続・新型コロナウイルスとBCP

 遅ればせながら政府がいろいろと新型コロナウイルス対策を打ち出し始めました。「お願い」や「依頼」「配慮」など、どうみても責任は取りませんといった文字が目白押しですが、政府はともかく、一住民としては生き残るための自衛策を考えなければなりません。
 ここのところの騒動で過去に「新型コロナウイルスとBCP」や「BCPを作ろう」といった記事を書いてはいますが、個別のBCPについて質問されることが増えてきているので、何を考えたらいいのかをもう一度整理してみたいと思います。
 BCPの究極は「いかに自分のところを構成している人・もの・金にダメージを受けずにやり過ごすか」です。このため、自分あるいは自社にとって守るべきものは何なのかを決めておく必要があります。
 ポイントは二つ。事業をどのタイミングで中断するかという判断と、事業をどのように再開するかという判断を決めておくことです。自分や自社にとって事業の中断による社会的ダメージと事業の継続による社会的ダメージのどちらが大きいかを判断することになるでしょう。
 また、経済的・人的・資材的にどのタイミングで止めたら一番再開が安定して行えるのかということも検討しておきます。どの段階でどこから何をどれくらい持ってくればどんなものが再開できるのか、自分や自社の都合だけでなく「社会的に必要とされるものの優先度はどうか」を考えながら対応策を組んでいくことです。
 準備も必要です。新型コロナウイルスは潜伏期が14日程度と言われていますから、怪しいと思ったら14日は隔離される覚悟をしておかなければいけません。そのために必要な食料品や資材は準備できていますか。自分や家族、従業員に何かあったとき、きちんと休みが取れる体制になっていますか。また、休業状態になってどのくらいの間経済的に持ちこたえることが可能ですか。
 BCPは根性論ではどうにもなりません。必要とされるものを洗い出し、対策を考え、準備することで初めて稼働できるものなのです。
 現時点ではマスクも消毒用アルコールも市中には無い状態でいつになったら安定供給されるのかについても目処が立っていません。自分たちでできる自衛策は限定的ではありますが、それでも手がないわけではありませんから、根拠のある対策を調べて実行してください。ネット情報ではファクトチェックしているサイトもありますので、そういったところで内容の真偽を確認し、少しでも安全な対策をとるようにしてください。
 長々と書きましたが「どうなったら休業するのか」「どうなったら再開するのか」、取り急ぎその二点だけ決めておけば今後の対応は格段に楽になると思いますよ。

災害対策について考える

 大雨や洪水、台風といった災害では「タイムラインを作れ」ということがよく言われるようになってきました。
 地震以外の災害は必ず何らかの予兆があるので、それを見逃さずに災害が発生する前から対処を開始して手遅れになることがないようにしようということなのですが、どんな情報があってどういう風に活かしたらいいのかがなかなか理解されないという現状があります。
 ただ、各市町村が発表するさまざまな避難関係の情報は、被害が大きくなってくると間に合わなくなってきます。これは災害が発生し始めると加速度的にしなくてはいけないことが増えるためで、専任の職員がいても華麗に裁くのはかなり困難な仕事です。そのため、市町村が判断するための根拠となる情報を確認して避難関係の情報が出るかもしれないという予測を立て、行動に移す。そのための時間軸がタイムラインということです。
 これはお住まいの地域や家族構成によって必要となる行動や判断基準が変わります。例えば、避難勧告が出ていても避難しない方が安全なところもあれば、避難準備の段階ですでに危険な場所もあるからです。自分のいる地域の強み弱みを知った上で先手を打って行動することで、助かる確率を上げていくための手段だと考えてください。
 ただ、そうそういつも家にばかりいるわけでもありません。出掛けた先で災害が起きそうなときはどうすべきか。これは市町村が出す情報から判断して避難をしていくしかありません。そのため、状況がおかしくなりそうだと気づくことが一番大切なこととなります。周辺状況の変化を意識することが重要になります。
 ところで、地震の場合にはどうなるのでしょうか。地震は、なかなか発生するタイミングを予測することは難しいです。予想もしなかった場所で大きな地震が発生することもよくありますから、地震が起きたときに死なないように対策をしておく必要があります。
 地震で亡くなる人の殆どは、地震そのもので死ぬのではなく揺れによって倒壊した建物や倒れてきた家具などの下敷きになって圧死しています。つまり、耐震補強や転倒防止処置をすることが大切になってくるのです。家だけでなく、自分が出掛ける先がちゃんと地震対策をしているかどうかが、いざというときの生死をわけることになりますから、出掛けた先では意識的にどこなら自分の安全が確保できるかを考えながら行動するようにしてください。最初は面倒くさいかもしれませんが、これも慣れてくると意識していなくてもできるようになります。
 災害対策は自分だけではなく、家族やペット、友人や近所の人といった自分の周りのたくさんの人が誰も死なないようにするために行うものです。自分の対策ができたら、家族同士で内容を擦り合わせ、何かあってもきちんと合流できるようにしておいてください。また、復旧方法や対応策についても、ある程度検討しておいていざというときにすぐ対処ができるようにしておきましょう。

