昨年改正された避難レベルですが、その中のレベル3に「高齢者避難」というのがあります。
改正前は「避難準備・高齢者等避難開始」という名称でしたが、「避難準備が目立っているのはいかがなものか」という偉い人達の議論の結果、高齢者避難からも「開始」が無くなってしまいました。
ともあれ、高齢者等避難自体は改正前も改正後も変わりません。
「このまま雨が進むと逃げる必要性が出てくるから、問題のある地域に住んでいる高齢者等準備に時間のかかる人は避難を開始して下さい」という意味合いですので、該当する人は準備して避難しましょう。
もちろん健常者であっても早めに避難することは原則ですが、わざわざ「高齢者等」と謳っているには意味があります。前にもちょっと触れましたが、この「等」には高齢者の他に、障がい者や妊婦、乳幼児連れといった、準備にも移動にも時間がかかる人全てが含まれています。
高齢者と若い人で考えてみたらよくわかるのですが、若い人と高齢者が同じスタートで準備したら、事前準備をしっかりとしていない限り、動きの速い若い人の準備の方が先に終わります。
そして、移動するスピードも若い人の方が速いですから、避難所にたどり着くのも若い人が先になります。
同時スタートになると、高齢者等が避難所にたどり着いた頃には、若い人で一杯で避難所に入れないという事態が起こります。
でも、実際に避難所で手厚い支援が必要なのは若い人ではなく高齢者等に該当する人達なので、避難所に居る人と支援が必要な人がズレてしまうという問題が起こります。
そこで、時間のかかる人達には早めに避難準備を始めてもらい、準備ができ次第避難をしてもらうというのが、この「高齢者等避難」に込められている意味なのです。
もちろん、早く発表されるということは空振りの確立もそれなりにあります。でも空振りでも「何もないのに避難させやがって」ではなく「たまたま何もなくてよかったね」と考えて、馬鹿正直に発表されたら避難をしてください。
人を安全に避難させ、そして必要な人を確実に避難所に収容するための警戒基準。
それが高齢者等避難だと覚えておいてください。
月: 2022年5月
【お知らせ】「令和4年度災害ボランティアセンター運営者養成講座」が開催されます。
島根県社会福祉協議会様の主催する表記の研修会が令和4年6月26日に浜田市のいわみーるで開催されます。
この研修会は毎年開催されていますが、被災した地元の人達と一緒になって災害ボランティアセンターを運営するための意義、ボランティアと被災者を繋ぐコーディネーターの役割・視点を理解して被災者本位の支援活動を行うことのできる「災害ボランティアセンター運営者」を養成することを目指して開催されており、災害支援ボランティアに携わる人であればかなり参考になると思います。
今回はZOOMによるリモートも選択できるようです。
詳細についてはリンク先をご覧ください。
令和4年度 「災害ボランティアセンター運営者養成講座」(島根いきいき広場のウェブサイトへ移動します)
梅雨時期の大雨情報
天気が読みにくい日が続いていますが、2022年6月1日から気象庁が線上降水帯予想を発表することにしたそうです。
線上降水帯は大雨をもたらす雲が次々に沸き、気象衛星の写真などではまるで線に見えることからこの名前がついています。
ここ最近の大雨は、これが原因で起きているものがかなりあるようなので、事前にこういった情報が出されることは安全な避難を考えたときに大きな武器になると思います。
