電気のバックアップを考える

 今の生活で「電気」は必要不可欠なものです。
 災害時にはこの電気が止まってしまうこともよくありますので、その際には発電機か蓄電池で必要な電力を確保する必要があります。
 では、あなたの家や職場で最低限必要な電力量はどれくらいなのかを考えたことがありますか?
 それによって必要な電力を供給する道具を準備しておく必要があるのです。
 あまり電気を使わない家庭であればポータブル蓄電池があればやり過ごせるでしょうし、機械類をたくさん使うところなら大出力の自家発電機を用意する必要があるでしょう。
 あらかじめ、そこで機能を維持するために最低限必要な電力量を確認し、それにあわせた電源バックアップの準備をしておくといざというときに慌てなくて済みます。
 私が今使っているタイプのポータブル電源だと電気毛布なら一晩は使え自動車のアクセサリーソケットからも充電が可能です。最近はもっと高性能なものもでていますから調べてみるといいでしょう。
 その際には、電源を供給する先のことも考えておいてください。
 発電機にしても蓄電池にしても電力供給方法には「通常型」「疑似正弦波型」「正弦波型」の三種類があります。
 精密機械になればなるほど正弦波型以外は故障を招くことになりますので、例えばパソコンに電力を供給しようと考えるなら正弦波型を選ばないと壊れてしまうことがあります。
 自分が電気が必要だと考える道具がどのタイプの電力を必要とするのかについてはきちんと確認しておくことが必要です。
 そして、発電機や蓄電池の供給量を超えないようにすることが大事です。電化製品は起動時と運転時の出力が違うものも多いので、もっとも必要とされる電力量を賄えなくてはいけません。
 マニュアルなどには消費電力と瞬間消費電力の記載があるので、その中の大きい数値以上の出力のあるものを用意するようにしましょう。
 事務所等では精密電子機器が多く、基本的には正弦波型でないと対応ができません。UPSと呼ばれる補助電源装置が組み込まれている場合、電気の供給が止まっても数分程度は耐えてくれますので、その間に電源を切る作業を行うことになります。
 もし電力量が大きければ余裕を持った対応ができますので、もしこれからバックアップ電源を準備するのであれば、下のリンク先の電源システムを検討してみてくださいね。

災害時伝言ダイヤルを使ってみよう

 災害時に気になるのは家族の安否を知るための方法の一つにNTTが提供する「171」があります。
 これは災害時にNTTが災害時伝言ダイヤルを設置してそこへお互いの安否を吹き込み、通信回線の混雑を解消すると同時にお互いの安否を確認することを目的に作られました。
 大きな災害が発生すると、数時間以内にこの伝言ダイヤルが設置され、そこへ伝言を残すことができるようになっています。
 使い方はさほど難しくなく、被災地外でやりとりできるため電話も繋がりやすくなっているそうですので、この活用ができるように考えてください。
 ポイントは、関係者が「この電話番号を使う」ということをあらかじめ決めておくこと。
 一口に電話番号と言っても、個人が複数回線を持っている時代です。あらかじめ利用する番号を決めておかないとここでも行き違いが発生してしまうことになります。

NTT西日本作成の「災害時伝言ダイヤルの使い方」を一部改変しています。

 また、伝言ダイヤルは全体で最大300万件までの登録しかできないそうなので、同じ人が乱立させてしまうと大規模災害ではあっという間に伝言ダイヤル自体がパンクしてしまうことになります。
 毎月1日、15日には訓練用に災害時伝言ダイヤルが使えるようになっていますので、ぜひこれを使って連絡を取り合う練習をしてみてくださいね。
 また、スマートフォンやパソコンが使える環境なら、「web171」や各大手携帯電話会社が提供している「災害伝言板」への投稿も検討してみてください。
 こちらも鍵となる番号を決めておく必要は同じですが、どれかに登録しておけば、探す側はj-anpiというサイトから一括で登録情報を調べることができます。

 j-anpiは伝言板以外にもNHKの安否情報や各企業から提供される社員の安否情報なども反映されるようになっていますので、探す側にとっては伝言ダイヤルよりも早いかもしれません。j-anpiは普段から開設されているサイトなので、一度どんなものか確認してみてください。
 もっとも、心配する側は一声でも声が聞きたいものです。上手に使い分けをして、生存していることを心配している人に手早く伝えられるようにしておきたいものですね。