車いすの避難について考える

よくある避難訓練の一コマ

  施設などの避難訓練では健常者の訓練の中に「車いすを非常階段で抱えて下ろす」というような項目が追加されていることが増えてきました。
 エレベーターなどで上層階に簡単に移動できるようになりましたが、火災や災害でエレベーターが動かなくなってしまうと、車いすの方の避難は階段を使わざるを得なくなりますが、 そういうときにどうやって車いすの方を安全なところへ避難させるのかを確認して訓練しておくことは、実は結構大切なのではないかと思っています。
 実際にやってみると、棚などから落下したものが通路をふさいでみたり、非常扉が通り抜けできない構造だったり、非常階段がそのままでは降りられなかったりと、健常者では問題にならないさまざまなことが問題になります。
 これに気づいて対応策を考えておくことは非常に重要なことで、一度対策を身につけると、いざというときに車いすの方を安全に避難させることが可能になります。
原則は車いすごと抱えて避難ということになるのですが、このときによく問題になるのは車いすの人を階段で下ろすとき、前向きで下ろすのがいいのか、背中から下ろすのがいいのかについて毎回悩みます。一般的には抱えている車いすからの転落が怖いため、背中側を階段の下に向けて移動させるそうなのですが、移動する方向が見えないと怖いという方もおられます。車いすの人が職場の人間であれば、あらかじめ試してみてどちらがより楽かを決めておけばいいのですが、お客様で来られた場合にはどちらがより安全かについて迷うこともあると思いますが、迷っていても仕方の無いことですし、問題になるのは車いすの方を安全に避難させることなので、その場の状況やいる人数によって運び方を変えるしか手はないです。
 あと、施設などに置かれている貸し出し用の車いすは非常に重たいですので、そのことも踏まえて一度訓練しておいた方が安心だと思います。
 車いすに限らず、障害を持っている方が安全に避難できる環境というのは健常者にとっても当然安全な環境です。より安全に避難できるように、避難訓練にもいろいろな要素を加えていって欲しいなと思っています。

【活動報告】防災勉強会を実施しました。

 去る2月16日、益田市の黒石自治会様で防災勉強会を開催し、ハザードマップの見方と避難を行う判断基準の考え方、そして地震対策についてお話をさせていただきました。
 この地域は土砂災害警戒区域があちこちにあって過去に災害も起きているため、土砂災害についてはイメージがあったとのことでしたが、地震や津波についてはあまり考えたことがなかったということで海抜高度や地震の規模についてご質問をいただき、こちらもいろいろな新たな気づきをさせていただきました。
 自治会様向けの勉強会は初めてさせていただきましたが、皆さん熱心に学習していただき、災害対策に対する意識付けの一つにはなったかなと思っています。
 災害対策はさまざまなことをしなくてはいけませんが、一番最初で一番大切なことは「自分の命を守り、できれば怪我をしないこと」です。災害が起きたとき、参加された皆様が自分の命を守ることができるような研修をしていきたいと思っています。
 勉強会に参加してくださった黒石自治会の皆様、勉強会の開催についてご尽力いただきました自治会長の戎野様にあつくお礼申し上げます。

