死なないこと、怪我しないこと

小学校の防災クラブで実施している応急手当。普段でも使えるものをしっかりと学ぶ。

 災害時に最も重要なことは死なないこと、そして怪我しないことです。
 そのための耐震補強だったり、早めの避難だったり、場合によっては被災地外の遠方への避難ということも考えられるわけです。
 ただ、死なないこと、怪我しないことを達成するためには日ごろからの準備がかなり大切になります。
 でも、重要度は高いがいつ来るかわからない災害への備えは、大丈夫かもしれないという気持ちにとらわれることが多くてどうしても後回しにしがちです。
 優先度を上げるためには、周囲の目などのさまざまな補助が必要になりますので、例えば自治会や自主防災組織、行政などは災害時に余計な手を取られないためにしっかりと手助けをしていくことが大切です。
 自治会や自主防災組織であれば、家具の固定方法や実際に各家庭を回って一緒に対策をする、行政であれば耐震補強や耐震診断に対して信頼できる業者の紹介や対策にかかる経費の補助など、その気になれば簡単にできることがたくさんありますので、対策が必要だということから一歩踏み出し、対策を実際にやろうというところにまでなってほしいと思います。
 最終的に自分の身を守るのは自分しかありませんが、自分の身を守るためのいろいろな対策の手伝いは誰にでもできます。
 災害時に死んだり怪我したりする人が増えると、消防や警察、自衛隊や行政といった専門的な活動をする部分に負担がかかり、対応が遅れたり対応できないことも起こりえます。
 不幸にして死んだり怪我したりする人を0にすることはできないかもしれませんが、対策を講じることで0に近づけることはできますので、お互いが助かるような手立てを考え、実際に行動して、いざというときに死なない、怪我しないようにしていきましょう。

【お知らせ】国内希少野生動植物種に新たに15種が追加されます

 絶滅の恐れがある野生動植物の種の保存を目的として、環境省が捕獲・採取や譲渡、販売などを禁止している「国内希少野生動植物種」は最近追加される動植物が増えてきていますが、この1月11日から新たに15種追加されることになりました。
 有名なものではゲンゴロウと二ホンザリガニが入っています。
 二ホンザリガニは北日本以北に生息しているのですが、もともと数が減っているのが心配されていたものなので妥当だと思いますが、ゲンゴロウの追加が意外な感じがしました。
 考えてみると、昔は普通に畔や溝、川や池などでよく見かけていたタガメもすでにこの国内希少野生動植物の一つになっています。
 護岸や圃場整備で土がなくなっていることや、さまざまな生物が生息できなくなっていることを考えると、肉食昆虫であるゲンゴロウも数が激減していくのは予測がつく話です。
 このままいくとどうなるのかなという気がしますが、割とその辺にいたゲンゴロウも絶滅するかもしれない種に入ってしまったのが驚きです。
 ゲンゴロウの全ての種類が対象になっているわけではないようですが、ゲンゴロウを捕まえるときには種類をしっかりと確認したほうがよさそうです。
 ちなみに、指定後にこれらの国内希少野生動植物種を許可なく捕獲・採取などした場合には、個人で5年以下の懲役または500万円以下の罰金、法人では1億円以下の罰金となっていますのでご注意ください。
 また、ネットオークションやネット販売などで出品されたことに気づかれた場合には環境省に報告してほしいいとのことなので、もし見かけたら環境省までご一報をお願いします。

絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行令の一部を改正する 政令の概要(環境省のウェブサイトへ移動します)

ゲンゴロウ(wikipediaに移動します)

二ホンザリガニ(wikipediaに移動します)

