逃げる判断は誰がする?

 熱海ではひどい土砂災害が起きてしまったようで、被災された方へ心からのお見舞いと、行方不明の方の一刻も早い発見を願っています。

 さて、現在梅雨前線が活発化していてどこで大雨が降ってもおかしくない状況ですが、避難すべきかどうか、そして避難先や非常用持ち出し袋の準備は万全ですか。
 災害時に避難するかどうかの判断は、自治体がするわけではありません。
 災害時にいつ避難開始をするのかや、いつまで避難を続けるのかといったあなたが身を守る行動というのは、自治体ではなくあなた自身が判断すべきことです。
 ではなぜ自治体が避難情報を発するのかというと、内閣府防災が「避難情報に関するガイドライン」の中で「市町村長は、災害時には関係機関からの情報や、自ら収集した情報等により、的確に判断を行い、躊躇することなく避難情報を発令し、速やかに居住者等に伝えなければならない」と定められており、災害時には居住者等の主体的な避難行動を支援する情報を提供する責務を有するため、避難情報を出しているのです。
 つまり、その地域に危険が迫っているということはこの避難情報でわかりますが、いまあなたのいる場所がどうなのかということは考えられていないのです。
 今回の熱海では、警戒レベル3で大規模な土砂災害が発生したそうですが、それにより、恐らくまた自治体がマスメディアなどから責められることになるのではないかと思っています。
 実際のところ、現在の自治体は、どこも人不足、経験不足で災害に対する的確な判断ができるとはとても言えない状況です。
 一例を挙げるなら、災害時には、一般住民を始めマスメディアや国、その他さまざまなところから現在の状況についての問い合わせがきて、その電話対応に追われて現地の状況把握や対応ができなくなります。
 これは自治体職員を削減して非常時対応能力を低下させた結果であり、仕方の無いことではあるのですが、自分で避難の判断ができない人達や自分では何もせずに助けて欲しいという人達がいかに多いかが問題を悪化させているような気がします。
 くどいようですが、逃げる判断はあなた自身があなたのために行うあなたの命を守る行為です。
 自治体が判断している基本情報は、現在ほとんどインターネットで公開されていて、誰でも見ることができるようになっています。
 つまり、それらの情報を自分で読みに行って考えれば、避難情報があろうがなかろうが逃げるかどうかの判断はできるはずなのです。
 あなたの命を守るために、少なくとも避難開始のタイミングだけは決めておいてくださいね。

ハザードマップ、確認してますか

 梅雨前線が本州にかかってきて、静岡県の方では土砂災害が出ています。
 新しく変わった避難レベル5も発令されたようで、梅雨前線の予想を見るとまだまだ余談を許さない状況です。
 ところで、お住まいの場所のハザードマップを今一度しっかりと確認して避難の必要があるかどうか、そして避難する場合にはどのような経路をたどって安全に避難をするかについて確認をお願いします。
 沖縄が梅雨明けしたということは、太平洋高気圧の勢力が強くなっていると言うことなのですが、そうなると梅雨前線は押し上げられて本州の上に来ます。
 向こう72時間の予想天気図を確認する限り、梅雨前線は北上・南下を繰り返す状況のようですから、しばらく雨は続きそうです。
 降る量は少なくても、時間が長くなると山が揺るんで土砂災害が起きる可能性は高くなります。
 また、線上降水帯が発生すると大雨が降り続くような状態になります。
 普段と様子が違うと感じたり、何かおかしいと感じたら、早めの避難をするようにしてください。
 また、避難に備えて非常用持ち出し袋の中身の確認も忘れないようにやっておきましょう。

大水のときの対処法

 大水が出るときには、基本的にその場所、あるいはその上流部で大雨が降ることが前提となります。ただ、大雨とはいっても、家の窓から見ているだけならそこまで危険は感じないかもしれません。
 安全な場所にいる場合にはそれでいいのですが、そうでない場所に住んでいる人やそういった場所にいる人は、普段から意識を高めて予防策を打っておくことが大切です。 