雪道の交通規制

 雪道を車で走行する際に、平成30年から夏タイヤだろうがスタッドレスタイヤだろうが必ずチェーンを装着しないと通行できない区間が設定されました。
 急勾配の続く区間や、過去に大雪による通行止めのあった場所、トラックや乗用車の立ち往生が発生した区間が対象となっており、石見地方では浜田道の大朝ICと旭ICの間がこの区間に指定されています。

チェーン規制区間の表示看板。

 チェーン規制が始まると、図のような看板が道路脇に登場し、規制区間ではチェーンをつけていない車は通行させてもらえません。今年は暖冬で雪による交通規制を忘れてしまいそうになりますが、今日明日は冬将軍が登場するような予報が出ていますからチェーン規制も登場するかもしれません。浜田道の利用を予定している方は念のため車にチェーンを積んでおいた方がよさそうです。また、チェーンは持っているだけでは規制区間の走行はできませんので、事前に付け方をマスターしておくことをお勧めします。

国土交通省_チェーン規制Q&A(国土交通省のサイトへ移動します)

ハイウェイ交通情報(NEXCO西日本のサイトへ移動します) 

【活動報告】福岡市民防災センターで防災体験を行いました

 去る2月15日に当所研究員が福岡県福岡市にある福岡市民防災センターで防災体験をさせていただきました。
 この施設は、福岡市消防局が運営する施設で、さまざまな防災体験や防災グッズの展示、またヘリコプターの静態展示などもあり、非常に面白いところです。
 ここでは枠に余裕があれば当日飛び込みでも1時間の防災体験コースを受講することができ、これは市民に限定していないため、誰でも参加することができます。
 当所研究員達もこの1時間の防災体験を受講させていただき、家屋火災からの避難、消火器の使い方、起震機による地震体験(震度6強)、そして風速30mの強風体験を経験してきました。日頃さまざまな災害対策について知識としては持っていても、実際に体験してみるとやはり勝手が違うもので、いろいろな気づきがあったようです。
 当日は家族連れや自治会の防災担当者、地元の少年防災クラブなど、たくさんの方達が防災体験をしていて、こういった体験が身近な防災意識の醸成に役立っているのだろうなと感じます。

 体験終了後は119番通報の練習や、水没した車からの脱出体験などをし、帰る前はセンター隣の消防署で行われていた消防隊員の訓練を興味深そうに見ていました。

 福岡へお出かけの際、是非一度行って体験していただきたいなと思います。

最新の知見を得よう

 防災に限らず、研究が進んでいる分野ではそれまでの定説が気がついたらやってはいけないことにされていたりということがあります。
 習った時点、習った相手によっていろいろなことがさまざまに変わっているので、同じような内容を複数の人に教えてもらって違ったことを言っていると、戸惑ったり困ったりすることもたくさんあるようです。
 そういうことにならないように、教える側は最新の知見を得ておく必要が常にあるのだと思っており、かつ異なる話が出たときにそれのどこに問題があったのか、それのどこが正しいのかということをきちんと説明して修正や指導を加えていく。 それができて初めて教わる人達の信用を得てよりよい方向に進んでいけるのではないかと思っています。
 特にいろいろとあるなと感じるのが応急処置の部分で、正直なところ、これは教える人の数だけあるんじゃないかと思うくらいさまざまな流派が存在し、その中でも教わる時点によってやっていることが異なっていることが、いろいろとややこしくなっている原因なのではないだろうかと思っています。
 どの方法であれ、結果的に命が助かればいいのですが、中には誤った方法にされたものもあったりして、いざというときに自分の知識が正しいのかそうでないのかについて悩んでしまうのではないかと思うことがあります。
 最新の知見をたまにはしっかりと確認して、的確にしっかりとより安全な行動を取ることができるようにしたいものだと思っています。