地域の中の復旧支援ボランティア

家から災害ごみを出すのもボランティアなら、集積所から処分場に移動させるボランティアもある。

 災害が発生すると全国各地から復旧支援を手伝ってくれるボランティアがやってきます。ここ数年はコロナ禍で募集する地域が限定されている状態ですが、それでも被害のなかったところから被害のあったところへの人的支援は行われていて、このまま移動制限が解除されていけば、また災害復旧支援ボランティアがあちこちから集まってきてくれるのではないかと思っています。
 でも、できるだけその地域でできる部分はその地域で補うことが望ましいので、せめて地域の中の被災者の支援は地域でできるようにしておきたいものです。
 高齢や体調不良でボランティアはできないという方もいらっしゃいますが、ボランティアは力仕事だけではありません。
 例えばお困りごと調査とか、買い出しや引っ越しの手伝い、役所の手続きの手伝いなども立派なボランティアです。こういった仕事は人の生活や信用にかかわる部分なので、そういった部分を行政や社会福祉協議会といった組織に押し付けがちなのですが、そういったところはより深刻な問題を抱えている人が優先されるため、それまで普通の生活ができていた人の支援はどうしても後回しになります。
 結果、被災者の中には手続きや方法、説明の仕方がわからず復旧がまったく進まないうえに、どうかすると悪徳業者に引っかかってしまう人が出てきたりします。
 そういった人をできる範囲でお手伝いすることは立派なボランティアだと思います。
 また、体の不調などで自分が動きにくい場合には、例えば軽トラックがあればそれを貸し出すというのも一つのボランティアです。
 被災後の片づけでは、どうしても軽トラックが必要にあることがあるのですが、軽トラックがなかなか回ってこないのが現状です。
 そこで、被災しなかった軽トラックを、地域に貸し出すことで、被災した人も気持ちが折れる前に片付けに取り掛かれます。
 カーシェアリング協会などが被災地向けの車の貸し出し事業をしてはいますが、車の台数は十分ではなく、配備される場所も限られるため、まだまだ地域の力が必要な部分ではないかと感じます。
 温かいご飯を炊きだすのも立派なボランティアです。大鍋は無理でも、地域のご近所に配るくらいの知るものなら作れるかもしれません。ちょっとした温かいものでも、基本的に冷たいものしか提供されない被災地の食事では涙の出るほどうれしいものなのです。
 できない理由を探すのは簡単なのですが、何かできることはないか探してみると、支援が必要なことはごろごろと転がっています。
 自分のできる範囲で構わないので、少しだけでも、どんな形でも被災者のお手伝いをすることは立派なボランティアであることを知っておいてほしいと思います。

ペンダントライトは固定する

こういうやつがペンダントライト。地震ではかなり激しく揺れるし、割れるし落ちることもある。

 天井からつるしている照明のことをペンダントライトといいますが、地震の際にはこれが揺れて当たって壊れて破片が室内に四散することがよく起こります。
 最近は蛍光灯からLEDに代わってきているので以前ほどではないと思いますが、それでも天井近くから破片が散ると、部屋中の床に割れたものが散らかって歩くのに危険になります。
 本当はペンダントは天井直付けタイプの照明、あるいは壁に埋め込み式の間接照明に変更したほうが安心なのですが、もしも難しいようなら、ペンダントライトの傘をテグスなどで固定して動かないようにしてしまいましょう。物理的に動かなければものに当たることがありませんのでペンダントライトの傘が割れることもありません。
 動かないように、最低でも4か所、十字になるようにテグスを取り付け、天井に固定することで、ある程度の安全を確保することができます。
 当研究所所長の家でも、古い寝室の照明を取り換えたことがありましたが、照明用コンセントの形状が新しいものなら取り換えも簡単にできます。
 予算や手間の問題はありますが、落下物で怪我しないように、できる限り天井の照明が動かないような対策をしておくようにしましょう。
 余談ですが、直管型蛍光灯を使っているような事務所や倉庫の場合には、飛散防止フィルムが巻いているものか、飛散防止用のケールが売られていますので、そういったものを使って、地震の際に割れて飛散しないような対策をしておいてください。

