冬の感染症対策

 厚生労働省のデータを見ていくと、2020年度の冬はインフルエンザの発生状況がほぼなかったに等しいくらい少なかったそうです。
 これは新型コロナウイルス感染症対策として、多くの人が手洗いやマスクの着用、人との接触を極力避けるなどした結果で、多くの感染症の発生が激減しているところからみると、どの感染症であれ、対策は同じということなのでしょう。
 アルコール消毒はどこでも見かける普通の光景になりましたが、石けんを使ってしっかりと手を洗うことや、マスクの着用、体調不良時の早めの休息などが習慣化すると、感染症にかかる人は今年も少ないのかもしれません。
 ただ、最近ではアルコール消毒があればそれでいいような風潮もあり、新型コロナウイルス感染症の騒動も一応終息しつつあることから考えると、どうかするとインフルエンザが大流行などということになるのかもしれません。
 この手の話を書くと、いろいろとややこしいことを言い出す人が出てくるのですが、必要なのは感情論でも出所不明で検証不可の情報でもなく、客観的で誰でも確認できる公開情報からみた知見です。
 インフルエンザが流行しなかったことと手洗いとマスク着用の因果関係は新型コロナウイルス感染症が流行る前から比較的しっかりと検証されていることです。

この冬がどうなるのかはわかりませんが、少なくとも手洗いとマスクについては、引き続ききちんと続けておいたほうがよさそうです。

インフルエンザの発生状況(厚生労働省のウェブサイトへ移動します)

停電とライフライン

 先日、当研究所のある地区の一部で停電があったそうです。
 幸い当研究所では影響はなかったのですが、電気が止まってしまうと、現在の私たちの生活は非常に困ったことがたくさん発生します。
 例えば、オール電化のおうちだと、大型の蓄電池が設置されてでもいない限り、家の中のライフラインは水以外止まってしまいます。
 田舎などではまだまだ多くのご家庭が使っているガスも、ガスコンロは使えますが、ガスボイラーは電源が必要なため使うことができません。
 また、火災の危険性や手軽さから暖房器具を電化製品に頼っているおうちも多いと思いますが、これから寒くなる時期に停電になると、当たり前ですが電気を使う暖房器具は一切使えなくなります。例えば、普通の灯油ストーブなら使えますが、灯油ファンヒーターは電源が使えないので駄目だということ。
 こんな状態になったとき、あなたはどうやって暖を取りますか。
 寒くて暗い状態は、人間の精神にも身体にも良い影響は与えません。
 布団に湯たんぽを入れたり、使い捨てカイロなどで身体を冷やさないようにすることが大切です。気をつけたいのは、身体が冷え切ってしまうとどれもあまり効果がないということ。身体が冷え切る前に、温めるための手を打って下さい。
 ちなみに、湯たんぽは専用の道具がなくても、瓶やペットボトルで代用できます。温かいものを入れても大丈夫であることと、密閉性があることが前提条件になりますので、使う前にはしっかりと確認しておいてください。
 私たちの生活で非常に重要な位置を占めている電気。
 できる限り停電にならないように電力会社の方々は日々頑張ってくれてはいますが、万が一停電になった場合に備えて、身体を冷やさなくても済む方法を準備しておきたいですね。
 最後に、停電したからといって、屋内で炭や発電機の使用はは絶対に止めてください。現在の家は非常に密閉性が高いので、炭の燃焼や発動機の排気ガスに含まれる一酸化炭素で死んでしまいます。