 安全かそうでないのかを知るためには、まず住んでいる環境が大雨で避難をしなければいけない環境なのかを確認し、意識しておくこと。
 土砂災害特別警戒区域や土砂災害警戒区域に入っている場合には、早めの避難をする必要がありますから、天気が怪しいなと感じたら天気予報や雨雲レーダーなどを確認し、大雨が降りそうな感じであれば早めに安全な場所に避難することです。
 また、洪水はその地域では雨が降らなくても流域全体での降水量が多ければ、晴れていても氾濫を起こしてしまうようなことがあります。
 川遊びや川のそばで何かしようとするときには、天気予報や雨雲レーダーだけでは無く、管理者が発表している河川情報にも目を光らせておく必要があります。
 あと、過去に地域で起きた洪水で被災しやすい場所を確認しておくことがとても大切です。それから排水路、河床、谷筋など、水の道ができやすい場所や地域内での標高が低い場所も要注意です。

 では避難が必要な場合にはどうすればいいのか。
 大雨や洪水という文字が気象予報に登場してきたら、すぐに高台に上がって降っている雨水が止んで状況が落ち着くまで様子を見ることが重要です。
 また、路上に溢れ出す水が見えたら、そこは可能な限り通らずに迂回して安全・確実性を確保して下さい。
 路上の水に流れがあって、水深がわずか数cmでも、足を取られてひっくり返される危険性があります。
 ひっくり返ってしまったら、骨が折れたり頭を打ってしまったりしてしまいますし、どうかするとそのままより深く早い水の流れに巻かれてしまうことになるかもしれません。
 水がくるぶしより深ければ危険だと考えて下さい。特に、視界が悪くなる夜間は危険になります。
 どうしても水の中を歩かなくてはならない場合は、可能な限り浅くてできる限り水が流れていない場所を探し、頑丈な棒を使って水の深さと水の下の地面の硬さを突っついて確認しながら歩くようにします。
 このときに使う棒は水の中や下を探るための道具ですので、杖のように体重をかけてはいけません
 また、子どもを連れているときには、できるかぎり持ち上げて流されないように運んで下さい。
 たまに見かけるのですが、水の中の避難時にお互いの身体を結ぶという記事があります。これは誰か一人が転ぶと全員巻き添えになって非常に危険ですから絶対にやらないようにしてください。
 また、濡れた状態で電気機器に触れたり、電気器具の近くを通らないように気をつけてください。水に濡れたり、足を水につけている状態で電気器具に接触すると感電する危険があります。
 もしも大雨や洪水で家から避難するときには、必ずブレーカーを切ってから避難するようにしましょう。

 ちなみに、突然大水に襲われた場合には、どこでもいいので少しでも高いところに避難します。それが無理であれば、できるだけ早く丈夫なものをつかんでください。
 万が一水に流されたら、大の字になって仰向けに浮かぶようにし、大きながれきや破片が自分に向かってきたら手で押しのけてください。
 また、障害物は必ず上を越えること。下をくぐろうとすると溺れる危険性があります。
 流されていくなかで、もしうまく何かを掴むことができたら、しっかりとそれを手で保持し、足を下流に向けて救助を求めます。
 ホイッスルがあれば無理をせずに存在を教えることができますが、ない場合には声や手の動きなど、誰かに見つけてもらえるようにできうる手段をとってください。
 ここまで読んでいただいて分かると思いますが、早く避難すれば濡れなくても済み、危険な目にも遭いません。
 命を確実に守るためには、空振り上等での毎回の確実な避難が第一だと覚えておいてくださいね。

非常用持ち出し袋の防水対策はしっかりと

 非常用持ち出し袋を作るときに気をつけたいこととして、中のものが濡れたり汚れたりしないようにしておくことがあります。
 着替え、懐中電灯やラジオなどの電気製品、衛生用品など、濡れたり粉塵を被ると使えなくなったり使いにくくなったりするものが結構ありますので、対策はしっかりとしておく必要があります。
 方法はいろいろあるのであなたの実情にあったやり方をしていただければいいと思うのですが、例えば、防水仕様の非常用持ち出し袋なら中が濡れることはありませんし、外から中に水が入らないのなら中から外へ水が漏れることもないので、水の配給時に給水袋として使うこともできます。

防水リュックサックの一例。縫い目がなく、開口部を丸めてマジックテープで止めることで中に水が入らないようになっている。

 防水仕様でなくても、中に大きめのビニール袋を重ねて入れて、その中にものを納めれば防水仕様の非常用持ち出し袋と同じ効果を得ることができます。
 また、個別にジップロックなどの密封できる袋に収めていく方法もあります。密閉できる袋があるとさまざまな場面で重宝しますので、準備しておくといいと思います。
 せっかく準備していても、駄目になってはなんにもなりません。
 いざというときに使えるように、きちんと対策をしておくことをお勧めします。

車の避難は危険かも?