家具の固定を考える

 家具の固定のお話をさせてもらうと、「どうせ外れるんだから固定する意味がない」ということを言われる人がいます。
「L字金具では役に立たない」というご意見もいただきます。
 私自身は、それらの意見は正しいし間違ってもいると思っています。
 家具の固定は、震度が強くなればなるほど振動が大きくなって家具にかかる力が大きくなる。そのため固定具が外れやすくなるということが確かにあります。
 下地がベニヤ板の家だと、そこに打ち込んであるビスが振動や重さで抜けてしまうことも想定されます。
 ただ、しっかりと固定されていれば倒れるまでの時間を稼ぐことが可能です。
 活断層型の場合には長くても1分以内。海溝型でも数分程度の揺れで収まりますので、いかにかっちりと家具を固定しておくかがポイントになります。
 例えば、L字金具だけで固定したタンスは振動でビスが抜けてひっくり返るかもしれませんが、L字金具+転倒防止具を使うと倒れる確率は格段に下がります。
 大切なことは「いかに倒れるまでの時間を稼ぐことができるか」という視点を持つことです。
 最初の振動で下敷きになった場合、その後の激しい揺れで命を絶たれるかもしれません。でも、最後の振動で下敷きになったのなら、脱出することや他人の救助で助かる確率は格段に上がります。
 完全に固定してどんな振動でも動かない、倒れないのは理想です。ただ、その理想をかなえようとするとかなり大変なことは事実です。
 でも、その場所から逃げ出すだけの時間が稼げる固定なら、さほど難しくはありません。
 要は安全地帯に逃げ込むまでの時間が稼げればよいのです。
 最近はL字金具だけではなく、吸着タイプやテープ、シールタイプなどさまざまな固定具が登場しています。
 壁や床に傷をつけずに固定できるような道具も出ていますから、借家であっても諦めなくてすみそうです。
 自分の家にあった、その家具にあった固定具を考えて、できれば複数の手段で家具を固定することで、倒れるまでの時間を稼ぎましょう。

避難を考える

一口に避難といっても、何が何でも全て避難場所や避難所に移動しろというわけではありません。
 災害対策の考え方では、一義的には自宅避難。自宅が危険な場合に避難場所へ避難。そして自宅が損壊した場合に避難所へ入所という流れになっています。
 「自宅が使える人は自宅で」というのが計画の大前提なのです。
 まず手始めに、地元の防災計画を確認して自分が避難すべき避難所や避難場所の収容人員を見てみましょう。その地域に住んでいる人がみんな避難できる空間があるでしょうか。
 避難場所や避難所はその地域の圏域人口はまったく考慮されておらず、そこにある公共施設が割り当てられているだけという場合が非常に多いため、地域にいる全ての人が避難すると避難者が多すぎて門すら超えられないという事態が想定されます。
 そのため、災害が起きたときに自宅に居るべきなのか、それとも避難すべきなのかをきちんと想定しておかないと、避難したのに路頭に迷うというおかしな事態が発生します。
 そうならないために、まずは自分の住んでいる場所で起きうる災害について、ハザードマップなどを元にして避難場所・避難所に逃げる必要があるかどうかを検討しましょう。
 唯一、津波は発生した場合にはどこでもいいからとにかく高台へ避難する必要がありますので注意してください。
 避難が必要なのは、高潮や洪水では2m以上水没することが想定される地域、後背地に崩れやすい崖や山がある場合や家が急な斜面に建っている場合、台風や竜巻などで自宅が損壊する可能性が高い場合で、この場合には周囲が安全な避難場所や避難所に避難する必要があります。
 逆に避難が必要ない場合には自宅に立て籠もることになりますので、自宅に災害をやり過ごせるだけの備えをしておかないといけません。
 行政機関の準備している住民への災害対策はあなたが思っているよりも遙かに貧弱でせいぜい「ないよりはナンボかまし」程度のものです。
 自分の命は自分で守ることは、災害対策での大前提。
 事前にしっかりと検討し、備えておきたいものですね。