ですが、今回はとりあえず半日前程度で「中国地方西側」といったざっくりとしたエリアについて予想を出してみるとのこと。
最終的には都道府県単位を目指しているようですが、元々どこにできるかわからないものを予測するのですから、それだけでもすごいことだと思っています。
線上降水帯ができると、できた部分では確実に大雨が降ります。この予想が出たら、こまめに気象情報をチェックして、雨雲レーダーなどで線上降水帯の気配が出たら、危険な場所に住んでいる人は避難の準備をするようにしてください。
ちなみに、避難情報を発表している地方自治体も私たちも、手に入る情報に差違はありません。その情報が出たらどうするかを決めてあるかないかだけの違いなので、気象庁の情報や都道府県等の土砂災害警戒情報を見ていると、避難情報が出そうかどうかの予測も可能です。
情報を上手に使って、安全に避難できるように準備して下さいね。
線状降水帯予測の開始について(気象庁の報道発表資料のウェブサイトへ移動します)
顕著な大雨に関する気象情報(気象庁のウェブサイトへ移動します)
【お知らせ】災害時外国人サポーター養成研修(西部会場)が開催されます
令和4年6月5日に鹿足郡吉賀町で令和4年度災害時外国人サポーター養成研修が開催されます。
これは災害時に日本語を充分に理解できない在日外国人の人をサポートする人を養成する講座で、毎年開催されています。
去年はオンライン開催だったのですが、今年は時期を早めて、会場で実施されるようです。
ここでは難しい行政用語をいかにわかりやすい日本語に翻訳してお知らせするかということと、実際に派遣されたことを想定しての実践訓練もあります。
今年は避難所設営訓練もあるようですので、興味のある方は是非ご参加下さい。
募集方法や締め切り日などの詳しいことは、以下のリンクからご確認下さい。
https://www.sic-info.org/event/post-22193/(しまね国際化センターのウェブサイトへ移動します)
缶詰ご飯とアルファ米
一昔前までは、ご飯の入った缶詰が割とよくあちこちでみることができました。
当研究所でも、たまに訓練で使うことがある程度にはメジャーだったのですが、最近ではほとんど見ることはなくなりました。
代わって出てきたのがアルファ米です。
水を加えるだけで食べることが可能なアルファ米は、軽くて保存に場所も取らず、缶詰ご飯ほど手間もかからないため、あっという間に防災での備蓄の基本となってしまいました。
防災コーナーに行くと、売られているご飯はほぼ100%アルファ米で、缶詰ご飯を見たことがある人は少ないのではないでしょうか。
缶詰ご飯は加熱してご飯をアルファ化しないと食べられないため、熱を加えるという手間が必要になります。そして、保存に場所を取る上に重たい。
そういった理由で、最近では実店舗で見ることはあまりないのではないかと思っています。ただ、手間はかかりますが味はおいしいですし、缶詰なので劣化もしにくいですから、家に置いておく防災備蓄品として準備するのはありかもしれないなと思っています。
味付きご飯や丼ものになってしまうのが残念ですが、加熱できる道具とセットで備蓄しておいてみてもいいのではないでしょうか。
又、水分も一緒に補給できる「飲むご飯」や「おかゆ」の缶も販売されているので、食べにくかったり、なるべく荷物を減らしたい人は、そういったものも選択肢にいれておくといいと思います。
アルファ米だけでは味気ないと思っている人に、ちょっと変わり種ということで缶詰ご飯のお話でした。
逃げる? 逃げない?