 水害からの避難では、避難勧告が出た段階では基本的に車は避難に使わない方が無難です。
 とはいえ、大雨が降っていて足下に流水の姿が見えると、歩くよりは車の方が安全に見えてしまうのも事実なわけで、実際に氾濫し始めた時期の避難は車を使うという人も多かったりします。
 ただ、多くの場合車が水没したり動けなくなったり流されたりしてしまい、歩くよりも危険な目に遭うこともしばしば。
 では、どうして水の姿が見えたら車を使ってはいけないのでしょうか。

1.車は簡単に流される

 感覚的に車は重量物だと思ってしまいますが、道路に接している面は、実はタイヤの4カ所、それぞれはがき1枚分くらいの大きさしかありません。
 地面に接しているこの部分の排水がうまくいかないと、水に持ち上げられてしまって車のコントロールがきかなくなってしまいます。
 高速道路などで起きることがあるハイドロプレーニング現象が、流水と車の速度、そしてタイヤの溝の状態で発生してしまうことになるのです。
 一度流されてしまうと、車はそのまま勢いに任せて流されていきます。へたをすると、車から脱出できずにそのまま水に呑まれてしまうことも起こり得ます。
 水が道路に溢れている状態では、車はかえって危険なことがあることを知っておいてください。

雨天時に初めてわかる摩耗タイヤの危険性(JAFのyoutubeチャンネルに移動します)

2.車は簡単に沈む

車が流される光景は水害関係の映像を見るとおなじみですが、車は簡単に沈む存在でもあります。
運転席や乗客がいる客室も完全防水ではありませんから、一度沈み始めると中まで水浸しになってしまいます。
最近は電動ウインドウが殆どですから、水で車の電気系統が駄目になってしまうと、ハンマーでもない限りは車から脱出できなくなります。
通勤経路でアンダーパスなどが存在している場合には、よくそこで水に突っ込むことがありますから、経路をよく考えて普段から意識するようにしないといけません。

3.吸気口に水を吸い込んだら終わり

クロスカントリーカーだろうがSUVだろうが、エンジンの燃焼構造は基本的に一緒です。
吸気口に水を吸い込んでしまったら、エンジンは動かなくなります。
よく水の中を移動している軍用車両があったりしますが、車の吸排気系は屋根の上に煙突のように突き出している道具(シュノーケル)があるから水の中をある程度まで移動できるのです。
吸気口が水面下になってしまったら、ほぼ100%動けなくなると思って下さい。

4.渋滞に巻き込まれる

田舎であれ都会であれ、車は道路を使って移動をします。
水が出るとその道路が寸断されてしまうため、あちこちで立ち往生する車が出てきます。
それに巻き込まれてしまうと、どうにも逃げようがなくなります。
早めの行動をすれば、そういった事態に巻き込まれる確率はかなり下がりますので、車で逃げるならとにかく早めの避難が重要です。

 普段はあまり意識していないのが水の怖さだと思いますが、車で被災すると非常に恐ろしい目に遭います。
 たくさん荷物が運べて雨にも濡れず、一時的な避難所の機能としても期待できる自動車。もしも車で避難するのであれば、人よりも早めの避難開始・避難完了をするようにしてください。

車両水没実験 ~増水時を想定した水没テスト~【JAFユーザーテスト】(JAFのyoutubeチャンネルに移動します)

冠水路走行テスト(セダンタイプ)【JAFユーザーテスト】(JAFのyoutubeチャンネルに移動します)

冠水路走行テスト(SUVタイプ)【JAFユーザーテスト】(JAFのyoutubeチャンネルに移動します)

水の特性とハザードマップ

 災害時に備えて、よくハザードマップを見ておこうという内容の話をします。
 ハザードマップは土砂災害特別警戒区域や土砂災害警戒地域、川の氾濫による浸水予想箇所などが記載されていて、災害に備えるときには非常に役に立ちます。