【終了しました】研修会「ハザードマップの読み方を知ろう」を開催します。

 あなたは自分がいる場所が、どのような災害時にどのような危険があるのか知っていますか。
 簡易的にそれがわかるのが、市町村が作成しているハザードマップです。
 このハザードマップ、きちんと内容が理解できると非常に効果的に自分の安全確保ができるのですが、残念ながら配るだけで読み方の説明がきちんとされていないので、ちゃんと読まれていないことが多いようです。
 今回は、危険や避難判断の基本となるこのハザードマップの読み方についてやってみたいと思っています。
 「ハザードマップってなんだ」という方から「この部分はどう読めばいいのか」など、初歩の部分からちょっとマニアックな話まで、ハザードマップを見ながら一緒に学んでみたいと思っています。
 準備の都合がありますので、できれば事前申し込みをお願いします。
 興味のある方のご参加をお待ちしております。

おかゆを鍋で炊いてみる

七草がゆ。シンプルで簡単に作れるけれどおいしい。

明日は七草がゆの日です。
胃腸への負担を少なくし、体の調子を整えるためにおかゆを食べるのですが、由来については諸説あるようではっきりとしません。
ただ、せっかくおかゆを食べるのであれば、鍋で作ってみてはどうでしょうか。
災害時にはカセットガスで食事を温めることになりますが、カセットガスでおかゆを炊いてみるのです。
ご飯を炊くのは難しくても、おかゆはあまり失敗がなく炊くことができます。
当研究所のやり方は、
1.ご飯1に対して水5を準備
2.鍋に1の水を入れてから研いだお米を加え、30分まつ
3.鍋にフタをして火にかける。火力は強火。
4.沸騰したらフタを外して弱火にし、柔らかくなるまで炊き上げる
5.七草は別茹でしてから塩をかけて刻み、水気を絞って炊きあがったおかゆに加えます。

途中でかき混ぜてしまうとねばっこいおかゆになることがありますので、火力調整で焦げ付かないようにします。
少し厚手の鍋なら、焦げることはあまりないと思います。
作り方はいろいろとあると思いますが、せっかく作るのであれば非常時の練習を兼ねて鍋を使っておかゆを炊き一年の平穏を願ってみるのも面白いのかなと思います。

家具の固定の考え方

 地震に備えて行う対策の一つに家具の固定があります。
 家具が倒れてけがをしないために行うのですが、激しい揺れになると、いくら固定していても固定部分が外れて倒れてくる可能性はあります。
 だからといって家具の固定をしないのは本末転倒ですが、この家具の固定は最初の大きな揺れで家具が倒れることを防ぐのが一番の目的だと考えてください。
 一番最初の揺れが一番大きな力がかかりますので、そこで家具が倒れなければ、家具が倒れてこない場所まで逃げるだけの時間を稼ぐことができます。
なので、家具の固定の考え方としては、
1.いる時間の長い部屋にはできる限り家具を置かない
2.家具を置くなら座っているときの肩の高さ以下のものにする
3.家具の広い向きは倒れた時に扉の開閉を妨げない場所にする
4.固定具は複数使う
ということになります。
 特に台所などは食器棚や冷蔵庫など、重量があって大きく倒れやすいものが多いですので、家具は必ず固定して、台所から逃げるための時間を稼げるようにしてください。
繰り返しますが、家具の固定は家具が倒れないようにするためではなく、家具が倒れてくるまでの時間稼ぎのために行うものです。
 もちろん固定した結果倒れなくなるのが一番いいのですが、固定しても「倒れてくるかもしれない」と考えて倒れるまでの時間稼ぎ、そして倒れても出入口を封鎖しない配置を考えるようにしてください。

