災害時に避難が遅れてしまう理由の一つに、「どのタイミングで避難すれば良いのかわからなかった」というのがあります。
まずいと思ったらさっさと避難すれば良いと思うことは簡単なのですが、実際にその立場になると、避難するか避難しないかの判断に迷ってしまうことは非常によくあることです。
これは避難を判断するための鍵をきちんと決めていないから発生するので、避難開始を判断する鍵さえきちんと決めてあれば、悩まずに自動的に行動を開始することができます。
そして行動を考えずに自動化しておくことで、判断に要する時間を省いて素早く行動できるようになり、結果的に確実に自分の命を助けることができることになります。
では、どのようにして鍵を見つけたら良いのでしょうか。
まずはあなたがいる場所がどのような災害で避難が必要なのかを知ることです。
あなたがいる場所はどのような災害に陥る可能性があり、どの災害の場合に避難が必要なのかを整理しておくこと。
それによって該当する災害以外はとりあえず避難が必要ないことがわかりますから、それだけでもだいぶ落ち着くと思います。
次に、避難が必要な災害で、どういう理由で避難をすべきなのかを整理します。
例えば、低地であれば浸水してしまうから避難が必要になるわけですし、土砂災害警戒区域などに住んでいる場合には、土砂災害が起きるから避難が必要になります。
それらの理由をとりあえず洗い出し、そういった状態になる前とはどのタイミングかを考えてみます。
例えば、浸水の場合であれば近くの排水路から水が噴き出すようになったら逃げられなくなる可能性が高くなりますし、土砂災害であれば、焦げるようなにおいや普段見ない場所からの水の流出といったちょっとした変化が前兆になることが多いです。
そうなる一歩手前で避難を開始することが、身の安全を守る一番の方法です。
例えば、排水路から水があふれ出しそうなくらいの雨が降っているなら避難の準備を始める。土砂災害では、小さな異変を確認したり、何も起きていなくてもなんとなく嫌な感じがしたら避難開始という風に決めておくことで、その状況になったら考えずに避難を行うことにしてしまうのです。
本当に避難が必要だったのかどうかは、その災害が収まってみないとわかりませんから、何もなければ儲けものと考え、まずは避難行動を起こすタイミングを決めておけば良いのです。
自分で考えるのが難しい場合には、近所の知り合いなどに声をかけておいて、いざ避難するときに一緒に行動できるようにしておけばいいでしょう。声をかけられた方はちょっと大変ですが、自分の避難行動を見直す良い機会になると思います。
災害の避難はその場で避難するかどうかを考えるのはかなり無理があります。
事前に避難開始の鍵を自分の中で決めておいて、本番では何も考えずに鍵の要件を満たしたらすぐ避難という風にしておきたいですね。
ちなみに、避難所に避難しようと考えている場合には、その避難所が開設されている必要がありますから、事前に避難所の開設者に開設する条件を確認しておくとより安心ですよ。
月: 2021年7月
逃げ道マップを作ろう
災害対策として、地域の危険な場所を洗い出してそこから早めに避難するというのは割と言われるようになってきていますが、避難する道をどうするかということと、その道が安全かどうかの点検までちゃんとできていますか。
実は同じ避難所に避難するとしても、大雨と地震では避難に使える経路が異なることが殆どです。
例えば、大雨では低地では無く高い場所を繋いで避難を考える必要がありますし、地震では地面の高さよりも周囲の構造物が壊れたり倒れたりしないことが重要です。
そういった避難経路の情報というのは、意識しながら実際に歩いてみないとわからないことがたくさんありますので、実際に歩いてみて、逃げるための道、逃げ道マップを作っておく必要があるのです。
地域の安全点検とあわせて、実際に歩いてみて確認してみること。
地図上では歩けるはずなのに、道がでこぼこだったり、溝があったり、草に埋もれていたり、急な坂道の連続だったりと、逃げ道を決めるのは案外と大変なことがわかると思います。
その上で災害の種類に合わせて逃げ道を変更するのは、正直言って大変な作業になります。
ただ、大きな災害時には避難中に遭難してしまうことがよく起きていますので、それを防ぐためにはこういった作業が必要です。