災害の真偽

ここ2年ほど、高津川では避難レベル4が発表されていて、その回数が少しずつ増えている。

 夏に近くの川で避難レベル4「避難指示」が発令されているにもかかわらず、なぜか川を確認しに行ってしまうような行動を取ってはいませんか。
 これを書いている筆者もそうなのですが、川の堤防まで出かけると、同じような人がたくさん川を見ていて、それぞれにどうしたものかという表情で川を眺めています。
 防災活動をしている人間としては、避難レベル4で速やかに避難しないといけないことは頭ではわかっているのですが、自分でもなぜすぐに避難せずに状況を確認しに川を見に行くのかがよくわかりませんでした。
 ただ、これはどうやら情報の真偽を確認しようとする人間の習性のようです。
 地震のように、災害発生時に明らかに身体や周辺に影響を及ぼすようなものであればともかく、大雨や洪水、津波といった災害の場合には、即座に目で見てわかるものではありません。
 そこで、大雨であれば窓の外の様子、洪水であれば近くの川の様子など、発表されている災害情報の真偽を確認しようとしてしまうのだそうです。
 災害発生が予測される情報の出所が行政機関からの直接のものであったとしても、SNSで流れてきた出所不明の情報にしても、恐らくこの行動は変わらないのだろうなと思います。
 悪い情報に関しては、自分の目で見るまで信用しないという人は多いようです。
 とはいえ、あいにくと現場を見に行くことが危険だと頭では理解している筆者自身も毎回同じように川を見に行くという行動を取っていますから、やっぱり確認にいって災害に巻き込まれる危険よりも、実際にどうなっているのかを確認したいという気持ちが優先しているのだと思います。
 ただ、自分の目で確認できたときには避難が困難になっていたり、確認できたときには災害に巻き込まれていたりすることもありますので、人間の習性とは言え何とかしたほうがいいような気がするのですが、あなたはどう考えますか。

車と道路の冬支度

 山頂のほうでは雪が観測されるようになり、山沿いの道ではみぞれも降ったりしてきていますが、車の冬支度はお済みですか。
 夏タイヤをスタッドレスタイヤに履き替えることや、ウォッシャー液の濃度を変更するといった機械的な作業に加えて、冬場に山越えをする方については念のためのタイヤチェーンの確認と、不幸にして動けなくなった場合の生存対策、例えば毛布やカイロ、水や非常食などもしておいてくださいね。
 ところで、道路の冬支度も進んでいますから、冬期通行止めの路線の閉鎖が進み、冬季限定の道路カメラの運用も始まって道路の降雪、凍結の有無などをインターネットで見ることができるようになりました。
 お出かけの際にはそういった情報もしっかりと取得して、状況に応じてさまざまな準備を進めておいてくださいね。
 ところで、冬場に急カーブの続く場所や凍りやすいところ、傾斜の厳しい場所などでは冬タイヤ規制が行われますが、いくつかの条件が揃うとタイヤチェーンを装着していない車は走行ができないチェーン規制区間も存在しています。

タイヤチェーン規制の表示。この看板が出ると、タイヤチェーンの装着が必須となる。


 近くでは浜田道の「大朝IC~旭IC」間。それから国道54号線の赤名峠も対象になっていますから、そういった道路を利用する人はきちんと備えておくとともに、万一の通行止めに備えて一般道の確認もしておくといいと思います。
 それから、タイヤチェーンは持っているだけでは駄目ですから、チェーンの点検もかねてシーズン前に装着の練習もしておくようにしてください。
 いざというときに困らないように、しっかりと準備しておきましょう。

島根県道路カメラ情報(島根県のウェブサイトへ移動します)

トイレットペーパーの誤解

 災害時に使用する仮設トイレでは、トイレットペーパーは便器に流さずに別に用意されたゴミ袋にいれるようになっている場合があります。
 猫砂や吸水材を使った非常用のものならともかく、それなりにしっかりしているように見える仮設トイレにそのような取扱があるというのは納得いかない方も多いようなのですが、これはトイレットペーパーに対する誤解があるからなのかなと感じています。
 実は、トイレットペーパーは水に溶けてなくなるわけではありません。
 試しに、トイレットペーパーをちぎって平たい皿の上で水をかけ、指でかき混ぜてみてください。
 トイレットペーパーの原型はなくなっても、かき混ぜている指には紙だったものが絡みついてくると思います。
 トイレットペーパーに使っている紙は、繊維が水でほどけやすいようにして作ってあるため、水で溶けているようにみえているだけなのです。
 つまり、充分な水量が確保できなければほどけきらずに塊が残り、それが続くと塊のかたまりができて詰まってしまう事態になります。
 また、拭くときにはちぎったままではなく、ある程度厚さのある塊にして使うと思うのですが、塊になれば水の中でほどけにくくなりますから、ちぎったままの状態に比べると詰まりやすくなってしまうのです。
 もちろんティッシュペーパーに比べれば格段に水に流れやすいのですが、災害時、すぐに修理ができないような状況で、流せる水に限度のある仮設トイレとなると、万が一を考えると紙を流さずにゴミとして処分する選択をしなければならないのです。
 災害時、生命線とも言えるトイレを守るためにも、トイレの水が確保できるまでは指示に従い、トイレットペーパーは便器に流さないようにしてください。

