール様で、「ちりめんモンスター図鑑づくり」を開催しました。
 ちりめんモンスターとは、和歌山県にあるカネ上様きしわだ自然資料館様と思いついたいろいろと混じったしらすになった海の生き物たちのことで、当研究所のちりめんモンスター図鑑づくりはしらすになった海の生き物たちをピックアップし、一枚の紙にまとめていくものです。
 当日は30名以上の子供たちが集まってくれて、1シート8種類のしらすになった海の生き物たち、つまりちりめんモンスターを見つけては木工用ボンドで貼り付けていき、人によっては一枚では足りずに台紙を次々と持って10種類以上のちりめんモンスターを並べていました。
 ちりめんモンスターの図鑑を見ながら、あれこれと種類を考え、迷ったり該当するものが見つけられなかったりしたものを質問したり、また図鑑を調べたりして、気が付くと想定していた時間の倍である2時間も図鑑作成に熱中してくれて、最終的には全員が一枚のシートができたところで終了としました。
 人によって好奇心は異なると思いますが、普段意識していない海の中のさまざまな生き物について思いを馳せてもらえるとうれしいです。
 今回参加してくれた子ども達、そして、今回の研修会を快く許可してくださったよつばキッズスクールの先生方に感謝します。

ちりめんモンスターの仕入れ先:カネ上(カネ上のウェブサイトへ移動します)
きしわだ自然資料館(きしわだ自然資料館のウェブサイトへ移動します)

【活動報告】「春はじめこどもまつりin万葉公園」に出展しました

 2023年4月2日に益田市の万葉公園で開催された「春はじめこどもまつりin万葉公園」にワークショップを出展しました。
 当日は、諸般の事情で蚊取り線香作りとチリモン探し、そして缶バッチ作りの3つのワークショップを担当者一人でを行うという無謀なことをやってしまいましたが、それでも6名の方にワークショップを体験していただきました。
 初めての屋外有償イベントということでいろんな騒動もありましたが、今後も機会があれば参加してみたいと思っています。
 当日ご来場くださった皆様、当日お手伝いしてくださった皆様、そしてこのイベントを企画・運営されました皆様にこころから感謝します。

虫対策と救急用品

 暖かくなってきてさまざまな虫が登場する季節となってきました。
 自分の家であれば何らかの虫対策をしていると思うのですが、災害後の避難所では、この虫対策は結構深刻な問題になります。
 避難所となる施設に網戸があればいいのですが、学校の体育館等にはそういった虫よけの装備を持っていない施設もたくさんありますし、持っていても災害で壊れてしまっている場合もあるでしょう。
 そうすると個人での虫よけ対策を行うことになるのですが、避難時に持って出る非常用持ち出し袋などに虫よけを入れている人がどれくらいいるのかと考えてしまいます。
 救急用品に入れるものとして、虫よけと虫刺されの薬は入れておいた方が安心だと思います。避難所によっては蚊取り線香を焚いたり、虫の寄らないスプレーを出入口に撒いたりすることもあるのですが、体質的にそういったものがダメな人もいるので、最終的には個人的な装備に頼ることになります。
 また、虫刺されの薬も避難所に置かれていないことの多いアイテムの一つですので、一緒に準備しておくといいでしょう。
 非常用持ち出し袋の救急用品には何を入れるのかについてはいろいろと考えることも多いのですが、普段は気にならないようなそういった部分も考えて準備しておくといいと思います。

効率化と防災

 効率化を求めると、基本的に巨大化・集中化するようですが、こと災害対策で考えると、ある程度以上の効率化や集中化は避けたほうが安全ではないでしょうか。
 例えば、2018年9月6日に起きた北海道胆振東部地震では、効率化による大型火力発電所が停電したことをきっかけとして電力供給力が下がってしまい、ブラックアウトが発生しました。もし火力発電所の規模が中小規模で複数個所に点在していれば、ひょっとしたら防げた事故かもしれません。
 また、極端に権限を集中化させることにより、その権限を持っているところが失われてしまうと一切の対応ができなくなってしまいます。
 市町村合併を進めた結果、かなり広域な範囲を一つの市町村が管轄することになりましたが、例えば市庁舎が災害で被災すると、被災した市の災害対応は完全に停止してしまいます。
 分散化していればしているほど、災害時に受けるダメージを軽くすることはできるのですが、分散化すれば、当然維持するのに必要となるいろいろな経費は増えますので、分散化させればいいというものでもないと思います。
 効率化を求めながら災害時にも強い体制を作ることは、さまざまな分野で大切な問題だと思うのですが、現状では極端な効率化か極端な分散化かという二極論になりがちです。効率化と分散化のバランスを取りながら、いざというときにもできる限り受けるダメージを減らし、すぐに復旧にかかるための手順書がBCPです。
 効率化を求めるのであれば、いざというときに備えたもっとも悲惨な状況での想定で作られたBCPを基にして行うことが、これからの世の中には必要になってくるのではないかと思っています。

暗闇を体験する

 日本に住んでいると、案外と暗闇に出会うことが少ないものです。 
 夜の街を歩いていても街灯はありますし、家の中でもどこでも、ほとんどの場合きちんと灯りがあって、暗闇があるという状態自体が珍しいかもしれません。
 災害時には多くの場合電気の供給が止まってしまうため、本当に真っ暗な中で生活をすることになりますが、普段灯りのある生活をしている人にとって、灯りがないというのはものすごい恐怖になります。
 暗闇というのは、人間にとって本質的な恐怖を感じるもので、それを排除するために現在のような明るさを手に入れたのかなと思っていますが、暗闇を知らないというのも問題があると思います。
 そこで、当研究所の防災キャンプには暗闇体験という項目を作り、実際に暗い建物の中を歩いてみるということをやってみます。
 もちろん完全に真っ暗なわけではなく、非常灯はついていますし、肝試しではないので、懐中電灯や持ち歩ける灯りは持って歩きます。
 それでも、普段とは異なる環境になるためか、怖がったり、友達同士で団子状になったりして、暗いところを歩くというのがどういうことなのかについていろいろと考えるようです。
 災害本番ではほとんど灯りのない状態になっているとは思いますが、そんなときでもこういった暗さを覚えておけば、パニックになることは少ないのかなと思います。
 街中で完全に灯りのないところを歩くのは危険が伴いますが、例えば家族などでキャンプ場などに出かけた時、夜のキャンプ場を歩いてみると、普段とは違った体験ができると思いますよ。