益田市のハザードマップの二条地区の一部の拡大図。河川氾濫は想定されていない地域なので、ハザードマップには土砂災害の情報だけが掲載されている。

 ただ、ちょっと気をつけておきたいのが内水氾濫といわれるもので、これは排水路の排水能力を超えた雨が降った場合に排水路から水があふれ出し、地域の低地を中心に水没してしまう状態を言います。
 この内水氾濫は情報は多岐に渡るためか、ハザードマップでもこれによる浸水情報を提供しているものは少ないようです。
 でも、水は高いところから低いところへ流れていくという特性が理解できていれば、とりあえずその地域でどこの土地が低いのかがわかればある程度の浸水予想場所はわかるわけです。
 山のてっぺんでもない限り、内水氾濫はどこでも起こりうることなので、地図をみて地域の低い場所を確認しておく必要があります。
 地図が読めない、あるいは読むのがつらい方は、国土地理院GSIMAPを使って色づけをすると一目でわかるものができます。
 この地図では、等高線を任意に設定できます。地域で低そうな場所はわかると思うので、その場所の標高を測ってそこから数メートル刻みで色を設定すると、一目で状態がわかります。

益田市の二条地区の例。標高70mを基準として、10m単位で色を変えている。周囲の谷から中央部の青い部分にかけて青色が濃くなり、低地になっているのがわかる。実際に中央部の水色部分では過去の大雨で床下浸水を起こしたことがある。

 オプション扱いの赤色立体地図をセットすると、よりはっきりとわかります。

赤色立体図にしてみると谷筋が集約しているのがはっきりと分かる。中央部の水色の部分は谷筋の水が集まることによって水没する危険があることがわかる。


 標高が高いからといっても洪水は起きる可能性がありますから、こういった地図を上手に使って、地域の安全性を確認していきたいですね。

国土地理院-GSI Maps(国土地理院のウェブサイトへ移動します)

大雨の時の避難

 梅雨というと、しとしとした雨が何日も降り続くというのが昔の風物詩でしたが、最近では短時間で局所的に一気に雨が降って、それ以外は雨が降らないということも起きるようになってきました。
 しとしと雨だと、河川が氾濫したり側溝や用水路が溢れたりするまでには時間がありますから、水位の上昇を見てから逃げても充分に間に合います。
 ですが、短時間で局所的に降る雨だと、気がついてから準備ができた頃には家も道路も水浸しで逃げられないという事態が起こりえます。
 大雨の時の避難は、どのようにしたらいいのかを少し考えてみたいと思います。

1.住んでいる場所の環境を知る

 まずはお住まいの環境が低地かどうかを確認します。
 周辺の土地に比べて低いようなら、避難を考える必要がある場所です。
 また、ハザードマップを確認し、土砂災害が起きる可能性のある地域や河川の氾濫による浸水想定地域かどうかを確認します。
 もっとわかりやすく書くと、凡例で示されている色が塗られている場所は避難が必要な地域と言うことになります。
 この他、低地やハザードマップの凡例の色が塗られていなくても、崖下や崖の上、雨が降ると水の溜まりやすい場所などは、状況に応じて避難した方がよいかもしれません。
 上記に該当しない場合には、とりあえずは慌てて避難する必要はありません。
 ただ、孤立してしまう可能性はありますので、数日分程度の生活物資の確保はしておいてください。

2.避難先と避難経路を確認する

 避難が必要だと判断したら、安全な避難先を考えます。近くの高台でも避難場所でもいいのですが、いくつか場所を決めたら避難路を線で引いてみます。
 ハザードマップの凡例の色つきの場所や、普段見ていて危ないなと思うような場所、低地や崖下、崖上を通るような経路になっていませんか。
 避難先だけでなく、避難経路が安全であることも大切ですから、大丈夫だと思えるまでいろいろと試してみてください。

3.実際に避難先まで歩いてみる

 避難先と避難経路が決まったら、一度実際に歩いてみましょう。地図上で見るよりもいろいろな気づきがあると思います。
 その時の気づきと、実際にかかった時間を記録しておきましょう。