危険なくらい暑い時期ですので、日中出歩くわけにはいかないかもしれませんが、早朝や夕方、ご家族や友人と一緒に散歩しながら逃げ道を確認してみるのもよいのではないでしょうか。
いろいろとある警戒レベル
災害が起きそうなときには市町村や都道府県などの地方自治体、気象庁、国土交通省などからさまざまな警戒情報が発表されます。
自分の身の安全確保のためには提供される情報が増えるのは大歓迎なのですが、この警戒情報、全てレベル表示されるというのがややこしい元になっています。
結論から言えば、市町村の出す警戒レベルだろうが都道府県や気象庁、国土交通省が出す警戒レベルだろうが、レベル3以上になったら危険な場所に住んでいる人はさっさと逃げろということなのですが、言い回しがいろいろとややこしくなって、レベルの意味がうまく住民に伝わっていないのでは無いかと思うことがあります。
市町村以外が出す警戒情報は避難のための警戒情報を出すために必要とされる参考情報で、最終的な避難情報はこれらの参考情報を総合的に判断して市町村が出すことになっています。そのため、市町村以外が出す警戒情報は「警戒レベル相当」という不思議な言い回しをしています。
もっとも、住民がこのことを理解した上で行動ができるのならば、市町村が発令する警戒情報を待たずに避難開始をすることができますから、警戒レベルはどこが出そうが同じレベルの避難情報を指していると考えて、早めに行動すれば良いと思います。
まずは自分の住んでいる場所がどのような災害で被害が出そうなのかをハザードマップなどでしっかりと把握し、その上で関係する情報にはどのようなものがあるのかを確認して、自分の安全確保をするようにしたいですね。
エアコンなしで暑さをしのぐには
日中35度越えもある最近の夏ではエアコンは必需品です。
ただ、この時期に停電が起こると途端に暑さにさらされてしまい、体調を崩したり熱中症になったりすることもあります。
今回は停電などでエアコンが使えないときにどのようにして暑さをしのぐことができるかを考えてみます。
1.日影を作る
当たり前のことかもしれませんが、直射日光の下にいたら体温はあっという間に上昇していきます。
それを防ぐためには、まずは直射日光に当たらないことです。
つまり、日影を作ることが一番重要だということになります。
2.風を起こす
日影に入ったら身体の周囲に風を感じられるようにしましょう。
例えば、うちわや扇子などで身体の周囲の空気を動かすことで、熱がその場に滞留していくことを防ぐことができます。
また、汗をかいていればそれに風が当たることで気化熱が発生し、身体の冷却効果も期待できます。
屋内の場合には、室内は熱がたまりやすいですので、風の流れを作り出しておく必要があります。窓や扉を複数箇所開け、風の通り道を作るとよいでしょう。
3.放熱する
もし冷たい水があるなら、手のひらや足をつけることで身体の熱を逃がすことができます。瞬間冷却パックや冷却スプレーなどでも似たような効果が期待できるので、手元にあれば使ってみてください。
4.冷感素材などを利用する
最近は汗を使って身体を冷やせる冷感素材を使った衣類が増えてきます。
それらを着用することで、身体を冷やすことができます。
5.冷たいものを食べる
これはおまけになりますが、体内に熱が籠もっている場合には表面をいくら冷やしても身体が冷えない場合があります。
もし水や氷など冷たいものが手に入るのであれば、それを食べることで体内から冷やすことができます。
ただ、冷たいものは内臓にダメージを与えることがあるので、食べ過ぎないようにしてください。
暑さをしのぐための基本は「熱をその場に貯めないこと」ですので、いる場所の温度を上げない、そして排熱するということが重要になります。簡単に言うと、日影を作って熱を貯めない、そして風で熱を動かすことを念頭考えるといいのかなと思います。
ボランティア保険と破傷風対策
新型コロナウイルス感染症のおかげで災害ボランティアの動きも鈍くなってしまっていますが、参加できる地域の方はできる範囲でボランティア活動をしていただけるといいなと思っています。
ところで、ボランティアセンター経由で災害ボランティアに参加する場合には、社会福祉協議会でボランティア保険に加入することが前提となります。
このボランティア保険、基本は活動日の前日までにお住まいの地域の社会福祉協議会窓口で手続きをしておいてくださいね。
