【活動報告】青野山で自然体験会を開催しました。

青野山から日原方面にまっすぐ伸びる弥栄断層。その上に国道9号線がある。

 去る5月3日、島根県鹿足郡津和野町にある青野山で自然体験会を開催しました。


 前日までの雨がうそのように晴れ渡った天気の中、会員様、そして会員様のご友人などにご参加いただき、賑やかに青野山を登山しながら春の山野草の観察をし、また、途中の視界が開けた場所では弥栄断層についても説明させていただきました。


 各自弁当の昼食をいただき、下山後は津和野城趾に登り、そこから本日登った青野山を別角度から眺めるオプションも実施。
 少々厳しい行程でしたが、参加された皆さん笑顔で終了することができました。
 この場をお借りして、ご参加いただきました皆様に感謝いたします。

「逃げなきゃコール」をご存じですか

 自分で避難の判断をすることはなかなか難しいものですが、顔見知りから避難しようと言われると、なんとなくそうしようかなという気になるものです。
 特に高齢者の方の場合にはその傾向が強いようですが、ご近所やただの知り合いだと、夜遅くや朝早くにはなかなか避難の声をかけにくいもので、その結果として逃げ遅れてしまったりすることがあります。
 そんなとき、遠方にいるご家族や親しい人から「避難して」という電話が入ると、逃げないといけないのかなという気になりやすいですし、早朝や夜間でもそこまで失礼とは感じないものです。
 そこで、「逃げなきゃコール」の出番です。
 電話をする相手が住んでいる自治体の防災メールに登録しておいたり、スマホアプリの「NHKニュース防災」「Yahoo!災害情報」、「au登録エリア災害・避難情報メール」で条件を登録することで、遠方で起きている各種災害の情報が入ってくるようになります。
 6月からはNTTドコモもユーザーが指定した地域で緊急速報を告げるエリアメールが出されるとショートメールでお知らせしてくれるサービスが始まるそうですから、そういった情報を上手に活用して早めの避難を促すようにしてほしいなと思います。
 避難すべき場所に住んでいる人の「避難」という行動を起こすために背中を押してあげる「逃げなきゃコール」。
 大切な方を守るためにも活用して欲しいなと思います。

【災害遺構を訪ねて】「日原の汗かき地蔵尊」

日原には地元で大切にされているお地蔵様があります。
町が設置したと思われる観光標識にも「汗かき地蔵」と記載されているこのお地蔵様は、立派な地蔵堂に納められています。

 表にある看板によると、元々はここにあった宝泉寺というお寺の入り口にあった、紀伊の国からきたお地蔵様なのだそうですが、宝泉寺の移転の際に何人がかりでも決して動くことがなかったため、現在の地に祭られているのだそうです。
 伝承では、このお地蔵様のいる村に何か変わったことがあるときには首から上の部分に玉のような汗をかいて教えてくれるそうです。
 最近では昭和9年1月20日の大寒の日に汗をかかれたとのことで、悪い風邪が流行るから気をつけるようにというお知らせだったそうです。
 その時におられた方が、お地蔵様が汗をかいたのを見るのは3度目だという話があったそうで、流行病やひょっとしたら天変地異でも汗をかかれていたのかもしれません。
 現在新型コロナウイルス感染症の変異型で都会地が大騒ぎしていますが、お参りしてお地蔵様を見る限りでは特に汗はかかれていなかったので、この地域では大丈夫なのかなと感じました。

 ただ、状況は変わっていくと思いますので、実際にお地蔵様が今どんな状態なのかは、一度出かけて自分の目でご確認いただければと思います。

 入り口にはお地蔵様の御真言が書かれていたりするので、お参りの際にはこの御真言を唱えるといいそうです。
 コロナ禍で遠くにお出かけできない状況が続いていますが、こういった地域の知る人ぞ知る場所を巡ってみるのも面白いかもしれませんね。

【おしらせ】警戒レベルの内容が変更されました

 災害時にはさまざまな行政機関からさまざまな警戒情報が出されていますが、住民が判断基準として使うように作られているのが市町村長が発出する警戒レベルです。
 令和3年4月28日に国会で審議され可決、成立した改正災害対策基本法の中で、この警戒レベルの内容が見直されました。
 今まではレベル4に「避難勧告」と「避難指示(緊急)」が同居していたため、例えば、「レベル4・避難勧告」といった感じでレベル4の後に内容を表示していましたが、今回の法改正で「避難勧告」が廃止され、避難指示に一本化されることになりました。

下側が改正後の基準。実質レベル3に避難勧告が取り込まれ、避難を前倒しするようなイメージ。

 レベル3の「避難準備・高齢者避難開始」からレベル4の「避難指示」までにはかなりの状況の開きがあるような気もしますが、これでレベルと意味がセットになったので、今までよりもわかりやすくなったのではないでしょうか。
 実際の運用は、法成立から一月以内に公示して施行となりますので、遅くとも梅雨時期までには変更されることになり、より早めの避難が期待できることになります。
 とはいえ強制力はありませんので最終的な判断は個々人に委ねられているわけですが、昨今の大雨や台風の状況から考えると、改正されたレベル4がいつ発出されてもおかしくないと考えます。
 もう一度書きますが、レベル4は「避難指示」です。避難勧告よりもより緊急性が高いと言うことを知っておいて欲しいと思います。