自分ができる地震時の安全な姿勢を決めておく

 地震が起きたとき、まず最初に周囲の安全を確認してからダンゴムシのポーズを取る、というのが最近の耐震姿勢のはやりのようです。
 ただ、何らかの事情でダンゴムシのポーズがとれなかったり、周囲の安全確認に時間がかかったりする人がいることも事実ですので、自分がすぐにとれるできるだけ安全な姿勢というのを確認しておきましょう。例えば高齢者の方などは素早い行動を取るのが困難な人も多いですから、安全確認しているうちに揺れで転んで怪我をしてしまうかもしれません。それを防ぐためには、普段歩くコースに危険なものがないかを意識しておくことです。
 それから、転倒しないためには重心を下げる必要があります。人間の身体は構造上異常に頭が重たくなっていますので、なるべく低い姿勢を取ることが大切です。しゃがんだり、座ったりすると揺れに対して転んでしまうリスクはかなり下がります。階段では、必ずてすりをつかんで移動し、揺れを感じたら手すりをつかんだまましゃがむこと。そうすれば何もせずに立ったままよりもかなり安全になります。
身体が揺れを感じたらすぐに低い姿勢をとること。もし地震でなかったとしても、転倒する危険は防げます。
 地震そのもので死ぬことは殆どありません。揺れによる転倒や倒壊、崩落などに巻き込まれて死ぬのですから、その原因をなくせばいいのです。
 普段からの生活スペースの片付けや移動経路にものを置かないことなどしなければいけないことはたくさんありますが、ちょっとした意識の変化で生存確率を変えることはできます。あなたにあった地震時の安全な姿勢を見つけ、その姿勢が無意識にでも取ることができるように、見つけて練習しておいてください。

意識と行動

 災害対策が必要だと思っている人は多いと思いますが、あなたはいかがですか。
 地震、台風、大雨、洪水、雷に猛暑と、特にここ最近あらゆる形で襲いかかってくる災害。自分が安心して過ごすためには、災害対策をきちんとしておかなければいけません。
 では、災害対策で何か準備をしているかと尋ねると、ちょっとしたことまで含めると、結構な確率でそれなりに準備しているという回答をいただけるようになってきており、災害対策の普及をしている身としては少しだけ喜ばしいことだと思っています。
 ただ、問題になるのは災害対策は一度備えればOKというものではなく、定期的にいろんなものを見直して準備し続けるという行動が必要となります。
 これはなかなか難しいようで、災害でひどい目に遭ったところでさえ、十年も経つと備えていたものがみんな駄目になってそれっきりというようなことになっていることが殆どなので、災害対策を意識してもらった後は、継続して意識してもらえるような仕掛けを作る必要があります。それが地域や行政が行う避難訓練であり、3.11や1.17といった災害を忘れない日として毎年取り上げられている日です。
 家庭でも、意識し続けることは非常に難しいと思います。でも、年間計画で一年に一度、キャンプと安全な場所までの避難訓練を行えば、災害対策を意識し続けることは無理なくできると思います。
 備えているから安心、ではなく、備え続けるから動けるという意識でいたいものですね。

自分が死なないための対策をしておこう

 災害対策というと、訓練でまず最初に出てくるのが避難または避難後の生活の組み立て方です。ですが、実際のところ、どんな災害であれ生き残れなければその先は意味がありません。地震や台風、大雨、水害といった災害が起きたとき、どうやって自分の命を守るのかを自分で考えて決めておかなければなりません。
 自分と地域の状況を確認し、どんな災害が発生したら自分はどうすれば助かるのかを整理し、実際に訓練を繰り返すことで自分が死ぬ確率を可能な限り下げていく。その行動が必要なのです。
 例えば地震であれば揺れたときに立っているよりも座っている方が転んで怪我をする確率は下がります。水害であれば、水があふれる前、どのタイミングでどこへどのように避難するのかを決めて行動することで、遭難する確率を下げることができます。
 自分が死なないために何ができるのかを考え、それが無意識にできるようになるまで練習をしておくこと。
 それが自分の生き残るために最初にしておくことです。
 建物の耐震補強や家具の転倒防止、飛散物の撤去など、やるべきことはたくさんありますが、もしもさまざまな事情でハード的なものに手がつけられなくても、自分の行動を決めておくだけでも生き残る確率は変わります。
 災害なんかで死なないために、まずは自分と住んでいる地域、出かけている地域の特性を確認し、災害が起きても死ななくても済むように準備しておきましょう。