4.避難開始のタイミングを決める

 実際に歩いてみた結果を基に、避難にかかる時間を考えます。
 避難するときには、恐らくすでに天気が悪くて歩きにくい状況になっていると思われますので、歩いてみた時間を1.5倍したものを移動時間としてみましょう。
 その時間を基本にして、避難開始のタイミングを考えます。
 例えば、移動に30分以上かかるようなら、警報が出たら避難するでもいいと思いますし、さほど遠くないのであれば、警戒レベル3で行動開始でもよいと思います。
 警報基準が改正されて「レベル4=避難指示」となりましたが、レベル4が発表されたときでは移動開始が遅くなることも多いですから、判断基準は平時にしっかりと検討しておきましょう。
 早めの行動なら、空振りは多くなるかもしれませんが確実に助かります。

5.非常用持ち出し袋を作っておく

 避難後数日間を過ごせる程度の生活用品を詰めた非常用持ち出し袋を用意します。
 大雨の場合には時間にある程度の余裕がありますから、持ち出しリストを作っておいて、避難前に袋に詰め込んでもいいかもしれません。
 可能であれば生活用品のストック場所を非常用持ち出し袋にしておくと、そのまま避難開始できて便利ではあります。

6.避難したら戻らない

 避難が完了したら、状況が落ち着くまでは避難先に留まるようにします。
 避難所の設置者も「警報解除=安全」で避難所をすぐに閉鎖しようとするのですが、実際には警報解除後に崖崩れが起きたりすることもあります。
 もし夜間であれば、そのまま朝まで避難所で待機して、周囲が明るくなってから帰ることをお勧めします。
 自分の目で安全が確認できるようになったら避難解除と考えて行動するようにしてください。

 大雨時の避難はタイミングと避難先が結構難しいものです。
 平時に少しだけ時間を作ってルールを決めておくと、いざというときに迷わず行動することができます。
 あなたの命を守るために、しっかりとした行動をするようにしてくださいね。

ペットの避難を考える

 ここ最近の大規模災害とその後のさまざまな出来事から、避難所でもペットを受け入れようという動きが出ています。
 ただ、問題なのは想定されているペットが犬や猫ということ。
 そして同行避難が認められている避難所であっても、同伴避難といって避難所で一緒に生活することはできないことも多々ありますから、避難先で何が起きるかは正直なところ誰もわかりません。
 現在、ペットブームというわけでもないのでしょうが、小はハムスターや鳥、蛇、フェレット、大はやぎや馬まで、ご家庭には実にさまざまなペットがいます。
 そのペットの全てが避難所に避難してきた場合、果たして全てを受け入れることができるでしょうか。
 例えば、ハムスターと猫が同じ部屋で一緒に過ごせますか。普段散歩で会うと喧嘩している犬同士が同じ避難所で生活できますか。フェレットはどうですか。蛇や金魚、カナリアやオウムではどうでしょうか。
 そう考えると、避難所に避難する選択肢よりも、避難所に避難しなくてもすむような選択肢を考えておかないといけません。
 例えば、耐震性があって、水に浸からず、崖崩れの心配のない場所で生活をすることができるなら、ペットだけで無く人間も避難しなくて済みます。そういった環境なら、万が一、人間が避難しなくてはいけない事態になってもペットは家で過ごすことが可能なのではないでしょうか。
 域外避難の場合は状況が異なりますが、家が安全であれば、数日間えさとトイレの心配さえなんとかなれば、ペットだけで過ごしてもらうことは十分可能です。

 また、被災地外の動物病院やペットホテル、一時預かりをしてくれるNPO団体にお願いするのもいいでしょうし、ペットがなついている人がいるなら、その人に当座の面倒を見てもらうというのもありだと思います。
 キャリーケースに収まってもらったり、しつけをしておくことはもちろんですが、そもそもペットが避難所に避難しなくても済むような環境を作っておくことも、飼い主の責任の一つなのかもしれませんね。

地形と避難のタイミング

ハザードマップの一例(益田市高津地区~吉田地区の洪水ハザードマップ)