2021.5.12追記:表を最新のものに変更しました。

通勤・通学経路を確認しよう

 家の安全についての検討が終わったら、次は家と職場を結ぶ通勤・通学路を確認してみましょう。
 普段意識することのない高低差や建物からの落下物の可能性、陥没や倒壊など、災害というフィルターを通すと普段と違った風景になってくると思います。
 特に車での通勤・通学をしている場合にはアンダーパスに気をつけてください。
 アンダーパスは、大雨時には周囲から雨水が流れ込んで大きな池になってしまうことがあり、意識せずに普段どおりに運転していると水没したアンダーパスに突っ込んでしまうケースが非常によく起きています。
 短時間で大量の雨が降る場合には、管理者の通行止めの措置が間に合わない場合もよくありますから、通勤経路を見直すときにそういった場所は外すようにするか、または大雨時には必ず迂回するということを常に忘れずに考えるようにしておいてください。
 他にも、風が吹いたら飛んだり落下しそうな屋根や看板、増水時に落ちてしまうかもしれないマンホールや側溝、地震時に倒壊しそうな塀や建物など、どういった経路にすれば一番自分が安全に移動できるかを考えてみましょう。
 小学校などでは通学路が決められていることも多いのですが、筆者の知る限り交通事故対策は考えていても防犯や防災の視点は取り入れられていません。

子どもによる通学路の安全点検の一コマ。

 そのため、子どもがいる場合には一緒に通学路を点検しておく必要もあるでしょう。 おうちの防災計画では、家から避難所までの安全な避難路を検討することがあると思いますが、普段使っている道の危険を知って安全対策をしておくことはとても大切なことです。
 災害対策は普段の生活の中にあるものですから、何かを考えるときには災害対策の視点を加えてみてほしいと思います。

災害対策で最初に家を考えるわけ

耐震化してないと、家具の下敷きになることも

 災害対策、特に地震では対策をするときに一番最初に言われるのは耐震補強、または耐震化という話です。
 家の倒壊を防いで命を守るということが一番の目的ですが、被災後にできるだけ避難所に避難しなくても済むことも大きな理由の一つです。
 もしお手元に避難所一覧があれば確認していただきたいのですが、避難所の大きさと収容人員を比べてみてください。その避難所の建物の中に、全ての避難者が生活スペースを確保して収まるでしょうか。
 多くの避難所は収容能力を超える避難者が割り当てられています。
 公的な施設に全ての住民を納めるとこうなりますということなのですが、実際に災害が起きると避難者が収容しきれずにあふれ出してしまうという事態が発生しています。
では、もしも家から避難しなくて済むとしたらどうでしょうか?
 家の安全が確保されているのであれば、避難時に危険な目に遭う可能性のある避難所への移動はしなくてもよくなります。
 また、住み慣れた家ですからどこに何があるかも知っているし、他人の目も気にしなくて済み、ストレスも少なくて済みます。
 できるだけ自宅から動かなくて済むように準備することが、災害対策のとても重要な位置をしめているのではないかと、筆者はそんな気がしているのです。
 もっとも、全ての家が安全な場所に建っているわけではありません。水害や台風などで被害を受ける場所にあるおうちだってあるでしょう。
 幸い、地震以外の災害では、大抵の場合何らかの前兆があります。自分の住んでいる場所がどうなったら危険なのかをあらかじめ調べておいて、どうなったら安全な避難所への避難行動を開始するのかを決めておけば、とりあえずの安全を確保することは可能になります。
 あなたのお住まいの家は地震に強い作りになっていますか。
 そして、他の災害で被災が予測されるような場所ではありませんか。
 災害対策は、それを確認するところから始まります。

【お知らせ】熱中症警戒アラートの運用が開始されました

 寒暖の差が激しいですが、日中のもっとも温度が高いときは25度を超えるような状況も出てきています。
 ここ数年、熱中症にかからないように暑くなりそうだと予測されるときには「高温注意情報」が気象庁から発令されていましたが、今年は環境省と気象庁が一緒になって「熱中症警戒アラート」というものを全国を対象に運用することになりました。
 気温や湿度、日差しの強さなどの予想から熱中症の危険度を示す数値である「暑さ指数」が33以上になると判断された場合、前日17時と当日5時に熱中症警戒アラートを発表。テレビ、ラジオや防災行政無線、両省庁の公式ホームページ、登録メールなどで住民に伝えるそうです。
 期間は10月27日5時まで。都府県単位の発表が基本となるそうですが、一部では複数の地域にわけての発表となるようです。
 この熱中症警戒アラート、2020年度は関東地方で試行していたそうですが、今回それを全国に広げての運用になりました。 
 詳しくは環境省のウェブサイトをご覧下さい。
 また、登録をすると個人のメールアドレスにも熱中症警戒アラートの予報が送られてくるようになっています。
 こちらも令和3年4月28日から運用開始で、詳細は同じく環境省のウェブサイトをご確認ください。
 これから暑い季節がまたやってきます。
 熱中症対策の一つとして、参考になるのではないかと思いご紹介しておきます。