大規模災害の場合には、現地のボランティアセンターに保険の受付窓口が設置されて保険をかけたその日から適用してもらえる場合もありますが、あくまでも例外対応です。せっかくボランティアに出かけたのに保険に未加入で参加できなかったというのでは悲しいと思いますので、そこは気をつけておいてほしいなと思います。
また、災害ボランティアは活動内容が多岐に渡りますが多くの場合は泥出しや洗浄といった汚染除去という仕事になります。
汚泥にはさまざまな菌が居ますが、その中でも破傷風菌はけがをしたり傷口があった場合等に感染しやすくなりますし、感染すると死亡するリスクもかなり高くなりますので、怪我をしない対策が必要です。
具体的には、ゴーグルをかけ、マスクを着用すること、作業時には肌の露出はできるだけしないこと、履いている靴はがれきや破片、釘などが貫通しないように安全中敷きを入れる、手袋も防刃のものを使うなど、リスクをできるだけ下げるようにしておきます。
ただ、それでも怪我をするときにはしますので、破傷風ワクチンの接種もしておくようにしてください。
破傷風ワクチンは正しく接種すると10年は免疫が続き、効果も大です。
なお、すぐにワクチンが無い場合もあるようですので、接種について詳しくはあなたのかかりつけ医に相談してください。
せっかくボランティアに出かけたのに破傷風にかかって大事になるのは避けたいですから、怪我しない対策と、怪我しても破傷風が発症しないようにしておくことはとても大切です。事故のないボランティア活動になることを願っています。
汗ふきシートと身体ふき
災害時に身体の衛生状態を維持するのは割と大変なことですが、あなたはどのような準備をしていますか。
口腔衛生用として歯ブラシや歯磨きシート、そして身体をさっぱりさせるのには身体ふきシートを、それぞれ準備しておくといいと思います。
身体ふきシートでは、よくノンアルコールのお尻ふきを準備するように書かれたものを見ますが、身体をきれいに保ち、かつ誰にでもどこでも問題なく使えるという点で非常によいものだと思っています。
ただ、さっぱりとはしますがすっきりとはしないので、よりすっきり感が必要だと思われる方は、よく学生さんが使っている汗ふきシートを利用することをお勧めします。
かくいう筆者は、先日山に登った際にこの汗ふきシートで汗を拭いてみて、その効果にびっくりしました。
べたつきがすっきりと取れ、少しの間でしたが汗がしっかり止まり、つかの間ではありますが非常に快適な時間を過ごすことができたのです。
夏場の避難所では、エアコンのない場所も非常に多いですが、そう言った場所でこういった汗ふきシートが使えれば、思ったよりは快適に過ごせるかもしれないなと感じました。
汗ふきシートはお尻ふきほどしっかりとしたものではありませんが、両方を上手に使うと身体がかなり衛生的に維持できるのではないかと思っています。サイズも量も持ち歩くにはちょうど良い感じで、夏場の出掛けた先での汗対策を兼ねてローリングストックしてもいいかなと、筆者自身は考えています。
【お知らせ】令和3年7月大雨の災害義援金受付のご案内
令和3年7月6日からの大雨で、島根県東部を中心として県内でもあちこちで被害が発生しました。
このうち、被害のひどかった出雲市や雲南市では災害ボランティアセンターも設置されて災害ボランティアの受付もしていますが、新型コロナウイルス感染症対策のため地元に限定しての募集となっています。
ただ、義援金による支援は可能ですので、支援をしたいという方はぜひご協力をお願いします。
詳しくはリンク先の「令和3年7月島根県大雨災害義援金の募集について」をご覧下さい。
「令和3年7月島根県大雨災害義援金の募集について」(島根県のウェブサイトへ移動します)
携帯トイレと使い方
非常用持ち出し袋には携帯トイレを入れておくということは、このウェブサイトでも嫌になるほど書いているところですが、この携帯トイレについて説明が不足していたなと思ったので、今回はそれを追記しておくことにしました。
携帯トイレは、文字通り持ち運びできる簡易的なトイレなのですが、書かれていない問題点があります。
それは、ほとんどのものは小専用だということ。
「男女兼用」と書いてあっても「大小兼用」とは書かれていないと思います。もしも「大小兼用」と書かれた物をお持ちの場合には、それはぜひ持っておいて欲しいと思いますが、そうでない場合、もし非常時に大きい方を催したときにはトイレがあるのに使えないというひどい状態に陥ります。