充電器を持って歩く

 充電器、といっても大型のものではなく、ここでは携帯電話やスマートフォンに充電できるだけの容量のある、持ち歩きのできる充電池のことです。
 普段から使い慣れているアイテムは、災害時でも当然活用されるのですが、その中でも携帯電話やスマートフォンは情報収集や情報交換、暇つぶしにと大活躍します。
 ただ、案外と見落とされがちなのは電池の消耗。当たり前のことですが、使えば使うほど電池は消耗しますが、避難所では充電できる設備はないと思ってください。
 一時避難所にあるコンセントで、たまに自分のスマートフォンを充電している人がいますが、その行為は盗電ですのであまりひどいようだとその施設から追い出されたり、場合によっては逮捕されてしまうこともありえます。
 充電池を持っておくことで、少なくとも1回~2回は携帯電話やスマートフォンの充電ができるはずですから、そちらで対応するようにしましょう。
 携帯電話やスマートフォンの電池の問題は結構切実で、ちょっとした災害時でも避難所の電源が充電器で埋まっているような状態になります。
 携帯電話の会社が開設する臨時充電施設が設置されても、充電時間は15分~1時間程度しかもらえませんが、充電池を充電するためのソーラーパネルなどを持っていれば、電源の問題を自己解決できます。
 多くの人の生活から切っても切り離せない携帯電話やスマートフォン。災害発生時に電池の消耗を防ぐことはもちろん、自力で電源を維持できるようにしておきたいですね。

普通のポリ袋と調理用ポリ袋の違い

袋調理の代名詞とも言えるアイラップ(出典:岩谷マテリアルのウェブサイト)

 よく災害時の調理法としてビニール袋を使った調理法が紹介されています。
 実際にはビニールでは無くてポリエチレンが素材になっているのですが、このビニール袋クッキングでは少しだけ注意が必要なことがあります。
 具材を入れて揉んだり保存に使ったりするぶんにはどんなポリ袋でもいいのですが、加熱調理に使うときには必ず調理用ポリ袋を使うようにしてください。
 普通のポリ袋は低密度ポリエチレン袋といい、袋は70度から90度くらいまでしか耐えられません。沸騰しているお湯につけると溶けたり破れたりすることがあるので、せっかくの料理が全部台無しになってしまいます。

上限の温度記載がないものは、基本的に低密度ポリエチレン袋と考えてよい。

 加熱調理に使えるのは、高密度ポリエチレン袋です。この袋は耐熱性があるため、沸騰しているお湯の中につけても破れる心配がありません。
 ほんのちょっとした違いなのですが、非常用持ち出し袋に備えるときには耐熱温度をしっかりと確認しておきましょう。
 ちなみに、ポリ袋は耐油性はそこまでではありません。
 もしカレーなど油分の高いものを作ろうとしたら低密度、高密度問わずにポリ袋が溶けるかもしれませんのでご注意を。