熱中症予防情報サイト(環境省のウェブサイトへ移動します)

【活動報告】自然観察会を開催しました

山頂から島根県側を望む。中央右の丸い山が青野山。

 2021年4月25日、山口県山口市阿東町にある十種ヶ峰で自然観察会を行いました。
 十種ヶ峰はこのあたりの単独峰で、地下には青野山造山帯に連なる火山ドームがあるとされていて、そのドームの形成によってできた山だとされています。


 この山には荒れた斜面に生えるヤマシャクナゲと言われる花の群生地があり、ちょうど花の時期だったことから、ヤマシャクナゲを観察しながら鉄砲水の出た痕跡や地面の変化などを辿りました。


 当日は天気がよかったこともあり、ヤマシャクナゲだけでなく、イカリソウやヒトリシズカ、カンアオイといったさまざまな花もゆっくりと観察することができました。


 また、ここ数年の大雨による川の掘削なども確認でき、土地の成り立ちによってさまざまなリスクや生態があるということを学習することができました。
 現在は会員向けということで、なかなかお声がけすることが難しかったのですが、参加してくださった皆様に感謝します。

自助・共助・公助の関係

「自助・共助・公助」ということが、防災業界ではよく言われる言葉です。
自助は自分の備え、共助は地域の備え、公助は行政の支援になるのですが、次のようなものが図としてよく描かれています。

 この図だけで見ると、自分が備えていなくても共助や公助がそれをカバーするように見えるので大丈夫という感じに見えてしまうのですが、この図を時間軸で書き直すと次のようになります。

 つまり、単純に言えば「災害が起きたときはまず自分の命は自分で守れ、守ったら近所同士で命を繋げ、そしたらそのうち救援がくる」ということなのですが、大前提として、まずは自分が安全に生き残るというものがあります。
 ここが忘れられがちな部分なのですが、まずは自分が生き残るための手立てをきちんと整えていないと、災害が起きたときにはそこで人生終了となるという事実です。
 例えば、阪神淡路大震災では災害発生後、すぐにご近所で救出活動が行われてたくさんの人が助かったとされています。
 では、もしいま地震が起きたとき、ご近所の救出活動がいまあなたのお住まいの場所ですぐに開始できるでしょうか。
 多くの地域では高齢化が進み、家屋やがれきの撤去がすぐにできるようなパワーはもはやありません。また、若い人がいるところは近所付き合いがほぼ皆無ですので、やっぱり救助活動はしてもらえないでしょう。
 そう考えるとこんな感じの時間軸になります。

 時間軸で整理するとよくわかることなのですが、肝心な初動時には、自分以外誰も助けてはくれません。
 災害の規模が大きくなればなるほど、公助は遅れていきますし、場合によっては公助が行われない場合も想定しておいた方がいいでしょう。
 つまり、自助とは「自分の命は自分で守れ」という意味で、共助や公助はそれを支援するものだと考える方が精神衛生的によさそうです。
 これを図にするとこうなります。

 災害時には、あなたの命はあなた自身が守らなければ誰も守ってはくれません。
 あなたの命を守るために、まずはその方法を考えて一つでもいいので実行に移して欲しいと思います。

0か1か100か

カップ麺やレトルト食品は保存食の定番メニュー。お気に入りを普段使いで消費していけば、常においしいものが食べられる。おまけに長期保存用よりもかなり安価。レトルト食品は、要冷蔵のものもあるので気をつけて。

 災害対策の話をさせていただくと、よく出てくる理由に「完璧に準備なんてできない」というのがあります。
 さまざまな防災対策の本や講演などで一覧表になっているようなものを全て準備しないといけないのかと考えてげんなりしてしまう場合も多いようです。確かに、それらのアイテムを準備すれば、一応は「完璧」となるのでしょうが、実際にはそれにプラスして個人の必要なアイテム類が発生し、それはその人の環境によってどんどん変化していくので、実際のところ100%完璧はまずありません。
 ただ、まったく準備していないと、いざ災害が起きたときには何をしたらいいのかどうすればいいのかわからずに途方に暮れるだけになってしまいます。
 必要なのは、最初の一歩。
 例えば、あなたのいるところから近くの避難所までの位置関係を確認して避難経路を考えるだけでも、災害対策の一つになります。
 普段水筒を持ち歩かない人であれば、小さな水のペットボトルや水筒を持って歩くだけでも立派な災害対策です。
 肝心なのは、「完璧にできないからやらない」、ではなく「なにかできることを一つやってみること」で、何か一つでも用意ができたなら、拍手して自分を褒めてあげてください。何かを一つ準備した結果、あなたが生き残れる確率が確実に上がったのですから、すごいことです。
 災害なんかで死んでしまうのは、あまりにももったいないです。そして、災害なんかで希望を失うのももったいない話。
 そのために、何か一つ災害対策を始めてほしいなと思います。