イノシシと豚熱

 昨年の年末くらいから、仕掛けている檻にイノシシが寄らなくなりました。
 猟師とイノシシはお互いにいかに捕まえるか、捕まらないかを競っているので、檻にかからないのは仕方がないのですが、イノシシの姿が見えなくなったのです。
 当研究所が現在檻を仕掛けている場所は普段からさまざまな動物が行きかう交差点のような場所ですので、つかまらないにしても姿を見ることは多いはずなのですが、まったく姿を見せなくなったのです。
 聞いてみると、地元が豚熱の流行地域に入ったとのことで、捕獲されたイノシシのうちの7割が豚熱陽性の反応が出ているらしいとのこと。
 豚熱は豚やイノシシにかかる病気ですが、これが地域のイノシシに蔓延しているらしく、あちこちでイノシシの死骸があり、行政機関への通報が続いているそうです。
 地域からイノシシがいなくなると、有害捕獲をしている方としては助かるのですが、ジビエとして有効活用しようと考えている場合には非常に困ったことになります。
 捕獲されたイノシシは、現在全頭検査されて豚熱が陰性なら肉として使うことができるそうですが、7割が陽性だと、捕獲しても肉として売れずに処分の経費だけがかかるというリスクが大きいことになってしまいます。そのため、猟師さんもオリの稼働を止めている状態だそうです。
 猟師自体の高齢化もあり、仮に数年後に豚熱が収まった後、イノシシの捕獲をするための技術が失われてしまうのではないかという懸念はありますが、とりあえず被害がでなくなったことは喜ばしいことなのかなとは思っています。
 ただ、通常はある動物がいなくなると他の動物がその立場にとって代わることが多いですので、イノシシがいなくなった後に何が悪さをするのかというところが気になるところです。