蓄光シールを上手に使おう

 夜、なんらかの事情で突然停電すると、途端にあたりは真っ暗になってしまいます。
 真っ暗なままだと不安になりますから、灯りを準備しなくてはいけないわけですが、さて、あなたが準備してあるはずの懐中電灯はどこにおいてありますか。携帯電話はどこですか。そして、もし逃げなければいけないとき、避難路がちゃんとわかりますか。
 そういったときに備えて、必要なアイテムや避難経路には蓄光シールを貼っておくことをお勧めします。
 決して強い光ではありませんし、電気が消えてから長時間立つと蓄光している光も薄れていきますが、停電直後の真っ暗で一番混乱しているときに蓄光シールが貼ってあれば、とりあえず懐中電灯や携帯電話を見つけることができますし、避難しなくてはいけなくなったときの避難経路、特に階段の段に蓄光シールが貼ってあると、階段を踏み外して落ちる可能性はぐっと減ります。
 よいものはそれなりにお値段がしますが、ちょっとしたものなら100円均一ショップでも扱いがあります。
 ちょっとした知恵ですが、身を守るのには役立つと思いますので、必要なアイテムに蓄光シールを貼るのを試して見て下さい。
 ちなみに、蓄光シールを貼ったからといって押し入れの奥深くに閉まっていては、光を貯められませんので、なんの役にも立ちませんからご注意を。

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子どもの世話ができますか

スプーンで飲んだり食べたりできるかどうか知っているだけでも大事

 あなたがもし親で、小さな子どもが居るとしたらと考えてください。
 あなたはその小さな子どもをどのようにお世話すると思いますか。あなた自身が全てのことを任せきりにされるでしょうか。それとも、誰かに任せきりにしてしまうでしょうか。あるいは、周囲の助けを借りながら自分でも頑張ってみるでしょうか。
 実は、その子のお世話を普段しているかしていないかで、災害後にどれくらい家族の生活が安定するかが決まります。
 というのも、普段は仕事や用事で子どもを誰かに任せることができていたとしても、災害時にはあなたが子どもの面倒をある程度の間みなくてはいけないことになるのです。
 そのときにあなたが一人ででも子どものお世話がきちんとできないと周囲や家族の間でさまざまなストレスが溜まってうまく行かなくなるのです。
 災害時には、さまざまな普段の状況が先鋭化して浮き彫りになります。
 いいことも悪いことも、災害という事実が隠れていたさまざまなことをさらけ出してしまうのです。
 子育てでも同様で、さまざまな事情で誰かに子育てを押しつけていたら、災害時にはそのしっぺ返しを受けてしまうことになります。
 生活リズムや、食事、排泄、そして表情の読み取りまで、普段見ていないものは非常時にも見ることはできません。
 最低限、育児の一通りはできるようにしておきましょう。
 そして、もしも周囲に任せきりの人がいるようであれば、30分でも1時間でもいいので、その人に子どもを預けて面倒を見させてください。
 実際に動かないと、口でどのように言っていても行動はできません。
 自分でやってみること、その人に任せてやらせること。
 どんなことでもそうなのですが、特に育児では普段からしっかりと関わっておきたいですね。

大雪と昆虫

 そろそろあちこちで雪の声を聞くようになってきましたが、今年はラニーニャ現象が発生しているそうで、大雪になるかもしれないという話が雑誌などにちらほらと出ています。
 気象庁の「ラニーニャ現象発生時の日本の天気の特徴」の中では冬の気温と降水量に有意な差はないそうで、そこまで神経質になる必要もないのかなと考えています。
 ところで、大雪を予測するのに民間伝承では結構虫が登場します。
 例えば、「カメムシが家の中にたくさん入ってくるときには厳冬」「カマキリの卵が高い位置にあると大雪」「蛾が大量発生するときは大雪」「クマケムシの背中の縦線が太いほど寒冬」など、その地域によっていろんな伝承があるようです。
 あなたのお住まいの地域にはどのような伝承が伝わっているか、内容を確認して天気を予測してみるのも面白いかもしれません。
 ちなみに、今年当研究所のあるところでは屋内ではほとんどカメムシを見かけません。それから考えると、極端な寒い冬にはならない気がするのですが、果たしてこの伝承が当たるのかどうかは、来年春のお楽しみです。

ラニーニャ現象発生時の日本の天候の特徴(気象庁のウェブサイトへ移動します)