ではどうするか。
筆者のお勧めは、ペット用、できれば猫用のシートを準備しておくことです。
猫を飼っている方はご存じだと思いますが、猫のおしっこは非常に臭います。そのため、猫用のペットシートは吸収能力の他に消臭能力もかなり優秀なものを持っています。
それを敷いて用を足し、終了後は包んで消臭効果のあるビニール袋などに密封しておけば、持っていることを忘れるくらい快適に持ち運びができます。
和式トイレが使える方なら、この方法で排泄処理はできると思いますので、携帯トイレを持ち歩かなければいけない環境の方は、是非一度試してみて下さい。
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水害について考える日
今日7月23日は昭和58年豪雨による水害があった日です。
当時は総計で548mm(諸説あり)の集中豪雨で島根県西部の多くの河川が決壊し、大きな被害が発生しました。ただ、当時どのようなことが起きて何があったのかについては、報道発表など以外の記録というのは案外残っていない状態で、記録の承継をすることが急がれているのでは無いかという気がしています。
ところで、ここのところ毎年国内のどこかで水害が起きているのですが、その雨量を見ていると、どうかすると1,000mmを超えているようなケースが出てきています。
これだけの雨が数日で降るような状況だと、避難レベル3から一気に避難レベル5になって避難レベル4を飛ばしてしまうような事態も発生することになり、避難情報が発令されてから避難をしたのでは遅いという状況が起きるようになってきました。そのため、あらかじめ大雨が降ったらどうなるのかと言うことをきちんと知っておく必要があると思います。
河川に関しては、国が管理している部分の一級河川について水害による浸水想定が出されていて、これは国土地理院の「浸水ナビ」で確認することができます。
また、県管理河川についても、浸水想定が出されているものもありますので、お近くの河川が氾濫したらどうなるのかということを一度確認して置いた方がいいと思います。
ハザードマップでは、多くの場合50年に一度くらいの水量を計算して浸水域が設定されているようですが、「浸水ナビ」では、国管理河川に限定されているとは言え最大浸水想定が出されていますので、最悪の場合を想定することができると思います。
最近の天気を見ていると、水害はいつ起きてもおかしくないという印象を持っています。
ハザードマップだけで無く、国土交通省や都道府県、市町村が出している河川ごとの浸水想定域などの地図も参考にして、避難が必要かどうか、そして避難する場合の避難先と避難経路について、確認して準備しておくようにしてくださいね。
水遊びでは静かなときこそ危険サイン
プールなど、監視員がしっかりと監視しているところでも水難事故は起こります。
特に溺れて亡くなる溺死は毎年どこかで必ず起きています。
監視員がしっかりと見ているはずなのに、どうして溺死してしまうのかというと、それは人が溺れるときの特徴があるから。
人が本当に溺れているときには、静かに沈みます。
そのため、たくさんの人がばちゃばちゃと遊んでいるような状況だと、溺れていることには非常に気がつきにくいのです。
よくテレビドラマなどで溺れている人が「溺れる! 助けて!」と大騒ぎするシーンがありますが、あれは意識もあり呼吸もできていますのでそこまで危険ではありません。
実体験の範囲で書くと、本当に溺れているときには息ができません。息ができないから身体が動かない。息をしようと口を開けた瞬間に水を飲んでしまって、これが続くとそのまま溺死してしまうのかなと思っています。筆者自身はなんとか助かりましたが、やはり静かになったので気がついてもらえたようです。
子どもが複数になると、なかなか一人一人には目が届きません。手のかかる子がいるとなおさらです。静かになったときにこそ何か起きていると考えてください。
溺れないように、水遊び前には必ずライフジャケットを正しく着用してください。
ライフジャケットをつけたからといって絶対に溺れないわけではありませんが、溺れる危険性はかなり低くなります。
せっかくの楽しい水遊びです。
子どもも大人も、水に入るときにはライフジャケットを着用して楽しめるようにしたいですね。