地震はともかく、予兆がある台風や水害の場合には、高齢者避難や避難指示が致命的な被害が発生する前に予め発表されると思います。
行政としては、○○地区という言い方しかできないので、「○○地区に避難指示を発表」といった表示になるのですが、では、○○地区の人は全員がその場から避難しなくてはいけないのかというと、必ずしもそうではありません。
同じ地区内でも、急いで逃げなければ大惨事になる場所もあれば、避難せずに自宅待機している状態で充分だという場所もあるでしょう。
ただ、その判断は行政がするのでは無く、避難を判断する各個人が個別にやらなければならない作業です。
お手元に行政機関が作成したハザードマップや防災計画書を見ていただくとわかりますが、指定避難所には、とてもその避難所に収容しきれないだろうという人数が割り振られていることがあります。
これは、該当する地区の人口を直接当てはめてしまっているだけで、実際に収容できるかどうかは問題にしていません。
なので、実際には災害が発生しそうだからといって避難したら避難所に入れなかったといった出来事が発生することもよくあります。また、家はなんともなかったのに避難中に遭難してしまったという事例も、自分が避難すべき対象者かどうかをきちんと確認していなかったことが原因だといえます。
お手元のハザードマップと、今自分のいる場所をしっかりと確認してもらい、該当する災害で避難すべき場所にいるのかどうかをしっかりと精査し、必要に応じて避難するようにしてください。
ペットの補給品問題
ペット連れでの避難。ペットを飼っている人にとっては割と常識になってきていても、受け入れる側である避難所運営や避難者にとってはあまり常識にはなっていないようです。
そのため、ペットの隔離場所が人の通りの多いところになったり、飼い主がペットを放置して鳴き声で周囲に迷惑を掛けたり、ケージに入れたままなので中が糞尿で汚物まみれになってしまったりと、かなり問題を引き起こしているなという気がします。
実際、ペット同伴可の避難所とペット同伴不可の避難所を分けて設置している例も出てきているようで、命に貴賎はないとはいいながら、なかなか難しい問題になってきています。
その上で問題になるのが、ペットのご飯やトイレのことです。
避難所では、当たり前ですが人間の避難にしか対応していません。つまり、ペットのことは自分で全て準備しなければいけないのですが、それが理解できている飼い主はあまりいません。
ペットの食事を何とかして欲しいといったり、排泄物について避難所運営側に処理させたりといった、そもそも同伴避難が理解できていない飼い主が非常に多いです。
避難者の補給でさえままならない中で、ペット関係の補給がされるわけはありませんので、自分の非常用持ち出し袋の他に、ペット用の非常用持ち出し袋も準備しておかなければなりません。
ただ、ペットを飼っている人には高齢者の方も多いです。自分の非常用持ち出し袋でさえ作れない人が、ペット用の非常用持ち出し袋を作れるとも思えませんので、何か対策を考えておく必要があります。
ペット専用の避難所を作るとか、どこかにペット用の備蓄をしておくとか、ペット保険があるのですから、ペット用の防災備蓄倉庫を作ってもいいのではないかと思います。行政主導というわけにいかないと思いますが、愛好家の皆さんで検討する必要がある時期に来ているのでは無いかという気がします。
あなたのペットの非常用持ち出し袋は準備ができていますか。そして、自分の非常用持ち出し袋と一緒に持ち出せるようになっていますか。
今一度、点検をお願いします。
値段のワケを考える
折からの災害続きで、百円均一ショップでもさまざまな防災グッズを置いてくれるようになりました。
防災の普及啓発をしている人達の中でも、百円均一ショップのグッズを利用して非常用持ち出し袋を作ってほしいという方も結構います。
無いよりはあったほうがいいに決まっていますので、百円均一ショップでアイテム類を揃えることはいいのですが、基本的には値段相応だということを頭の隅に置いておいてほしいと思います。
例えば懐中電灯。百円均一ショップでは小さくて光量の強い懐中電灯を扱っています。それはいいのですが、消耗品である電池が滅多に見ない規格のボタン電池だったりして、ほとんど本体が消耗品といったものもあります。
また、エマージェンシーブランケットは、性能と値段が比例するアイテムです。無いよりはあった方がいいのですが、軽量な百円均一ショップのエマージェンシーブランケットは向こうが透けて見えるほど薄いです。