プロがすること、アマチュアでもできること

地震対策では、屋根のブルーシート張りは覚えておいたほうがいい作業。

 大災害時にはなかなか救援は来ない、というのが多くの人の認識になってきているのではないかと思います。
 それに備えて、個人や企業に始まって、自治会や自主防災組織、消防や警察、自衛隊などのさまざまな組織が訓練やシミュレートなどをしているわけですが、訓練を見ていてちょっと違うんではないかと思うことがあります。
 もちろん、さまざまな想定に備えて準備することは大切ですし、できる限り訓練しておくことはとても大切です。
 ただ、個人レベルやアマチュア集団がいくら頑張ってもプロには勝てないという分野が厳然と存在しているので、そういった分野では、アマチュアはどうやってうまくプロに引き継ぐかという視点で訓練をしたほうが効率的なのではないかと考えることがあります。
 例えば、倒壊家屋からの救助訓練。よくマスメディアで警察や消防が訓練したことが報道されていますが、同じような訓練を個人や自治会、自主防災組織がやることはあまり意味がないと思います。
 個人や自治会、自主防災組織が考えるべきはいかに倒壊家屋を出さないかという部分の実践や普及、啓発活動であり、倒壊することが前提というのは本末転倒なのではないでしょうか。
 同じように、応急処置もそうです。専門家に届けるまでに命をつなぐために行うのが応急処置であり、そこで専門的な処置まで行う必要性はありませんし、知識だけの素人が手を出すと悪化してしまう場合も多々あります。
 アマチュアが持つべきは、発生することが予測される被害をいかに少なくするかという事前の対策の徹底と、発生した被害をそれ以上拡大させずにプロに引き継げるかという部分をどうするかという視点です。
 自主防災組織設立の発端となった阪神淡路大震災で、建物倒壊により即死しなかった人たちの多くが地域の人に助けられたということは事実です。
 ただ、その当時は消防団がしっかりと機能していたことや地域コミュニティがきちんと確立していたこと、そして例えば家の構造や住人の行動、周りの資機材の存在をある程度地域の人が知っていたことが救助ができた根本部分にあります。
 当時できたからといって、高齢化が進み、人の交流が途切れがちな現在で同じことができるとは思えません。
 同じことをやろうとするなら、まずやるべきなのは地域コミュニティ、つまり顔のわかる関係を取り戻すこと。そして、地域に住み、地域で仕事をしてくれる若い人を増やすことです。そして、自分たちでできることとできないことの線引きをしっかりと確認しておくことが求められます。
 自分たちでできることは日ごろからきちんとこなしておくことで、プロの仕事がしやすいようにしておくことが、災害対策のプロ以外のすべての人、つまりアマチュアがやるべきことなのではないでしょうか。

自分の安全を確保する

災害時に最優先すべきはあなたの命であることは昨日書きました。
災害が起きると、なぜか人の心配や災害後の生活の心配をしてしまう人が殆どですが、あなたの命が危険でないという保証はありません。
災害が起きたら、最初はあなたの安全確保が最優先です。
周辺の状況を確認してあなたの安全確保ができてから、はじめて他の心配をしてください。
そして、安全確保は災害が収まるまでは最優先であることが続きます。
一度安全が確認されたとしても、その安全が続くとは限りません。常に周囲の状況は確認しておく必要があります。
多くの人は無意識に自分は死なないと思っています。その前提で、他のことを心配してしまうのですが、自分が死ぬかもしれないという想定をもって行動するようにしてください。

災害時にしないといけないこと

 災害時にしないといけないことはいろいろとありますが、もっとも大切なことはあなたの命を守ることです。
 非常用持ち出し袋は、あなたの命を守り、つなぐために準備するものですが、それを持って避難することが最優先ではありませんから、状況によっては、非常用持ち出し袋を取りに行くことが危険につながることもあると思います。
 優先すべきはあなたの命を守ることであり、緊急時にはそれを前提にして行動を決定する必要があります。
 よくあることですが、例えば水害などで早めに避難した後、まだ大丈夫だからと自分の大切なものを取りに戻れるのではないかと考えてしまうことがあります。
 この時の思考は、自分の命は守れているから、次に優先されるものをどうやって守るかというものになっていますが、状況が収まっていない以上自分の命を守ることを最優先することは変わっていません。
 ここを勘違いしてしまうので、安全地帯から移動して被災してしまう人が出てしまうのです。
 災害時に最優先でしないといけないことは、あなたの命を守ること。
 そのことを、特に災害発生時には忘れないようにしてください。
 ひょっとすると自分が死ぬかもしれないという想定で、行動を考えてほしいと思います。