 なお、石西地方の各自治体が指定する避難場所及び避難所の一覧はこちらからご確認ください。

子どもの指導者は防災対策を知っておこう

 保育園、幼稚園、学童保育、小学校、中学校、高校、塾その他、子どもと関わりのあるお仕事は非常に多いと思いますが、その人達が自分のところの防災対策を把握しているかご存じですか?
 「防災訓練をやっていますから大丈夫です」というお答えを聞くことも多いのですが、その頻度は「子どもが小さくなるほど回数が多い」傾向があります。
 保育園や幼稚園では大抵1ヶ月から2ヶ月に1回程度はされていることが多いようですが、これが小学校に上がると年に2回程度、多いところでも年4回程度になり、中学校で年1回、高校や塾だとまったくしていないところも見受けられます。
 子ども達は災害対応でどのように教えられているかというと「指導者の指示に従うこと」で「自分で判断せよ」ではありませんから、指導者は災害対策の指示が出来るレベルが要求されているのです。
 子ども達を預かっている場所の地形や危険、避難先やその後がきちんと整理されているでしょうか?
 子ども達にきちんと指導ができますか?
 災害対策で指導者が迷っている暇は残念ながらありません。その後がどうなるにしても、何らかの判断を常に求められるのです。
 過去から現在に至るまで「災害は不可抗力」として指導者の罪が問われたことはありませんが、今後災害が頻発するようになると「職務怠慢」で罪に問われるようになるかもしれません。
 そうならないためには、少なくとも子どもを預かっている間に発生した災害については適切に対応できるだけの能力を身につけておく必要があります。
 あなたのところの防災対策は大丈夫ですか?

お風呂の残り湯について考える

 防災対策ではよく「お風呂の残り湯は貯めておく」と言われますが、これは正しくて間違った情報だと考えています。
 確かに災害が発生した後、水道が復旧するまでは生活用水の確保が難しくなります。
 そのため、家の中にあるいちばん大きな水がめである風呂桶に残り湯を抜かずに貯めておきましょうという風に言われているのですが、2階以上のお風呂には貯めないほうが無難です。
 地震のときは地面から高い位置にある部屋ほど大きく揺れます。そのため風呂桶の残り湯はみんなこぼれて排水管に流れ込みます。
 そのときにこの排水管が破損していたら、下の階が水浸しにしてしまうということが起こります。
 この場合、自宅ならいいのですが、アパートなどで水没した下の階の住人への補償はこぼした人の責任になってしまいますので、2階以上に住んでいる人は地震に関しては水を貯めておかない方がいいということになります。
 また、それ以外の方でも、風呂桶に水を貯めておく場合には必ず蓋はしておきましょう。
 熊本地震では前震で懲りて風呂桶に残り湯を置いていたのに、蓋をしていなかったために本震で全部こぼれてしまったという話も聞きます。
 せっかく貯めているのですから、きちんと蓋をしてこぼれないようにしておきたいものです。

火をつけるということ

 以前に参加した都市部での災害対策研修での一コマです。
 ペール缶を使ったコンロで廃材を燃やすという演習があり、その時の質問でちょっと驚いたことがありました。
 「たき火をしたことがある人」という問いに対して、その場に居た30人弱の参加者の殆どが「ない」と答えていたのです。
 その時の参加者は年齢層が幅広く20代前半から60台後半くらいの方までいましたので、年齢の問題ではないようです。
 都市部ではそもそも火が焚ける場所がなく、普段はオール電化という生活では火と縁遠くなるのも無理はありません。
 田舎でさえ「野焼き禁止」というお達しが役所から出されるくらいですから、火を直接扱うことはこの先も少なくなるのでしょう。
 ですが、いざ災害が発生すると享受しているさまざまな文明の利器は使えなくなります。

 原始的なたき火で暖を取ったり灯りにしたり、鍋ややかんをかけて調理をしたりということになるのですが、その時最初の火はどのように作りましょうか?
 ちょっと前まではどこにでもタバコを嗜む人が居ましたから、マッチやライターは声をかければどこかから出てきました。
 ですが、今は電子タバコがかなり普及してきておりタバコを嗜むにも火は不要になりつつありますし、タバコを嗜む人そのものが格段に減ってきています。
 つまり、あらかじめマッチやライターを準備しておかないといざという時に火をつけられないということになってしまうのです。
 マッチやライターがなければどうするか?
 乾電池とアルミ箔やガムの包み紙、それにちょっとしたほこりや糸くずがあれば、ショートさせることで火を起こせるでしょう。
 天気が良ければ虫眼鏡と黒紙で火が作れます。
 適当な木があれば摩擦で火を起こせるかもしれませんし、火打ち石の要領で火花から火を拾えるかもしれません。

