不思議な広報

 防災に関する広報を見ていると、ちょっと不思議な気分になることがあります。
 例えば、水の中を避難するときの方法として棒を使ったり複数人で一緒に移動するなどといった記載がありますが、災害対策をやっている身としては、そんな状況になる前にさっさと逃げろ、と言いたいです。
 足下の見えない水の中を移動するのは、貯まっている水であってもかなり危険が伴います。溜まった汚泥などの中で怪我でもしたら、破傷風まっしぐら。
 とてもではありませんが、そんな避難を推奨すべきではないと思います。
 ゲリラ豪雨が来たら水没する地帯に住んでいるのであれば、上層階に逃げるという方法を知っておけばいい話ですし、上層階が水没するような環境であるなら、住むところを変えることをお勧めします。
 いろいろと言われはしますが、結局のところ安全はある程度まで金で買えるのですから、住む場所についてはなるべく安全な場所を選ぶべきだと思います。
 水没する可能性のある場所は、ハザードマップである程度は予測ができるわけで、そういった場所を避けて生活空間を作れば、水の中の避難方法を知らなくても助かるわけです。
 逆に、水の中の避難方法をPRするということは、その状況下での避難を推奨しているようにも見えてしまって、どうにも納得がいかないところではあります。
 もちろん知らないよりは知っている方が選択の幅が広がるのですが、それから非常用持ち出し袋の防水方法や避難先に到着してから必ず乾いた服装に着替えるなどの記載も一緒にしておいて欲しい。
 そんな風に感じています。
 余談ですが、災害、特に風水害が起きるとかなりの高確率で老人施設が被災して死傷者が出ます。
 これは、そういった施設が建設できる現場が環境条件の悪い場所になってしまうためで、風水害で被災しやすいところにわざわざ避難の難しい人を集めているのですから、死傷者が出るのはある意味で当たり前です。
 建設時に災害対策も加味して作って欲しいのですが、起きるかもしれない災害よりも、確実にかかる経費の圧縮の方が優先されているみたいで、これもちょっと納得のいかないところではあります。