 災害からの避難では、「〇〇地区に避難指示が出ました」というと〇〇地区の全ての住民が避難所に避難しなくてはならないというイメージを持たれているのではないでしょうか。
 言葉を正確に書くとすると「〇〇地区の被害が想定される場所にいる人に対して避難指示が出ました」というところなのですが、被害が想定される場所は非常に曖昧で行政機関が具体的に指定ができないので、「〇〇地区」というくくりで避難を促す構造になっています。
 ですが、もしも避難指示を素直に受け取って〇〇地区の全ての人が避難所に避難するとしたら、よほど小さな集落でない限り、その避難所の収容能力を大きく超えてしまってパンクしてしまうでしょう。
 また、家はなんともなかったのに避難中に遭難してしまうというケースもありますから、自分のいる場所はどのような災害に対して弱いのかをきちんと把握しておく必要があります。
 そこで確認しておきたいのがハザードマップです。これには土砂災害警戒地域が記載されているはずですから、それを見ると大雨などで崩れる場所がある程度予測できます。また、河川氾濫もハザードマップを見ればある条件下ではありますが被害に遭うところが予測できます。
 排水がうまくいかないことによって発生する内水氾濫についてはハザードマップではわからないものも多いので、国土地理院地図Vector内「自分で作れる色別等高図」で色塗りしたものを使って低い場所を確認しておきます。メートル単位のざっくりとした絵ですが、これである程度低い場所が把握できるので、その地域にいるのであれば優先して避難する必要があることがわかります。

国土地理院Vectorを使って1m刻みにしてみた。こうすると、どこが低いのかが一目でわかる。


 逆に言えば、こういった避難の要件を満たさない場所にいる場合にはそこにいたほうが安全だということが言えるわけですから、慌てて避難しなくてもいいということがわかると思います。
 もちろんこれらで問題ない場所だからと言って100%安全だとは言えませんから、不安であれば避難してもまったく問題ありません。
 重要なのは、自分のいる場所がどんな条件の土地なのかをきちんと知っておくことで、それによって避難判断をする基準が異なるということになります。
 似たような場所に住んでいるからといって、必ず同じように被災するとは限りません。隣り合わせた2件の家が、片方は倒壊して片方はなんともないということもあり得るからです。
 自分が住んでいる場所の地形を把握し、避難が必要だと考えたら、その避難経路も含めた地形の安全をしっかりと確認し、どのタイミングで避難すればより安全かをしっかりと決めておきたいものですね。

ケミカルライトをカバンに1本

 災害が起きた後はちょっとしたことで不安に陥ってしまうものです。
 電気や水道が止まっているかもしれません。避難したら、普段と異なる場所で場合によっては見知らぬ人達と長時間過ごさないといけなくなるかもしれません。
 そういうときにこころが折れてしまうと立ち直れなくなりますので、気分を落ち着けるための温かい飲み物が飲めるような準備、しっかりとした睡眠をとるための睡眠セット、そして正しい情報を集めるためのラジオは非常用持ち出し袋に入れておきたいものです。
 そして、明るさを確保することも実は気分を落ち着けるためには非常に有効だと言うことを知っておいてください。
 懐中電灯やランタン、ヘッドライト、ロウソクなど、灯りはいろいろとあるのですが、普段のメンテナンスがどれくらいできているかということと、発生した災害が何かによって使える道具が変わってきます。
 例えば、地震が起きたときなどは火は絶対に使ってはいけません。ガス漏れなどで爆発したり、揺れでひっくり返って火事が起きたりする可能性があるからです。
 懐中電灯やヘッドライト、電池式ランタンがあればいいのですが、勝手にスイッチが入っていて電池が切れていたり、きちんとメンテナンスできてなくて電池が入ってない、液漏れして使えないなどが問題として起こり得ます。
 また、非常用持ち出し袋を持って逃げている暇がない場合もあると思います。
 そんなときに備えて、普段使いのカバンにケミカルライトを1本入れておくといいと思います。
 コンサートなどでファンが振っている明るい棒、一般的にはサイリュームと呼ばれているものなのですが、化学反応で光を得るため総称としてはケミカルライトというそうです。熱も出さず、保管の危険性もさほどなく、常温保存できることから、非常に便利なものです。そしてその用途に応じてさまざまなものが存在します。
 強力な光で30分程度照らしてくれるものから、そこまで光は強くはないが半日以上光り続けてくれるものなど、ご自分の利用スタイルで準備しておくといいと思います。
 さほど重くなく、場所もとらないサイリューム。気をつけないといけないのは衝撃ですが、カバンの中でひどい扱いにならない限りは勝手に光っていたと言うこともない優れものです。
 そんなに高くもない便利なアイテム。あなたの普段使いの袋に一本入れておくと安心ですよ。