保温効果はそれなりだと思いますが、厚手のエマージェンシーブランケットのように中で着替えをしたり、目隠しに使うにはちょっと難しそうです。
別にだから駄目といっているわけではありません。無いよりはある方が良いに決まっています。でも、安いものを準備したのに高いもののような効果がないことに文句は言わないで欲しい。
例えば、登山用のアイテムは防災アイテムになり得ますが、防災アイテムは必ずしも登山用アイテムにはなり得ない。値段の違いはそのまま能力の違いです。それを理解した上でアイテム類を揃えて欲しいと思っています。
ただ、中には百円均一ショップのものの方がいい商品もあったりするので、そういったアイテムを探すのも面白いと思います。
非常用持ち出し袋は使わないのが一番なアイテムです。でも、万が一使うような事態になれば、あなたの命を支えてくれる唯一のアイテムになるかもしれません。
そのことを考えた上で、準備をするようにしてくださいね。
不思議な広報
防災に関する広報を見ていると、ちょっと不思議な気分になることがあります。
例えば、水の中を避難するときの方法として棒を使ったり複数人で一緒に移動するなどといった記載がありますが、災害対策をやっている身としては、そんな状況になる前にさっさと逃げろ、と言いたいです。
足下の見えない水の中を移動するのは、貯まっている水であってもかなり危険が伴います。溜まった汚泥などの中で怪我でもしたら、破傷風まっしぐら。
とてもではありませんが、そんな避難を推奨すべきではないと思います。
ゲリラ豪雨が来たら水没する地帯に住んでいるのであれば、上層階に逃げるという方法を知っておけばいい話ですし、上層階が水没するような環境であるなら、住むところを変えることをお勧めします。
いろいろと言われはしますが、結局のところ安全はある程度まで金で買えるのですから、住む場所についてはなるべく安全な場所を選ぶべきだと思います。
水没する可能性のある場所は、ハザードマップである程度は予測ができるわけで、そういった場所を避けて生活空間を作れば、水の中の避難方法を知らなくても助かるわけです。
逆に、水の中の避難方法をPRするということは、その状況下での避難を推奨しているようにも見えてしまって、どうにも納得がいかないところではあります。
もちろん知らないよりは知っている方が選択の幅が広がるのですが、それから非常用持ち出し袋の防水方法や避難先に到着してから必ず乾いた服装に着替えるなどの記載も一緒にしておいて欲しい。
そんな風に感じています。
余談ですが、災害、特に風水害が起きるとかなりの高確率で老人施設が被災して死傷者が出ます。
これは、そういった施設が建設できる現場が環境条件の悪い場所になってしまうためで、風水害で被災しやすいところにわざわざ避難の難しい人を集めているのですから、死傷者が出るのはある意味で当たり前です。
建設時に災害対策も加味して作って欲しいのですが、起きるかもしれない災害よりも、確実にかかる経費の圧縮の方が優先されているみたいで、これもちょっと納得のいかないところではあります。
ラジオの話
非常用持ち出し袋の記事を見ると、多くの場合「携帯ラジオ」が品物の項目に入っていますが、あなたの非常用持ち出し袋には入っていますか。
携帯ラジオは情報を取るには非常に便利なアイテムではあるのですが、筆者は、地域によって必要性の優先度が異なるアイテムなのではないかと思っています。
というのも、ラジオ本体の感度や電波の条件によって、まったく受信できなくなる場所があるからです。
そのため、ラジオよりも携帯電話のアプリを使う方が感度の良い受信ができる場合があります。
ラジオを有効活用しようとするなら、できればお住まいの場所や避難先の電波状況がどうなっているのかをあらかじめ確認しておくとよいと思います。
ちなみに、手回し発電装置のついたものもありますが、この発電効率は機材によってかなり差があるので、購入前にはよく調べておくことをお勧めします。
よく「携帯電話も充電できる」といったうたい文句のものもありますが、現在主力となっているスマートフォンは充電に必要とされるアンペア数が高いため、ラジオの手回し発電機で充電できる量はあまり期待しない方がいいと思います。
また、多機能型のラジオもありますが、多機能だからといって、懐中電灯などの機能をラジオに肩代わりさせると、電池の消耗がかなり激しくなるので注意して下さい。
ラジオは普段から馴染みがあるなら、災害時にも非常に頼りになる存在です。
ただ、使い慣れていないとそもそも設定ができませんから、平時にしっかりと使い方をマスターし、いざというときに慌てなくても済むようにしたいですね。