やり方が正しければ子どもでもきりもみ式で火はつけられます。

 意識しておかないといけないのは、火を起こす方法は一つではないということと、どうすれば火がつくのかを知っておくということ。
 災害対策という点から見ると、火を確保する手段についても練習をしておいた方が良さそうだなという気がしています。

安全な場所三原則

 地震が起きたときに怪我したり死んだりしないように、安全な場所の確保はできていますか?
 この安全な場所というのは「物が落ちてこない」「ものが倒れてこない」「ものが移動してこない」の3原則を満たしていることが大切です。
 特に寝ているときとトイレ、それにお風呂に入っているときにはとっさの身動きができませんよね。
 そのため、少なくともその3カ所についてはこの条件を満たすようにしておかなければなりません。
 これらの場所にはどうしても必要なもの以外は置かないようにします。
 もしタンスやテレビといったものが置いてあるなら、できるだけ他の部屋に移すようにしましょう。
 ワンルームなどで持って行く先がない場合には、倒れたときに自分が下敷きにならないような家具の配置や固定を必ずしておきましょう。
 また、トイレやお風呂の場合落下物はないかもしれませんが、その出入り口に障害物はありませんか。
 閉じ込められると逃げようがありませんので、出入り口を塞ぐようなものがあるのであれば、きちんと固定して動かないようにしておきましょう。
 古来より地震だけで死ぬ人はそうそういません。ですが、家具や建物につぶされて死んでしまったり怪我してしまったりした人は数知れずいます。
 まずは生き残ることを目指して、安全な場所の3原則を元に、寝室、風呂、トイレの点検から始めてくださいね。

足の裏に気をつけよう

 どんなに片づいているお家でも、地震や水害などの災害が起こるとその大小はありますが床や足下にさまざまなものが散らかるものです。
 それを踏んづけて怪我をしてはなんにもなりませんので、足下を守るための準備をしておくことが必要です。
 一番いいのは靴を持って歩くことなのでしょうが、日本の家の中でそんなことをするのはあまり現実的ではありません。
 が、せめて足下の安全を確保するための履き物を準備しておくことは必要ではないでしょうか。
 災害が起きたとき、常に玄関から逃げられるとは限りません。裏口や窓から避難しないといけないことが起きることがあるかもしれません。
 玄関と勝手口に履き物を準備しておき、できればそれにプラスして枕元にも用意しておく。そうすることで足下を気にせずに避難することができます。
 底の厚い靴であれば文句なしですが、そこまでいかなくても、例えばスリッパ一つでも足の裏をそれなりに守ることが可能です。
 足の裏を怪我してしまうとまともに避難ができませんし、災害時には破傷風などになることもあり得ます。
 なるべく怪我をしない対策を取ることが、生き残るための第一歩です。

家族の写真を持ち歩こう

 あなたは自分の家族の写真を持ち歩いていますか?
 写真なんて撮ってない人、スマホに入ってる人、アルバムにして持って歩いている人まで、家族の写真というのは人によってまちまちだと思いますが、災害時にはこの家族の写真が大事な存在になることを知っておいてください。
 災害時、たとえ家族が離ればなれになっても、写真が一枚あれば避難先を尋ねて回るとき特徴を説明する手間が省けます。
 また、家族が一緒に写っている同じ写真を持つことで、お互いの身分証明にもなって引き受けや引き渡しにも活躍してくれます。
 写真の裏に住所や家族の名前を記載しておけば、うまく説明できない子どもでもそれを見せることで助けてもらうこともできるでしょうし、万一あなたに何かあったときでも、身につけていた写真が無事であれば素早く家族の元に返れるかもしれません。
 東日本大震災では、この写真のおかげで身元確認がスムーズに出来た事例もあります。
 せっかく縁あって家族になったのですから、身につけるものに家族写真を一枚加えて、万一に備えておくことをお勧めします。